表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/26

エピローグ 現世

子猫小路


街灯の下で

リーゼントの男が

煙草を指で弾く


パチン


火が灯る


わずかな橙が

冬の空気に刺さった


俺は

仁・シルバー


すずらんで

ヴィオと翔を助けた夜から

同じ夢を何度も見る


銀の剣

黄金の王子

蒼の巫女

翠のワイバーン


戦い

笑い

息を合わせる日々


ただ見えるだけじゃない


剣の重さ

血の匂い


呼吸のすべてが

肺へ沈んでいた


夢ではない


最初から

わかっていた


これは記憶だ


俺は――

銀の戦士

ジンだった


横で眠る女


この世界では

夕羅


だが知っている

ユジャだ


視線が先を読む理由も

言葉がなくても通じる理由も

最初から繋がっていた


✦ ✦ ✦


12月


一花が

事務所へ来た


「あなた

夢を見てるわね」


「銀の剣で

黄金の王子と戦ってる」


逃げ場はなかった


そこでようやく

確信した


俺が夜にいる理由


読む速さ

先に動く癖

消えそうなものを拾う感覚


闇に堕ちた銀


そのまま

ここへ立っているだけだと


ゴゴゴ……


胸の奥で

低く鳴る


怖さはある


だが

目は逸らさない


✦ ✦ ✦


クリスマス・イヴ


子猫小路6丁目

「居酒屋ロック」


ドアの前へ立つ


一瞬だけ触れた

あの星


ねじれた時間

逆流した光

ぶつかった色


靴裏へ残る石床

指先へ残る剣の重さ


……繋がった


息を吸う


スゥ……


冷たい空気が

奥まで落ちる


迷いはない


カラン……


ドアベルが鳴る


空気が止まった


ヴィオが

顔を上げる


次の瞬間


全員の視線が

重なった


ヴィオの黄金の瞳が

動かない


――その瞬間


ヴィオは

当然のように

笑った


夕羅が

静かに立ち上がった


「……ずいぶんと

……焦らすのね」


夕羅の紫煙が

妖しく揺れる


視線は

すでに俺のすべてを

見透かしていた


ヴィオが

グラスを弄ぶ手を止める


「――遅かったじゃねえか」


肩をすくめる


俺は

席へ歩を進める


「お前が

待たせすぎたんだ」


夕羅の瞳が

細く踊る


「ジン……」


その響きだけで

輪郭が噛み合う


ヴィオが

小さく笑う


「だが悪くない」


グラスを取る


カラン……


茉莉奈が微笑む


「……巡るのね」


オーガが

静かに頷く


「その目なら

――信じられる」


一花が静かに頷く


「……やっぱり来たわね」


ヴィオが肩をすくめる


「俺が王でも……上も下もない――

あるのは昔からの夢絆きずなだ」


誰ともなく

息が漏れた


「……まったくだ」


笑いが戻る


カラン……

カラン……


夕羅が

爪先でグラスを叩く


「……遅いのよ」


俺は

無言でその隣へ腰を下ろした


それでいい


席へ座る


距離が近い


それだけでいい


今度は

堕ちない


胸の奥で

銀が静かに沈む


夜は冷たい


だが

芯は消えない


一度

闇へ呑まれた銀は

もう忘れない


忘れないまま

ここにいる


それが覚悟だ


銀は

揺れない


彩りは

もう消えない


✦ ✦ ✦


誰も

気づかなかった


その夜


蒼が

そっと胸元へ手を添えたことを


理由は

わからない


けれど


茉莉奈は

小さく微笑んでいた


まだ


誰も知らない


新しい光は


もう


歩き始めていた

ここまで読んでいただき

本当にありがとうございました


第1部は

ここで幕を閉じます


皆様との出会いに

心から感謝いたします


第2部で

またお会いできたら幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ