63話 ダリオ回想回その5最後
結果から言えば、あのブラックジャックは俺の惨敗だった。
リーシャとの勝負に敗れた俺はカジノギルド『セブンズミラー』の幹部として、ミランは一般職員として、新しい生活を始めることになった。
ミランは主に俺の補佐役としての位置づけで、宿も他の幹部が泊まっている宿に特別に手配してもらっている。幸い、俺達の過去の関係性や個人的な事情などは詮索されず一切聞かれずに済んだのは、唯一の安堵材料だった。
ミランは最初、このカジノでの仕事を心底嫌がった。あのリオとの修羅場を経験した後では当然だ。だが、「ここなら安定した収入が得られ、何より俺が側にいられる」という説得のおかげで、なんとか聞き入れてもらえた。
働く以上、ルールの理解は不可欠だ。俺はミランにギルドの仕組みやルールを一通り教えた。ミランも最初は嫌がっていたが真剣に頼み込むと、渋々ではあるが理解し始めた。
そして理解力は各段に向上して、相手の心理なども読めるようになっていた。
ただ、彼女は相変わらず口下手で、周囲の職員と友達などは出来ていないのも知っている。ギャンブルの腕は上がっても、まだ人付き合いとしては上手くいかない。
ちなみに、俺の初めての殺人は罪に問われるかと言われれば、リーシャの手によって揉み消さしてくれた。あの女どんだけ権力あるんだよ……。
「とりあえず、まずはこのギルドの改革からだな」
俺が真っ先に手をつけたのは、借金をさせたり、非効率な債権回収制度を廃止することだった。
資金管理担当となった俺は、ギルドの帳簿を見る機会が多かったが、元々ギルドの収益や支出は、そのままでも問題なく回っている。
借金をさせて、命がけで回収する行為は、効率が悪い上にギルドの悪い噂にもなる。何よりも、俺とミランがこのやり方を心底嫌っていたからだ。
もちろん、他所で自滅的に借金するような人間まで、俺達には助けられない。だが、せめてこのギルドから地獄の入り口を消したかった。
リーシャには、単に制度廃止を訴えるだけでなく、イベントなどの具体的な企画立案も立てて提示した。しかし、経営者であるリーシャは俺よりも考え方が一段上だ。論理で詰め寄られ、却下されることもしばしばだった。
そんなある日、ギルドに一人の少女が迎え入れられた。
名前は『ムエルニ』。
気が強く、誰にでもすぐ噛みつくようなタイプだ。しかし、リーシャに対しては別で、絶対服従のような忠誠心を持ち、まるで忠実な番犬のように従順に振る舞うのだった。
幼い見た目からでも性格からでも、皆から煙たがられているのは従業員同士で話をしているのは聞いた。
俺がたまたま見かけたときは、誰も見ていないであろう所で、トランプを使いディーラーの練習をしていたりする。努力家なのだというのが分かった。
そして俺はある事が気になって彼女に聞いてみた。
「なあお前」
「お前じゃありませんの! 私の名前はムエルニですの!」
「悪いムエルニ。どうしてこのギルドに入ったんだ?」
「なんであんたに教えなきゃならないんですの」
「いや、幹部として部下たちは気になるじゃないか。例えば金とか地位とか名誉とか」
「ふん! 私はそんな不純な物じゃないですの」
「なら何なんだ?」
「それはリーシャ様。私はリーシャ様に仕える従者になりたいですの! この一般職員という屈辱から脱し、幹部へと上り詰め、いつかはリーシャ様の右腕に!」
「目標が高いな~」
「あんたも速攻潰してその席奪ってやりますの!」
そうして彼女はどこかへ行った。
もしかしたらミランと友達になれるかもと思ったが、性格のきつさから無理だな。
そんな考えをしながら俺は仕事に戻った。
そして数ヶ月が経ったある時、俺はリーシャに呼ばれ部屋に行った。
「え? 選定戦だって?」
「ええ、あなたの働きを今までみていたのだけど、そろそろ新幹部を迎えようと思うの。そこで選定戦と言う舞台を用意して、ギルドの中でギャンブルに勝ち上がった一人が空き席に座る仕組みを設けようと決めたわ」
俺は遂にきたかと内心ガッツポーズをした。
「そこで企画立案はダリオ、あなたに任せるわ」
「俺にか……」
「嫌かしら?」
「いや、やるよ。このギャンブル案、俺ダリオ=ラングレーが承った」
「参加者は自由だけど、大人数、場所は地下2階で行い、魔法を使う物ならそうね……ルクスに頼みなさい。彼女なら実現可能でしょうし。楽しみにしているわね」
「わかった」と言い、俺は部屋を出るとすぐさま企画を考えた。
第一号第二号と考えては却下、考えては却下と繰り返す。
ギルドに泊まり込み、徹夜も何度かするも上手くいかず。
ミランにも宿に戻らないので心配かけさせていた。
ふらっと休憩所によって茶を飲んでいると、従業員達がじゃんけんをしているのを見てある閃きが舞い降りた。
「そうか、別に難しく考える必要性はないんだ。もっと単純にすればいいんだ!」
俺はすぐさま休憩所を出て、企画をまとめた。
そしてリーシャに提出してみた。
「へぇ、奇数偶数6面ダイスと言うのね面白いわね。これを選定戦として採用しましょう」
内心ガッツポーズをした。
俺はすぐさま、ミランに報告をした。
「ミラン聞いてくれ。今度の選定戦の企画が通った。仕組みを教える。これでお前は有利に立てられる」
「……兄さん……私、出ない」
「なんで!?」
「……仮に幹部になれても、兄さんの恋人だからと言われる」
俺は失念をしていた。
確かに、いつも一緒にいるからか、何も詮索されずとも少なからず噂されているのは知っていた。
必死になっていたが、ミランの気持ちも考慮していなかった……。
ただでさえ口数が少ないから孤立しているのに、今回幹部になったところで余計にとなるのは目に見えていた。
「……分かった。ただ、もしも出るなら言ってくれ」
ミランはコクリと頷いた。
そして選定戦当日、ミランは参加しておらず、ギルドホールのほうで働いていた。
会場では幹部クラスになれるとあるせいか、総勢100人はいたであろうか。
その中にムエルニもいた。
「あいついるんだな。大丈夫か?」
そんな俺の心配をよそに、紆余曲折はあったものの順調に勝ち進み、ついには優勝まで勝ち取った。
その表情は誇らしくもあり、羨ましくもあった。
「これでお前は俺と同じ幹部クラスか」
「あんたなんかすぐに追い抜いて、私がリーシャ様により必要とさえ思ってもらえるようにするの!」
「へいへい」
ムエルニはその言葉通り、幹部となってからも相変わらず騒がしく、ギルド内をより良いものにするために奮闘した。その過程で、衝突は絶えない。彼女は幼い見た目と不遜な態度にもかかわらず、実力と勢いで他の職員を牽制し、威圧し、時には抑圧して黙らせた。
数年が経ち、二人の新たな才能がギルドにやってくる。一人は『フェル・ラグンダルト』、もう一人は『ユエル・タニア』だ。彼女達はギルドにやってくるなり、ムエルニを下した……正確には引き分けだったが。のちのちリーシャに誘われたらしいとライネスから聞いた。
再戦が行われた日、ギルドは大盛況だった。
なにせあのムエルニとフェル・ラグンダルトの再戦なのだから。
そして結果、フェル・ラグンダルトが勝利を収め、ムエルニは一般職員に降格した。
俺はムエルニに勝利したフェル・ラグンダルトが気になり、ミランと一緒に制服を渡す前の採寸を測るという名目で会いに行くことに。
「どうしてもと言うなら俺でも構わない――」
俺はそんな冗談を言う直前にライネスに殴られ、横にいたミランに腹を殴られた。
流石に女の子にそういうのはまずかったかと反省。
俺は別室に連れていかれ、ライネスが部屋から出ていくと。
「ま、俺はどっちでもいいけどね。彼女たちが活躍すれば活躍するほど金が動くわけだし――それに動くのは金だけじゃないんだけどね」
口元を上げニヤついた……そう言って口元を上げニヤついた。が、やはり性に合わない。
商人としての勘から、間違いなく彼女達は稼げると言うのは分かる。
彼女達を見ていると、兄として妹と仲良くできればと思うところはある。
俺は部屋をでると、ムエルニが目元を袖でゴシゴシと拭っているのが見えた。
泣きじゃくっているのだろうか。
俺はムエルニに近づいて声をかけた。
「なに泣いてるんだよムエルニ。お前らしくもない」
「……泣いていませんの……いえやっぱ泣いてましたの。悔しかったんですの。あの子には負けたくない初めてそう思いましたの」
ムエルニは真剣な表情で語る。
その表情は本気で戦い敗北した戦士の表情のよう。
俺はおちゃらけた雰囲気をださず真面目に聞く。
「そうか、だけど楽しかったか?」
「楽しかった? そうね、ええ、確かに楽しかった。ギリギリを楽しんだ。次は絶対に勝つんですの!」
「そうか」
「それにリーシャ様にも期待されているって言われたんですの。すぐさま返り咲いて次は私ごと固定させて動かないようにさせますの」
こいつの発想が怖いな。
ムエルニは満足したのかふんっと鼻息を荒くしてどこかへ行こうとした。
「そうそう、一般職員に降格したんだからその派手なドレスは脱いで、職員制服に着替えるんだぞ」
「……制服ありませんわ」
俺は内心苦笑した。
言えば殴られるんだろうなというのが直感で働いたから口には出さなかった。
そしてムエルニとの対戦が行われて数日後、ギルド内にて1つの事件が起きた。
シャンデリア墜落と言う。
調べていくと天井に支える部分が経年劣化でルーレットの玉の接触で外れ落ちたと言う。
ルーレットには亀裂が入っていたのでこれで飛んだのだと分かるが、亀裂は明らかに人為的なのが見てすぐに判断できた。ただ、玉が飛んでいったのが本当にそうなのかという疑念が生まれた。俺はそれを持ってルクスのもとへとやっていく。
「おい、ルクスいるか?」
「は、はいいぃぃ!」
「いるな、すまないが調べてほしいことがある。このルーレットなんだが亀裂が入っていて、この原因を突き止めたい」
「わ、分かった。数日待って」
こいつがこう断言できると言うのは信用できる。
まあ言葉が詰まる感じはあれだが、ミランと似たような感じがして親近感はわく。
ただ二人を合わせるのはまあ、無理だろう。
そして数日後、結果が分ったと知らせを受けてルクスのもとへと向かう。
「結果わかったか?」
「う、うん。犯人はこ、この人たち」
玉、いや防犯水晶から画像が浮かび映像が映る。
「うちの職員だな。3人か……」
「ど、どうするの?」
「まあとりあえず保留だな。どうするかはあとで考える。とりあえず探ってくれてありがとうな」
「い、いや大丈夫。それよりもこの玉なんだけど。なにもなかった……な、謎」
「嘘だろ?」
ルクスは首を縦に振る。
マジかよ……どうなってんだあれ。
「そ、それからゴーレムなんだけど」
そこには1体の小さなゴーレムがいた。
全身金ぴかで第一印象は可愛らしいと言うものだった。
「このゴーレムをどうしたいんだ?」
「こ、今度の休み前に、職員全員で、じ、実験したい」
ゴーレム稼働テスト。
量は半端なく多いらしく、性能テストを行うためにやりたいそうだ。
5日間も休みを出すんだ。絶好の機会だろう。
ただギルドの全職員に試すにはゴーレム数のわりに人数が多い。
これは組み分け考えなきゃな。
その後、リーシャからムエルニとフェルが互いに協力しあってイカサマ客を暴いたそうだ。
「あいつらいつの間に仲良くなったんだろ?」
数日後、俺はムエルニと共に全職員が集まる休憩所へと向かった。実際は全職員ではないが。
一通り説明を終えて、呼び出していく。
そこでメンバーの内、フェル・ラグンダルトとミランを組ませてみた。
女同士だし、できれば仲良くしてほしかったってのもある。
リオの件もあるが、押しつけがましくてもそれでも友達が出来ればと言う兄心。
「これで全員だな」
「全く、あんたがもっとテキパキやらないから時間かかるのよ」
「ええ~、そんなことはないだろ」
「ふん! どうだか」
相変わらず理不尽な怒り方をするなこいつは。
まあこいつと仲良くなったフェル・ラグンダルトには期待したい。
そして数時間が経ち、俺は見回っていた。
地下ではなにやらざわめきが広がり人だかりができて騒がしさが生まれていた。
「なにがあったの?」
「ラングレー様。実は……」
経緯を聞いた俺は彼女のもとへと向かおうとする。
「全財産を賭ける!」
そんな声が聞こえ俺は足を止めた。
なにを馬鹿なことをしているんだ。内心そう思った。
すぐに止めるべきだ!
そう思った矢先、誰かに俺の腕を引っ張られ止められた。
「ムエルニ。どうした」
「あんたもしかして止めにいくつもりなの?」
「ああ、なにかギャンブルしていたんだろうけど、全財産賭けるなんて馬鹿なことをするのは論外だ」
「そうね。論外ね。だけど、フェルはあんたの彼女が馬鹿にされた事に対して賭けたのよ。プライドを傷つけられたから勝負に出たの」
彼女、いやフェル・ラグンダルトを俺は見た。
彼女の顔は彼ら二人に対して怒っている様子。
本気でミランに対して怒っているのは伝わってくる。
なら俺も行く末を見るまで止めない。
「やはり負けたか」
「ええ、そうね」
ポーカーをしている最中、ディーラーはイカサマをしていたのは分かっていた。多分もう一人の彼もなにか仕込んでいるんだろうと言うのは安易に想像できた。
ただ止めに入らなかった。
止め入り中止にすればフェル・ラグンダルトのプライドは傷つく。
止めに入れなかったのもあるが、彼らに対しても内心イラついた。
だけど勝負の場だ、イカサマを見抜かれなければ食われるのも必然。
「ありえない!」
そんなミランの大声に対して俺は心底驚いた。
あんな声も出すなんて俺は知らなかった。
それだけ彼女に対して真剣に向き合ったのと、この状況に思うところがあったのだろう。
フェル・ラグンダルトは落ち込むようにその場から離れると、ミランもついて行くように追いかけた。
人込みに入れず突き飛ばされようとした時に俺はミランの腕を掴み支えた。
「彼らはイカサマしていた」とミランは言った。
俺は「知ってる」そう伝え、ミランを彼女のもとへと送るように背中を押した。
ここまで想うなんて、短時間とは言え彼女はミランをそこまで変えてくれたのか。
俺はムエルニと共に、彼らに勝負を挑んだ。
負ければムエルニは全財産、俺は今の地位を空けるように言われるが、それでも構わないと思えた。
彼女の行いに報いるために。
「あっー、今日は疲れた」
俺は宿のベッドの上に大の字で寝転がっていた。
結果としたら、単純なイカサマの数々でムエルニとともに看破して大勝利を収める。
ついでに真相も晒し、3人をクビにした。
これでミラン達を馬鹿にするものはいなくなればいいが。
扉がノックされ俺は起き上がった。
扉が開くとそこにいたのはミランであった。
「どうしたミラン?」
「兄さん。報告したいことがあるの、私ね友達ができた」
「何だって!?」
あのミランの口から友達だって。
今日一番嬉しい報告だ。
しかし相手は……。
「もしかしてフェル・ラグンダルトか?」
「うん」
「そっか良かった。あいつはムエルニとも仲良くなってるし、なにかあるかもしれないな」
その後ミランは今日あった出来事を嬉しそうに話してくれた。
そして、深夜俺が寝ていると、突然ドアがバンバン叩かれた。
俺は慌てて起き上がり、警戒しながら扉を開けた。
「……ムエルニじゃないか。どうしたんだこんな夜中に」
「どうしたもこうしたもじゃないですの。フェルがまだ帰って来ないんですの」
「なんだって!」
ムエルニは今にも泣きだしそうになっている。
人前で、特に俺の前でそこまで心配して泣いているなんてただ事じゃない。
「分かった。俺も探してみるから、お前は宿に帰ってろ」
「ですが」
「心配するな。必ず連れ帰ってやるから」
ムエルニは涙をふき取ると「頼みますの」と言った。
宿を出ると俺は王都中を走った。
場所はわからないががむしゃらに。
ただ、探しても時間がすぎる一方で見つからない。
「どこだ……」
俺はふと1つの場所をまだ探していないことに気づく。
そう、セブンズミラーだ。
「ここにいなければお手上げだ。リーシャも何故かいないし。最悪ルクスにそういう道具を作ってもらおう。そのあとリベルにも連絡して」
俺は扉を開けギルド内部へと入って行く。
1階のカジノ広場を確認するも何もない。
いやルクスが作業しているはずだからいるのは確かだ。
そのまま2階、3階と登り探すもおらず、地下へと向かう。
すると、扉の先に声が漏れて人の声が聞こえる。
「ルクスか? いやもう一人いるな誰だ……」
俺はそっと中を覗くと、そこにいたのはルクスとフェル・ラグンダルトだ。
そのまま扉を勢いよく開け叫んだ。
安堵した。場合によってはとも考えたが安心した。
そしてムエルニが心配していることを伝えた。
俺達は戻ろうとしたその時、ルクスに呼び止められた。
「ロイヤルストレートフラッシュを意図的に行っている」
その驚愕の事実に、俺は言葉を失った。
フェル・ラグンダルトはテキサス・ホールデムでロイヤルストレートフラッシュをしそうになったとか、意図的とか本当にあり得るのか?
いや、ありえない。けどこれまでの行いを考えたら……。
俺は先に外に行かせたフェル・ラグンダルトを追いながら考えた。
「もしかして次の選定戦はフェルを入れたチームなら勝ち上がれる? そうすればミランも一緒に」
そして彼女と合流し、彼女に話さないといけないことがあった。
それはミランに対して気掛かりなこと、俺の中で確かめたいことでもあった。
「ミランと仲良しなんだろ?」
「友達です!」
そう彼女は迷いもなく返事した。
俺は思わず涙が零れそうになった。ミランにおいて友達。
これからも仲良くして欲しい、そんな気持ちで嬉しさでいっぱいだった。
そして俺達は宿の前でまっているムエルニに怒られたのであったとさ。
俺は宿に戻り、選定戦の企画案を練り直した。
「休み四日目にて、ついにできた! すぐリーシャに報告をって……まだいないんだった」
俺らにも伝えられておらず、どこ行ったのかも謎だ。
元々あいつの行動原理は謎だらけで知る者はいないだろう。
ただ、他に報告することができるのは……確かライネスも仲良かったな。
それならライネスに伝えれば自然とあいつらにも伝わるんじゃ。
だけど俺は疲労感からか、死んだように眠った。
そして五日目、俺はライネスを発見する。
「聞いてくれ。遂にできたんだ選定戦の内容が」
「ほうよくやった。けど俺様に教えてもいいのか?」
「ああ、お前なら問題ないだろう。それに当日も説明するが事前に知ってた方がいいだろ」
「……まあそれもそうだな」
よし、順調に物事は進んでいる。
内容説明を言うも、ライネスにはあんまり理解していない様子だった。
「とまあこんな感じだ」
「まあ何となくは分かった」
「それを伝えたい奴らにいるからお前の手で伝えてきてくれ」
「は? それだと他の奴らが不利になるじゃねえか」
「それでいいんだ。お前だって上がってほしい奴はいるだろ?」
「……まあいい。伝えてやる。お前の意図は知らんが、俺様なりに言ってやるよ」
そのまま消えて行った。
本当に伝わってるかわからない。ただあのチームで組めれば勝ち上がれると思いたい。
そして選定戦前日、リーシャが帰ってきた。
「おいリーシャ、どこ行ったんだよこんなギリギリまで」
「個人的用事だったの。早速だけどダリオ、あなたの企画書見せて頂戴」
俺はトレンド・マーケットの企画案を見せた。
リーシャは「ふぅん、面白いわね」と言って俺に返した。
「とうに事前のリハーサルは全職員の前で見せたから問題なく起動もできる」
「それもルクスが作り上げたわけね」
「ああ、あいつは本当よく頑張ってくれたんだ。ただ怒っていたが、渋々といってやってくれたが」
「流石ね。ただ1点付け加えさせて頂戴。ダイスなのだけど、これだと参加者は動かしにくくなるから、もう一度振らせる仕様に変更で」
「分かった」
「他にもあるのだけど、ここぐらいが妥協かしら」
そして始まる選定戦。中盤、終盤となり。勝利をしたミランのチーム。
俺の目の前には覚悟を決めたような表情でいるミランがいる。
口を開くミランはあの言葉が俺の胸に突き刺さった。
「もう満足だよ。兄さん」




