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純白のギャンブラー~王都カジノの少女賭博録~  作者: レブラン
4章

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60話 ダリオ過去回想その2

 町を離れて数年が経ち、俺達は王都で冒険者となっていた。

 最初は商売も考えていたが、あの人の事を思い出して手が出せない。

 選択肢が狭まるのはわかるが、他に知識もなく半ば強制的にこうなった。

 今、俺達は冒険者として依頼の一つを受け終わった所だ。


ダリオ(・・・)、なにボケっとしてんだよ」

「ルーベンか、昔のことを思い出してな」


 ラウルの名としてではなく、ダリオとして名前を呼び、俺の肩に腕を乗せて話しかけてきたこいつはルーベン。パーティーメンバー前衛の盾役だ。


「全く、ルーベンはちょっかいかけないの。ダリオが困ってるでしょ。ミラン(・・・)もこいつに注意して」


 そう言って、注意する彼女はゲルムの杖を持つ魔法使いのリオ。

 その後ろにいるのがエイラの名ではなくミランであった。

 俺とエイラはこの王都へ来る前にある決め事を決めていた。

 名前はラウル・ローレンではなく『ダリオ=ラングレー』。エイラ・ローレンではなく『ミラン』と。

 俺とミランは兄妹ではなく幼馴染の恋人同士で、ミランの苗字は言えないことにしている。

 そういった人達は意外と多くおり、俺達も特に怪しまれることはなかった。


「そうかな? ダリオは困っていないから大丈夫でしょ」

「いや、困ってるって。こいつ邪魔過ぎなんだよ。しかも鎧がぶつかって痛いし」

「あー、悪い悪い。まあ気にすんな」

「おい」


 俺達4人はその後、いつもこのパーティーを組んでいる。

 ここに来てからしばらくは冒険者としてやっていたときに、メンバーが必要な依頼を受けた際に集まり、そのまま仲良くなった。


「まあとりあえず飯食おうぜ飯。どこで飯食う?」

「いつも通り、俺たちが泊まってる宿の食事処でいいんじゃね?」


 俺の提案に誰も反対することなく食事場所は決まった。

 到着して中に入ると、ピーク時が終わったのか人は少ない。

 俺達は空いている席に座った。


「ラッキー、人が居ないな」

「おい、流石にそれは失礼だろ。実際居ないが」

「ちょっと、二人とも店長に聞こえるでしょ」


 すると強面の男がやってきて、腕を組みながら睨みつけてきた。

 ここの店主兼宿屋の主人であった。


「悪かったな客が少なくて! で、お前ら何食うんだ」

「魔獣鶏のスパイス焼き4つに狼牙のパン4つにビール2つにジュースも適当に2つ」


 俺は適当に頼んだ。

 口元をニヤニヤと歪ませ、リオが馬鹿にするように言ってきた。


「ダリオは相変わらず魔獣鶏好きね」


 リオは呆れたような視線を受け流し、俺は背もたれに体を預ける。


「いいだろ。ここのは美味いんだし」

「確かにここのは他より美味いよな」


 隣でジョッキを傾けていたルーベンが、同意するように深く頷いた。それに続くように、ミランも小さく笑いながら口を開く。


「私もここのは好きだよ」

「ほーら3対1でリオお前の負けだ」


 俺が勝ち誇った顔で指を立てると、リオは「なにを~!」と顔を真っ赤にして身を乗り出してきた。

 何気ない会話に軽い談笑。ミランも俺も笑っている。

 俺達は良い仲間に出会えて良かったとそう思えた。

 テーブルの上にはビールとジュースが置かれた。


「それじゃあ飲もうぜ」


 俺達は、一日の疲れと緊張を振り払うかのように飲み干した。

 喉越しを通る炭酸が広がる感覚は、まるで重い鎧を脱ぎ捨てた後のようで、相変わらず酒は美味い。


「プハー……それにしても今日のは疲れたな」


 空になったジョッキをテーブルにドンと置き、ルーベンが深く息を吐き出す。


「ああ、視界が悪いあの森で、お前が前に出て守ってくれなかったら、ミランがやばかったわ。助かった」


 俺は感謝を口に出しながらグラスを差し出すと、ルーベンは理解したようにカチンと音を立てて鳴らした。


「うん、助かったよ。ありがとう」


 ミランも祈るように手を組み、前に座る男を見つめる。向けられた二つの感謝に、彼は手持ち無沙汰そうに頭を掻いた。


「おう、いいってことよ。仲間を守るのが俺の役目だし」


 照れくさそうにルーベンは笑う。


「そうね。あんたも前に出て守るのもいいけど、周囲の警戒を怠ると危なかったわよ」


 そんなこいつに悪態をつくように言うのは、いつもリオだった。


「そうだな。目の前を守るのに精一杯で、すぐ近くに来てるとは気づかなかったわ。お前の魔法があったから助かった」


 俺はリオを褒めると彼女ははふふんと鼻を鳴らす。


「ただリオ、お前も危うく攻撃されるところだったけどな」

「ルーベンうるさい。あんたと違って私は奇襲にされかけたのよ。それをダリオが守ってくれたから助かったけど」

「本当、よくあそこから素早く動けたな。流石と言うべきか」


 そう感心するようにルーベンは言った。


「身軽だし、武器は短剣だからな。この中だと2番目に素早いさ」


 俺は魔法を使い、身体能力を向上させて素早く動くことにしていた。

 仲間に同じように向上させるのには使えないことも話している。

 一度敵に使ってみたものの、敵の動きを封じる程度で倒すまでには至らなかった。

 もしもの時にはありかもしれないが、現状だと使うなら武器で攻撃したほうが確実性はある。


「まあ確かにミランのほうが素早さが上なのには驚くよな」


 ミランは武器を持たずに格闘家としているのだが、才能が開花して敵を屠ることができる。一度素手で手合わせしたことあるのだが、魔法を使っても惨敗した。


「あんたたち本当どこ出身なのよ」

「あー……まあいいじゃないかそんなこと。ほら鶏とパンきたし食おうぜ」


 甘いソースの香りが食欲を引き立たせる。

 フォークで突き刺し口に運ぶと、口の中に広がるソースとぷにっとする感触がたまらなく美味い。

 パンも皿に乗っているソースをひっかけて食べる。いやー美味い。


「ミラン、口元にソースついてるぞ」


 ミランは俺に顔を向け、拭ってほしそうにする。

 俺は持っていたハンカチで彼女の口に付いたソースを拭った。


「お前ら本当仲良いな。恋人って感じじゃなく、まるで兄妹みたいじゃん」

「い、いや。俺たち同じ町にいた幼馴染だし、これぐらいなら昔からしてるさ」

「う、うんそうそう。幼馴染」

「そうか……? まあそうか」


 察し能力高いなこいつ。

 ただ誤魔化せたのは助かった。

 リオもこっちを見ている……疑ってるのか?

 ちょっと顔を横に向けて、なにかをアピールしている様子。

 ああ、なるほど。とってほしいのか。


「ほらリオ、お前もソース付けてるぞ」


 リオの口に付いていたソースをハンカチで拭った。


「いやリオ、ダリオは恋人がいるのにそれはないだろ。いくら好きだからって」

「え! いや、なに言ってるのよあんた!」

「ちょ、髪の毛引っ張るな禿げちまう!」


 騒がしい中、楽しいひと時を過ごした。

 そうして俺達は食事を終え支払いを済ませた。


「さて、皆はこれからどうする?」


 俺は話を切り出した。


「私は休むわ。ルーベン、あんたのせいですごく疲れた」


 リオは手を軽く振り、ミランも同意するように頷いた。


「私も同じく休むね」

「俺は行く所あるから、ダリオついて来い」


 ルーベンは立ちあがると俺を連れて行こうと肩を掴んだ。


「ちょっと、ダリオ連れて行くなら一人で行きなさいよ」

「いいじゃんか、一人だと寂しくて死んじゃいそうなんだよ」


 やれやれと言いながら俺は渋々立ちあがって、ルーベンについて行くことにした。


「仕方がないな着いていってやるよ。じゃないとこいつ死ぬから」

「分かったわよ。行ってきなさい」

「ああ、行ってくる。ミラン、リオ」


 宿を出ると、逃がさないように俺の肩を組んで来る。

 相変わらず鎧が痛い。

 俺はルーベンの腕をつかみ無理やり放す。


「逃げないから離れろ。そしてどこ行くのか言え」

「そうだな。お前、まだ行ったことない所だ」

「それはどこだよ」

「ここは王都だぜ? ならやるべき事は1つじゃないか」


 嫌な予感がする。

 だけど、違うかもしれないが、確認するために言った。


「……それってカジノか?」


 胸の奥で苦い記憶が疼いた。


「正解。まあここ王都だしな。お前は散々拒否してるけど今日こそ行こうぜ」

「断る」

「えー、なんでだよ~」


 俺はギャンブルに対していい思い出はない。父親がギャンブルに狂い挙句、借金までした。こいつやリオには俺達の過去は教えていない。

 こいつは馬鹿だけど、良い奴ではある。

 言ってることの悪意はないのも十分理解している。

 ただ……。


「やっぱり駄目なのか?」

「ああ」

「どうしても?」

「ああ」

「ならさ、俺がやってる所を見るだけってのはどうだ?」

「やってる所を?」

「そう、俺一人だけだと寂しいんだよ。そこでお前は俺がやってる所を見てるだけ、勝ったら喜べばいいし、負けたら慰めてくれ」


 ……ならいいのか?

 俺はやらないが、見てるだけなら。

 酒のせいかわからないが、思考が定まらない。


「ほら着いたぜ」


 いつの間にか連れていかれていた。


「ほら行くぞ。入った入った」


 ルーベンは先に中に入ると俺は仕方がなくと諦めたように入った。




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