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純白のギャンブラー~王都カジノの少女賭博録~  作者: レブラン
4章

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59話 ダリオ過去回想その1

 俺とミランは双子の兄妹だった。

 俺達はある町のしがない商人の子供として生まれ育つ。

 幼い頃から俺達二人は将来、親と同じ商人になると思っていた。

 日々、商品の目利きの選別や読み書き、計算に対する知識など父さんから教えてもらっている。

 商売も順調、両親も健在、このご時世まさに順風満帆と言うべきだろうか。

 ただ、当時の俺は今よりも体は弱く、ミランは今よりも元気で明るかった。

 俺は体を鍛えたりしたが肉体的にはついていかず、しかし魔法の才はあったようで、俺は魔法が使えた。ミランは逆に魔法の才はなく身体能力は伸びていった。


「すごいねラウル(・・・)は魔法が使えるとか……私なんて使えないよ」

「そんなことはないよ。魔法が使えても俺はエイラ(・・・)みたいに強くないんだし」


 当時俺、ダリオ=ラングレーはラウル・ローレン、ミランはエイラ・ローレンと名乗っていた。

 俺達が14歳になったある日、父さんは俺達にある事を言った。


「お前たちに知らせたいことがあるんだ。父さんな、この店舗だけじゃなく他にも店を増やそうと思ってる」


 それは店が順調で、2店舗目を増やすという話が来たらしい。

 資金的にも無理なはずなのだが、融資をしてくれる人が現れたのだ。

 俺達家族は普通なら喜ぶ所だが、それは悪魔の序章でしかなかった。

 ある日、父親と母親の顔色が良くないことに気づく。


「父さん母さん顔色が悪いけど、どうしたの?」

「何でもない。お前は気にしなくていい」


 なにかを悟らせないように父さんはこう言ってたが、その実、莫大な借金を抱え悩んでいたことが後々判明した。

 別店舗も店が繁盛だったのだが、トラブルが起きて閉店せざるをえない状況になってしまった。そのときに法外の支払いを突き付けられ結果的に莫大な借金が残る。

 それからは両親は人が変わったかのようにがむしゃらに働いた。

 だけど、働けど働けども借金は利息と言う、雪だるま式に膨れ上がる借金から逃れられない。

 精神的にも肉体的にも追い詰められているのか、父さんは俺達に八つ当たりをはじめた。

 体力はついてきてる、ただ子供の力なんて大人に敵うわけがなく、なすすべなく殴られた。


「ラウル、大丈夫? 痛くない?」

「ああ、平気だよエイラ。なんせ俺は鍛えているからな」


 幾度か殴られていくうちに、出来るだけ派手にやられ、出来るだけ痛みを押さえるすべを俺は身に付ける。こうする事で父さんは満足して殴るのをやめたのだから。

 ただ、エイラに向かないように耐えればいい、何とかなる、そう思っていたから。

 そんなある日、父さんがご機嫌だった。


「これを見ろお前たち」

「アナタどうしたのよ。こんな金貨……」


 テーブルに置いた大量の金貨。

 店が軌道に乗っていた時でもお目にかかることのできない量。


「なに、ちょっと誘われてギャンブルにしたら勝ってしまってね」

「ギャンブルって……私たち借金が残ってるのよ。貴重なお金を使うなんて」

「いいじゃないか勝てたんだし。今日はパーッとしようパーッと」


 この日は殴られることもなく、笑顔でいられた俺達兄妹と両親の最後となった。

 そうして15歳が迎える前日、いつも通り殴られるかと思っていたがそうではなかった。

 父さんは深刻な表情をして、俺達の前に立っていた。


「すまないお前たち、店を立て直そうと必死にやってきたが無理そうだ」

「うん」

「借金まで残り、路頭に迷ってしまうかもしれない」

「大丈夫。俺とエイラももうじき成人となるから働き口が広くなるし、借金は家族全員で返済していこうよ父さん」

「ラウル、エイラ、母さん……すまない……すまない」


 そう、これから皆で返済していけばいいんだ。これから……。


「と言うわけで、連れて行ってください」

「え? 父さんそれはどういう……」


 数名の男達がやってきた。

 どうみても店に用のある客じゃなく、そっちのほうだと雰囲気からも察せられた。

 エイラは恐怖からか、震え、俺の服を掴む。


「すまないな、ラウル、エイラ、母さん。父さんな、あれからギャンブル頑張ったんだよ。だけど上手くいかず失敗してばかり。もうだめだと思ったら、ある提案を持ち掛けてくれたんだ」


 男の一人が前に出て、ジロッと舐めまわすように俺とエイラと母さんを観察した。

 いや、商品としての観察をしていた。


「まあ、子供二人はもうすぐ成人らしいしこれなら問題ないでしょ」


 男は懐から布袋を取り出すと、父さんの手に渡されていた。

 中身を確認し取り出すのは1枚の金貨。


「こんなに……! ありがとうございます!」

「父さん、どういうことだよ!」

「そうよアナタ説明して!」


 金貨を布袋に入れると、口角をあげニタリと笑う。

 それはまるで今までの父さんとは違って別の生き物に見えた。


「すまないな。お前たちを売ることで借金の返済を減らしたんだ。お前たちが働けば、俺たちは借金も完済するし。そのあともう一度家族としてやり直せばいいじゃないかと」


 なにを言っているんだこの男は……。

 俺は(父親)に対する己に渦巻く怒りと憎しみが溢れかえってくるのが感覚で理解する。


「女は娼婦として売ればいいし、男は奴隷として売ればいけるだろ」


 男は手を振りかざすと、数名の男が俺達を押さえつける。

 その際、エイラとは無理やり離された。

 泣き叫ぶエイラ、俺とエイラの名前を呼ぶ母さん。

 俺はエイラと母さんを叫んだ。


「うるさいなぁこいつ!」


 男は俺を持ち上げると腹を殴り、手放す。

 痛い……殴られ慣れいるとはいえ、痛みは残る。

 だが、それ以上に怒りが俺の中で溢れるように沸いて出た。

 俺はすぐさま立って、男の腹に両手を置いた。

 これは、自分ではなく他人にやること自体が初めてだ。手加減なんて……知らない!


「さて、それじゃあ行きまア”ア”ア”!」


 男が倒れる前に、他の男達も反応させる前に昏倒させた。

 父さんは何が起きたのか分からず、混乱していると、俺はこいつにも食らわせた。

 俺の魔法は電撃によるもの。自身に浴びせさせると速度があがり、他人に向ければ衝撃のあまり気絶させる。

 今まで、殴られるときに反応速度を上げて対処してきた。

 父親に対する初めての反抗期。

 そして最後の反抗期。


「そうだ母さんとエイラ!」


 すぐさま店の外にでると、二人とも馬車に乗せられそうになっていた。

 俺は自身に魔法をかけ、馬車の近くに行くと、男達に電撃を浴びさせ気絶させた。


「エイラ、母さん!」

「兄さん、兄さん!」

「ラウル、ありがとう。ごめんなさい」


 俺達3人は互いに互いを抱きしめた。

 しばらくすると警邏(けいら)隊がやって来ると思う。

 そうすれば父さんとこの男達は警邏隊に逮捕される。


「ラウル、エイラ、ちょっと待ってなさい」


 そう言って母さんは店の中に入って行った。

 エイラは不安だからか、俺の手を繋いできたので俺も握り返す。

 しばらくして、母さんが店の中から出てくると鞄を抱え持っていた。


「ラウル、エイラ、話があるの」

「なに母さん」

「あなたたちは町を出なさい」

「どうして!?」


 分からなかった。

 どうして母さんがそういうのか。


「実はね、この倒れてる男の人たちは町の借金取り、危険なことをしている人たちなの」

「なら母さんも一緒に」


 母さんは首を横に振った。


「私はあなたたちに着いていけない。警邏の人たちに事情を話さないといけないし。それにこんなことして見逃すほど馬鹿じゃないわ」

「そんな……」

「あなたたちはもうすぐ15歳なのよ。立派な大人です。ラウル、お兄さんなんだから妹のことをしっかり守りなさい」

「うん……」

「エイラ、あなたもラウルの言う事をしっかり聞きなさい」


 返事はない。代わりに母さんの胸に抱きつき泣いている。


「全く、甘えん坊さんね。ほら、ラウルも」


 俺も思わず涙ぐみ、母さんに抱きつくと泣いた。


「私はね。あなたたち二人が大きくなったら楽しみにしてたの。どんな恋人を連れてくるのか、将来その人と家族になったとき子供が出来て。私たちは幸せだなって思いながら過ごすの。だけど、それが叶わなくなっちゃった。私があの人を止めて慎ましく暮らすよう言えていたら……ごめんなさい」


 母さんの謝罪は俺達の心に刻むものであった。


「これを持ってなさい。ラウル、エイラ」


 母さんは俺達を離すと鞄を渡した。

 ズシッと重さを感じる。


「中にはあの人が受け取ったお金が入っているの。これを旅の資金にしなさい」

「……わかったよ。母さん」

「さあ行きなさいラウル、エイラ」


 俺はエイラの手を繋ぐと、その場から離れるように歩き始めた。


「さようなら母さん」

「さようなら母さん」


 俺達はそう母さんに別れの挨拶を言った。

 俺達は振り返らない。

 ただ、繋いだエイラの手が震えているのを感じて、俺は鞄の重みを確認した。重いのは金だけじゃない、と思った。これは俺達を売った男が受け取った金だ。俺達の、命の値段だった。



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