54話 ムエルニの誤算と、ライバルとの七千の壁
『それじゃあ、今からダイスイベントが開始されるぞ』
合図とともに台の注目度数値が全体的に下がりダイス数値が上がりし始めた。
スロット▼150、ブラックジャック▼62、ポーカー▼50、バカラ▼40、ミニ競馬▼30、ダイス▲202。
「フェルと聞いた、あの二人の話は事実だったようね」
ムエルニに同意するようにあたしは頷いた。
「上がっているのは上がっているのだけど、前と比べたらそこまでしか伸びないって感じだね」
「台の数と注目度からしてこんなものかしら。ただ、流石に1回目と違って2回目は思ったよりも伸びないわね」
「……それでもフェルの作戦……成功」
あたしの提案は実際にダイスを賭け、他の数値が強制的に下がるはずなのでそこに残りを投資して、上がれば回収して増やせるというもの。
情報が嘘だったときの全額はリスクがありすぎるので、8000の半分4000ずつ賭けるものとなった。前回の下がり幅からしてお客さんは間違いなく他に向き、その際にあたしはダイス投資。残り4000をミランとムエルニがどの台かを投資。ユエルはダイス以外の下がり幅の監視と分担した。
結果的には両方ともに底値には成功したと言える。
「上手く回収できて資金が12000を超えましたね」とユエルは喜んだ。
「うん、ただバカラに賭けた残り4000は、まだ上がってないから置いといたほうがいいかも」
「だけどこれで、2チームが独占したんじゃないっすか?」
「そうだね。全額ダイスに賭けられなかった分は間違いなく差が開くと思う」
あたしは懸念点がここに集約する形で言った。
下手をすれば、これで資金が5000以上差をつけられてるかもしれないからだ。
「となると、残りのイベントきたらその分賭けるしかないっすね。ただ、あと何回イベントあるのか」
「残りの球は今回で半分を切ったわけだし、今のペースならあと2回程度かしらね」
「その2回はどの台にイベントが来るか分かればいいに、わからないっすね」
ユエルは椅子にもたれかかり、前の足二つを浮かせバランスよくとっている。
その光景を見て危なくもあり、上手く器用なことをするなぁと、あたしは関心した。
「絶対とは言えないけど、1台は分かるわよ?」とムエルニは言い放つと、間髪入れずに「……あいつの考えてることならわかる」とミランが言った。
「ええ、二人とも本当っすか!?」
ユエルは思わず聞き返した。
あたしは黙って頷き、ムエルニの次の言葉を待った。
「考えてみなさい。1.5倍放出なんて、これこそより客の多くは賭けに興じるの」
「見てる層以外にも多くの参加者となると、スロット辺りっすか?」
「普通はね。ただあいつはこうも言ってた『準備不足』と。あくまで憶測ではあるのだけど、人が対応できる物だけだと思うのよね」
「人が対応?」
「例えばスロットや競馬とかだと、ディーラー不要で成り立つ台だし。逆に、ポーカーのようにディーラーが必要な台なら、この短時間で全卓対応させるのはルクスでもできないと思うの」
「確かにそれなら絞ることができるっすね」
この情報だけで他チームよりもかなり有利になるのは間違いないはず。
「時間になるまで稼ごう」
あたしがそう意気込むと、皆もコクりと頷いた。
それから大きく稼ぐことはせず、バカラの投資資金は残しつつ堅調に稼いでいき19000を越し20000台に達しようとしている。
ただ球が1つ減るたびあたし達は、ダイスの使用議論に入った。
結論から言えば、まだ使わないが、ミランが提言したある現実的な可能性“イベント開始前に事前に特定以外の台の視線が逸れて注目度が減る”と。
否定する材料もなくあたし達は納得した。
「残り球の数は3つしかないっすよ?」
「そうね。そろそろ無視できない状況だろうし、どうするか述べましょう」
あたし達は頷く。
「まず、私は使うべきだと判断するわ。ランダムでもライバルの資金を確認しないと私たちとの差がわからない以上。10000以上差が離れていたら、絶望的と言うこと」
「あたしもムエルニの意見には賛成。正直イチかバチかに賭けるしかなくなってくると思う」
「ありがとうフェル。そして市場情報が出たとしても次のイベント台がなにか分かれば、次に手を打てる。それにそのあとにもミランが言った注目度が減るって言うのにも余裕をもっていける」
「……私もムエルニさんの意見に全面同意」
「もしまた相手が談合とかして、情報共有していたらどうするんすか?」
「それはもう私たちに立ち向かうすべはないわね。完全に相手の勝利よ。それであとはあなただけよユエル」
ユエルは首を横に振る。
「反対意見だしても3対1なんて無理っすよ。自分は納得してないけど…皆を信じるしかないっすね」
全員の合意を得て、ムエルニは情報ダイスを押した。
ダイスは転がり、市場情報、ライバル情報の二種類が転がっていく。
勢いは次第になくなると、ライバル情報へと表示された。
「これで敵の資金がどれだけあるか分かるわね」
ベルマン、マイリ:5216、メリン:3013、ヒュール、ゲイン、パンプ:17129、ムエルニ、ミラン、ユエル、フェル:19111、リリック:10301。サウル、ヘムス:26739。
時間を表す球とは別の12つの円盤の球が画面端に現れた。
球の一つが最初は通常なのだが、次第に小さくなり消えた。
ギャンブル終了する球と違って、新しくでたほうは時間制限が短い。
「あたしたちは……2位」
「……七千以上の差」
「結構マズイっすね」
「ええ、マズイわね。思ってた以上に突き放されてる」
一万とはいかないがそれだけ近い差──それは一回のイベントで覆すにはあまりにも大きかった。
時間制限が過ぎ、時計は消えたと同時にライバル情報も消え、残るは画面には市場の数値。
あたし達は現実を突き付けられて暗雲が立ち込めていた。
そんな中、追い詰めるようにゴーレムから不安の声が聞こえた。
『次のイベントをスロットを開始するぞ』
え?




