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純白のギャンブラー~王都カジノの少女賭博録~  作者: レブラン
4章

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53話 談合

 あれからイベントは終了し、特出する数値もなく市場相場も落ち着いた。

 3つ、4つ目と球は消費され、イベント後もあたし達は順当に資金を稼ぐことには成功していた。


「まだ終わらないんっすかね~」


 そう言いながら、ユエルは床に寝ころがりながらパンを貪っていた。

 余裕の表れなのか、だらしなく緊迫感もない様子。


「ユエル、あんたさっきからそればっか言ってるわね」

「だってもうこの選定戦は余裕じゃないっすか?」


 現在の余剰資金は9310。

 もうじき10000台の大台も手が届く位置にいた。


「まあ確かに、今の所上位には入ってそうでは、ぁ……」


 ムエルニの言葉が詰まるように途切れ、次の瞬間、ゴーレムの腕を掴んだ。


「ダリオ。私ちょっと席を外したいの」

『どうした。気分でも悪くなったか?』

「いえ、そうではありませんの。ただ席を外したいですの」

『なに言ってんだ?』

「察しが悪いですわね! せ、き、を、は、ず、し、た、い、の!」

「あ~、トイレっすか?」

『ああ、なるほど。お前もか(・・・・)、ちょっと待ってろそっちにゴーレム向かわせる。出るときは来たゴーレムの腕を掴みながら出るんだぞ』


 ムエルニは何もかも諦めたようにユエルを睨む。

 顔は紅潮してその目には涙を浮かべ、とても気恥ずかしそうにしていた。


「そうだあたしもついて行っていい?」

「私は子供じゃありませんの!」

「そうじゃなくてあたしも行きたいの……」

「ま、まあそこまで言うなら一緒に連れて行ってあげてもいいわよ」


 実際、近くなってきたし行きたいのは本当だしね。

 ゴーレムがやってくるとあたしとムエルニは両手を掴み、ドームの外にでた。

 外部にでたからか操作画面はなくなり、視界はここに来た会場が映る。


「なんだフェルもか」

「ラングレーさん」

「あなたねぇ、乙女の言うことなんですからちょっとは察しなさいよ!」


 ムエルニは顔を真っ赤にして、ダリオさんの足を子供のように力いっぱい踏みつけた。


「トイレは分かるよな?」

「ええ、前に来ましたので」

「そうか、まあ音には十分気を付けて行けよ」

「……?」


 あたし達は廊下に出て、進んでいく。

 地下と思えるのか、薄暗さを感じさせた。


「そこの曲がり角の近くが到着なの」


 曲がり角を曲がり、扉が二つ見えた。トイレだ。

 近づくとムエルニはピタリと足を止めた。

 あたしはどうしたのか聞こうとすると、ムエルニは口にひとさし指をあて、黙らせる。

 なんで足を止めたんだろ?

 あたしに耳打ちするようにムエルニは囁いた。


「そこの曲がり角の近くに誰かいるわね。足音立てずに近づいてみましょう」

「うん」


 あたし達は声のする方向へと向かい、曲がり角の前についた。

 男性二人組と思わしき声で会話していた。


「それで、どうだった?」

「確かな情報だよ」

「早く教えろ」

「そんなに慌てるなって、今6チーム残っているだろ? まずはベルマンは2132、メリンは7103、俺らは10352、ムエルニは9310、リリックは5009」

「俺らが10531だから1位か」


 これってもしかして、今参加してる参加者の資金額!?

 どうしてこんな所で伝えてるんだろ。

「談合ね」ムエルニは彼らに聞こえないように小さく呟くとあたしも「談合?」と返した。


「こうして裏で情報を共有して決めていくの」

「それって不正じゃ……ラングレーさんは」

「あいつはなにも言ってない……いや言っていた。気づいていたのねこのギャンブルの穴に」

「え?」

「考えてみなさい。どうしてさっきあいつは“音に注意”とか“お前たちもか”とか言ったのか。どうして予見をして監視者をつれていかなかったのか」


 気にはしてなかったけど確かに言っていたのを思い出した。


「それにここは監視の目が届いていないなら、参加者同士が事前に決まり事をして時間になれば出ればいい」

「急にあの場で参加者同士で組むなんて」

「出来るわよ。あたしたちみたいに知り合い同士なら。てか実際これをしても良かったかもしれないわね……なーんてね」


 多分思いついても彼女の性格じゃ絶対しないだろうなと予想はできる。

 ミランさんも生真面目だろうし、ユエルは……やりそう。

 あたし達は再度彼らの会話に集中する。


「一番注目株のムエルニチームが3位なのはありがたいな。このまま突き放せる可能性もあるか」

「ああ、それに次のイベントがダイスだってのに判明したわけだしな」


 次のイベントがダイス!?

 ムエルニは口角を上げ、嬉しそうな笑みを見せる。


「あたしたち運が良いわね。情報ダイスを使わないで情報を得られるなんて。これで有利に走れる」


 確かに運が良かった。

 たまたまトイレに立ち会っただけでこんな貴重な情報が手に入るなんて。


「そうか、もう戻らないと怪しまれるし、それじゃあ忘れんなよ?」

「ああ、終わったら渡すから」


 マズイ、こっちに着ちゃう……足音がどんどん近づくのが聞こえてくる。

 慌ててるあたしを、ムエルニは腕を引っ張りトイレの中に入った。

 ドアをゆっくりと音を立てずに閉め、彼らが行くのを待つ。

 足音は無くなると、あたしは安堵したように胸を撫でおろした。


「はぁ……ビックリした」

「これで彼らよりあたしたちが有利に立てたわね」

「それにしても、こんなことあるんだね」

「ええ、とりあえず戻ったら早速あの二人にも知らせるわよ」

「うん!」


 あたしがドアを開けようとした矢先、ムエルニに止められた。


「どうしたの?」

「あんたも我慢してたんじゃないの?」

「あっ……」


 すっかり忘れてた。

 あたし達は会場に戻ると、発見したダリオさんがやってくる。


「長いトイレお疲れ様」

「ふん、知っててあえて放置してたわね」

「さあなんだかね。俺はここのギャンブルを仕切ってるから。管轄外で勝手にやることは知らないさ」

「まあ良いわ。とっても有意義に出来たのだから」

「そうか。なら、健闘を祈ってるよ」


 あたしとムエルニはゴーレムの両手を掴み、ドームの中に入ってく。

 中に入るとすぐさま、ユエルとミランがゴーレムの両手を掴み出て行った。


「彼女らが戻ってきたら話しましょ」

「そうだね」


 しばらくしてすっきりとした顔をして戻ってくるユエルとミラン。

 あたしとムエルニは談合の事の経緯を話した。


「なるほど、談合にイベントはダイスであたしたちは3位っすか」

「……情報が真実で、確実な証拠はあるのか?」

「確証はないけど、彼らが私たちの資金を的中させてのは間違いなく事実ね」

「……もしそれが嘘だったら」

「ないとは言えないわね。実はイベントは嘘で片方を騙して資金を落とすとかもありえる」

「どっちもありえそうなんすよね」


 ユエルの意見に完全に同意だ。

 ただ、この情報でなにもせずにするってのはまずい気がする。

 ムエルニとミランがあたしにどうするかを聞こうとしている。


「確かに二人の意見はどっちも正しいと思う。それならいっその事、両方やっちゃうのはどう?」

「両方をやるってどういうことよ」


 あたしは作戦を三人に伝えた。

 そしてダリオさんからイベント告知の宣言をした。


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