幕間 あなたのいない世界は…[前]
「…………あなたという方は………"里帰り"はどうしたのですか?」
「うん、ごめんね。もう少しだけ………大丈夫。
あの娘は立派にやっていた。―――たぶん………身軽になったからかな」
「………」
「………………はは。根無し草のようだった僕も、少しは根を張れるようになったよね?」
「………シャヴさま」
「ちょっと…………疲れちゃったかな。いつもみたいに、甘やかして? ロゼ」
「…………はい、シャヴさま」
シャーヴァイス・ド・ルラーナは、底知れない鬼才だ。
シャーヴァイス・ド・ルラーナは、紙一重の狂人だ。
「ふふ………失礼しちゃうねぇ」
昔、彼は自らの幸せと引き換えに罪を犯した。
やってはならぬことを。
――だから二度目の○○をした。
「……………」
償え。
「……………」
贖え。
「……………」
責任を――――!
「――――煩いよ」
――――。
「僕ほど徳高き人はいない……………ふふふ。二枚舌も時を選べ、弁えろよ」
罪人が―――!
「君らは勘違いしている。僕らは何も、自殺しようってわけじゃない。らしく間違えてこそ、生きた甲斐があるってものだ」
おまえは間違えてばかりだ!
「―――黙って見てろ。
もう直ぐフィナーレだ、幕が上がる。負けても死んでも、これが最後と決めた。僕はあくまで観客だから」
――――何もできないのさ。
………さて。あの子たちにアルルの伝言を、伝えてあげなくてはね。




