現実を知らされた父親 動き出す役者
「理由を知っているのか」
斎藤は頷いた。
「少し前にUPされた、あれが原因だ」
その男は制作のトップだと説明され、雄一郎は無言になった。
「相川英二がショートドラマをUPした」
俳優、役者だと言われて雄一郎は思い出した。
「再生数、コメントも凄い数だ」
気にっているんだよと斎藤は続けた。
俳優、動画サイト、ショートドラマ、普段は気にしたことのないワードが出てくる。
「山口はテレビ局の人間だ。あれを見て焦ったんだろう」
現役の俳優がドラマを撮り、動画サイトにUPした。
珍しいことではない、今は俳優、芸人だってやっていることだ。
自宅に戻った雄一郎は教えてもらった動画を見た。
数分間のショートドラマ。
相川英二は若くない、だが実績、実力がある。
相手役は外国人の若い女性。
会話のやり取り、台詞も少ない、少しダークで背徳的な空気感を漂わせる内容だ。
だが、再生数とコメントを見て、雄一郎は驚いた。
メールでは知りたい事が分からないのではないかと思ってしまった。
「これ、どういうことだ」
自分の疑問に斎藤なら答えてくれると思った。
「そのままだ。再生数が半端じゃない。しかも収益とかないんだよ。少し前に投げ銭のシステムがあったが。設定してないだろう」
斎藤の言葉に雄一郎は確認した。
「相川はベテランの俳優だから無理ない、だが、相手は日本の子役と比べてどうだ」
気になる言い方だ。
「外国人だから大人っぽく見えるが」
「十六だ」
言われて、息子のカイトと同じ歳ということに驚いた。
「彼女は舞台出なんだ、比べられたんだろうなーー制作の山口は、これを見て焦ったんじゃないかって、噂になっている」
雄一郎は言葉が出ない。
「山口は引き込もうとしてるみたいだが。俺からすれば馬鹿だ」
斎藤は無理だと思っている?何故だ。
「引き込むのが無理ってことか」
「十六、未成年だぞ」
呆れたような声だ。
「日本に住んでいるなら、だが、そうじゃない」
海外なのか、雄一郎は驚いた。
「それにだ、ショートドラマの感想がリアルに読むことができると彼女はコメントに書いている。日本の芸能界TVやドラマに彼女が魅力を感じる出たいと思っているのか、疑問に思うよ」
「このドラマ原作がある。東條愛理という同人作家だ、元々短編小説だが。相川二郎が彼女に直接コンタクトをとってドラマにしたいと言ったらしい」
同人作家、商業ではないのか。
「コアなファンもいて彼女の同人誌を二次創作でマンガや小説にしているファンもいるんだよ」
「相川英二が直接、連絡をとったのか」
普通ならありえないよなと斎藤の笑い声が聞こえる。
「作者の東條愛理は同人歴は長い。自分は商業作家ではない。好きなものを書きたい、商業作家みたいなこだわりはない。だから相川の申し出に好きに使ってドラマの改変でもしてくれと」
「じゃあ契約、金のやりとりとか」
「ない、儲けも利益もない。だから制作の山口は取り込もうとしているんだろうな」
自分の息子は芸能界で子役という立場だ。
雄一郎は動画サイトのドラマを再び見返した。
息子と同じ年頃でありながら違いすぎる。
障害があるのに役者として。
「彼女は日本のTVとか興味はないのか」
口から出た疑問に斎藤に反対に聞かれてしまった。
本気で言ってるのかと。
「立っている場所、見ているものが違うんだよ」
日本の子役の比べるな、そう言われた気がした。
東條愛理は自宅のポストを見て驚いた。
茶封筒が幾つか入っている、ホンダと分かったが注文はしていない。
だが中を見て驚いた、同人誌だ。
「東條さんの同人誌を見て本が作りたくなりました」
「ショートドラマの原作、あれを見て触発されました」
「相川さんと彼女のイメージです」
小説だけではない、イラスト、マンガもある。
動画サイトのショートドラマを観て描いた、本を作った。
東條愛理は驚いた。
その日、真田 蓮はスマホの通知に驚いた。
矢吹だ、少し前に一緒にTVに出たが、あれから、かなりたっている。
その夜、真田は矢吹に電話をかけた。
メールではない声が聞きたいと思ったからだ。
「突然すみません、真田さん」
自分の方が若いのに、さん付けする、礼儀正しい人だなと真田は思ってしまった。
「実は聞きたい事があって電話したんです」
「なんです、改まって」
「俳優の相川英二という俳優さんです。今、動画サイトでショートドラマに手でいて凄い事になっているんですが。事務所は許可しているんですか」
真田はすぐには返事ができなかった。
だが、ああそうかと思った。
若くはないベテラン俳優だ、ちゃんとしたプロダクション、事務所に入っていいるのではないか。
最近俳優役者は個人で事務所を立ち上げたり、移籍という話も聞ク。
知らない間に事務所を変わったという話も珍しくない。
「相川さんは事務所もプロダクションにも入っていないんです」
矢吹が息を飲むのがわかった。
「ドラマを観たんですか。凄いでしょう」
「もしかしたら、相川さん、若い頃は事務所とか、入っていたのかもしれません」
「そうなんですか」
「矢吹さん、あの動画のコメントを全部、読んだら分かると思うんですが、東條愛理って知ってますか。同人作家です」
「同人?コミケとかに出ている?小説やマンガを書いている作家さんですか」
はいと真田は頷いた。
「彼女が書いたオリジナルの小説が元です。相川さんが直接、東條さんに電話してドラマにしたいって声を書けたらしいんです。もし、これが商業作家なら版権、契約、色々、手続きもあったと思うんです。口約束です」
矢吹は驚いた。
「相川さん、僕はフリーだから契約とか手続きは面倒だっていってるんです」
矢吹は相川の顔を思い出した、落ち着いた高齢の男性の顔゛。
「東條という作家も自分は商業作家ではない。好きに改変、オリジナル要素を入れていれてくれて構わないって言ってるみたいです」
矢吹は息を呑んた。
「日曜日、暇ですか。仕事の予定が入ってますか」
突然、何を言い出すのかと矢吹は驚いた。
「実は相川さんから同人誌の即売会に誘われているんです。東條愛理の書いた小説を元に二次創作のマンガや小説を書いている作家さんもいて、その本を買いに行きたいから、ついてきてほしいって」
「相川さんが、即売会に行くんですか」
芸能人やアイドルがコミケ、即売会に参加することは、最近では珍しいことではない。
自分だけではないと真田は言葉を続けた。
「丸川さんも一緒です。実は相川さん、気になることをいうんです」
「なんです」
「同人誌って本だけじゃない、色々なものを売っているんだって」
矢吹はTVやニュースで話題になっているオタクや同人の話を思い出した。
コスプレだけではない、商業では売っていないものまで売っていることを思い出した。
「映像クラブ映画やドラマを自主制作で作っている人もいるんだねって」
真田の言葉が続かない、だが矢吹もだ。
「相川さんのショートドラマ、スマホで撮っているんです。カップ麺みたいなものだって、本人は笑っているんです」
カップ麺?意味が分からない。
「時間をかけずに、あっという間に撮れるという意味じゃないでしょうか」
真田は言葉を切った。
そういうことか、矢吹の中で合点がいく。、
「相川さん、二本目を撮るつもりだと思います。でも、今度はスマホではなくて……」
自分の想像ですと相川は言葉を続ける。
「同人の即売会、自主制作で映画やドラマを作っている人たちもいます。もしかしたら、その場で話を……」
真田の声は、どこか現実味がない。
「聞いてもいいですか、東條愛理って同人作家としては有名、いや、売れているんですか」
話が変わったと真田は思った。
「僕も気になりました。それで調べてみたんです。ファンはいるんです」
ファンはいる、その言葉が気になった。
「同人活動は長いんです。二十年以上、でも、それが有名、売れている作家だといえますか」
反対に聞かれて矢吹は返事ができない。
大手で人気のある同人作家だと思っていた、違うのか?。
「真田さん、日曜日、行きます」
自然と口から出ていた言葉に矢吹は自分でも驚いていた。




