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ごめんね異世界遊ばせて?  作者: 雲川ぬー
プロローグ:アクアベール家の子供たち

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13/21

はい、あげる

「やっほー、お兄ちゃん! ミスト姉もお疲れ~。ここまで来るの、ちょーっと遅かったんじゃない?」


 マリンが軽い調子で手を振ってきた。

 散々からかったくせに、屈託なく笑うんだから許すしかなくなる。


 隣に座る長女ティアは、水色のポニーテールを揺らしながら、紫色の瞳でジッと俺を見つめている。

 相変わらず神々しいが、何を考えているか読めない。

 ティアは立ち上がり、ドレスの裾を持ち上げて一礼した。


「ソウタ、初めまして。アクアベール家当主の名代ティア。パパが現代日本(あっち)に行っちゃったから、今は私が当主代行。私の言うことは絶対」


 無表情のまま、胸を張っている。

 顔と違って、面白いことを言う姉だ。


「ティア姉さん、許可証ありがとうございます。でも、『私の言うことは絶対』は取り消して貰わないと」


 俺は手の平を上に向けてティアに向けた。


「なに?」


「例のカード渡してくれ。父さんと母さんの許可も取った。お前たち三姉妹のブラックカードを取り上げて、散財を止めてくれって。渡せないなら力尽くで……」


「はい、あげる」


 俺とティアの間で沈黙が長く続いた。

 そうだよな、ミストもマリンも俺に返すまで必死に抵抗した。ティアだけ抵抗しない訳が……?


「……今、なんて言った?」


「あげる。言った」


 ティアは、すぐにブラックカードを手渡した。


「……いいのか?」


「ソウタ、渡してくれって言った。逆に、なんでソウタ聞く?」


 アクアベール家の長女は、小首を傾げてポニーテールを揺らしていた。


「本当に? いやマリンみたいに偽物って可能性も……」


 爪で引っ掻いてみたが、少しも傷付かない。安っぽい塗装も剥がれなかった。

 本物だ、間違いない。


「私、物欲ない。買うのは本当に必要な時か、マリンに頼まれた時だけ。ドレスと宝石はレンタル。会食と舞踏会で必要な時だけ使ってる。部屋散らかるからモノ買いたくない」


 汚い部屋を想像したのだろう。ティアの眉間に皺が寄っていた。


「あ、私もマリンちゃんに勧められた時だけかも。魔道具は戦闘に必要なものだけしか買ってない。余計なもの買ってたら、使いこなせないからね。食べ物も美味しい方が良いけど、たくさん食べられて栄養取れれば正直どうでもいい」


 マリンは小学生男子みたいなことを言っている。

『栄養取れれば』があったから、もはや何も言うまい。


(けど、聞いてた話と違うな)


 俺は何を勘違いしていた?


 異世界に来てからの事を思い返す。


 確かにまだティアとミストの部屋は見ていない。

 物欲まみれな三姉妹を想像していたが、この二人は自分に何が必要で何が不要か分かっている気がする。ティアはちょっと天然混じってる気がするし、ミストはアホの子だ。

 誰かに騙されて買っているような……良い様に使われている気さえする。

 そう言えば、最近ミストが誰かに騙されていたな。結構身近な人間だったと思うが……。


 俺は心当たりのある人物をジッと見つめた。

 その相手は、俺の頭の中が読めたらしく悪い笑みを浮かべている。


「やっぱりバレちゃった★」


 アクアベール家の末っ子にして屈指のトラブルメーカー。

 そう、三女マリンである。

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