第8話 「勉強しよう!」
話がまとまったところで、俺はハッとした
「そうだ!」
三人のギルド長が話を詰めている時に急に声を上げたもんだから、注目が集まってしまう
「あ、いや……。お話がまとまりかけているところ恐縮なんですが、何枚かだけでも、今日買い取ってもらうことってできませんかね?」
「は?なんで?」
そう言って突っかかってきたのはカイエンだった
「申し上げにくいんですが……、実は所持金が寂しくてですね……。それと欲しいものもありまして」
俺がそう言うと、三人のギルド長は顔を見合わせ、大声で笑い出す
「笑い事じゃないんですよ!」
「ああ、いや。申し訳ありませんね。悪意はないんです。それで欲しいものとは?」
フォレスが聞いてきたので、これ幸いと収納スキルを付与した鞄とVITが合計10以上になるように補正がついた防具、それと少しの生活費を要求する
「ふむー?ススム君が今持ってる鞄は普通のなのかね?」
マリリがそう聞いてきたので俺は頷き返す
「ならば、今日のお礼も兼ねてその鞄に収納のスキルを『付呪』してあげようではないかねー」
「え!?そんなことができるんです!?」
「あはは。本当に君の知識はチグハグだなあ。答えは『できる』だ。錬金術ギルドでは、そういった効果を持つ巻物も作成している。あとで一緒に行ってくれればその場で付呪してあげるよ」
「ええ、それはもちろんです!」
「では、防具の方は私の方で手配いたしましょう。そうですね。その条件ならVITに補正のついた上下の服なんてのはいかがですかな?補正を上下の防具に分散させれば、その分安く済みますし」
フォレスの提案に俺は乗る
「よろしくお願いいたします」
ペコリと頭を下げた
「じゃあ、とりあえず今日は3枚分買い取ることにして、精算しちまおう。マリリ。何が良いか選べ。セリーヌ、そういうことだ」
カイエンがそう言うとセリーヌは笑顔でペコリと頭を下げる
マリリは早速、3枚の薬草を選び始めた
「ふふーん♪ 何が良いかなあ? 状態は文句ないし、後は種類だよなあ……」と、鼻歌交じりに薬草選びに没頭し始める
そうして選ばれた3枚の薬草をセリーヌが冒険者ギルドとして正式に受け取り、俺が受け取る薬草代から、鞄への付呪代と上下の防具代を差し引いた分が手渡された
すると、想定外のことが起きる
なんと『システムメニュー』がいきなり起動したのだ
『クエスト【薬草の納品】クリア』
獲得経験値5
俺はドッキーん!と心臓が口から出そうになるが、あえてそこでは何も語らずありがたく報酬金だけ受け取りやり過ごした
どうやら俺のスキルである『ハックアンドスラッシュ』は、冒険者ギルドの依頼を『クエスト』と認識しているらしい。そして、それを完了するとクエスト報酬として経験値を獲得できるようだ
ただ気になったのは依頼自体は3枚の納品なので別々の依頼として扱われるはずの薬草を三枚納品したのに一回しかクエスト報酬が発生しなかったということだ
今後の納品でどうなるかを再度検証する必要がある
「ススムさん。初の依頼お疲れ様でした。くれぐれも今後は『色々と』気を付けてくださいね」
そういうセリーヌの笑顔が怖い
「は、はひ……」
俺は気圧され、頷くことしかできなかった
すると背後から声が掛かる
「ススムさん。そちらが終わりましたら行きましょうか?」
「あ、はい!行きます!」
フォレスの店にちょうど希望の品があるということで、俺はそれを受け取りに行くことになった。その間にマリリが俺の収納鞄に付呪を施してくれるらしい
そうして夜、無事にVIT補正の付いた上下の服と、スキル『収納(小)』が付与されマジックバッグへと変化した鞄を手に入れた俺は、ベッドの上でニヤニヤしていた
俺はいそいそと服を着替え、『ステータス』を確認する。無事VITにも10の補正がついたことを確認し、問題の短剣を取り出す
「ふーーー。行くぞ……」
心の中で銅の短剣をメインウェポンに装備すると念じると、きちんとそのとおりに装備され、『ステータス』を確認すると、無事に相殺できていた
「よっし!!」
こうして俺は世間では『呪われた』と忌避されている装備を無事に装備することができたのだった
俺は昨日の戦闘や採取を通して、まだこの世界のことを知る必要があると再認識した。
しばらくの生活費にも困らないことから翌日以降、数日にわたり書庫に籠り勉学に励むこととした
特に気になったのは最終的に溶けて指輪だけ残ったホーンラビットと、最後まで肉体が残り続けたオークの違いだった
だが、これも一冊の書物に出会い、この世界の常識を認識させられることとなる。
それは『魔素』というものについて書かれた書物だった
この世界には『魔素』がいたるところに存在しており、あらゆる物に影響を与えている
当然、昨日戦ったホーンラビットとオークについても書かれていた
獣が魔素の影響を受け、『魔物』や『魔獣』と呼ばれる存在へ変容すること
死した『魔物』は魔素となって全て大地に還る場合もあれば、その魔素が変容し、戦利品と呼ばれる『各種アイテム』になるとも書いてあった
またオークなどの一部の種族は生まれながらに魔物であり、そういった種族の場合は死んでも肉体がそのまま残るということだった
「はー……。なるほど。こういう理屈であれば確かにゲームなどでも小さい魔物が体積以上の装備品を落とすというのにも納得だわ……。まあ現実なんだが」
などと戦利品の真理を知り、感動すら覚えていた
そして、ある一文を発見したことで俺の心臓がときめく
それは『ダンジョン』の存在だった
現在確認されているダンジョンは合計で6か所であり、全てが国や都市の管理下に置かれ広く一般に公開されているとのことだった
「な、なんだってーーー!?」
正直、ダンジョンがあるなら冒険者よりもダンジョン潜りをして装備品をかき集めたいかもしれん……
更に驚いたことにその内の一つは現在滞在しているミストヴェイルの管理下にあるということが記されている
「ぐはー!!」
俺の心は完全に、ダンジョンという名の矢に射抜かれてしまった
こうしちゃいられない!
俺はそう思い、書庫内を綺麗に整えてから、一階に降り受付でお茶を飲んでいたセリーヌに声をかける
「休憩中失礼します、セリーヌさん」
「だめです」
まだ何も言ってないのに×マークが示される
「え?まだ何も言ってないんですが……」
「ススムさんの考えることはろくでもないのでだめです」
またしても×マークが示され、俺はぐぬぬ!となる
俺は諦めずに質問を強行することにした
「ミストヴェイルのダンジョンに入ってみたいんですが、どうやったら入れますか?」
そう尋ねた時だった
セリーヌがニコっと笑う
「あら?ススムさん。今度はダンジョンにご興味があるんですか?ですが残念ですがそれは本当にだめですね」
「えっ!?なんでです?」
「ダンジョンに潜ることが出来るのは『個人ならば四角銅級以上』、『パーティならば銅級以上』の方たちしか入れないからです。ススムさん……、『鉄級』ですもんね?」
そういってニッコニコのご満悦になるセリーヌ
俺はガックシとその場で膝をついてこの世界のルールを恨んだ
第8話 「勉強しよう!」用語の補足
付呪
錬金術ギルドが主に担っている特殊な技法。
道具や武器、防具類などに魔法効果を付与することができる。
マジックバッグ
スキル効果『収納』を付与された鞄類の総称。
見た目を遥かに超える収納力がある、一種の空間魔法。
ススムが今回入手したマジックバッグは効果が(小)となっているがそれでも三畳の部屋程度の空間を収納できる。
ダンジョン
現在の世界で6か所確認されている不思議な空間。
全てが国の管理下であり、更にダンジョン近郊にある大都市で厳密に管理されている。
ダンジョン内部の構造は様々であるが空間そのものに干渉しており、場所によっては室内のはずなのに、なぜか草原が広がっているフロアも存在する。
ダンジョンによってフロアの様子は固定されており、情報屋がそのダンジョンの情報を売買していることが多々ある。
魔素が非常に濃い場所となっており、植生にも異常が見られる。
出現するのは全て魔獣か魔物であり、通常のように生まれたり繁殖したりするのではなく、空間に突如として出現する。
フロアごとに出現する魔物や魔獣は決まっている模様。
ただしダンジョン内部では際限なく魔物や魔獣が湧き続けるため、冒険者が間引かなければいずれ内部に収まりきらなくなり、ダンジョン外にそれらが溢れ出す『ダンジョンブレイク』の可能性を秘めている。
幸いなことにダンジョン内で入手できる各種素材や装備品は需要があり高値で取引されているため、ダンジョンブレイクが起きるよりも早く冒険者によって討伐されている模様。
大昔に無制限にダンジョンを解放していた時期があったが、当然死傷者が跡を絶たず、結果現在の冒険者階級で、個人であれば『四角銅級』以上。パーティ単位であれば『銅級』以上という厳密なルールが加わり、これに例外は存在しない。
【第8話現在のステータス一覧表】
名前:ススム
ジョブ:魔法使い
年齢:二十歳
出身地:不明
種族:ヒューマン
レベル:3
残りSP:1
HP:4
MP:7
STR:3(+10-10)
VIT:3(+10-10)
AGI:4
MND:7
INT:11
LUK:1
初期スキル:言語理解、ハックアンドスラッシュ
所有スキル:ファイアボール(LV2)
現在の装備
メインウェポン:【呪】銅の短剣(STR-10、VIT-10)
オフハンド:なし
頭:なし
胴:上等な布の街着(上)(VIT+5)
腕:なし
脚:上等な布の街着(下)(VIT+5)
靴:皮の靴
首:なし
右指:一角兎の尻尾
左指:銀の指輪(STR+10)




