第7話 「五者面談」
STR+10の指輪!!
アンコモンだがこれは嬉しい!!
俺は早速貰った指輪をはめ、『ステータス』を眺めると、しっかりとSTRに+10の補正がかかっている
あとはVITを+10すれば、俺はあの『呪われた』と言われている銅の短剣を装備することができる
VIT補正の装備であれば、恐らく防具に付きやすいだろうと予測を立てる
「あ、そうだ」
ここで俺は今日の本来の目的をふと思い出す
「そうだよ。今日は採取に出たんだった」
予定外のことが起きすぎて俺はすっかりペースを崩されてしまっていた
俺は再び、セリーヌに声をかける
「セリーヌさん、あの……」
「はい?まだ何かあるんですか?」
すっかり警戒されまくっているが、これって俺のせいなのだろうか……
「実は今日、本来の目的だった薬草の納品を忘れていまして」
俺がそう言うと、セリーヌも朝、冒険者証を受け取ってから本来するはずだったことを思い出したようだ
「そういえばそうでしたね」
セリーヌは笑顔で答える
「薬草の買取はいつでも大歓迎ですよ」
表情から察するに、薬草類の採取は冒険者ギルドとしても歓迎されているようだ
「それで何が採れたんですか?見せていただいても?」
「ああ、はい。実はこれなんですが……」
背負っていた鞄をガバっと開き、中身をセリーヌに見せた瞬間だった
「……は?」と呟きながら、セリーヌは笑顔のまま固まる
「え?」
俺は状況を理解できずに困惑していると、セリーヌが俺から鞄を強奪し、再度中身を確認している
そしてやはり沈黙するセリーヌ
「……ススムさん。また先程の部屋に行きましょうか」
どうやら俺はやらかしたらしい
俺が先程の応接室に連行されると、すぐに話を聞いたであろうカイエンがすっ飛んできた
「またお前か!!」
「ひいぃ!すみません!」
なんで怒られているのかわからないが、とりあえず謝っておくに越したことはない
「で?セリーヌ。この鉄級が何を持ってきたって?」
カイエンがビシッと俺を指さしながら、鞄を持つセリーヌに問いただす
「今から見せますが、逃げないでくださいね」
「逃げるだぁ?」
セリーヌがカイエンに確認を取ると、鞄の中に入っている薬草類を取り出す
「ほお?薬草だな、って待て待て待て待て……!」
どんどん出てくる薬草に徐々にカイエンの表情が青ざめていく
「次、行きますよ?」
「次があるのかよ!!」
そうして別種の薬草を出す
そんなやり取りが何回か続き、終わる頃にはカイエンは白目を向いて燃え尽きていた
セリーヌも顔色を悪くしながら、取り出した薬草類を分別し、枚数を数えてメモを取っている
口から魂が出かかっているカイエンに向かい、セリーヌがカイエンに全力でビンタを叩き込み、メモ紙を押し付ける
「ギルマス。こちらが結果です。しっかり考えてくださいね」
顔を腫らしたカイエンがメモ紙を見て天井を見上げる
「どうしたらいいんだ、これ……」
今回、俺が持ち込んだ薬草類は次のとおりだ
スウィーレ草:HP回復効果(小)=14枚
ラナン芽草:解毒効果=8枚
クレアブルーム:MP回復効果(小)=12枚
ソルネ草:麻痺回復効果=7枚
エーデルロート草:HP回復効果(中)=6枚
「あ、あの……、これってそんなに多いんですか?」
二人の状況を見かねて俺が思わず聞く
「いいですか、ススムさん。今まで、冒険者になった初日に薬草を持ってきた人の最高記録は3枚です」
俺はセリーヌが発した言葉が上手く飲み込めず戸惑う
「えっ?さ、3枚?」
「そうです。これで異常さがおわかりになりましたか?」
もし本当にそれが事実ならば俺はまさしく桁違いの量を持ってきたことになる
「変なことを聞きますが、採りすぎるとなにか問題が……?例えば植生の関係とか?」
それを聞いたカイエンがバッと立ち上がりけたたましく吠える
「違うわ!大感謝だよ!!問題は金だよ!!」
金?依頼書には薬草類の採取に対する報酬金額が書いてなかった
「もしかして、ものすごく高価なんですか?」
「はい。その通りです。このままこれを全て冒険者ギルドが一度に買取れば、文字通りここは破綻します」
「ええええ!?」
そんな馬鹿な!?
ここにある分だって午前中に採れたもので、しかも、街からそんなに遠い場所で採れたわけではない
ただ、重要なのはこのままでは俺の収入が発生しないということだ
頑張って採った物があるのに、それはあんまりだ!!
俺が頭を抱えて天井を見上げた時、思いついた
「これって冒険者ギルドが買い取った後どうなりますか?どこかに卸すんですよね?」
販路を確認するとすぐにセリーヌから返答がある
「はい。冒険者ギルドが買い取った薬草は、商業ギルドへ卸されます。その後、錬金術ギルドが買取、ポーションへ加工します。完成したポーションは再び商業ギルドへ渡り、主に冒険者を始めとする必要な者たちの手に渡ります 」
「なるほど……。それなら手はあります」
それを聞いた二人は身を乗り出す
「な、なに!?」
「冒険者ギルドだけで解決しようとするから問題が起きるんです。最初から商業ギルドと錬金術ギルドを巻き込めば解決できますよ」
俺がそう言うと二人の行動は早かった
「セリーヌ!俺は錬金術ギルドに行ってくる!」
「では私は商業ギルドに!!」
そうして嵐のように二人は消えていき、しばらくすると、二人を伴って戻ってきた
カイエンは、小柄な眼鏡の女性を一人、小脇に抱えていた
「わー!この変態ー!!大切な実験中に拉致してくるだなんてー!!誰かー!!」
「うるせえ!ぎゃあぎゃあ騒ぐな!!」
そうしてぽいっと乱暴にカイエンはその女性を投げる
「ぎゃん!」と言いながら地面に落ちる女性
「だ、大丈夫ですか?」
俺は思わずその女性に声をかける
「大丈夫に見えるかい!?全く……って、なにこれ!?」
俺の心配を他所にその女性は机の上に置いてある俺の今日の収穫物に釘付けになる
すると、その直後にセリーヌが一人の見知った男性を伴ってやってきた
「はぁはぁ……。セリーヌさん。そんなに急がないでも……」
「あ、あれ?フォレスさん?」
セリーヌが連れてきた男性は、俺がこの街で服などを揃えた商店の店主、フォレスその人だった
「なんと。ススムさんではありませんか?いやはや、やはり縁がありましたな」
「本当ですね。あれ?でもセリーヌさんは商業ギルドの人を連れてくるのでは?」
俺がセリーヌに説明を求めるとフォレス自身から自己紹介がある
「ああ、それならば間違いはないですよ。私はこの街の商業ギルドで、ギルドマスターをさせていただいておりますので」
「えっ!?じゃあ、あのお店は?」
「あれは私の趣味の店です」
なんとフォレスは本業は商業ギルドマスターであり、あの訪れた店は趣味だという
どれだけ仕事人間なんだこの人!!
「それで私の呼ばれた理由ですが……おや?そちらに居るのはマリリさんでは?それに……その数々の品は!?」
フォレスも机の上の品々に気がついたようで一気に表情が変わる
フォレスに話しかけられ、ようやくこちらに向き直ったマリリが挨拶をしてくれる
「あ、失礼!私、この街の錬金術ギルドマスターのマリリと申します!!いやあ、それにしてもこれは夢か何かでしょうか!?」
なんと、カイエンが拉致してきたマリリは錬金術のギルドマスターだという
まさか二人揃って各ギルドのトップを連れてくるとは思ってもいなかった
「それで?ススム。二人を連れてきたがどうするんだ?」
カイエンが場を整え、セリーヌがお茶を入れたところで本題に入る
「はい。薬草類の市場の流れは、先ほどセリーヌさんから聞いて理解できました。それとこれは俺の考えなので間違っていたら訂正してほしいのですが、薬草類の価格のことです」
それに興味を示したのはフォレスだった
「ほう、お聞かせいただいても?」
「時価ということは、入荷量が安定していないということですよね?今日は入手できても明日はわからない。それに採れる量も不明。だから時価になる」
「正解です」
フォレスがニッコリと微笑み頷く
「それと、錬金術ギルドもこの時価という価格設定で割を食っているのではないですか?同じ薬草類でも仕入れる値段が変われば、予算も組みにくくなりますよね?」
「ぎっくー!そ、その通りです……」
マリリもビクッとした様子で同意する
「カイエンさん。冒険者ギルドとして薬草採取の依頼は出していますが、最終的に冒険者の多くがポーションとして購入している分、ポーションは安いほうが良いですよね?」
「そらそうだ。数が不安定になるから冒険者としても薬代は馬鹿にならん」
ここまでを聞き俺は一種の確認を得て提案をする
「でしたら、ギルド間の規約に抵触していないのでしたら、この薬草類、全てを商業ギルドが『保管』してくれませんか?」
俺の言葉にフォレスが頭をひねる
「『保管』……ですか?」
「はい。流れとしてはこうなります。俺の薬草類を全て商業ギルドに『保管』してもらい、都度必要な分を錬金術ギルドが買い付ける。毎月一定日にまとめて商業ギルドの取り分と冒険者ギルドの手数料を差し引いた分を、俺に支払う」
「ああ、冒険者ギルドの手数料は、俺が冒険者として活動した実績を記録してもらうために必要ですよね?」
「ふむ……」
フォレスは真剣な表情で考え、カイエンは疑問の表情を浮かべている
「なんだってそんな事になるんだ?」
「理由は『時価』にあります。先程の話から採取は冒険者ギルドだけでなく様々な人が行いそれで生計を立てている人がいるのではないかと考えました。だからこそ、一度に全てを商業ギルドが買い取って市場へ流せば、『市場価格の暴落』を招き、その人らの食い扶持を奪う結果に繋がる――そう考えました」
俺がここまで説明するとカイエンはハッとしたような表情を浮かべる
「だから『保管』か……!」
「はい。フォレスさんここまでは合っていますか?」
俺がフォレスに話を振るとフォレスは満面の笑みを浮かべている
「ええ、合っています」
「では、続けます。この話には、錬金術ギルドにとってももちろん得な面があります。」
マリリはその言葉に耳を傾ける
「聞きましょうか!」
「あはは……。錬金術ギルドとしては、この話を受けてもらえれば予算に余裕がある時に、必要な量だけ薬草類を買うことができます。今までそういったことはできなかったのでは?」
「ギクギクー!!そ、その通りです……」
「なので、この話は『市場価格を保てる商業ギルド』、『必要な分を調整できる錬金術ギルド』、そして『ポーションの安定供給を確保できる冒険者ギルド』、三者にとって損はないという話になるはずです。いかがでしょう?」
三人のギルド長はお互いの顔を見合わせ、決断した
「「「乗った!」」」
「決まりですね」
こうして俺の薬草類の取り扱いが無事に決まり、俺の収入が確保されることとなる
プレゼンテーションなんぞ久しぶりで緊張したー!!
第7話 「五者面談」用語の補足
薬草
この世界では、地球のような医療術は一般的ではなく、一般人から冒険者に至るまで、怪我や病気に対しては主に薬草またはポーション(*後述)によって治療を行う。
薬草類の治療効果は地球の漢方とは比べ物にならない回復力を持ち合わせている。これは大気中に含まれる魔素が関係している。種類も豊富であり各用途によって用いる薬草も異なる。
慢性的に需要に対し供給量が少なく、そのため取引価格も年々高騰している。その背景には住民たちの識字率の低さがあり、学ぶ機会も少ない。
その結果、薬草類に関する知識が身につかないという事情もある。
冒険者ギルドでも毎日、種類を問わず依頼として供給を促してはいるが、それよりも収入が良い依頼に人が流れ人員が確保できないでいる。
錬金術とポーション
錬金術はこの世界で独自に発展した学問である。主に薬学を中心に発展しており、薬草類を錬金術で濃縮し、その原液を薄めることでポーションとなる。
ポーション一つの回復量は、通常の薬草をそのまま使用した際と比べ、まさしく桁違いになる。
ただし、その分、原材料費や人件費といったコストがかかるため非常に高額であり、一部の特権階級か冒険者が主な使用者として挙げられる。
回復力に特化したポーションで効果値が非常に高いものは四肢の欠損を修復するとまで言われているがその値段は天井知らずであり、市場に出回ることもほぼ皆無である。
錬金術ギルド
錬金術ギルドは上記に記載したポーションを主に生産しているギルドである。
他にも、一部の魔法を封じた巻物なども作成している。
冒険者ギルドと同じように階級制で成り立っている。
商業ギルド
商いの中心に存在しているギルドで、街で店を構えるものは勿論、旅の商人やはたまた露天商まで、必ず商いを行うものはこのギルドに加盟する必要がある。
仲買から卸し、末端の販売まで手広く行っている。
このギルドに所属するということは商いを行う上では最高の後ろ盾になるが、その分規約違反を犯した際は文字通り命に関わりかねない罰則がある。
その内容は『今後生涯にわたり、商業ギルドが関わった商品を取り扱うことは勿論、売買をしてはならない。』といった内容になる。
この世界では直接的、間接的に商業ギルドが何かしらで関わっている以上、この罰則が発動した場合、山に引きこもり完全自給自足のような事をしない限り生きてはいけなくなる。
冒険者ギルドと同じように階級制で成り立っている。
人物紹介
フォレス
所属ギルド:商業ギルド
階級:ギルドマスター(金級商人)
性別:男性
種族:ヒューマン
年齢:46歳
特徴:商業ギルド『ミストヴェイル支部』ギルドマスター。個人の趣味で『旅路のランタン商店 』を経営。
二十代の美人な妻と四歳になる娘が一人いる妻子持ち。
人柄が良く、誰からも好かれる性格で、前任のギルドマスターが引退後、誰から推薦があるわけでもなく自然とそのポストに座っていたという経歴を持つ。
主に扱う商品は決めておらず、その時の需要を見極め、必要なものに全力で投資をするというスタイル。
また、縁を非常に大切にしている。
マリリ
所属ギルド:錬金術ギルド
階級:ギルドマスター(金級錬金術師)
性別:女性
種族:ヒューマン
年齢:31歳
特徴:錬金術師ギルド『ミストヴェイル支部』ギルドマスター。
若くして実力一本で今の座に座ることになった叩き上げ。
眼鏡と白衣がトレードマーク。
性格はどんくさいが、錬金術師としての腕と知識は超一級品。
人付き合いはあまり得意ではないが、その技術と知識で支部の錬金術師を引っ張っている。
現在最も『四角金級』に近い錬金術師として、他支部からも高く評価されている。
だが、美的意識が薄く化粧っ気もないことから男性人気は低い。しかし実は、非常に整った容姿をしている。
当の本人は恋愛よりも実験と研究を優先しており、結婚にはまるで興味を示していない。
【第7話現在のステータス一覧表】
名前:ススム
ジョブ:魔法使い
年齢:二十歳
出身地:不明
種族:ヒューマン
レベル:3
残りSP:1
HP:4
MP:7
STR:13(+10)
VIT:3
AGI:4
MND:7
INT:11
LUK:1
初期スキル:言語理解、ハックアンドスラッシュ
所有スキル:ファイアボール(LV2)
現在の装備
メインウェポン:なし
オフハンド:なし
頭:なし
胴:布の街着(上)
腕:なし
脚:布の街着(下)
靴:皮の靴
首:なし
右指:一角兎の尻尾
左指:銀の指輪




