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呪われた装備でハクスラ!  作者: 馬ノ やすら
第三章 「森の穴熊」
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第6話 「力の証明」

冒険者ギルドの窓口まで来ると、すぐにアッシェが受付嬢に声をかける

「セリーヌさん。ただいま戻りました」

「あら?アッシェさん。『森の穴熊』は、はぐれオーク討伐でしたよね?早かったですね」

「その件で非常に重要な報告がありまして。ご相談に乗っていただきたい」

アッシェがそう切り出すと後ろに隠れていた俺に、受付嬢のセリーヌが気づく


「そちらにいるのはススムさん?何かあったんですか?」

「あはは……」

俺は何も言えず、ただただ愛想笑いを浮かべるしかなかった

「わかりました。少々お待ちくださいね」

そう言い残しセリーヌは奥へと消え、しばらくすると俺達一行は二階の応接室に通される


森の穴熊の三人は、この部屋に通されたのが初めてらしく、キャッキャしている

俺は心臓がバクバクしていた

一体何を言われるやら……

すると部屋の外からどたどたと足音が聞こえてきてバタン!と勢いよくドアが開く

「全くこのクソ忙しい時に何だってんだ?」

そうして現れたのは無精髭を生やした中年だった

だが眼光は鋭い

「ああん?森の穴熊と……、誰だこいつ?」

その言葉を発した瞬間セリーヌがシュッとその男の尻を叩く

恐ろしく早い、スパンキング。俺でなかったら見逃しちゃうね

いや、まあ盛大に「パンッ!」と鳴っていたので皆わかったと思うが

「いってえ!全く。わかってるよ!」

そう言い、その無精髭の男は自己紹介を始めた


「俺はこの冒険者ギルド、ミストヴェイル支部のギルドマスター、カイエンだ。こっちにいるのは副ギルドマスターのセリーヌだ」

なんと、ただの受付嬢だと思っていた女性は副ギルドマスターだったようだ

「で?一体何の用だ?アッシェ!説明しろ!」

「はい」

そうしてアッシェは今回の始まりから顛末までを説明する

その内容を聞いたカイエンもセリーヌも、信じられないといった様子で俺に疑念の目を向ける

まあ、俺ですら信じられないんだからしょうがないよね


カイエンはしばらく考え込んだあと、ギロリと俺を睨む

「この鉄級がねえ。……わかった。場所を変える。今なら地下の訓練場は誰も使ってないな?」

「ええ、そのはずです」

セリーヌが問題ないとしたことで俺達はぞろぞろと移動を開始する


「おいおい!なんだ?ギルマスに副ギルマスだって?」

「あの一行は森の穴熊だよな?それにしてもあの後ろのは誰だ?」

などとその光景を見ていた冒険者達が珍妙なものを見るような目で俺達のことを見ていた


そして俺達が入った地下の階段前には『使用中につき進入禁止』の立札がたてられる


「これでいいな。まずははぐれオークの死骸を見せてもらおうか」

カイエンの合図で訓練場に丸焦げになったオークの死骸が収納鞄から出される


「……!こいつは……」

「すごい火力で燃えたようですね」

カイエンとセリーヌが思わず息を呑む


「正直、僕も昨日冒険者になりたてのススムさんがここまでの力を秘めているのは疑問でしかありませんでしたが、現にアリスが目撃しています」

アッシェが付け加えたことでその場にいた全員が俺に視線を注ぐ

ひー!そんな目で俺を見ないで!


「おい、新人。ススムと言ったな。その魔法、今ここで打てるか?」

そう言いながらカイエンは親指でぐいっと目標を示す

「ああ……。はい。MPも回復してますので。大丈夫です」

「じゃあやれ」

四の五の言わずにさっさと見せろといった雰囲気だったので俺は定位置に着き呪文を唱える


『紅蓮の理よ、我が掌へ集え――ファイアボール!』


「「!?」」

俺が呪文を唱えるとまず異変に気がついたのがカイエンとセリーヌだった

そうして俺の手に収束したマナは見事目標に命中し追加効果の炎上も発動した

轟々と燃え、終いには黒く燃え尽きた目標の姿に全員が目を丸くし驚く


「セリーヌ、気がついたか?」

「……はい」

カイエンの問いかけにセリーヌが一つ頷く


「こんな感じです」

俺がやり遂げたと額の汗を拭っているとカイエンが驚くべき発言をする

「わかった。ただし、この件は完全に俺が預かり箝口令を敷く。良いな?」

「か、箝口令ですか!?」

俺以上に驚いていたのは森の穴熊一行、特にアッシェだった

この言葉でアッシェは既になにか異常事態が起きていると察知したのだろう

すぐに表情を改め、「了解しました。」とだけ告げる


「それと死骸はこちらで預かり、素材剥ぎ取り班で素材を剥ぎ取らせる。今回の報酬金だが、それが終わり次第渡す」

「えー!?すぐじゃないの?」

カイエンの言葉にアリスがぶーたれていたがすぐにカイエンに睨まれ「はーい……」と肩を落としていた。

そしてその場は解散となったが手持ち無沙汰になった俺達はどうするかと話していた時、アッシェから昼飯に誘われた

「ご一緒したいのはやまやまなんだけど……あいにく手持ち金が……」

「ああ、それなら気にしなくて良い」

俺がおずおずと答えるとアッシェは笑顔で答える

「うちにはこいつがいるからな」

そう言い、アッシェはパックの肩をぽんと叩く

「へ?」

俺が理解できないでいるとパックは一つ頷くだけだった


どうやらパックは料理が得意だということで、いつも森の穴熊の料理番をしていたようで、今日の昼も元々、パックの料理にする予定だったとのこと

そういうことならばと俺は一緒にさせてもらうことにした


パックは料理が得意というだけあって、この世界で食べたどの料理よりも美味かった。感動で涙が出そうになる

「う、美味い……!!」

「そうだろう!良かったな、パック」

パックはニコリと笑い、俺におかわりをくれた


一方その頃、素材剥ぎ取り班では死骸の検分が行われている


「おいおい、嘘だろう」

解体され、バラされたオークの死骸を前にカイエンとセリーヌは言葉を失う

革や肉の分別はもとより骨の一部まで炭化が進んでいた

普通の『ファイアボール』では、よほど条件が揃わない限り、ここまで燃え尽きることは滅多にない

だが、実際に目の前の死骸はそうなっているし、自身の目で見た火球は明らかに大きく、さらに目標を炭になるまで燃やし尽くしていた


「ああ、そうだ。ギルマス。こんなものが出てきましたぜ」

「うん?指輪?まあいい、戦利品として回収する。ご苦労だった。それとこの死骸は焼却処分してくれ」

「了解」


カイエンとセリーヌはギルドマスター室に移動し話を共有する

「本当にあいつは昨日冒険者になったどころか、昨日初めて魔法を使ったというのか?」

「キャシディーさんが言うにはそれで間違いないです」

「だが、あの威力。正直キャシディー以上だろう?」

「私もそれに同意します。それに……」

セリーヌがそう言ったところでカイエンは頭を抱える


「ああ。なんであいつ『呪文を短縮した』にも関わらず魔法が成立しているんだ?」

魔法と呪文の条件は『絶対』である

そう信じていたからこそ、二人は悩んでいた

「過去に詠唱無しで魔法を使用したというのもいたらしいが……」

「あれ、私はおとぎ話だと思っていましたよ?」

「同意見だ。セリーヌ」

「わかっています。今後注意深く見ることにします」

「そうしろ」

昼飯後、ギルドに戻ると精算が終わったということで窓口に俺達が呼ばれる

そして結果は、報酬の全てを森の穴熊に渡すと言った内容だった

「えっ!?ですが!」

それに食って掛かったのは俺ではなくアッシェだった

「アッシェさん。これはギルマスの決定です。理解してください」

「ぐっ……!」

ギルマスの決定ということに対し言い返せなくなったアッシェ

恐らく絶対的な信頼を寄せているからこその反応だろうなあと俺は眺めていた


「それとこれを」

セリーヌから報酬金に加えて一つの指輪がアッシェに渡される

「解体時に出てきた戦利品ですのでこちらもお渡しします」

「そうですか……。あっ!」

アッシェは何か良いことを思いついたような表情で俺の顔を見る

「ススムさん。せめてこちらだけでも貰っていってください」

「え?でも、それは森の穴熊の物ですよね?」

俺がそう言うとアリスが「そーだ、そーだ!!」と言っているがパックに顔面を掴まれて反応が消えていた


「こうでもしなければ俺達の気が収まりませんから」

「はあ……。そういうことでしたらありがたく頂いておきます」

アッシェから指輪を手渡される


「では俺達はここで。また何かあったらご一緒しましょう」

「ええ。あとお昼ごちそうさまでした」

俺とアッシェは握手をして森の穴熊達と別れる


ゴソゴソと貰ったばかりの指輪を手に取り、その性能を確認した俺はぴょーんと飛び跳ねてしまう


【アンコモン:銀の指輪】

効果:STR+10

基礎値7

スキル効果:無し


「こ、これは……!!」

第6話 「力の証明」用語の補足


人物紹介


カイエン

ジョブ:片手剣士

性別:男性

種族:ヒューマン

年齢:三十八歳

個人冒険者ランク:金級

装備スタイル:片手剣、軽装備

特徴:冒険者ギルド「ミストヴェイル」支部ギルドマスター。

元々は主にソロで活動をしていた金級冒険者。

無精髭を生やした中年。いつも気だるそうにしており、「忙しい」が口癖であるが実はさして忙しくなく、どうサボろうかを常に画策している。

一匹狼に見えるが人望も厚く、前任のギルドマスターから推薦を受け、現在の職につく。

実力は折り紙付きで、頭も非常に切れ、二手、三手先を読み行動することを心がけている。


セリーヌ

ジョブ:モンク

性別:女性

種族:ヒューマン

年齢:ピーー歳

個人冒険者ランク:金級

元所属パーティ冒険者ランク:金級

装備スタイル:徒手格闘型籠手、軽装備

特徴:冒険者ギルド「ミストヴェイル」支部副ギルドマスター兼受付。

元々はとあるパーティで活動をしていた金級冒険者。

身体強化の魔法を掛け徒手空拳で戦場を縦横無尽に駆けるモンクであった。

返り血を浴びる場面が多かったことから『ブラッディ・セリーヌ』の二つ名を持つが、現在は黒歴史として葬り去られた過去となっている。

冒険者の頃から頻繁に受付の仕事を手伝っており、後から現役冒険者だと聞かされ驚いたという冒険者も多々いる。

そのため、副ギルドマスターとして推薦を受けた際に、受付を兼任できるならと条件付きで受諾。現在のポストになる。

カイエンがサボっていると問答無用で一撃を食らわせられる、唯一の存在。


魔法の呪文

魔法を使用する際の呪文は言葉は違えど内容は同じものになる。

呪文を唱えることで自身のマナに干渉し魔法の原型を形作るとされている。

そのため、呪文内の言葉を間違えたり省略したりすると原型が定まらず、魔法として完成しない、というのが今までの常識であった。

過去に無詠唱で魔法を行使した、という人物もいたという話もあるが今では夢物語だと言われている。


素材剥ぎ取り班

冒険者が獲物から素材を回収する時は自分たちで解体するか、冒険者ギルドまで持ち帰り別途費用を支払って解体してもらうかのどちらかである。

素材剥ぎ取り班はプロの素材回収集団であり、何一つ無駄なものを残すことはない。

時折、変死した魔物や獣を解体し、死因を特定するといったことも行っている。


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