第3話 「出会い」
ミストヴェイルの門前で馬車から降りる
どうやらこれから身分の確認があるようだ
し、しまったーーー!入場の事を考えてなかった……
身分が定かではない俺は文字通り門前払いにされるかもしれない
俺がそんな心配をしていると、ガルドンが一言「心配するな」と声を掛けてくれる
「えっ?」と聞き返すも、ガルドンはバシバシ!と俺の背中を叩くだけだった
そして俺達の番になると、ガルドンは進んでこう言った
「こいつは俺の遠い親戚でな。魔物の襲撃に遭い、着の身着のまま逃げてきて俺に会いに来たんだ。運良く出張帰りの馬車で拾えてな」
「ガルドンさんの御親戚ですか?」
「ああ」
ビシッとそう言い切った
「なにか問題を起こしたら俺の責任にしてくれていいぞ」
やだ、なにこのおっさん!カッコいい!!
日本にいた頃の俺からは絶対に出ないことを軽々と言う
「ガルドンさんがそこまで言うのでしたら、間違いはないのでしょう。わかりました」
そうして俺達は入場を許可された
「ありがとうございます。おかげで助かりました」
「良いってことよ。困った時はお互い様ってな!」
ガルドンはガハハと豪快に笑う
「で?ススムよ。この先のあてはあるのか?」
「ああ……はい。せっかくなので冒険者を目指してみようかと」
「そうか」
俺はこの街に着くまでの間、今後の生活について考えていた
そんな時にガルドンから話を聞き、 身分も担保される上に依頼を選べば、最低限の生活費くらいは稼げるというその仕事のことを聞いた
日本には絶対に存在しない
それでいて、ゲーマーなら一度は憧れる仕事で、その仕事そのものに興味があった
「冒険者ギルドはあっちだ。ああ、それとその前にその服、どうにかしたほうが良いだろう」
そう言われ俺は自身の姿を見る
たしかに今は汚れた部屋着に靴もなしと、とても冒険者になれるような格好ではない
「先にあっちの道の先に『フォレス』という男が運営している商店がある。そこなら、その服を買い取ってくれるだろう」
「何から何までありがとうございました。ガルドンさん」
「良いってことよ。お前が冒険者であり続けるなら、いつか俺と仕事をするかもしれないしな」
「その時は今日のことを倍にしてお返しします」
「楽しみにしてらあ!」
ガハハと笑うガルドンとそこで別れた
豪快だが気持ちの良い男だった
ガルドンに紹介された商店はすぐにわかった
看板には『旅路のランタン商店』と書かれている
俺がドアを開けるとドアベルがカランと音を立てる
「いらっしゃいませ」
商店の中にいた男は、見た目は某ホニャララクエストのホニャネコさんのようなザ・商人といった感じの男性だった
「こんにちは。お邪魔します」
「おや?初めてのお客様ですかな。私、この『旅路のランタン商店』の店主で、フォレスと申します。本日のご用向きは?」
「ああ、はい。実は今着ている服を買い取ってもらって、そのお金で最低限の服と靴を買えないかと思いまして。品質は問いませんので……」
俺がそう言うと、早速フォレスが俺に近づき買い取ってもらう服の状態を見始める
「ふむ……。かなり汚れてしまっていますな。ですが血の汚れではなく土汚れですか。幸いまだ状態はいい方でしょう。それにしてもこの生地、見たことがないものですがこれは?」
「頂き物なのでわかりません……」
俺はとっさにそう言って誤魔化す
「そうですか。非常に珍しく見たこともない生地だったもので。わかりました。買い取らせていただくのは、今お召しの上下でよろしいので?」
「お願いします」
そう言うとフォレスはニコリと笑い、俺の身体を軽く採寸した後すぐに奥に行く
どうやら無事に買い取ってもらえるようだ
用意してくれている間に店内を見回すが、どれもこれもファンタジーな雰囲気を醸し出している
日本にあったアンティークショップに近いのだろうがそれでもここまでの雰囲気はない
「お待たせいたしました。こちらで着替えていただきましょう」
そうしてフォレスが用意してくれた服に着替え、靴も履く
サイズはぴったりだった。さすが商人といったところだ
「お気に召していただけましたでしょうか?」
「はい。十分すぎます。感謝いたします」
俺が感謝を述べるとフォレスは素直に喜んでくれた
その後、しばらくフォレスと会話が弾み、自己紹介をした後なぜこの街に来たかなどのやりとりをする
「そうでしたか。それで冒険者を目指す……と」
「はい。人に頼ってばかりではいけませんからね」
「そういうことでしたら……」
そう言い、再びフォレスは奥に消えるが、すぐに戻ってくる
「お待たせしました。ではこちらの鞄をどうぞ」
「え?」
フォレスの手には古いながらもしっかりとした作りの鞄を持ってきた
「代金は不要です。この鞄も随分と長いこと、ここにありましてね。せっかくですので、ススムさんの新しい冒険のお供にしていただけたのなら、この鞄も本望でしょう。」
「いいんですか?」
俺が驚くと「はい」と即答するフォレス
「それとこちらを」
「これは……お金ですか?」
「はい。先程のお話では見たことがないとおっしゃっていましたので、買い取らせていただいた服とお渡しした服と靴の差額分です」
「ですが、鞄を頂くわけですし!」
俺が受け取れないと示すが、フォレスが言葉を重ねる
「非常に珍しい生地とデザインでしたからね」
そう言いフォレスは笑顔になる
「商いとは縁が作り出すもの。正当な商いには正当な報酬を。これは私とススムさんのこれからの御縁だと思って頂ければ」
「……そうですか……。本当に感謝します」
「ああ、そうだ。良ければお金についての計算もお教えしましょう」
そう言い、金についての説明を受ける
「何から何までありがとうございました」
「いいえ。こちらこそ、良い御縁がありました。また御用がありましたら是非お越しくださいませ」
そう言いフォレスは笑う
俺は頭を深く下げ店を出た
俺は装いを新たにし、次の目的地である冒険者ギルドに向かう
そこはすぐに分かる
この世界の文字がわかるので、『冒険者ギルド』という文字が読めたこともあるが、何より出入りしている人間たちが普通の人間とは違う雰囲気をしていたからだ
意を決し門をくぐる
そこには活気が溢れており、冒険者と思われる面々の目には力があった。素人の俺でも、それが分かるほどだった
若干気圧されると、奥から声がかかる
「そちらの方?何かご用でしょうか?」
俺はハッとし、その声の主である女性のもとに向かう
「いらっしゃいませ。こちらは冒険者ギルドです。ご用件はご依頼ですか?」
「ああ、いえ。俺は冒険者になりたくて」
「冒険者希望の方だったんですね。失礼しました。では、こちらをお読みいただき、了承の上、サインをお願いします。もし読み書きができない場合は代筆もできますので、お申し付けください」
そう言われ目を通す
そこには全十五条からなる『冒険者登録規約』が記載されている
冒険者として活動する以上、無視できない内容なので、一つ一つ確認し、その上で『ススム』とだけサインする
だが困ったことが起きる
それは『現在のジョブ』の欄であった
どうしたら良いかと考えていると受付嬢よりすかさずフォローが入る
「もしかして、現在ジョブが定まっていない『ノービス』の方でしたか?」
『ノービス』つまり新米などの意味だが、ゲームでは初心者や無職を意味することが多かった
「ええ、そうなんです。こちらに来るまでは戦闘職とは無縁で」
「でしたらこちらで、各種基本戦闘職の講師を用意させて頂き、それから自身のジョブとすることも可能ですよ。講師費用は無料です」
そう言い、ニコリと受付嬢が笑う
なんて神システムなんだ!!
そこで俺が選んだのは、ゲームでもいつも使っていたジョブ
そしてガルドンが使った魔法を見て、ますます憧れたジョブ
俺はその名を口にした
「でしたら……『魔法使い』はありますか?」
「ええ、もちろんありますよ。では魔法使いの講師をお呼びしますね」
俺はガッツポーズをする
そうして呼ばれた女性講師はいかにも魔法使いといった出で立ちをしている
コスプレではない!!
本物の魔法使いだ!!
俺が興奮していると、その中年女性の魔法使いは面倒そうに対応する
「こいつかい?こんな年になってまでノービスから魔法使いになりたいなんて馬鹿は」
「うぐぅ!!」
「キャシディーさん!そういう言い方は失礼ですよ!確かに戦闘職は一般には十三歳でなるものですがこういう方もいるんですから!!」
ああ、そういう常識がこの世界にはあるのね……
確かにその認識では、見た目二十歳の男が戦闘職を身につけようなど遅すぎるだろう
だが、まあやってみるしかない
「精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!」
俺はペコリと頭を下げたがキャシディーと呼ばれた魔法使いは「はんっ!」と鼻を鳴らす。
「頑張って魔法が使えたら世話ないね!まあいい、行くよ」
そう言い、俺達は地下にある演習場へと降りる
「まず、魔法使いになりたいって話だが、どこまで魔法使いを知ってる?まさか魔法が使える人ってだけじゃないでしょうね?」
そう言われ、縮こまる
「……そのまさかです……」
俺の返事に思わず天を見上げるキャシディー
だが、その時だった
今まで沈黙していた【ハックアンドスラッシュ】が急遽起動し、俺の目の前にある『システムメニュー』が現れる
【クラス:魔法使いを選択します。よろしいですか? はい/いいえ】
どうやら今回、講師から指導を受けたことがきっかけでシステムが発動したようだ
呆れてものが言えなくなっているキャシディーを横に俺は脳内で【はい】を連打する
すると更に『システムメニュー』が更新され、初めて自身の『ステータス』が表示される
『ステータス』
名前:ススム
ジョブ:魔法使い
年齢:二十歳
出身地:不明
種族:ヒューマン
レベル:2
残りSP:2
各ステータス:HP:3、MP:5、STR:3、VIT:3、AGI:4、MND:6、INT:8、LUK:1
初期スキル:言語理解、ハックアンドスラッシュ
あの自称神のくそったれめ!
あれだけ色々と話したのに結局、持たせたスキルは言語理解とハックアンドスラッシュの二つだけかよ!!
今度あったら絶対ぶっ飛ばす!!
第3話 「出会い」の用語補足
【用語解説】
都市ミストヴェイル
現在、ススムが到着した初めての街。
非常に活気があり各ギルドが存在している。
この街には、ススムがまだ知らない秘密がある。
貨幣
この世界での貨幣は世界共通貨幣となっている。
単位はミラル。
貨幣価値が上がると素材が変わる。
1ミラル=鉄貨
10ミラル=銅貨
100ミラル=四角銅貨
1,000ミラル=銀貨
10,000ミラル=四角銀貨
100,000ミラル=金貨
1,000万ミラル=白金貨
主に鉄貨はお釣りとして使用され、金貨は商人間での大きな取引などでのみ利用される。
なので一般流通しているのは銅貨~四角銀貨程度。
白金貨は主に国家の経済レベルになる。
物価
パン1本=1銅貨(日本円換算約100円)
食事処での夕飯=5~10銅貨(日本円換算約500円~1,000円)
食事付き宿屋1泊=30~40銅貨(日本円換算約3,000円~4,000円)
金貨=日本円換算約100万円
白金貨=日本円換算約1億円
※日本円換算は現代日本の物価を基準とした大まかな目安。
冒険者
危険度の高い仕事を生業としている。
仕事の内容は主に
討伐
捕獲
指名手配犯の確保又は殺害
素材の採取
護衛など多岐にわたる。
冒険者の適正年齢
この世界では成人年齢が十三歳と非常に早く、この年齢が冒険者になるための最低年齢となっている。
そのため、十三歳~十五歳程度で駆け出しとなり、二十歳の頃には一人前、場合によっては英雄クラスになっていてもおかしくない。
冒険者登録規約
・この書類に記入し、冒険者ギルドに提出したものは冒険者ギルドにおける以下のルール全てに同意するものとする。
1、危険業務への自発的従事の同意
冒険者業は生命・身体・精神に重大な危険を伴うことを理解し、自らの意思で登録する。
2、自己責任原則の承諾
任務遂行中の負傷・死亡など、いかなる損害についてもギルドが責を負わないことを認める。
3、ギルド規約の遵守
ギルドが定める規律・法令・任務遂行手順および安全指示に従うこと。
など全15項目からなる。
規約違反が認められた場合、罰則が有り、資格剥奪や犯罪者として軍属への引き渡しも可能としている規約。
ジョブ
主に戦闘職を指す言葉であり職業とは別である。
剣士、タンク、治療師、魔法使い、シーカーなどがこれに当たる。
戦闘職を目指すものは十三歳で自身の適性を見極め、冒険者ギルドや師を持ち研鑽を積むことが常識となっている。
鍛冶師や農民などは職業となる。
種族
新たな世界では他種族が存在しており、ススムのような人種は『ヒューマン』となる。
エルフやドワーフなどの『亜人種』
獣の特徴を得た『獣人種』が主な種族として確認されている。
各種ステータス
HP(ヒットポイントの略)
体力。これが0になると即ち生命として力尽きることになる。
MP(マナポイントの略)
マジックポイントの略。詳細は第2話の補足事項にて記載。
STR(ストレングスの略)
攻撃力に直結。また筋力にも影響があるため、これが著しく低下している場合、筋力がほぼ無いということになる。
マイナスになれば持ち物を持ち運べないといったことになる。
VIT(ヴァイタリティの略)
主に防御力と体力に影響する。
主に防御力や体力、生命力に影響する。著しく低下すると、身体の耐久力そのものにも影響が出る。
AGI(アジリティの略)
主に器用さや素早さに影響する。
これが著しく低い場合、鈍重な動きとなり、緻密な行動もできなくなる。
MND(マインドの略)
精神力に影響がある。
信仰心にも影響があり、治癒師が使用する回復魔法の効果にも影響がある。
INT(インテリジェンスの略)
知力に直結する。
攻撃魔法の威力に直結する。
LUK(ラックの略)
あらゆる事象の運に直結する。
言語理解
自動翻訳に加え、ススムが書いた文字が現地語に変換される 。
ハックアンドスラッシュ
ススムだけに与えられた特別なスキル。
未だ詳細は不明な点が多く謎に満ちたスキル。




