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呪われた装備でハクスラ!  作者: 馬ノ やすら
第一部・第一章 「異世界と呪われた装備」
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2/24

第1話 「初戦闘&初戦利品!」

「うわあああああああ!!!」


突然、今までいた場所から放り出され、無重力感が身体を包み込む。落ちる!と本能的に思ったが、気がついたときには、すでに森の中で尻餅をついていた


「くそっ!あの自称神め!最後まで嫌がらせか!!」

自分が情けなく悲鳴を上げていたことに気づき、顔が真っ赤になる。

それと同時に最後まで嫌がらせをしてきた自称神に腹の底から怒りが込み上げてきた


「それにしてもここは……? あの自称神、自分が管理してる世界だってのに、場所の名前すら教えなかったじゃねえか……」

見渡すかぎり木々が鬱蒼と茂っており、俺は森の中にいることだけはわかった


「はぁ……。どうしよ」

あの自称神の話では収納鞄は存在しているということだが、当然そのようなものは今は持ち合わせていない

つまり現在は、金もなければ装備もない

さらに言えば元の世界では家の中にいて、そのままこちらに飛ばされたのだから部屋着のまま、裸足という状態だ

俺は行く当てもなく歩き始めると、部屋着が若干緩いことに気がつく

どうやら、二十歳の頃の肉体を授かるという話は嘘ではなかったようだ

ぽっこりと膨らみ始めていた腹は、大学生時代の引き締まった身体に戻っている


「そうだ、こういう時のお決まりがあったな……!」

俺はコホンと咳払いをし、決めポーズをしながら言い放つ

「ステータス、オープン!!」

「……あれ?な、何も起きないんだが……?」

「ステータス表示!」

「状態の表示!!」


俺は様々な言い方を試してみたが、何も起きなかった

「くそ!!ハックアンドスラッシュを実装してくれたんじゃなかったのかよ!!」

あの自称神との間に確かにそのやりとりをしていて、しかも身体が二十歳の頃に戻っていることから、「ハックアンドスラッシュ」も実装されていると思っていた


俺は全身から力が抜けるのを感じた

さすがに何も無いのは問題だ

特に水に関して言えば早い段階でなんとかしたい


「まあ、ここで嘆いていても仕方がない……か」

特技というほどではないが、中間管理職になってから、気持ちの切り替えだけは人一倍早くなっていた


場所もわからず、何が出てくるかわからない恐怖があったので、俺はせめてもの備えとして、手頃な枝を見つけて手に取った

「何も無いよりはいいよな……うわぁ……!!」

手頃な枝を手に取った瞬間、それは起きた


【コモン:木の枝を入手した】


目の前にいきなりメッセージが現れる

あまりに突然の現象で驚いた俺は、木の枝を手から離す

するとやはりメッセージが出現する


【コモン:木の枝を捨てた】



再度同じ枝を拾うと同じメッセージが出現する

「どう見ても……、これ『システムメッセージ』……だよな……?」

俺は先ほど、ステータスの確認ができないのでそういった現象は起きないと思っていた

だが、今目の前で起きている現象は明らかに体験したことがない現象であった


「ま、まさかこれが俺に与えられた『ハックアンドスラッシュ』の能力……?」

あのやり取りの中で思い当たるのはそれぐらいしかない

俺があの自称神に説明したハックアンドスラッシュとは、こういうものだ

ハックアンドスラッシュ

略してハクスラ

基本は単純だ

最初は弱い装備を手に入れ、敵を倒したり、宝箱を開けたりして新しい装備を手に入れる

手に入る装備は毎回同じではない

レアリティも、性能も、付いている効果も様々だ

そして、手に入れた装備を組み合わせながら、自分のジョブやスキルに合った形へと整えていく

より強い装備が手に入れば更新し、不要になった装備は処分したり、素材にしたりして、さらに装備を強化する

重要なのは、単純にレアリティの高い装備を集めればいいわけではないということだ

どれだけ希少な装備でも、自分のビルドに合わなければ役には立たない

逆に、レアリティが低くても自分のビルドに噛み合えば、長く使い続けることもある

そうやって装備を集め、試し、組み替えながら――最後に、『自分だけのビルド』を作り上げる

それが俺の知っている、『ハクスラ』だ


あいつは自称神だと言っておきながら、ハクスラのことも理解できず、挙句の果てに俺の『イメージ』をそのままスキルにするとか言っていたが

まあ、とりあえず『ハクスラ』については頭の中でしっかりとイメージできていたので俺は次の段階を試してみることにした

そう、それは『装備』である

先ほど拾った木の枝を手に、声に出してみた

「木の枝を装備する!」

すると目論見通りの結果が起きる


【コモン:木の枝をメインウェポンとして装備した】


「おおおお!」

俺はしっかりとイメージしたことが現実で起きていることに感動を覚える

その後いくつかの実験を行う

一つ目は拾ったものが全てアイテムになるのか、ということ

結論から言えば、これは物によるようだった

二つ目は、何でもかんでも装備できるのかどうかだ

これも当然、何でも装備できるわけではなく、装備できるものは一定の種類に限られていた


「良かった。何でもかんでも『メッセージ』が出てきてたら生活に支障が出る可能性があるからな」


一通り試したところで、いよいよ喉が渇いてきた

「いい加減、水場を探さないとなあ……。うん?この音は……!!」


薄っすらと、木々の間を風が通り抜ける音に交じって、水が流れる音が聞こえてきた

俺は最大限の注意を払いながら音に近づき、そこに小さな水場があることを発見した


俺は天高くガッツポーズをするが、そこで気がつく

「こ、この水飲んで大丈夫か……?本当ならろ過やら火を起こして湯にしたほうが良いんだろうが……。ええい!」

喉の渇きが限界に近かった俺は当たるかもしれないとは考えながらも、両手でその水をすくった

水は非常に綺麗で澄んでいる


そして、それを確信に変える出来事が起きた


【コモン:きれいな水を入手した】


「……『きれいな水』って表示されてるなら、大丈夫……だよな?」

しばらく迷うがやはり本能には逆らえない

「ごくごくごく……ぷはーー、生き返った……」


俺は落ち着いたところで、水面に映る自分の顔を改めて見る

どうやら本当に二十歳の頃の身体になっているようだ

顔もほっそりしているのがわかった

次はどうしたものかと考えていると、近くの草むらから、明らかに大きな何かが動く音が聞こえる

その音に驚いた俺は反射的に飛び起き、心もとないが今装備している木の枝を構え物陰に隠れる


そして現れた生物に俺は驚きを隠せない

緑色の皮膚を持ち、小人ほどの身長をした二足歩行の生物

それはゲームで慣れ親しんだモンスターの一つである『ゴブリン』であった

「なっ!?」

俺は咄嗟に自身の口を押さえ、動揺を隠す

可能性としては考えていた

自称神が言った『勇者』という言葉

『勇者』がいて『スキル』があるなら、当然、魔物や魔族と呼ばれる者たちもいるのではないかと

そしてその予感は的中してしまう


ガサッ!


動揺は身体にも現れたようで俺は意図せず、草木を大きく揺らしてしまい、ゴブリンらしき生き物に気づかれてしまう

何より厄介だったのは、ゴブリンが手にしていた短剣だった

向けられる殺気、そして短剣

『ゲーム』ではなくこれは紛れもない現実だと認識させられる


だが、その殺気を向けてきたゴブリンの様子が異様だった

「はぁはぁ……」と息を切らしながら今にも倒れそうなほど衰弱している様子が見て取れる

短剣を握る手もプルプルと小刻みに震え、持つので精一杯といった様子だ


弱っている……?なら最悪これでいけるか……!?

俺はジリジリと距離を詰め、ゴブリンがゆらりと倒れそうになったところを見計らって、一気に踏み込んだ

脳天めがけて枝を振り抜く


バキィ!という派手な音とともに木の枝は折れたが、それと同時にゴブリンも倒れ、そのまま動かなくなった

どうやら本当に瀕死の状態だったようだ


「か、勝った……」

俺は腰が抜け、その場にぺたんと座り込んでしまう

すると突然『システムメッセージ』が作動する

【経験値を10取得。ジョブレベルが1上がった】

【初期スキルポイント:1】

【スキルポイントを1会得】

【保有スキルポイント:2】


「れ、レベルアップ……?」

そこには派手な音楽やエフェクトはなく、淡々とその事実だけが知らされている

だがそれと同時に疑問が残る

ジョブレベル?

スキルポイント?

いや、ハクスラRPG大好きな自分としては意味はわかる

だが、現状ステータスメニューが開かないため、自身がどういう状態なのかがわからない

なので対処のしようがないといった現状だ


「さて、どうしたもんか……」

悩んでいると、先ほど倒したゴブリンの横に、ゴブリンが握っていた短剣が落ちているのが目に入る


俺のメインウェポンだった木の枝は粉々に砕け散ってしまったため、代わりになるものが必要だと思い、その短剣を拾い上げる


【レア:銅の短剣を拾った】


なんとその短剣は俺の知る限りでは下から三番目の等級である『レア級』の装備品だった

詳しくその短剣を見てみると以下のようなことが分かる


【レア:銅の短剣】

効果:STR-10、VIT-10

スキル効果:未鑑定


「とんだハズレ装備じゃねえか!!」

だがそれと同時に、俺はあのゴブリンがなぜあんなにも弱っていたのか理解した

「そうか。あのゴブリン、この短剣のデバフ効果で弱っていたのか……。これがなければ勝てなかったな。それにしても……」


気になったのは最後の表示

「未鑑定品か……。これはもしかしたら、もしかするかも?」

ハクスラの楽しみとして、一見ハズレ装備に見えるものでも鑑定結果で評価が大きく覆ることがある

もしかしたらこの短剣もその可能性が……

俺はその望みに賭けることにし、短剣を大切に腰に下げることにした


ふと顔を上げ、ゴブリンがやってきた道の方を見ると、なんと光が差し込み、道が開けているのが見える


「道だ!!」

ようやく森を抜けられたことに俺は安堵する


第1話 「初戦闘&初戦利品!」の用語補足


【用語解説】

レアリティ

装備品の希少度を示す等級。

コモン、アンコモン、レア、レジェンド、ユニーク、ミスティック、ゴッズとなる。

ミスティックは国宝級、ゴッズは神話級として扱われる。

ビルド

ジョブ、スキル、装備などを組み合わせて作る、自分なりのキャラクター構成。


STR(Strength)

筋力を表すステータス。物理攻撃力や、装備などを扱うための筋力に影響する。

VIT(Vitality)

生命力・耐久力を表すステータス。防御力などに影響する。


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