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呪われた装備でハクスラ!  作者: 馬ノ やすら
第二章 「呪われた文字」
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第18話 「見える価値」

___時は遡り、指名依頼完了報告時


座っているカイエンに対し僕は報告を行う

カイエンは両肘を机について、手で目を隠しているので表情は見えないが微動だにしない

こういう時のカイエンは考えを奥深くまで巡らせている時だ

「……なるほど。それが今回新たに感じたススムへの『異常性』か」

「はい。大岩蛇(ロックスネーク)の時点で使おうと思えば使えるタイミングはいくらでもありました。しかし、彼は使わなかった。ですが一日と経たないうちの賊との戦いでは『初めて使った』かと思われる状態でした」

僕がそう答えるとカイエンは「ふーー」と深く息を吐く

「確かにそれは異常だな。魔法はスキルと違い、特に扱いが難しい。通常ならばそういった事はありえない」

「……はい」

「……アッシェ。これはまだ未確定の情報だが、鍛冶ギルドの副ギルマスは知ってるな?」

「はい。もちろん。ガルドンさんですよね?」

「ああ。そのガルドンからススムに関して奇妙な話を聞いた」

「奇妙な話……?」

すると手で覆っていた目を露わにし僕をじっと睨む

「ススムは、【呪われた短剣】を『家宝』として後生大事にしているらしい」

「【呪われた装備】ですか……!?そう言えば、彼のメインの装備は魔法使いでは珍しい短剣……!」

「そういうことだ。もしかしたら奴は【呪われた装備】に何かしらの関わりがあるのでは、と睨んでいる」

あまりの情報に僕は思わずカイエンの机に両手をバン!と勢い良く当てる

「危険なのでは!?」

「だが、報告を見るに今のところ事故は起きていない。だろ?」

「……はい」

「今後もし、それに関連するような話が出てきた場合は下手に追及せず、ススムの立場を悪くすること無く、報告だけしてくれ」

「なぜ……なぜ、カイエンさんはそこまで拘るんです?」

「【呪われたダンジョン】のことは当然知っているな?」

「もちろんです。最近ではその出現も目立ちはじめ、巻き込まれる人も多いと聞いております」

「だからだよ」

「……え?」

「俺はな……ススムが【呪われたダンジョン】に関連があるんじゃないかと睨んでいる。」

「は……?」

あまりの突飛な思考についていけなくなるのを感じる

「まあ、それもいずれわかるだろう。さっきも言った通りだ。お前はただ『報告』してくれればいい。……わかったな?」

「……了解しました」


___


『ルーン石』についての実演はあまりに衝撃的だったようで、沈黙が場を制してしまったので、頭を冷やすために一旦夕食となる

いつもは賑やかな夕食時だが、この日ばかりはやはり口数も少ない

ことアリスに関しては、こういった戦利品が多く得られたときなどはテンションが凄いことになり、パックにげんこつを食らうまでがセットだがそれも見られなかった


「アッシェ、改めて皆と話がしたい」

俺がアッシェにお願いをすると、意外にもすんなりと返事が返ってきて、改めての場が設けられる


「改めて言うが俺は【呪われた文字】が読める。この石の効果も読めるし、この短剣……【呪われた短剣】の文字も読める」

俺がそれを机の上にコトリと置くと、一瞬喉をゴクリと鳴らしたアッシェが手を伸ばし、短剣を手に取る


「アッシェ!」

そう叫ぶのはアリスだ

だが、アッシェは気にすることはなく恐る恐る手に取り、そしてじっと見つめている

その表情から察するに、やはり短剣はアッシェからすれば【呪われた状態】でしかない様子だった


「ふーー」

大きく息を吐きながらアッシェは再び短剣を机に戻す

そして、これがどういったものなのかを聞いてきた

「君は、これの存在についてどこまで知っている?」

俺が再び短剣に手を取り、それを見つめながら話す

「これが呪われているだなんて初めて知ったのは、とある『鍛冶師』に鑑定をしてもらってからだったよ。そしてその【呪われている】と言われ始めた曰くを聞いた。だが俺は正直、『納得』もしたよ」

「納得……?」

「ああ。だってこの短剣は短剣のくせに腕力と体力にデバフが掛かっているんだ。俺は実際にそれを具体的な数値と見ることができるんだが、正直、俺が君たちから貰った『指輪』と今着ている『上下の服』の補正がなければたちまち、この短剣は愚か【何も持ち上げること】はできなくなるし【瀕死】のような状態になるだろう」

それを聞いて身を乗り出したのはアリスだった


「じゃあやっぱり呪われてるんじゃないか!」

「そう思われてもおかしくはないが俺はそうは思わない」

俺が言い切るとアリスは疑問を浮かべる


「さっきも言った通り、俺は具体的に『ステータス』の補正を見ることができる。呪われていなければ皆だって見れるだろう?」

「それは……まあ、そうだけど……?」

「仮にこれが【読めない文字】ではなく【読める文字】で書かれていたらどうする?」

「捨てる」

アリスがきっぱりゴミ装備だと言い切るのは、ある意味では潔い


「あはは……。ステータス面だけで見ればそうだろう。俺も捨てる。だがこれには優秀なスキルが付いている。俺はそこに着目した。であれば、この装備を捨てずに、装備するにはどうしたら良いと思う?」

そこまで聞いたアッシェは「なるほど」と答える

「他の部位で補えば良い」

「正解」

「つまり【呪われた】と言われている原因、逸話になっているのは単純に文字が読めなかったから起きた【不幸な事故】なだけであり、【文字さえ読めれば事故は起きない。】これが俺の答えだ」

俺がきっぱりそう言い切ると再び場を沈黙が制する


沈黙の場を破ったのは意外にも静観し、アッシェに任せるとしていたパックだった

「それでススムはどうしたいと考えている?」

「俺はこのパーティの力の底上げに、この【呪われた装備】と【ルーン石】を使い強化したいと考えている」

「……正直なことを言えば、少し前までのお前の言葉なら、俺もアリスと同じく否定しただろう。だが、今はススムは俺たちの背中を預けられる大事な一人だ。『そいつの言葉』なら俺は信用に足りると思う」

「パック……」


アッシェもこれに続く

「……確かに【呪われた装備】でパーティ強化なんて言い出すやつは問答無用で追い出すところだ。だが、今ここでこうして話ができているのも、その【呪われた装備品】の力あればこそだ。それは否定しない」

「アッシェ……!」

「だが問題はある。通常であれば【呪われた装備】や【ルーン石】は道具屋、装備屋、冒険者ギルド等に預け『処分』されるのが通例で流通してない。どうやって揃えるっていうんだ?」

その答えを持ってきたのは他ならぬ、『ルーン石』の所有者であったサーシャだった


「その答えでしたら、恐らく私が何とかできますよ?実は私の古い友人にそれらを専門で扱っている商人がいます」

「やっぱりいたか」

俺はサーシャの言葉を聞き、思わずそう口にする

その言葉に驚いたのはサーシャだった

「知っていたのですか?」

「いや、何事にも興味を持つ人はいるし、なんでもコレクションをする層は一定層いるとは思っていたからね。まさかこんなに早く見つかるとは思ってなかったけど」

「ススムさんは商人向きなのかもしれませんね?」

そう言いサーシャはクスクスと笑い出す


「それで、その人は?」

アッシェが問うと、サーシャは真剣な眼差しで答える

「はい。この街に店を構えています」

「なっ!?そんな店がここに!?」

「ええ。ですがその反応の通り、他人から良い目で見られないためひっそりと店を構えております。明日ご案内しますね」

皆がサーシャの話に頷く中、アリスだけは口から魂が抜けたような状態だった


翌日、サーシャの案内で店に向かうも、そこにたどり着くまでが大変で、その店のことを知らなければ決してたどり着くことは難しいといったルートで向かう

そうして一件の古ぼけて、埃を被り、廃墟の一歩手前のような、やっているのかやっていないのか分からない店の前に到着する

「さ、着きました」

「ううう、嘘だよね?こんなところに入るの?」

「なんならここで待ってるか?一人になるけど?」

アッシェが冷静に言うと「一人は嫌だー!」と結局ついてくることにしたようだ


ギイイィィ


扉は錆びているのか立て付けが悪いのか、嫌な音を立てゆっくり開く

店内は薄暗く埃っぽい

陳列されている商品もごちゃっとしている上に埃をかぶりとても売られているとは思えない状況に俺含め穴熊の皆が絶句する

それとはお構いなしにサーシャが店内にどんどん入っていき、大声で声をかける

「ヴェルミナー!いないんですー?お客様を連れてきて上げましたよー!!」


しばらくすると奥から人の影が見える

アリスがゴクリとつばを飲み込むのがわかる

ゴソゴソと聞こえた後、童話に出てくるような魔女の様相を呈した老女が出てくる

「相変わらず、うるさい小娘だね!聞こえてるよ」


その姿を見たアリスは声もなく気絶していた

第18話 「見える価値」用語の補足


呪われたダンジョン

通常のダンジョンとは大きく異なる異質なダンジョン。

現状、前触れもなく突如として出現することが確認されており、場所も特定されず、どこにでも現れる可能性がある。

更にダンジョンが不意に出現することから、意図せず巻き込まれる一般人もいる。

過去には幾度となく有名な冒険者たちがこの【呪われたダンジョン】に挑んだことがあったが、結果として生存者は公式では確認されていない。

このダンジョンは消えることがなく、更に出現する個数も年々増えてきているという報告まであり、 世界的な問題となっている。

冒険者ギルドとしても警告はしているが、既にこのような状況が確認されていることから、冒険者の間では【呪われたダンジョン】に挑む者は、自殺志願者として異端視されている。


【呪われた品々】の取り扱い

【呪われた】と言われているものは、戦利品から得られる場合もあれば、職人が通常の手順で制作したにもかかわらず、何故かそうなってしまった物、更には日用品に至るまで確認されている。

そうした【呪われた品々】は事故防止のため放置されることなく、商店、商業ギルド、装具店、鍛冶ギルド、冒険者ギルド等で広く回収されており、 回収された【呪われた品々】は廃棄処分されている……はずだったが、なぜか一部が流出している事案が見られる。

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