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呪われた装備でハクスラ!  作者: 馬ノ やすら
第二部・第一章 「これから」
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第16話 「始動」

「……と、言うわけなんです」

新たに俺の証となった銅級の冒険者証を眺めていると、アッシェとカイエンの話が耳に入ってきた

「ふむ。まあ、事情はわかった。だが答えは簡単だ」

どうやらサーシャ達の件を相談していたようだ

正直なところ、新しい冒険者証に見惚れていて、前半の話はほとんど頭に入っていなかった

「勝手にすれば良い」

「えっ!?」

カイエンに助け舟を求めたというのに、あっさり突き放されてしまったアッシェは、愕然としていた


「まあ、待て。そんな顔するな。理由は二つある」

そうしてカイエンは指を曲げながら二つの理由を告げる

「一つ目は、サーシャ嬢たちは冒険者ではないので俺たちが関知できないという点だ。これはわかっていただろう?」

「……ええ。それは、まあ」

「二つ目は、上級のパーティになれば、そういった外部の人間がパーティに関わることも珍しくない。商人だけでなく、鍛冶師、錬金術師、荷物持ち、解体師……、それこそ様々な職業の者たちがパーティの関係者として加わることはある。なので勝手にしたら良いということになる」

期待していた答えを聞くことができず、しょんぼりするアッシェ


「だが、まあススムの案っていう仮っていうのは良いんじゃないか?正式なものではないが『精神的な部分』としてそういう区切りを付けるのは面白い。まあ、お前一人で気負わず、穴熊として考えるんだな。そのためのメンバーだろう?」

カイエンが珍しく良いこと言ってると思ったが、ギルドマスターだったということを忘れていた


「わかりました。『穴熊』として検討します。わざわざお時間頂きありがとうございました」

「ああ。それとススムが加入後の『穴熊』の階級は以前と同じく四角銅級だ」

「了解しました」

アッシェとのやり取りが終わりカイエンは手をひらひらさせながら二階の自室に戻っていく


拠点に戻った後、カイエンから聞いた内容を『穴熊』のメンバーとサーシャたちに共有した

そして改めて、サーシャたちには試用期間を設けることで認識を一致させることにした。

それを聞きサーシャたちは嬉しそうにし、「全力で認められるよう努力します!」と、力強く拳を握った


「さて、ここからが本題だ。僕たちはススムという新たなアタッカーをパーティに加入させる運びとなった。そこで今後の『目標』を再認識したい」

「そう言えば、入った俺自身、このパーティの目標は知らなかったな。何を目標にしてたんだ?」

俺の問いかけに、アッシェは頷きながら全員を見渡した

「このパーティ『森の穴熊』は力なき人たちの力になるべく活動をしていた。僕としては今後もそれは変えたくはないし変えるつもりもない。今の僕たちがここにいられるのも、その『目標』があったからだ」

それを聞いてアリスとパックも頷く

「なるほど。具体的には?」

「人の役に立つような依頼を中心にこなしていこうと思う」

「ふーむ」

俺はそれを聞き、顎に手を当て少し考えてしまった

「なにか言いたそうだな?ススム。君も正式に穴熊のメンバーとなったんだ。言いたいことがあれば必ず意見してくれ」

アッシェが促してきたので俺は遠慮せずそうさせてもらうことにした


「俺もそれで良いと思うしむしろ賛成よりだが、正直、『それだけで』良いのか?という気になっている」

「……と言うと?」

「力をつけるべきだと思う。具体的にはダンジョンに行き、俺たちの全体のレベルを上げるべきだと思う」

「それはただススムがダンジョンに行きたいだけでは?」

穴熊と合流する前の俺が、ダンジョンに異常なほど執着していたことを知っているのだろう

恐らく、そこから出てきた言葉だったのだろうが、アッシェのその言い方に俺も若干ムッとした

「違う。具体的な例を挙げれば、この間の大岩蛇みたいな相手だ」

俺はアッシェたちを見る

「あいつは、今の俺たちのパーティで対応するべき相手だった。それでも、決定打がなくてジリ貧だっただろう?」

「……それは」

「人を助けたいって言うなら、助けられるだけの力が必要になる。だからまずは、俺たち自身が強くなるべきだと思ってる」


「それとこれとは……!」

「何が違うってんだ?根性論や精神論じゃあ助けられるものも助けられないぞ?」

俺がアッシェに対して明確に反論したところで空気が最悪になる

俺もアッシェも引かないでいると仲裁に入ったのはパックだった


「……アッシェ。ススムの言うことも正しい」

パックの指摘にアッシェは声を荒げる

「パック!!」

「だが、ススム。俺たちのやり方も理解して欲しい」

「ああ。それは十二分に理解しているよ。だからこその指摘だ」

俺がそう返すとパックは頷く

「……ああ。わかっている。今回の指名依頼で俺たちは力不足を文字通り痛感することになった。そこでだ。俺はダンジョンで訓練をしつつ、街に補給で戻ってきたら数日は依頼掲示板でそれらしい依頼がないかを確認。無ければ再度ダンジョンへという案を提案する」

「なるほど。それならば俺たちの戦力強化にもなるし、元々の『穴熊』の目標も損なわずに済む」

俺がパックを見ながら口にするとパックは頷く

アッシェの方を向くとアッシェは目を瞑りながら考えているようだ

俺はあえて横槍を入れず、アッシェがリーダーとして状況を飲み込めるかを見守る


「よし。それで行こう。パック、助かった。それとススム、済まなかった。君の言い分も最もだった」

「いや、俺も新参のくせに口が悪かった。済まない」

俺たちは握手をし、意見はまとまることになる


後日、正式に俺宛に発行された『森の穴熊』のパーティ証を腕に巻き、まず掲示板を見るが、穴熊の要望に合いそうな依頼がないことを確認し、俺たち一行はミストヴェイルダンジョンへ向かう

以前はただただ、ダンジョンに入り戦利品やレベル上げを楽しみ、ダンジョン攻略をしたい!という邪な思いがあったが今は違う

まずは明確にパーティとしての強さを見極める必要がある


今回、サーシャたちも付いてくると言い出すかと思ったが、意外にもそんなことはなく、「皆さんが『目標』に向かって迷い無く進めるよう、私もやれることをしたいと思います!」と至極真っ当なことを言い、留守番となった

いきなりパーティ加入の打診や引っ越し等突飛なことをするものだから、聞き分けがないかと思いきやそこはきちんと常識を持ち合わせていたようで安心だ

まあ、ここで下手な行動をすれば、『仮』なんて軽くアッシェが蹴り飛ばすだろう


今回から、ダンジョンを攻略するにあたり、今まで穴熊達が日常的に使用してきた合図やフォーメーションなども全て頭に入れる

そして実際にいくつかの連携を教えてもらうと、その完成度の高さに思わずため息が漏れた

「はー。すごいな。良くできてる」

「まあ、元々僕たちは同じ村で育って昔からの友人だったってこともあるけど、それでも連携には自信あるよ」

なるほど。流石カイエンが指名依頼するだけのことはある


そんなことを考えていると頭上から小鳥の鳴き声のような口笛が聞こえる

アリスの合図だ

既にその合図については頭に入っているため、それが耳に入った瞬間、即座に展開し、合図で送ってきた通りの相手である鹿型の魔獣と対峙する


基本はアッシェが前衛で『挑発』をし、敵視を集めタンクとして防御に徹する

その際、パックが『プロテクション』で防御力を上げ、更に傷ついたアッシェを癒す

対象がアッシェに釘付けになっている時にアリス、そして新たに魔法ダメージディーラーとして加わった俺が仕留めるといった構造だ


鹿型の魔獣を仕留めた時、【システムメッセージ】が流れる


【経験値を30取得。ジョブレベルが1上がった】

【スキルポイントを1会得】

【保有スキルポイント:1】


どうやら俺のレベルが上がったらしい


……そう。レベル

これが俺を悩ます最大の要因だ

正確には俺を悩ませる要因の根源は俺の持つスキル【ハックアンドスラッシュ】であり、これに付随する全てのことが悩みのタネとなっている


今までの会話を聞く限り、どうやら明確に俺のように個人が自身のステータスを見ることはできず、自身のレベルはいくつなのか、ステータス値はいくつなのか、SPなどはどうなっているのか、等が一切不明であることが判明する


俺のハクスラ知識を使いパーティの戦力底上げを狙ったが、現状、このような状況ではどうやってパーティの戦力を底上げしようか皆目見当も付かない状況になってしまった


「お!またドロップしたよ!」

どうやら先ほどの鹿型の魔獣から戦利品が出たようだ

ダンジョンに入ってからというもの、コモン、アンコモンが中心であるが素材品や装備品などいくつかの戦利品を得ていた

「こんなに戦利品が取れるだなんて、これもススム君の指輪のお陰だねえ!!」


指輪の存在がアリスに知られ、最初は様々な方法で俺にねだって来たが、諦めて今は収入に直結する戦利品のドロップ率上昇という点で注意が逸れたようだ

まあ、まさかあんなに簡単に手に入った『一角兎の尻尾』がレア等級のくせに金貨レベル、場合によってはオークションで取引されているだなんて思いもよらなかったが……


指輪を見ながらそんなことを思っているとアリスが「ギャー!」と悲鳴を上げる

俺たちはびくっとして悲鳴を上げたアリスの元に駆け寄ると、アリスは半泣きになりながらパックにしがみついていた

「なんだ!?どうした、アリス!無事か!?」

アッシェがアリスの心配をしているとアリスが泣きながら声を出さずに、一点を指さす。

その指の先にはある石が転がっている


俺はその石に近づき拾い上げようとした時、何かを察したアッシェが「ススム!」と声を荒げるが、もう手遅れであり、俺はその石を拾い上げる

「えっ?」


するとその瞬間その石の情報が眼前に広がる


【ルーン石:インを入手した】


ルーン石だって!?

第16話 「始動」用語の補足


フォーメーション

ダンジョン探索時の行動や、戦闘時の隊形を指す。

パーティによって様々な形があり、指揮系統も異なる。

森の穴熊では、探索時の指揮をシーカーであるアリスが担当し、口笛によって『どこに・なにが・どれだけいるか』を伝えている。

戦闘時はアッシェが指揮を執る。

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