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呪われた装備でハクスラ!  作者: 馬ノ やすら
第五章 「初めてのダンジョン」
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第11話 「絆」

「あの蛇は大岩蛇(ロックスネーク)と呼ばれ、討伐するにはパーティで四角銅級が推奨されている」

アッシェが端的に説明してくれる

「つまり、ギリギリの戦いだと?」

「そうなる。それにあの場所、このまま戦えば確実に依頼品に影響が出る」

「そう……ですね……。ではどうします?」

「あの蛇は僕たちが引き付ける。その間にススムさんは採取のみに専念するんだ」

アッシェの目を見る限り、これしかないようだ

「わかりました。可能な限り早く採取を行い、そちらに向かいます」

俺がそう伝えると、『森の穴熊』の三人はお互いの顔を見合わせ、一気に飛び出す


アリスが初撃を放つも、岩状の鱗に阻まれ、矢が通らない

それを予想していたアッシェは『挑発』を行い一気に敵視を稼ぎ、その場から離れていく

三人が大岩蛇(ロックスネーク)を引き離したのを見計らい、一気に『朝露のセージ』に駆け寄り、採集を行う

せっかく作ってくれた隙を無駄にすることなく、その場にあった『朝露のセージ』をすべて採取する

結果、依頼品を五束確保することに成功した


アッシェたちは安全策を取ってくれたようで、十分な距離が開いていた

俺は全力で駆け寄り、射程圏内に入ったところで一度様子を見る

やはり決定打に欠けるようで苦戦しているが、それでも大きなダメージは受けていない

互いに決定打を欠き、拮抗している状態だった

だが次の瞬間、アッシェが放った『シールドバッシュ』が大岩蛇(ロックスネーク)の顔面を捉え、見事追加効果のスタンが発生する

俺はこの機会を逃すまいと呪文を唱える


『紅蓮の理よ、我が掌へ集え――』


ここまで唱えた瞬間、俺の気配を察知していたアッシェたちは巻き込まれまいと一気に蛇から距離を置く

それを見計らい俺は収束したマナを解き放つ

『ファイアボール!!』

放出された火球は、蛇めがけて飛んでいくが、着弾するよりも早くスタンが解け、更に大岩蛇(ロックスネーク)は魔法を察知していたのか、とぐろを巻く

岩のような鱗を持つ大岩蛇がとぐろを巻けば、実質的には巨大な岩と大差ない

俺の魔法でも、大岩蛇(ロックスネーク)の岩と同等の鱗に若干のダメージを与えるのが精一杯で、とても決定打にはならなかった

だが、アッシェの判断は早い

依頼品を確保したことを確認したアッシェは「撤退する!!」と言い一気に離脱を宣言

俺も慌てて合流し、全員で撤退することとなった

逃走の最中にアッシェは一応確認してきたが、俺は「大丈夫」とだけ返す

このまま無事に撤退できれば依頼は完了する

そう思った矢先、撤退中も上部から周囲を監視していたアリスの足場が、突如として崩れる


アリスはバランスを崩して落下したが、器用に身体をくねらせ、受け身を取るような姿勢になる

一見すると大きな怪我はなかったようだが、それでも脚にダメージがあったのか苦悶の表情を浮かべたのがわかった

そしてそれを好機と見た、追いかけてきた大岩蛇(ロックスネーク)は目標をアリスに据え、狙いを定め飛びかかってくる姿が、俺の目の端にかろうじて見えた

ただただ無心でアリスに向かって飛び出し、その身を庇おうとしていた

映像がスローモーションのように流れる

これが走馬灯ってやつなのかな、なんて思った矢先――横から飛び込んできた何かに突き飛ばされ、俺は激しい衝撃を受け、アリスとともに吹っ飛ばされていた


ハッと気がついた時には、俺とアリスが先ほどまでいた場所にアッシェが立ちはだかっていた

大盾を構え、大岩蛇の牙による攻撃を防いでいる

……いや、完全に防ぎきれてはいなかった

肩口からかなりの血が流れている


だがそれも束の間で、アッシェは光に包まれる

どうやら治癒師であるパックの回復術が施されたようだった

回復を受けたアッシェは、渾身の力で大岩蛇(ロックスネーク)を吹き飛ばす

「おおおおおおお!!!!」


そうして体勢が悪い状態だった大岩蛇(ロックスネーク)は見事に大きく吹き飛ばされ、岩場付近にズドォン!と大きな音を立てぶつかる

ヨロヨロとしながらもそれでも戦意を喪失したようには見えない大岩蛇(ロックスネーク)に対し、怒りのような恐怖のようななんとも言えない感情を抱き、ふと周りを見渡す

すると、大岩蛇(ロックスネーク)が吹き飛んだ先の上部にも大きな岩がいくつも存在しているのが見える


俺はこれだと思い、詠唱を開始する


『紅蓮の理よ、我が掌へ集え――ファイアボール!!』

俺の手から放出された火球は再び大岩蛇(ロックスネーク)目掛け飛んでいき、それを察知した大岩蛇(ロックスネーク)は再び先ほどと同じように防御体制を取る

俺はそれを見てにぃっと笑う

「残念」

俺がそう言うと一気にファイアボールの軌道が大きく変化し、大岩蛇(ロックスネーク)をかすめるように上空に打ち上がり、そして火球は、『最初から狙っていた通り』大岩がいくつも存在している上部にて着弾、炸裂する


岩を壊すには不十分な威力でも、動かすだけなら十分だった

その衝撃を受け、大岩が何個も崩れ落ち、そして丸くなり防御を固めている大岩蛇(ロックスネーク)目掛け落ちていく

ずずん!という大きな音とともに圧死した大岩蛇(ロックスネーク)の血がどろりと地面一帯に流れ出す


それと同時に『システムメッセージ』が流れ、俺のレベルが2上がったことを告げる



『システムメッセージ』が流れたことで、戦闘が終わったことを理解する

「はぁ……」

一気に力が抜けた

だが、そんな俺に向かってアッシェが近づいてくると、ぐいっと襟元を掴み、激怒した

「何故あんな真似をした!?」

そうか、確かに俺は反射とはいえ勝手に動き、二次被害を生んでしまった

それを理解し、ただ謝ることしかできなかった

「……申し訳ありませんでした」

「勘違いしないでください……!僕は勝手に動いたことを咎めているわけではありません。命を粗末にする行動に怒りを覚えているんです!」

確かに俺はこのパーティの中では最も装備が貧弱で、レベルも経験も低く、魔法使いである俺は、ジョブ的にも防御力が一番低い

命を粗末にしたと言われても仕方のない状況だった


「……ですが……」

アッシェは言葉を続ける

「アリスを……いえ、仲間を助けてくれたこと、感謝します」

ポタポタと、アッシェの涙が俺に落ちた


しばらくは状況が落ち着くまで、丁度大きな岩場という天然の防御壁があるので休憩することとなった

俺が一人落ち込んでいると、アリスが近づいて来る

「いやぁ、ごめんねえ?大きな怪我しなかった?」

「はい……。ありがとうございます。アリスさんこそ大丈夫でしたか?」

「私はこのとおり元気ビンビン!……ありがとうね。あと、あいつのこと、怒らないでやってほしいんだ」

そう言いアリスはチラリとアッシェを見る

「怒るだなんてとんでもない。むしろ彼の本心が見えた気がして嬉しかったです」

「そっか。ふふ。いやあ、頼もしいなあススム君は!あ、私のことは『アリスさん』でなく『アリス』と呼んでくれると嬉しいなあ、なんて」

そう言いながらアリスは照れ笑いしながら離れていく


入れ替わるようにパックがやってきて俺の前にしゃがみ、目線を合わせる

「……体調は?」

「お陰様で。先程掛けてもらった回復もあって怪我も治りましたよ。ありがとうございます」

俺がそう言うとパックはフルフルと頭を横に振った

「身体は俺がいくらでも治せる。だが……ここは違う」

そう言い、パックは俺の胸に拳を当てる

そういうことかと俺は納得し、再度礼を述べる

「ありがとうございます。『そちらの方』も問題はないです」

「……そうか。何かあったら話は聞ける。いつでも話しに来い」

そう言うとパックは戻っていく


「はあ。今回ばかりは本当に助けられてばっかりだな。ん?」

俺はふと、大岩蛇(ロックスネーク)が圧死した付近で物が転がっていることに気がつく先ほどまでは血溜まりが残っていたが、今はそれもない

魔素とやらに返ったのだろうか?

俺がその転がっているものの近くに行くと、その正体がわかった

それは『大盾』だった


俺がそれを手に取ると、情報が流れてくる


【レア:岩蛇の鱗盾】

効果:HP+30、VIT+25

基礎値30


「ほほうー!これはなかなか!!だけど……」

俺はその大盾を手にアッシェたちのもとに向かう

まずそれに気がついたのはアリスだった

「うわあ!なにそれ!!見せて見せて!!」

俺はそれをひょいっと避け、アリスには見せない


「アッシェさん。先程は本当に申し訳なかった」

「いや、むしろこちらこそすみませんでした。もう少し言い方に気をつけるべきでした。ところでそれは?」

「ええ、これなんですが、先程の大岩蛇(ロックスネーク)の戦利品のようで。さっきのでアッシェさんの大盾、壊れてしまったでしょう?良ければ貰ってくれませんか?」

先ほどの大岩蛇(ロックスネーク)の攻撃をまともに受けた大盾は大きく破損している


「いえ、それが大岩蛇(ロックスネーク)の戦利品なら貰うべきはあなたですよ、ススムさん」

「そう言ってもらえるだけで嬉しいです。ですが、見ての通り俺じゃあこの盾は使えそうにありませんから」

そう言って俺は貧弱な力こぶを見せる

すると『森の穴熊』の三人は顔を見合わせ、大笑いを始める

俺もそれにつられて笑ってしまう


「本当によろしいのですか?」

「ええ。そのほうが盾も嬉しいでしょうし」

俺はアッシェに大盾を渡す

アッシェは大盾を見ながら何かを考え条件をつけた

「ではこうしましょう。僕たちのことは呼び捨てにしてください」

「え?」

「だってもう、僕たちは十分に仲間じゃないですか」

そう言い、アッシェは満面の笑顔を見せる


こうして俺の初めてのダンジョン攻略は無事に終わった

もっとも、アッシェが新しい盾のレア装備を前に腰を抜かしていたのは、また別のお話


第11話 「絆」用語の補足


大岩蛇(ロックスネーク)

討伐対象階級は、単独であれば銀級、パーティであれば四角銅級以上が推奨される魔物。

その名の通り、全身を覆う岩のような鱗は非常に硬く、生半可な攻撃では決定打を与えることが難しい。

そのため、十分な火力や適切な戦術を持たない場合は、戦闘を避けることが推奨される。


シールドバッシュ

アッシェが得意とする、大盾を利用した打撃技。

相手の顔面などを大盾で強打することで、強い衝撃を与える。

攻撃が効果的な場所に命中した場合、頭部を揺さぶることで一時的に『スタン』状態を発生させる可能性がある。

また、使用者のVITが高いほど打撃力にも補正が加わるという特性を持つ。


岩蛇の鱗盾

岩蛇の鱗を意匠とした大盾。

ドロップ元となる大岩蛇(ロックスネーク)のように非常に硬く、触れると岩肌を思わせる独特の感触がある。

HPとVITに大きな補正がかかるため、防御役に適した装備。


―――――――


【第11話現在のススムのステータス一覧表】



名前:ススム

ジョブ:魔法使い

年齢:二十歳

出身地:不明

種族:ヒューマン

レベル:5

残りSP:2

HP:7

MP:12

STR:3(+10ー10)

VIT:3(+10ー10)

AGI:4

MND:9

INT:18

LUK:1

初期スキル:言語理解、ハックアンドスラッシュ

所有スキル:ファイアボール(LV2・性質変化)


現在の装備

メインウェポン:【呪】銅の短剣(STR-10、VIT-10)

オフハンド:なし

頭:なし

胴:上等な布の街着(上)(VIT+5)

腕:なし

脚:上等な布の街着(下)(VIT+5)

靴:皮の靴

首:なし

右指:一角兎の尻尾

左指:銀の指輪(STR+10)


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