第36話:13:00、打ち合わせと、それから……。
13:00
拠点にしている要第一中学校での緊急会議を終え、三条双治との会話を経て中学1年の東創、篠原歩、西園美鈴のやりとりを見守り終えての昼食後、会議の結果を知らせるために三条双治とともに要第二高校へ。
佐藤鈴先生をはじめとした連絡網でおれの移動は周知してもらったので、大丈夫なはず。たぶん。
今回は同級生の東舞さんと西園美麗さんが同行するというので、4人で移動する。
要第二高校に着いて二条葵さんに連絡すれば、中心となっている高校・中学・小学校の生徒会をはじめとしたメンバーと、相談役として後方で控えている教師を合わせて50人ほどの集団の中に通される。
一条桜さん含む数人は疲労で休んでいたが、翌日の県立要大学攻略戦の詳細を説明する。
主に、おれの眷属屍鬼を最前線に立たせて、数で一斉に攻め込むという強引だが確実なやり方。
銃撃が主な先制攻撃と予想されるので、矢や投げナイフなどの投擲、銃弾などを無効化する《矢避けの御守り》や、銃弾を反射する《銃撃反射の盾》を眷属屍鬼に持たせて守りを固め突入、バリケードなどの物理的な障害はスキル《共有》で共有している《アイテムボックス・無限》に収納することで道を拓く。
突入したあとは敵の逃走を防ぐため半数ほどを包囲に残して、大学施設内を攻略する。
人質を取られたとしても、数と速さで人質を奪いねじ伏せる。
敵側の戦力と配置をだいたいは把握しているからできることだと言っておく。
把握してなくても余裕だけれど、それは言う必要はないだろう。
説明を終えて、作戦に参加する意思を確認し、質疑応答の時間を設けて、相互に理解し合う。
その上で、ここから《要塞》化して安全な要第一中学校に合流するかどうかの確認をする。
合流といっても、ポイントを消費して同じ敷地内に建物を増築し、そちらに引っ越ししてもらうことを説明する。無理に要第一の人たちと一緒に生活する必要はないと。そして、住む場所はすぐに確保できるし安全で文化的な生活を保障することも。
結論は、作戦終了後に全体会議をしてその結果に応じて返事をするということで、基本は要第二の生徒会が合流を促す方向でほかの生徒を説得するとのこと。
また、作戦後救出した人たちは、しばらく休ませてから意思を確認して移動してもらうことを説明し、その間の世話は戦闘に不向きな眷属屍鬼にしてもらうとした。
戦う意思がある女性は、《要塞》化した要第一中学校に。
男性と戦う意思がない女性は、市役所か要第三小学校・中学校・高校のいずれかの損傷が少ないところを、生活の場として整え住まわせるとした。
ある程度の守りとして眷属屍鬼を配置するものの、生活の面倒を完全に見てやることまではしないとした。
翌日の作戦の流れ、合流の可否、救出した人たちの処遇と必要なことを説明し終えてから、一つ提案をする。
市役所でも行った、レベル0の人に対する安全で確実なレベルアップの講習会だ。
物理無効な代わりに耐久力もないウィスプを召喚し、攻撃力はないが霊体に対して特効を持つ霊撃棍で叩くだけという手間も時間もかからないやり方。
その提案は、大いに喜ばれた。半数以上の生徒がレベルアップしていないそうで、弱いまま戦い方を知らないままでリスクを冒すのをためらっていたのだという。
教師たちも、代表の少女たちも、喜びを隠せない。
特に大人の教師たちは大きな安堵を見せていて、校内放送で校庭に集まるよう呼びかけをしていた。
そうして始まる講習会。
レベルアップしている生徒もしていない生徒も全員集められ、ウィスプを召喚し霊撃棍で叩くだけのレベルアップ法を説明し、実践してもらいつつ全員に参加賞としてスポーツドリンクと甘いお菓子を配る。
参加人数は市役所より少なかったので、比較的スムーズに終了し、要第二側の了承を得た上で三条双治・三治兄弟と守りに就いていた眷属屍鬼を丸々残して要第一中学校に帰還する。
夕食前にもう一度創くんの自室兼工房で会って話をする。
「創くんちょっといいか?」
「うっす。なんです?」
「これ」
・守りの指輪 2000ポイント
:物理防御+20、魔法防御+20、状態異常耐性+5%。
名前のとおり守りの力が込められた指輪で、指にはめる以外にも、服のポケットに入れておいたりネックレスチェーンに通して首に下げていたりしても効果がある。
この守りの指輪を、とりあえず3個渡す。
「これはなんです?」
「守りの指輪っていう防御が上がる指輪だ。この指輪を夕食のときにここのみんなに渡す。創くんも、気になる人指輪を渡したい人には自分で渡してくれ。じゃないとおれが渡すことになるからさ。だから、指輪を渡したい人数を教えてくれ」
創くんは大いに戸惑っているようだが、指輪を渡すという意味を理解して渡す相手を吟味しているようだ。
「おれの大切な人たちは選ばないでくれると助かる。それと、創くんのお姉さんにはおれから指輪を渡すよ」
「うっす。姉ちゃんのことはよろしくお願いします。ほかは被らないように生徒会の人とか避けますんで。僕の方は一応みんな中学生で、篠原と西園含めたクラスメイト5人、2年の先輩2人っす。なんで、追加5個お願いします」
「分かった。渡す前までに追加が必要なら、メールくれたら返信メールに添付して渡すから。それと、その子たちの方から話が来ない限りは、おれからアピールはしないから」
「すいません。そうしてくれると助かるっす。なにからなにまで頼りっぱなしで本当すいません」
恐縮して頭を下げる創くんの肩をポンポンして、頭をくしゃくしゃっと雑になでる。
「いいんだよ。おれは先輩なんだから、先輩らしいことをさせてくれ」
「これまででも十分助けてもらってますよ。こんな世界ですから、生きてるだけでも幸運っす。ましてや、生活する場所も長所を伸ばす方法も用意してもらってるんすから」
創くんは中学1年なのに、ずいぶんと立派だ。
こういう男子なら歓迎なんだが。
…………あ、そうだ。
「創くん、念のためさ、指輪もう少し渡しておく」
「……? はい、どうもっす。まあ、余ったら返しますんで」
怪訝な表情の創くんの頭をまたなでた。
18:00
夕食時は基本的にみんな揃う。
点呼まではしないが、この場にいない人は体調不良か一人で食事をとりたいかなど、誰かが事情を聞いている。
普段接している女性の部屋に行くのもだいぶ勇気がいるが、まだあまり接点がない女性のところに行くのはもっと大変だろうと密かに心配していた。
食堂を見渡した限りではみんな揃っていたので、いらぬ心配だったが。
全員が夕食を受け取り席に着いたところで、声を上げる。
「みんな、そのままで聞いてほしい。明日、敵対勢力を討伐しにいく。それに合わせて防御力が上がる、守りの力を秘めた指輪を配ることにした。全員、食べ終わったらすぐ部屋に戻らず少し待ってほしい。以上だ」
発言を終えたところで、夕食が始まる。
普段はおしゃべりとか控えめな感じだが、今日はいつにもまして静かだった。
両隣りにいる佐藤鈴先生と御剣双葉さんもどこか緊張した様子で、普段より食べるのが早い気がする。
夕食を食べ終えて食器を片付けたあと、中学1年の女子から並んでもらう。
ちゃんと顔を見て、目を合わせて、名前を呼んで指輪を握らせ、手を包むように握る。
嬉しそうな子、ぽーっとしている子、照れくさそうな子、興味なさそうな子など反応は様々。みんなおれに一声かけてから去っていく。
中学1年の篠原歩や西園美鈴をはじめとした幾人かは、創くんが自分で声をかけて手渡ししていた。
正直、すごい勇気だと思っている。
顔を真っ赤にしながら、自分の言葉で気持ちを伝えつつ、指輪を渡している。
おれも、目の前の一人一人を疎かにしないように、
「うふふふ腐腐腐…………」
嬉しすぎたのか、瞳孔が開いて口が三日月のように吊り上がっている中学2年の相沢蘭。
……普通にビビるので、その笑い方やめて欲しいんだが。
中学3年の列になって、微妙に浮かない表情の女子の番になって、ふと気がつく。
「創くん、ちょっと」
律儀に待っていた創くんに耳打ち。
すると、創くんの表情が、あ、やべっ。って感じになる。
知り合い以上の間柄なのかもしれない。
「あ、あの、先輩。よかったら、僕から、受け取ってもらえませんか?」
創くんがまた顔を赤くして3年の女子に指輪を渡すと、その子はぱあああっと表情が明るくなり、創くんに両手を握ってもらいニコニコしている。
どうやら、正解だったようだ。




