第33話:襲撃者の動向
7:30
東区にある市立要第二高校は近隣にある要第二中学校・小学校の生存者を救出し保護していた。
そこを襲撃してきた勢力には要第二高校の中心人物一条桜に一方的な想いを寄せる三条三兄弟の長男長治がいたが、次男双治の裏切りによって倒され、襲撃は阻止できた。
しかし、三条双治が言うには、襲撃してきた勢力はまだ本隊が残っているのだという。
その言葉の真意を質す前に、まずは疲労困憊の一条さんたちを高校に戻して休ませたいという三条双治の言葉通りに、戦闘していた人員を要第二高校に帰還させるのに合わせて、おれたち要第一中学を拠点とするメインメンバーたちも訪問する。
「一条!」
「…………二条、ごめん」
戦闘終了とともに張り詰めていたものが切れたのか、一条さんは一人では歩くのもつらいどころか意識を保つのがやっとな状態になっていた。
仲間の少女たちに体を預けなんとか移動してようやく拠点まで帰還したところに、長い髪を二つ結びにした少女が駆けつける。
・二条 葵 レベル21 タイプ:人・戦士
クラス:忍者
市立要第二高校3年、現生徒会副会長。サイズはE。
名家御剣家に従う従者の家系二条家の長女。
一条桜の親友で補佐としてそばに控える。
長い黒髪を二つ結びにしている双剣士で、胸ばかり大きく育つためスレンダーな一条を羨ましく思っている。その一条は控えめな胸がコンプレックスになっているので、お互いさまとイジり合う仲。
親友の一条桜の様子が気になるが、無事なようで安堵している。
好感度はC。(興味)
素質:水・風・光・氷
適性:侍、暗殺者、軽戦士、双剣士、剣士、戦士、魔術師、召喚師、幻術師、罠師
「謝らなくてもいいわ一条。それで、状況を詳しく教えてほしいのだけれど……」
二条さんが周囲を見渡し、御剣家三姉妹を見つけたことで表情をこわばらせるが、一華さんがほほ笑みながら首を横に振ることで跪こうとするのを止めていた。
「うっす二条さん。俺がだいたいの状況を説明するんで主要メンバー集めてくれねーすか?」
三条双治が軽い態度を引っ込めて真剣に言う。
それに大きくうなずいて応える二条さん。
すぐにE-フォンで体育館に集合するよう伝えていた。
三条双治から語られたのは、南区にある夏季休暇になって人が減っていた県立要大学へのある勢力による襲撃と占拠、そして周辺の市立要第三小学校・中学校・高校の襲撃。
教師や講師、事務員など多くの大人が殺され、ろくに抵抗もできなかったことで生き残った男子生徒は奴隷のように扱われ、女性に関しては言葉を濁していた。
つまりはそういうこと。
眷属屍鬼に探りを入れさせ確認させたところ、裏は取れた。
問題なのが、その勢力。
暴力団石嶋組の若い構成員と下部組織になる半グレ集団や不良グループ。
元より、暴力を是としてきた集団が、世界改変によって法律からも警察の介入からも解放されて、バケモノだろうと人間だろうと遠慮なく殺し力を強くしていった。
そして、幾人もネクロマンサーにクラスチェンジし屍鬼を配下にして勢力を拡大したことで暴力団事務所にはいられなくなり、人の減った大学を占拠し拠点としていた。
数日経ち協力者も加えて十分な戦力が整ったと判断、避難所となっていた要第三高校を襲撃、占拠。
抵抗する者は容赦なく殺し、暴力による恐怖政治を敷いた。
その後すぐに要第三中学校・小学校も襲撃し、死者は配下に、男子は労働力と捨て駒に、女子は口に出すことすら憚れる状態になっていると。
現在は、一部の戦力を向かわせて要第二高校を占拠し、三条三兄弟には一条、二条、四条、五条を捕獲するよう命令を受けていたという。
集団のリーダーは石嶋竜一。
暴力団石嶋組組長の息子で、地域の顔役や調停役を担ってきた面もある石嶋組の中では異端といえるほど暴力的な言動行動が目立つ危険人物。
顔見知りらしい三条双治も非常に嫌そうに説明を終えた。
「そんな感じだ。俺たち三条三兄弟はクソ兄貴が石嶋竜一に誘われて応じたから暴走を止めるためについてって、ここの襲撃に加わった。そういうわけだから、ここから離れるつもりだけど……って、平坂だっけ? なんだよ?」
「おれたちは一旦戻って今後の動きを相談してくる。で、お前は連れてく。弟くんは連絡係兼護衛として残ってほしいな。……二条さん、弟くん受け入れてくれます?」
「うちは大丈夫よ。でも一条たち警ら巡回班ははもう起きてられないから、休ませるわ。三治くん一人だけだとさすがに不安だから、ここの守りに眷属の人を何人か残してほしいけど……」
三条双治に今後の動きを軽く説明して、二条さんに三条三治の受け入れをお願いすれば、快諾してくれた。
とにかく要第二の人たちが安心して休む時間を作るためにも、防衛戦に介入したおれの眷属屍鬼1000人は全部残して守りに就いてもらう。
そう伝えれば、二条さんは随分驚いていた。
この数がほとんど全部だと思っていたようだ。でも、実際の眷属は襲撃側の眷属を取り込んで増えて現在は10000人を超えている。
まだ処分できてない、ゾンビとなったゴブリンやコボルトやオークなどを含めると、もっと多くなる。
まあ、ゾンビになった魔物は眷属にするつもりはないけれども。
「そういうわけだから、弟くん、お姉さんたちの言うことを聞いて、守ってあげてくれるか?」
三条三兄弟末っ子の小学生は、まだ小さい体でありながら槍を握りしめて大きくうなずいていた。
「うん。任せてください。……僕も、カッコいいところ見せるね」
知り合いらしい、先ほど好きな子は? と聞いてきた女子に笑いかける三治。
嬉しそうにほほ笑み合う小学生男女を見て、みんなほっこりした笑顔になった。
9:00
三条双治を連れて、おれたちが拠点にしている西区の要第一中学校に車で帰還する。
《要塞》化の影響で外からは透明になっている中学校の敷地内に入ると、内部の状態がようやく分かったらしい三条双治は非常に驚いていた。
それはともかくとして、全員を集めて要第二高校で語った内容をもう一度双治に語らせた。
その上で、全員を見渡して、語りかける。
「先ほどの校内放送で知らせた襲撃事件だが、この三条双治が語ったとおり人による人の襲撃だ。襲撃した側は壊滅させる。これは決定事項。それで、ここからが本題だ。襲撃された要第二高校連合のおよそ1000人、もういっそここに受け入れようかと思っている。でも、そうした場合みんながなにか嫌な思いをするかもしれないのなら、受け入れはしなくてもいい。意見があれば、自由に述べてもらいたい」
一度言葉を切り、深呼吸。
「それともう一つ。大学には南区の要第三小・中・高校から拉致された人たちが、男女問わず今も酷い目に遭っている。救出は大前提として、その人たちをどうするか、決めきれない。放置はかわいそうだが、受け入れても仕事ができる状態だとは思えない。落ち着くまで世話をするにしても、人手を取られるのは面白くないし、働かざる者食うべからずの原則を免除したら、みんなが面白くないだろう。どうするべきか決めるために知恵を貸してほしい」




