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第31話:6日目、6:00 恐れていたこと

・称号《適合者》獲得。

 ・適合者:世界改変の影響により変異した存在。

 お前は融合したこの世界に適合した。戦え。そして生き残れ。

 :全能力+10、ポイント10000獲得。



 (いにしえ)より伝わる《(かなめ)》の守護者、御剣家。

 その従者たる一条、二条、三条、四条、五条の各家は、御剣家と共にこの地を守護し続けてきた。


 それは、今この時のためだったのだと確信できる。


 ……ただ……。


「点呼! 欠員は!?」


「確認します!」


 傷だらけの敗走者。

 それが、今の私たちだ。


 己に課せられた守護の役目すら、未だ成せていない。




 世界が変わり、主家たる御剣家のご令嬢方と連絡が取れなくなって数日、中高一貫の女子校、市立要第二高校生徒会に籍を置く一条(いちじょう)(さくら)は、要市東区の富裕層が多く住む地域と市中心部の中央区との境界に位置する要第二高校を拠点に、周辺の要第二中学校、要第二小学校を訪れ、生存者の救出と要第二高校への移送を行なっていた。


 変わらぬ日常を信じていた多くの生徒児童が苦しみ嘆く中、筆頭従者として全体を取りまとめ、一人でも多くを兵とするべく、生き残った人数であらゆることをこなした。

 要第二高校周辺への防壁の設置、生存者の捜索と救出、戦えない生徒への戦闘の指導、魔物の掃討に夜間の警備、死の恐怖に怯える後輩たちへの心のケアなどなど。

 それらのいくつかは昼夜を問わず行われ、生徒会メンバーは皆疲労が積み重なっていた。


 戦わなければ生き残れない。

 さりとて、このままではいずれ破綻する。

 武器も、戦闘経験も、防衛設備も、E-フォンのポイントも、食料や着替えだって十分ではない。

 わずか数日で、責任と覚悟だけでは、やっていけなくなりつつあった。

 そんな中、ある噂が舞い込む。


 曰く、魔物と屍鬼を倒す、警官の屍鬼たちがいる。


 命尽きて屍鬼と成り果てた元人間たちは、生きた人間や魔物に見境なく襲いかかる。

 そんな屍鬼が、人間を守り、人間を救い、避難所となっている場所へ送り届けてくれるのだとか。

 そんな話なんて、ありえない、はず。

 けれどこんな、化け物が跋扈(ばっこ)する世界になったのなら、もしかしたら。

 善意ある誰かが、手助けしてくれているのかもしれない。

 そんな、ありもしない希望にすがりたくなるほど、一条たちは既に追い詰められてきていた。


 夜、いつもどおりとなってしまった夜間の第二高校周辺の警ら巡回。

 その帰還の際の気が緩んだタイミングで、銃で武装した屍鬼たちに奇襲されてしまった。

 女子たちとはいえ、精鋭で編成された集団に、3倍以上の数で、しかも、散弾銃や小銃(ライフル)、手投げ弾で遠距離からの一斉射撃。

 剣や槍、盾に鎧で武装していた一条たちは、またたく間に窮地に追いやられてしまっていた。

 頭や胸を狙われたなら即死したかもしれない銃弾の雨は、主に足や腕に集中していた。

 おそらくは、奇襲による抹殺ではなく、機動力を削いで捕獲するための襲撃。


 オークの太い手足から繰り出される重い打撃を防ぎ切る鋼の盾も、文明の利器(銃火器)の前では木板と大差なかった。

 誰もが銃弾に傷付き痛みに呻く中、光属性の魔法や回復魔法を取得できる《聖騎士》にクラスチェンジした一条は《回復魔法(ヒール)》を連発し突破口を切り開くべく盾を構え突進した。

 そのとき、警官隊が突入し、屍鬼たちの包囲を食い破り、一条たちを背にかばって屍鬼たちを仕留めていく。

 警官隊のハンドサインの意図を読み取り、声を張り上げて包囲を食い破った。

 包囲を突破し、警官隊を振り返らずがむしゃらに走り抜け、物陰に身を潜めてから、脱落者がいないか点呼をとった。

 結果、脱落者がいないのは幸いと言えるかもしれなかったが、みんなボロボロで、疲れ果てていた。

 E-フォンで購入した回復薬と救急スプレー、止血絆創膏で仲間たちの傷を治して、水分補給をすると、何人かが寝落ちした。

 起こそうとしても、起きない。


 もう、限界だった。


 0:00


 修羅道二夜目は鉈と斧のほかに光の弓を装備した状態で迎えた。

 選択した幻影は御剣(みつるぎ)三樹(みき)

 御剣家三姉妹の中で一番レベルが低いことから選んだ。

 それに加えて、遠距離攻撃はやはり強いので、援護攻撃として適切な点が挙げられる。

 経験値を一人に集中させてレベルを上げるのもいいが、下限を引き上げるのも重要と判断したこともある。

 前日の修羅道一夜は3日分だったこともあり、10回の戦闘を強制された。

 だが、今回は1日分だけなので、巨人、大悪魔、妖仙、幽霊船の4件のみ。

 巨人と大悪魔は前回と変わらず、妖仙は仙人となった妖怪で、宝貝(パオペエ)という宝具を行使し空間そのものに干渉してデタラメなことを起こしてきたが、縦に真っ二つしたら死んだので本体はそこまで強くなかった。なお、宝貝は回収できず。

 厄介だったのは幽霊船で、空を飛ぶ大型帆船から毒矢の魔法を撃つ死霊とバンダナ巻いたドクロ兵士を延々と吐き出して止まらなかったために、船に直接乗り込んで丸ごと破壊する羽目になった。

 マストをへし折り船室に風穴を開け船体を両断する。

 それでも倒せなかったので、核を見つけて破壊する方法に切り替える。

 鑑定スキルを駆使して船室全部回っても核は見つけられず、一旦離れて外から確認しようとしたら、目に入った海賊旗が実は核だったという。

 妙にがっかりしながら海賊旗を細切れにして撃破完了と相成った。



・修羅道:二夜 終幕

 ・討滅報告

  :巨人 1体

  :グレーターデーモン 1体

  :妖仙 1体

  :幽霊船 1体

 ・入手ポイント:40000

 ・にんじん1kg×10000

 ・たまねぎ1kg×10000

 ・レタス1kg×10000

 ・だいこん1kg×10000

 ・鶏肉1kg×10000

 ・水2Lペットボトル×10000

 ・麦茶500mlペットボトル×10000

 ・ヨーグルト1kg×10000

 ・巨人の兜

 ・召喚契約書:ゴーストパイレーツ

 ・召喚契約書:スケルトンパイレーツ

 ・召喚契約書:ガーゴイル

 ・召喚契約書:デーモン

 ・海賊の財宝(中身はランダム)×1000



・称号《5日目生存者》獲得。

 :世界改変を5日生き残ったお前たちに、褒美を与える。

 どうか、生き延びてくれ。

 :ポイント2000、全能力+1獲得。




 6:00


 E-フォンの振動で目を覚ます。

 何気なく手に取り要件を確認してみると、眷属屍鬼からのメールだった。


『ネクロマンサーに操られていると思われる屍鬼多数と生存者複数が交戦している場に介入。包囲されていた少女たちは脱出・逃走に成功。なお、敵屍鬼たちは小銃・散弾銃等の銃器を装備。撃破52、犠牲1』


 恐れていたことが起きた。

 ネクロマンサーにクラスチェンジして屍鬼を操り銃器等の現代兵器を運用する。

 それと同じことをやる者がいるかもしれないとは思っていた。そして、その戦力を人に向けてしまうことを(ひそ)かに恐れていた。

 敵側の詳細を確認してみると、服装などは統一されていないらしく、一体あたりの戦力はこちらの眷属屍鬼とは雲泥の差だったという。

 ただ、包囲されていた少女たちを逃がすためにその身を盾にした眷属屍鬼たちのうち1人が銃撃を限界までかばい、守りきった代わりに倒されてしまったのだという。


 眷属屍鬼の格納場所になる《アイテムボックス》内の《ファーム》と紐付けされている関係上、眷属屍鬼が倒されてしまった場合はファームに帰還することになっている。

 時間さえあれば自動で復活するが、相応の時間を必要とする上、レベルが下がってしまうデメリットもある。

 倒され帰還した眷属屍鬼に、称賛と感謝のメールを送り、朝早いが構わず設備機能を利用して校内放送をする。


平坂(ひらさか)(たける)だ。先ほど東区で屍鬼を操り市民を襲撃する事態が発生した。メインメンバーは準備を整え次第車で移動してほしい。現状ではまだ接触していない避難所が襲撃される恐れがあるため、おれは先行する』


 急いで準備を整えつつ、御剣(みつるぎ)一華(いちか)さんに電話して指揮権を一任する。

 女子の朝の支度が整うのにどれくらい時間かかるか分からんし……。


 即行で準備して昇降口まで行くと、銃をメインウェポンにしているガンマン風の服装をした眷属、略してガンマン眷属が自身のスキルで召喚した愛馬という名のサイドカー付きバイクに跨り待っていた。

 ガンマン眷属はおれの姿を確認すると、乗れとばかりにサイドカーを指す。

 正直レベルが上がった現状はバイクよりも走っていった方が速いと思っていたが、体力を無駄に消耗するよりはとサイドカーに乗り込む。

 すると、ヘルメットを頭に押し付けられて、あごひもを着ける前に急加速。


 で、加速して加速して加速して、おかしいくらいの速度で爆走。

 スピードメーターを覗き込んでみると、最大200km/hまで表示されているメーターが、完全に振り切れていた。


 ……えっ? 今何キロで走ってる……?


 怖っ!? と思ったら、減速しないで交差点曲がってふっとばされそうになった。

 世の中には慣性の法則とかなんかそういうのがあるんですがね!?

 いや前にオークとかいるんですがってぶつかりやがったこいついやいやオークの方がふっとぶとかお前なんだそれおかしいぞ降ろしてくださいお願いしますマジで自分の足で走るから止まって止まってバカ前見ろぶつかるってああー……。

 …………なんだこいつ。大人の背丈の倍近いくらいデカいオーガがきりもみ回転してふっとんでったぞおい。

 もう二度とこいつのサイドカー乗らない。

 いやお前なに親指立て(サムズアップし)てんだよ。

 ぶっ(コロ)すぞマジで。


 …………結果、車で20分近くかかる距離が、3分で着いた…………。


 ふらつきながらサイドカーから降りて深呼吸を1回、2回。そこでようやく落ち着いたので、待機していた警官屍鬼と筆談で状況を確認。

 襲撃を受けた学生らしき少女たちが潜んでいるところまで案内してもらう。

 レベルアップのおかげで拡張された五感が、息を潜めて隠れている人たちを捕捉する。

 ゆっくり近づいて、控えめに声をかける。


「市立要第一高校に、その、一日だけ登校した者で、今はそこを拠点に活動している平坂という。眷属たちが襲撃に介入して逃がした人たちと聞いて駆けつけた。おれは敵ではないけど……その、信用はできないと思う。それでも、出てきてもらえないか?」


 隠れ場所で、わずかに動く気配。

 声をかけられたことで、驚いて叫びそうになった口をふさいだのか、かすかに漏れる声と動く音。

 そのまま少し待って、もう一度声をかけるかどうかためらっていると、隠れ場所から立ち上がり自主的に出てきてくれた。


 黒のセーラー服の上に防具を着込んでいる姿の女子たち。

 みんな傷ついて、防具もセーラー服もボロボロだ。

 黒セーラー服は要第二で女子校だっけか。

 現実逃避気味にそんなことを考えながら、十数人の女子たちの惨状を見て、泣きたくなった。

 誰だよこんな酷いことするやつ。

 すると、女子たちは全員武器を捨てて両手を挙げた。


「投降します。だから攻撃しないで」



一条(いちじょう) (さくら) レベル22 タイプ:人・戦士

 クラス:聖騎士

 市立要第二高校3年、現生徒会長。サイズはB。

 名家御剣家に従う従者の家系一条家の長女。

 筆頭従者の家系で長女ということもあり、責任感が強く多くのことを背負い込んでしまっている。

 世界改変の後、要第二高校をまとめ上げ、要第二中学校・小学校の生徒たちを救出し、指示出し、夜番、警ら巡回とそれらにおいて発生する戦闘を積極的にこなし続けたことで限界まで疲労が溜まっている。

 神経が張り詰めており、何日も不眠気味で眠りが浅く休めていない。

 実害は少ないがストーカー行為の被害者。ただし被害者加害者双方に自覚なし。

 好感度はD。(やや警戒)

 素質:水・土・光・氷

 適性:騎士、僧侶、騎兵、重戦士、戦士



「しないよっ!? 救助に来たんだよ!?」


 投降すると言った少女が、ん? と声を上げて首をかしげた。

 なにか、思い違いがあったのかもしれない。


「警官隊の屍鬼たちはおれの眷属で、そちらが襲撃されているところに介入して逃がしたと報告を受けたから、おれだけ急いで駆けつけたんだ。もうじき仲間が着く」


「…………えっと、確認だけど、襲撃してきた側のネクロマンサーじゃなくて?」


「違うよ。屍鬼を操っている点は同じだから、信じてもらえないかもしれないけど」


 二呼吸分の時間を挟んで、少女たちが顔を見合わせ大きく息を吐いて半数くらいが崩れ落ちた。

 緊張から解き放たれたみたいだ。

 誤解も解けたと判断できるけど、一応声をかける。


「傷の治療と装備や服の修繕、汚れ落としなどできるけど、そっちに近寄って大丈夫?」


「それはありがたいわ。えっと、みんな、武器には手をかけないでね。平坂くんだっけ。お願いできる? 実は、疲労で立っているのもつらいくらいなの」


 代表らしき少女は、よく見ると足が震えている。

 色々限界らしいのはよく分かったのですぐに駆け寄りたいが、警戒させないためにもゆっくり歩み寄った。




「ありがとう。本当に、助かったわ」


「うん、どういたしまして。それで、これからのことなんだけどさ」


 治療と装備衣服の修繕と汚れ落としを済ませる。

 代表で《聖騎士》のクラスに就いているという長身で長い黒髪の先を一つにまとめた少女は一条(いちじょう)(さくら)と名乗り、市立要第二高校の生徒会長なのだという。

 会長自ら夜の巡回をして周辺の安全を確保して帰還するそのときを狙われたとも。

 多勢が銃火器を持っての奇襲。疲労もあってどうにもならなくなったところを眷属屍鬼たちに助けられ、命からがら逃げ延びて隠れていたと。


「私たち要第二高校・中学・小学校連合は、あなたの指揮下に入るわ」


 そのために、まずは拠点にしている要第二高校に帰らないとと気合を入れている一条さんは凛々しくもかわいらしいけれども。


「その要第二高校だけど、襲撃するためと思われる人間と屍鬼の集団が包囲しつつあるそうだ。下手すると包囲完了前に襲撃が始まるかもしれないから、備えるよう連絡するのと現地への案内を頼んで大丈夫?」


 眷属がリアルタイムで得た情報を一条さんに伝えると、彼女たちは顔を青くしていた。



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遂にネクロマンサー同士の戦いが!(ワクテカ)
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