第30話:13:00、姉弟
・称号《適合者》獲得。
・適合者:世界改変の影響により変異した存在。
お前は融合したこの世界に適合した。戦え。そして生き残れ。
:全能力+10、ポイント10000獲得。
夏休み前の終業式。
いつもの、よく分からない肩書を持った知らない人からの長い話の途中、壇上の人が突然倒れた。
それと同時に、僕を含めた生徒たちが見える範囲だけでも何人か頭を押さえたりしゃがみ込んだりしていた。
そこからは、あっという間にパニック。
倒れた来賓の老人たちが、先生たちに襲いかかり、校門の方からも二足歩行の豚みたいな集団が武器を持って迫ってきていた。
誰も彼もが我先にと体育館から逃げ出す中、生徒会の先輩女子たちが最後まで残って声を張り上げている。
その声に従い上の階に逃げた生徒とは違い、迫る非日常に特別な力を得たと勘違いした男子たちが武装した豚の集団に吶喊、次々と殺されていった。
火災報知器のベルがけたたましく鳴り響き、防火シャッターが降りていく中で遅れてきた生徒会の先輩女子たちとクラスメイトの女子たちが協力し合って階段を上っていくのを見て、ここで踏みとどまらなきゃならないと、なぜか強く思った。
何かに操られるように、電源を落としてあるはずのスマホを取り出し、操作して、武器になるものを取り出す。
・バールのようなもの 20ポイント
:攻撃力+15、命中−10%
……先っちょが二又に分かれた、バールのようなもの。
片手で扱うには重くて、両手で握ると頼もしい重さ。
ほぼ無抵抗で次々と殺されていく生徒たち。
血まみれで迫る豚人間に怯えつつも、体は勝手に動き、武器を振り上げる豚人間に対してむき出しの膝にバールのようなものをフルスイング。
膝の痛みで下がった豚の頭に、尖った方を先にして振り下ろす。
生まれて初めて生きたものを殺す感覚に吐きそうになるものの、豚人間たちは耳障りな鳴き声を上げながら迫ってくる。
あまりの迫力に目をそらしてしまいたくなるが、体は最適な行動を取るかのように、豚人間が繰り出した槍の一突きを回避してバールのようなものの真っ直ぐな方を胸に突き立てる。
カウンターで決まったクリティカル。
豚人間は脱力するが、すぐに別の豚人間が襲いかかってくる。
なんとか数匹倒すが、突き立てたバールのようなものを握りしめて倒れた豚人間からバールのようなものを引き抜く前に、次の豚人間からぶん殴られ吹っ飛んで、ガラス窓を突き破って校舎の外へと投げ出された。
殴打を受け止めた腕は尋常じゃないほど痛み、勝手に涙が溢れてくる。
けれど、体は勝手に動き、すぐに立ち上がって全力で逃げ出した。
追手の豚人間を振り切り、フラフラしながら襲いかかってくる傷だらけの人たちを避けて進み、人気のないところに隠れる。
『ま、こんなもんか。最低限は手助けしてあげたけど、あとは自分でなんとかしなよ』
痛みに悶え限界まで酷使した疲労に喘いでいると、神経を逆撫でするような軽薄な声が頭に響き、勝手に動いていた体は糸が切れたように崩れ落ちた。
(……な、んなん、だ……くそ……)
ズキズキと痛む腕。痛みは張り裂けそうな心臓の鼓動に乗って脳を突き上げるよう。
軽薄な声は、最低限の知識を激痛が響く頭にさらなる痛みとともにぶち込んでいったようで、痛みをどうにかする手段はなんとか理解できた。
E-フォンという、進化した証。
それを操作して、回復薬、外傷用湿布、消炎鎮痛軟膏、包帯、当て木を取り出し、ボッキリと折れた左腕に震える手で消炎鎮痛軟膏を塗りたくる。
少し待つと痛みが引いていったので、折れた箇所に外傷用湿布を貼り付け、当て木をして、片手で包帯を巻いていく。
折れた腕は回復薬では治らないものの、外傷用湿布を貼り付ければ治るのだという。当て木して包帯で固定すると、治るまでの時間を大幅に短縮できるとも。
片手で当て木して包帯を巻くという苦行のようなことをこなし、回復薬を飲んでようやく落ち着くことができた。
左腕はしばらく使い物にならないが、治ってしまえばまた戦える。
E-フォンから取り出した飲みもので水分補給して、これからどう動くかを考える。
クラスメイトや先輩たちを助けるために、中学校に戻るか、姉のいる市立要第一高校に行くか、父の職場か、母の待つ自宅か。
左腕完治まで、1:32:17
E-フォンに表示される自分の状態を見て、まずは体を休めることを優先した。
家族のことは心配だが、死にたいわけでもないので休みつつ行動するために準備もしよう。
E-フォンを片手で操作していくと、いつの間にかなくしたバールのようなものが《ストレージ》に収納されていることが分かり、消臭スプレーで鼻のいいバケモノに追跡されなくなることも分かり、クラスチェンジすればステータス上昇とスキル取得が可能となるのも分かり、情報を集めている内に腕が治ったことも分かった。
ストレージからバールのようなものを取り出し、中学校に行って豚人間をおびき出して倒そうと路地裏から大通りに出ると、周囲のフラフラしてる人たち……命を落とし立ち上がった屍鬼……が、一斉に顔を向けてくる。
屍鬼は、基本的にオークより弱い。
最初から(操られていたとはいえ)オークを倒したことで、屍鬼も問題なく倒せることは分かっていた。
だから、フラフラと近寄ってくる屍鬼も、倒せる…………はずだった。
振り上げたバールのようなものを、屍鬼の頭に振り下ろすことができなかった。
父親のような年代の、スーツ姿の男性を、殺すことが、できなかった。
全力で逃げ出した。
逃げる途中、緑色の肌の小鬼ゴブリンは問題なく殺せた。
二足歩行の犬コボルトも殺せた。
オークも殺せた。他のバケモノも殺せた。
……けれど、屍鬼は、殺せなかった。どうしても無理だった。
屍鬼から追われて、逃げて、コンビニのトイレに隠れる。
鍵をかけて息を潜めれば、追ってくるような音や気配はしなくなった。
休んで、食事をとって、いつの間にか眠ってしまって、起きたらコンビニのトイレという状況に叫びそうになって、慌てて口をふさぐ。
息を整えて、耳をすまし周囲に何もいないのを確認してから鍵を開け、トイレの引き戸をそっと開けて店内を見てみる。
屍鬼と目が合った。それも、複数。
すぐに引っ込んで鍵をかけると、鍵のかかったドアを開けるという発想が屍鬼にはないのか、直接見えないならいないと判断するのか、しばらくトイレの前にたたずんだあと、どこかへ立ち去ったようだった。
音が漏れないように口を押さえつつ、大きく息を吐く。
とりあえず、屍鬼であれば個室に隠れた段階で安全になるようだ。
また少し時間を置いてから、鍵を開けて外を見てみる。
屍鬼と目が合った。さらに増えていた。
すぐ引っ込んで鍵をかける。
屍鬼はトイレの前までは来るが、少しするとやはり離れていく。
……完全に、閉じ込められてしまった……。
窓から逃げ出そうにも、高いし隙間が小さくて体が通せそうにはない。
鍵を開けた音がまずいのではと、鍵を開けてしばらく様子をみてからそっとドアを開けてみるも、目が合いはしないがまた数が増えていた。
屍鬼を殺せれば問題なく出ていける。
けれども、屍鬼を、人を殺すことはできなかった。
どうしても無理だった。
それからも、何度か隙を見て逃げ出そうとしても、屍鬼の数が少しずつ増えたり減ったりしていくだけで、脱出は無理だった。
半ば自棄になって試しにトイレを流してみても、音に反応して近寄ってはくるものの、ドアを開けることはなく、ここはある意味安全地帯だということは改めて理解できた。
……だからといって、このままではいずれポイントも尽きてしまう。
頭を抱え、それでも現状を変えることができずに、何日も閉じ込められてしまっていた。
……そして数日後、トイレのドアがノックされた。
13:00
昼食後、多少の焦りが顔に出ているのを自覚しつつ、眷属の屍鬼が運転する車に揺られること10数分。
おれ、御剣一華さん、双葉さん、三樹の三姉妹、東舞さん、西園美麗さんの高校生組、思井佳奈美、田力瑠衣、相沢蘭、篠原歩の中学生生徒会メンバーと西園美鈴、佐藤鈴先生、ポンコツもとい乙骨優と先輩の弓削奈月さんの大人組、高校2年の原田裕子先輩に加えて運転手の屍鬼3人で18人という大所帯。3列シート9人乗り車3台での大移動。
南区まで移動した先にあった、コンビニの駐車場で眷属の屍鬼たちと合流する。
そこには、疲れた様子の少年が、警官屍鬼に肩を掴まれてしょぼくれていた。
「創!?」
「ね、姉ちゃん!?」
少年は、おれの同級生東舞さんの弟で、中学1年の篠原歩、西園美鈴のクラスメイトでもあった。
「……よく、無事で……。……良かった……。本当に良かった……」
「姉ちゃん……。その、姉ちゃんも無事でよかったよ」
涙をこぼす姉と照れくさい弟の再会に涙ぐむ人もいて、クラスメイトの篠原と西園妹も近寄っていく。
「東くん、無事でよかった……」
「東っち、よく生きてたねー」
「こら美鈴! あんたなんてこと言うの!」
泣きながら車椅子で近寄り東少年の手を握る篠原。
同じく泣きながら、照れくさいのか無理やり茶化して姉の美麗にはたかれている美鈴。
「おねーちゃん痛いんだけどー?」
「なにあんた。まだゲンコツほしいわけ?」
「あ、あの、お姉さん。美鈴さんはその、場を明るくしようとしてですね」
「分かってる。分かってるから。でも、時と場合を選べってこのバカ美鈴!」
「ぎゃーすっ!」
妹の悪ふざけを叱る姉に対して、救助され、家族やクラスメイトと涙の再会を果たした東少年が仲裁に入るという状況に、分かっていてもこの状況での悪ふざけが頭にくる姉とお仕置きされた妹という構図。
東姉弟と、西園姉妹は4人とも知り合いのようだ。
そんな2組の家族を羨ましそうに見つめる篠原。
じゃれ合い、無事を確かめ合う家族の姿にほっこりしつつ、無事なんだよな? とちょっと気になったので鑑定スキルで東少年を見てみると、HPが少し減っていた。
「舞、弟くんちょっとケガしてる。《ヒール》を頼むよ」
「えっ!? ちょっと創、大丈夫? 《ヒール》」
舞のヒールでちゃんと回復したのを確認してから、この場にいる眷属たちに事情を聞いてみる。すると、女性の眷属がメモ帳にボールペンで状況を説明してくれた。
コンビニ周辺にうろついていた屍鬼たちを始末して《共有》スキルで使用可能となっている《アイテムボックス・無限》に放り込み、《索敵》スキルで誰かいるのが分かったトイレをノックしてみたら東少年がいて、無理やり逃げようとした際に転んだり捕まえようとした際に暴れたりして多少のケガをしてしまったそうだ。
下手に逃げられて見失っても困るので、女性の眷属屍鬼がしっかり捕まえた上で筆談でやり取りして落ち着かせているうちに、今に至ると。
・東 創: レベル6 タイプ:人
クラス:魔工技師
市立要第一中学校1年で篠原歩・西園美鈴と同じクラス。
東舞の弟。
人間関係が不器用でぶっきらぼうな態度になりやすい、ちょっと難しいお年頃。
プラモデル作りなど、ものづくりが趣味。
素質:土・木・雷
適性:細工師、鍛冶師、付与術師、罠師
……クラスの、魔工技師って、なんだ……?
・魔工技師:魔物素材や魔力を帯びた素材を用いて、魔道具を始めとする魔法的物品を作り出す。
魔道具師との違いは、魔道具以外も作れる点にある。
これ、おれの考えが合っていたなら、中々とんでもないんじゃないだろうか。
「東少年、創くんと呼んでいいか? 一つ、質問に答えてほしい」
「……えっと?」
「代表の平坂武だ。きみのお姉さんにずっと助けてもらっていたやつだよ」
「ああ、なるほど。たぶんはじめまして。創と呼んでもらって大丈夫です。で、質問ってなんすか?」
声のかけ方を間違えたか、タイミングが早かったか、不機嫌だと言いたげな返事が来るが、ちょっと気にしてる場合じゃない。
「クラスチェンジした魔工技師って、何を作る職業なんだ?」
「…………すんません。魔工技師が創る物って、専用ツールと、魔力が宿った素材と、機材が揃った工房が必要なんす。あとレシピ。今はなんもできねっす」
「そうか。じゃあ、全部用意するから、おれの拠点に来ないか? 市立要第一中学校を《要塞》化して拠点にしている」
「…………は?」
「可能な限りの待遇で迎え入れたい。必要な設備や素材は用意する。レベル上げが必要なら対応するし自動で上がるようにもする。全部聞くとは言わないけど要望があれば可能な限り随時応じる。3食個室付き。これでどうだろうか?」
「……ちょっ、ちょっ、ちょっと、まって、待ってください。ちょっと、その」
一気にあれこれ言い過ぎたせいか、混乱した表情のまま篠原と美鈴を連れて離れていってしまった。
……これは、やらかしてしまっただろうか。
(……あ、あのさ、あの人なに?)
(真面目で優しい先輩だよー。こんな状況でもすんごく一生懸命だから、お姉ちゃんとかもうメロメロでさー。あたしはあんまり興味ないけど)
(えっ? 割と男子と距離取りたがる西園のお姉さんがメロメロって、あの人なにしたの?)
(私たちを助けてくれたんだよ。第一中学と第一高校の生き残りの人たちを保護して、安全で文化的な生活を保障してくれているの。ほとんど無条件で)
(篠原も、助けてもらったんだな。ちょっとまだ理解が追いつかないけど、人が良いんだな)
(うんうん、お人好し。間に合わなかった人もいるけど、病院とか小学校とかでピンチになってる人をたくさん助けてたみたいだよ)
(蘇生薬で生き返らせてあげた人もいるの。それも、無償で。見返りは特に求めてないみたいなんだよ)
(見返りなしで生き返らせてくれるとか、なんか怖いな。でも、良い人なのはよく分かった。ありがとう)
(どういたしましてー)
(戻ろっか)
(うん)
(これくらい離れてても、この会話ばっちし聞かれてるからね? あたしでも、なんか五感が拡張されてる感じがあるから、先輩はもっとずっとすごいと思うよ)
(マジかっ!)
……うん、なんかごめん。ばっちり聞こえてるんだわ。ひそひそ話でも。
「……えっと、急にすいません。その、待遇の方は、あんまりよくしてもらっても気が引けるんで、ほかの人と同じくらいで全然大丈夫っす。姉ちゃんもいるし、その、お世話になります」
「うん、よろしくな。やってもらいたいことはたくさんあるけど、少しずつやっていこう。まずは、無理のない範囲で」
「あいさー」
弟くんにも納得してもらえたようなので、E-フォンの連絡先を交換しつつ次の要件をこなしに車で移動する。
事前に連絡をしておいたおかげか、市役所避難所のゲート前に役所職員の沢村父娘と女性が待っていた。
「ちょ、ちょっと、なにやってんの。ゲートの外は危ないだろ」
車から降りて速行で3人の前まで移動。
「前回もさ、知らない相手に代表が直接出向くのは危ないって言ったろ。何で今回は防壁の外にいるんだよ」
「武くん、落ち着いて。……彼、びっくりして心配になってるだけだから、あまり気にしないであげてください」
焦るおれを後ろから抱きしめるように身を寄せて耳元で落ち着くようにとささやく双葉さんに、ドキリとしてしまう。
「ああ、大丈夫。ちゃんと分かっているよ。気を遣わせてしまったね。先日はたくさんの食料支援をしてもらったから、最低限礼儀は尽くそうと思ったんだよ。みんなで作って食べたとん汁はとても美味しかったよ。みんな笑顔だった。ありがとう。本当に感謝しているよ。そして、こちらは妻です」
代表としての立場からか、沢村父が受け答えしている。
紹介された妻だという女性は、穏やかに微笑んだまま頭を一つ下げたきり特に話すこともなかった。
こちらは避難者の名簿を受け取り、娘の九九理さんと相談しての食料支援。今回はカレーにしたいというので人数分のカレールウをはじめとした具材をE-フォンから出して渡す。
それと、先日ショップに売却したドロップ品の武器防具を《修繕》スキルできれいにしたもの、あれと同じドロップ品を隙間時間に修繕したものをメールに添付して渡しておく。
戦うための武器防具は、いくつあってもいいだろうから。
あとは、スキル関係か。いやレベルか。
「あの、時間があれば有志を募ってレベル0の人をレベル1にする講習会とかできるけど」
「本当ですか? ぜひお願いします」
表情だけなら冷静な印象の九九理さんが、おれの両手を握ってお願いしてくる。
どういう手段か説明しているときもおれの手をずっと離さないで真剣に聞き入っていた。
おかげで、おれの視線はあちこちさまよってしまったが。
「私みたいな戦えないおばさんでも、レベルは上げられるのかしら?」
「もちろんです。やる気さえあれば」
おっとりしていて、とても戦えそうにない沢村母の問いかけに、真剣にうなずく。
やり方は非常に簡単。
《死霊召喚》で最弱の死霊ウィスプを召喚し、物理無効の霊体を攻撃できる霊撃棍を沢村母に渡してウィスプを叩かせる。
たったそれだけでレベルは上がる。
やる気さえあれば誰でも簡単にできるお仕事だ。ただし、この方法では1以上にはならないけれど。
「こんなに簡単なんですね……。では、希望者を募集します」
「……あ、ちょっと待って」
避難者の有志は何人になるだろうか。
急な思いつきで、仲間たちをかなりの時間待たせることになるかもしれない。その点を説明して、みんなには先に要第一中学校に帰って受け取った名簿を確認していてもらうように言うと、弓削奈月さんが残ると言ってくれた。要件が終わったら霊馬に乗せて送ってくれるそうだ。
「沢村さんとは知らない仲じゃないのよ」
弓削さんの言葉に、うなずく九九理さん。
どうやら、警察官時代(といっても数日前程度)にある程度の交流があった模様。
「お待たせしました。1人あたりなら時間はかからないけれど、希望者がたくさんいるなら整理する人も必要かも。あと、参加賞くらいは出すんで、レベル1以上の人が来てもいいってことにして、呼び出ししてもらっていいです?」
「承知しました。『市役所職員の沢村です。突然ですが、レベル0の人を対象とした、安全にレベルを1にする講習会が開催されることになりました。ささやかながら参加賞も出るので、みなさん奮ってご参加ください。なお、レベルが1以上の方も参加可能となっております。また、料理班などの仕事を請け負っている方は、優先して参加できます。このような機会は次回開催されるとは限りませんので、みなさん奮ってご参加ください。以上、市役所職員沢村でした』……平坂さん、お手数おかけしますが、よろしくお願いします」
親子三人一緒になって深く頭を下げる様子を見て、こうやって頭を下げてお願いするために親子揃って待っていたんだなと、なんだか妙に納得してしまった。
なお、講習会は大変に盛況だった。
安全に、という点がうけたのか、戦いたくない市役所職員や避難者たちが殺到したことで市役所職員総出で対応してもなお、夕方までかかってしまった。
その間、目が合うたびに表情をゆるめて微笑んでくれる九九理さん。
希望者全員がレベル1になり参加賞のスポーツドリンクを受け取って去ったあと、弓削さんの霊馬に相乗りさせてもらって走り去るのに合わせて、10000ポイント、スキル《解毒》《アイテムボックス+100》と蘇生薬を1個だけメールに添付して贈った。
どう反応するのかなと思った直後、『これほどのもの、受け取れません!』とびっくりマーク付きの返事がくる。
いたずら成功と思いつつ『クレーム及び返品は受け付けておりません』と返事をすれば、『必ずみんなのために役立てます』と返事が来る。
真面目な人だ。融通も利く。好感の持てる真面目さだ。すごくいい。
『私にできることがあれば、遠慮なく伝えてください』
『避難者の受け入れと名簿の作成は、随時行なってほしい』
『分かりました。その程度であればいくらでも』
『避難者を装った不審者が今後来るかも。《鑑定》スキルを取得することを推奨する』
『承知しました。各方面と相談の上、取得する人員を決めることにします。有益なご意見ありがとうございます』
真摯な言葉を受け取るのは、やはり気分がいいな。




