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第25話:4日目 修羅道一夜。誰かの尻拭い

・称号《3日目生存者》獲得。

 :世界改変を3日生き残ったお前たちに、褒美を与える。

 どうか、生き延びてくれ。

 :ポイント2000、全能力+1獲得。

 0:00


 23:00あたりから、もうどうしょうもないほどの眠気に襲われて、なんとかもう少しと思ってみても、結局だめだった。


 佐藤先生、ぎゅっと抱きしめて背中とんとんするのはだめですよ……。

 あったかくていい匂いがして穏やかな気持ちになって、我慢できずに夢の世界に落ちていく。


「いっぱいがんばったわね。お休みなさい。今はどうか、いい夢を」


 祈るような言葉を受けて、意識が途絶えた。











※※※











※※




















『お前は、修羅道に堕ちた』


 声が響く。


『ここは、化生(けしょう)が無限に涌き出る修羅道。あるいは、神々の吐き溜め』


 淡々とした、事実を語るだけの声。


『神々の奇跡発動緩和の対価として、本来発生するはずの報酬と残穢(ざんえ)は回収され、ここに()ちる』


 男性とも女性とも思える、冷淡な声。


『ここは、神々の負債を尻拭いする場所』


 声のトーンが、わずかに沈む。


『お前は、ここで他の神話体系における神々の尻拭いをする権利を得た』


 実に嫌そうな、声。


『権利を行使するもしないもお前の自由だ』


 その権利を行使したら、どうなる?


『闘争あるのみ。戦って、戦って、戦い続けるのだ』


 戦うのは構わないけれど、ほかの神話体系?


『我ら神々は、他の神話体系の神々が起こす奇跡の代償を、肩代わりしている。奇跡によって起きるは、対象の消失。討滅ではない。対象の存在は抹消されず、仮想空間に一時的に隔離されるのみ』


 それを代わりに倒してくれってか。了解。

 それはいいけど、ほかの神が起こす奇跡の肩代わりって、なんでそんなことできる?


『この国においては、すべての神話体系が活動できる。神は、領域の外ではその権能その神力が大きく制限される。それは、領域内では明確な信仰があるため』


 応援されると力を全力で発揮できるみたいな?

 でも、知らない、知られていない場所だと、上手く力を発揮できない感じ?


『我らが愚弟のように、領域の外に出ると実力以上の力を発揮する神もいるにはいるが、それは一部の例外のみ。ゆえに、信仰なき地に神の威光は届かない』


 それで?


『しばし時間をやろう。支度をするがいい』


 支度……。


『心せよ。ここでのお前は、剥き出しの魂そのもの。敗北は魂の死を意味する。すなわち、蘇生薬での復活は不可能。そして、進化の証を利用することもかなわない』


 進化の証……。E-フォン使えないのか。


「…………はぁ、だる」


「えっと、折原(おりはら)先輩?」


 急に、隣に折原先輩が姿を現した。どゆこと?



折原(おりはら)沙弥(さや)・屍鬼 レベル17 タイプ:人・術士・屍鬼

 クラス:呪詛(じゅそ)

 要市立要第一高校2年、サイズはC。

 原田裕子の幼馴染で親友。

 根取によって人格を歪められて生きてきた反動で、その身に呪いを宿すようになった。

 成長に合わせて肥大化する呪いを持て余し、誰かを傷つけるよりはと生き返ることを拒否。

 ただ、その想いはちゃんと届いている。

 好感度はA。(迷惑でしょ?)

 素質:闇・氷

 適性:ネクロマンサー、妖術師、墓守、幻術師、呪術師



「うん。なんかごめんね。ゆっこには悪いと思ってるんだけどさ。そのまま眠らせてほしかったのよ。あ、起きてるときの話ね」


「うん。それで、今どういう状況か分かってたら教えてくれる?」


「うん。自称神さまから教えてもらったよ。要するに、ほかの国で信仰されてる神さまが泣きついてきたから、仕方なく助けてあげるけど、その後始末はきみとわたしたちでなんとかするしかないってこと」


 すごい分かりやすいなあ。

 でも、今も屍鬼な折原先輩が、どうしてハキハキとしゃべることができてる?

 まあいいか。それよりも聞きたいことがある。


「なんで折原先輩が出てきたの?」


「それね。ファームの外で活動してるきみの眷属は、こちらには来れないんだって。だから、ファーム内に収納されてる眷属の屍鬼だけが応援に出れるみたい。自称神さまが応援を募ってて、まあ、仕方なく? 契約してる魔物は無理っぽいわね。わんこ撫でたかったな」


 外で活動している眷属は、経験値効率もあってレベルが高い。

 ファーム内のはそこまで強くないか、性格や能力的に戦闘に向かない屍鬼が多い。

 そして、声の主が言うには、この空間ではE-フォンを使えないと。

 それはつまり、眷属の装備は寝る前にやっておかないといけなかったという話か。


「あと、きみと縁を結んでいる……えっと、つまり、連絡先を交換していて一定以上の好感度がある人の幻影を召喚できるみたいよ。その幻影が倒されても本人には影響ないけれども、ここでの経験値は目が覚めたら反映されるって」


 経験値はもらえるのか。

 夢の中だからそれすらもらえないと思っていたから、報酬なしよりはよほどモチベーションが上がる。


「朝までにここで倒せなかった分は、要市に出現するってさ。がんばろうね」


 折原先輩は、実にだるそうに言い放った。

 たしかにそれは、がんばらないといけない。

 がんばるはいいけど、武器は……と思ったら、次の瞬間には武器防具を装備していた。

 ここで戦闘準備を整えるのは、意思ひとつでよかったらしい。

 折原先輩を守るための眷属を複数召喚し周囲に配置する。

 味方の幻影は、付与術師の佐藤先生を選んだ。

 半透明で屍鬼のように無表情の佐藤先生に指示を出して付与魔法をかけてもらう。


「いいよ。やろう」


『よいか。では、最初はチュートリアルといこう。最初に行使された神の奇跡の対象は、巨人だ。これを、餓鬼(ガキ)に変換すると1万に相当する』


 離れた場所に光の柱が発生し、光が消えた後には山のように巨大な人……巨人が浮かんでいた。

 その巨人のつま先から砂粒のようなものが地面に落ちていく。

 その砂粒は、餓鬼。地獄の鬼。

 骨と皮だけの細い手足に、膨れた腹。

 食べたものは喉元の火で焼き尽くされ、胃に届くことはない。ゆえに、食べても食べても満たされない常に飢えた存在。

 そんな餓鬼が、視界を埋め尽くすほどの勢いで迫ってくる。


「《死霊召喚》。おれは先行する。自分たちの身を守れ」


 1万と聞いて、リビングアーマーを限界まで召喚する。

 事前に登録していた光の鎧姿のリビングアーマーたちに光の弓で先制攻撃させつつ、眷属たちを守るよう指示して、先行する。

 視線の先の巨人は、今はつま先から足首まで消えて、その分餓鬼へと変わり侵攻してくる。それはまるで、陸を滑る雪崩。その中に吶喊(とっかん)して死を振り撒く。

 全方位から迫る餓鬼どもを、斬って、斬って、斬り捨てて。

 死骸は即座に炎と化し燃え尽きて、周囲にはなにも残らない。

 ドロップアイテムが惜しいとは思ったが、死骸に埋もれることがないだけ、マシだった。

 折原先輩たちのことが気がかりではあっても、手も足も止めず動き続ける。

 前に進むごとに、圧力が増す。

 全方位囲まれようとも、ペース配分を考えずに、殲滅速度を上げていく。


「《範囲・部位・右足・鈍速》」


 戦闘音と餓鬼の鳴き声で騒がしい中、折原先輩の声が明瞭に響く。

 闇色の(もや)が前方に伸び、広がり、範囲内の餓鬼の片足だけを遅くした。

 その結果、体の動きに足がついていけなくなり、転倒。後続の餓鬼どもも倒れた餓鬼につまづき一部が転倒。さらに後続は、転倒した餓鬼どもを踏み潰して前進してくる。

 わずかな時間とはいえ、雪崩が途切れた。


「ナイス先輩!」


 ひとつ、ふたつ、大きく呼吸する。

 息継ぎするくらいの時間を稼いでもらえたことで、わずかとはいえ確実に楽になり、さらに進んで餓鬼どもを斬り捨てる。

 視界を埋め尽くすほどの数は厄介だ。

 それでも、眷属やリビングアーマーたちの援護攻撃や折原先輩の呪詛による妨害があって、時間はかかったが犠牲なしで1万もの数を倒しきった。



『見事だ。しばし休むといい』


「いや、次を出してくれ。もし同じ巨人なら、そのままで戦ってみたい」


『開始されれば、途中で止めることも撤回することもできぬぞ?』


「どうとでもやってみせる」


『分かった。……お前たちに、月の導きがあらんことを』


 気遣わしげな声の主に、次を急かすと、なんか、祈りを捧げられた?

 月と言われたので何気なく空を見上げると、修羅道、要するに地獄の一つだというのに、煌々と輝く満月が星のない空に浮かんでいた。




 巨人? どれだけでかくても、足の指を斬れば痛がるし、足の健を斬れば歩けなくなる。

 両足斬ればもう立っていられなくなったから、四つん這いの手を斬った後に首を斬ったら普通に倒せたぞ。

 でかすぎてどこも一度では斬り落とせなかったから、何度も斬る必要はあったが。特に首。

 むしろ、その後のキャリアという名の疫病を運ぶという病魔、空飛ぶ小悪魔、機械類を壊すというグレムリンの大群の方が厄介だったな。

 とにかく数が多かったし、空から急降下してくるからおれが前進して引きつけるとかできなかったし、悪魔なせいか折原先輩のデバフが効果薄くて先輩落ち込んでたし。

 あ、なんかデカい悪魔もいたな。首を落としても死なないから面倒だったが、全身斬り刻んで細切れにしてから胸から核というか紫色に光る結晶を抜き取ったら死んだ。

 リヴァイアサンとかいうバカデカいマグロは、なんか鑑定スキル先生によると300mくらいのデカさだったらしいけど、この場所は陸地扱いで何もできずしばらくビチビチとはねていたが呼吸できずにそのまま死んだ。自重で圧死したのかもしれんが。

 あ、マグロ食いたいと言ったら声の主が300kg級の巨大マグロを100本くらいサービスしてくれるって言ってたな。

 寿司にすると何人前だろ? まあ、間違いなく食い放題だな。捌かないといけないけど。

 いや捌くとか無理だろ職人でもないのに。ショップで素材化するか?

 料理人の眷属とかいないかな?


 最後は山のように巨大な純金のゴーレムだった。

 ゴーレムってなに? 巨人じゃないの? と声の主に聞いたら、巨人はジャイアントでデカい人の魔物、ゴーレムは主に自然発生したデカくて動く人型の魔物なんだとか。

 ほかにも魔法的なナニかで創り出した人造のゴーレムもいるらしい。

 呼び名は大きさで変わり、デカいとゴーレム、人間と同じくらいだとパペット、大人の身長半分くらいの大きさだとドールだそうだ。


 マイダスゴーレムという純金の人型ゴーレムは、パンチキック踏み潰し腕を切り離して発射以外に目のあたりから金色のビームを吐き出してきた。

 それに当たった場所はすべて金に変わるため、折原先輩たちに影響ないような立ち回りが少しめんどくさかったが……。

 動きは遅いし普通に斬れるしで、少しずつ削り取っていけば大した強さでもなかった。

 削った金はアイテムボックスに収納する前に消えてしまう。小遣い稼ぎできるかと思ったけど残念。

 ゴーレムは最初の方の巨人と同じサイズだったので、同じ量の純金が手に入ったらよかったのにな。なんて思ったら、『お前の体程度の純金なら確保してやろう』と、1トン相当の金の延べ棒をもらえることになった。

 1グラムあたりいくらになるんだろ。




『本来得られるものとは違い量もはるかに少ないが、渡せるだけのものを渡そう。よくやった。大義である』


 お、マグロと金の延べ棒以外にもなんかもらえるの? そりゃあありがたい。

 できれば食料がいいな。避難所行った時に振る舞うから。

 今は暑いから、アイスとか冷たい飲み物でも喜ばれるぞきっと。


『…………それがよいのなら、そうしよう』



・修羅道:一夜 終幕

 ・討滅報告

  :餓鬼 10000体

  :巨人 3体

  :サイクロプス 1体

  :病魔キャリア 7038体

  :小悪魔(インプ) 2241体

  :グレムリン 721体

  :グレーターデーモン 1体

  :リヴァイアサン 1体

  :マインゴーレム 1体

  :マイダスゴーレム 1体

 ・入手ポイント:100000

 ・米1kg×10000

 ・じゃがいも1kg×10000

 ・たまねぎ1kg×10000

 ・キャベツ1kg×10000

 ・しいたけ1kg×10000

 ・とうふ400g×10000

 ・水2Lペットボトル×10000

 ・緑茶500mlペットボトル×10000

 ・お菓子の宝箱(中身はランダム)×10000

 ・エナジーバー(味はランダム)×10000

 ・スポーツドリンク500mlペットボトル×7038

 ・飲むゼリー(味はランダム)×7038

 ・万能薬×70

 ・牛乳1L×2241

 ・ヤギ乳チーズ1kg×10000

 ・クロマグロ(巨大:300kg級)×100

 ・魔鉄鉱石1kg×100

 ・ミスリル鉱石1kg×100

 ・純金インゴット1kg×1000

 ・巨人の小手

 ・みそ汁(大鍋1つ100人前)×100

 ・とん汁(大鍋1つ100人前)×100

 ・すいとん汁(大鍋1つ100人前)×100

 ・鹿肉のシチュー(大鍋1つ100人前)×100

 ・魔導書:水

 ・魔導書:土

 ・魔導書:闇

 ・呪術書:飢餓

 ・呪術書:疫病

 ・召喚契約書:餓鬼

 ・召喚契約書:インプ

 ・召喚契約書:グレムリン

 ・召喚契約書:レッサーデーモン

 ・召喚契約書:ストーンパペット

 ・召喚契約書:ストーンゴーレム


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