第4話 「人類さんの最後の砦」
しかし、そこで一つの疑問が出てくる。
「……じゃあ人間の電話担当は?」
今までなら当然存在していた。
電話が鳴る。
人間が取る。
「はい、○○株式会社です」
たまに周囲の雑談や、如何に頑張って働いているか電話越しにがひしひしと伝わってくるような昼間のオフィス。それが当たり前だった。
しかし今日。
いなかった。
少なくとも、ワイが話した相手は人間ではなかった。
「……ってことは」
ワイは椅子から立ち上がった。
「電話窓口から、人間が消えた?」
それは思ったより大きな話だった。
受付。
問い合わせ。
予約。
注文。
簡単なサポート。
そういう仕事は、以前から自動化されていた。
チャットボットもあった。
音声案内もあった。
しかし。
「普通の人間と区別できないレベルで会話する電話窓口」
ここまで来ると話が違う。
ワイが恐る恐るスマホを持ち上げる。
「……いや」
「たまたま高度なAIを試験導入してるだけかもしれん」
そう。
相手は海外の巨大企業も注目しているという、先進ベンチャー企業だ。
仕事柄、そういう企業と関わることも増えてきた。
新しい技術を試していても不思議ではない。
「試験運用……」
それなら納得できる。
まだ完全な社会実装ではない。
一部の問い合わせだけAIにやらせている。
問題があった場合だけ人間に転送する。
そういう仕組みなのだろう。
「うん」
「そういうことだ」
ワイは自分に言い聞かせた。
「別にシンギュラリティじゃない」
少し安心する。
そしてPCを見る。
そこには鬼の短納期。
来週月曜納品。
ヴァーチャルキャラクター用のストーリー。
プロット。
原稿。
「……まあ、仕事は間に合うし」
そう呟いた瞬間。
PCの画面に表示された締切日を見て、少しだけ不安になる。
「……ほんとに間に合うよな?」




