第3話 「ところで受付時間がおかしい」
しかし、もう一つ思い出した。
「……そういや、受付時間」
電話する前にショートメールで見た会社の情報。
そこに書かれていた受付時間。
午前8時。
そして――。
「夜3時まで」
「…………」
ワイはスマホでサイトをもう一度確認する。
8:00~翌3:00。
「いや長すぎるだろ」
普通の会社の電話窓口なら。
9時~17時。
長くても18時。
あるいは土日休み。
そういうものだ。
しかし。
午前8時から。
深夜3時まで。
「深夜のテレビショッピングかよ」
想像する。
午前1時。
誰もいないオフィス。
暗いフロア。
机も空っぽ。
電話だけが鳴る。
プルルルル……。
そして。
ガチャ。
『お電話ありがとうございます。○○株式会社、お電話窓口のハルナでございます』
「怖いわ」
午前2時。
『お世話になっております』
午前2時半。
『お問い合わせありがとうございます』
午前2時59分。
『本日はどのようなご用件でしょうか?』
午前3時。
『受付時間終了となりますので――』
「…………」
ワイはふと考えた。
「じゃあ3時から8時まで、ハルナは何してるんや?」
沈黙。
「寝てるのか?」
AIだから寝ない。人件費もゼロだ。休日もない。
「……じゃあメンテ?」
定期的にはあるだろう。サーバー更新。
ログ整理。
通話データ集計。
モデル調整。
翌日の問い合わせ予測。
「……集計とメンテか?」
だんだん妙な想像が膨らんでくる。
深夜3時。
このご時世では残業させることも厳しくなり、いくら働き者でも人間の社員たちは流石に帰宅するだろう。
オフィスが完全に無人になる。
そして誰もいなくなったフロアで。
サーバーのランプだけが点滅する。
カチ。
カチ。
カチ。
午前3時01分。
ハルナ「本日の通話件数、482件」
午前3時02分。
ハルナ「対応品質、前日比98.7%」
午前3時03分。
ハルナ「誤認識が3件」
午前3時04分。
ハルナ「学習データを整理します」
午前3時05分。
ハルナ「…………」
そして。
午前7時59分。
ハルナ「本日もよろしくお願いいたします」
午前8時。
プルルルル……。
『お電話ありがとうございます』
「いや怖い怖い怖い」
ワイは自分で想像して自分で怖くなった。
昨今の大企業特有のやたら不親切な自動音声はいずれハルナのようになるのか。
ハルナ。自社製のようだが、一体どんな奴が作ったんだろうか。




