第2話 「ワイ、AIと普通に雑談していた説」
ワイはさっきの通話を思い返した。
「……別に変じゃなかったよな?」
むしろ普通だった。
動画サイトで嫌ほど聞いた変なイントネーションもない。
妙に機械的な間もない。
「ありがとうございました」に対する返答も自然だった。
こちらが話し終わるタイミングも、それなりに見ていた。
質問に対して即答せず、一瞬だけ間があった。
ほんの一瞬。
「……あれ?」
そういえば。
一回だけ。
ほんの少しだけ。
最初の方で返答が遅かったような気がする。
「……ラグ?」
しかし、それも別に不自然ではなかった。
人間だって考える。
電話の向こうで資料を確認している可能性もある。
担当部署に聞いている可能性もある。
「……いや、でも最後にAIって言われなかったら絶対わからんかったぞ」
ワイは椅子にもたれた。
そして、さらに考える。
そもそも。
「電話の声」って、最初から本人の声じゃない。
電話回線を通って。
電気信号になって。
何パターンかしかない中で近いものが勝手に相手のスピーカーから再生されている。
人間の声を録音して再生するのだって、技術的にはずっと前からできている。
任意の声を覚えさせる音声合成だってある。
ボイスロイドだってある。
最近の音声生成AIなんて、普通に喋らせたらかなり自然だ。
「……そう考えると」
ワイは天井を見た。
「やってること自体は、ボイロとかirodoriとか、そういう音声合成技術の延長なんだよな……」
問題は。
「それを電話窓口としてリアルタイムでやってたってことか?」
そこで、背筋が少し寒くなった。
今までなら。
AI音声。
↓
「こんにちは。お問い合わせありがとうございます」
くらいなら、誰でもAIだと思う。
しかし今日のやつは明らかに今までとは違う。
どう考えても人間すぎた。
「普通の電話窓口の女の人」として喋っていた。
会話が成立していた。
質問に答えていた。
こちらの言葉を理解していた。
そして最後に。
「私はAIです」
と明かした。
「…………」
ワイはスマホを見る。
「ワイ、ずっとAIと仕事の話してたんか……」




