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魔剣大会決勝

午後の試合も、俺は危なげなく勝ち進んでいた。


『勝負ありぃっ!!』


実況席からリリナの声が響き渡る。


『ソック・ブライド選手、これで決勝進出です!! またしても拘束結界からの一撃決着ーっ!!』


歓声が湧き上がる。


「また一瞬だったぞ……」

「拘束結界強すぎる……」


観客席がざわつく中、俺は静かに剣を下ろした。


2回戦の相手は水属性、3回戦の相手は珍しい闇属性。

どちらも実力者だった。

だが、拘束結界の展開速度に反応できなかったため、そこを突けば十分だった。


一方――


『グリムベル選手、勝利!!』


別ブロックでも歓声が響き渡る。


巨大な風刃が舞い、相手の剣や魔法を弾き飛ばす。

そのまま一瞬で間合いへ踏み込み、勝負を決めていた。


「やっぱり強いな……」


俺は小さく呟く。


実際、動きに無駄がない。

剣筋に至っては訓練した時よりもさらに鋭くなっている。


やがて決勝以外の試合が全て終了し、空は赤く染まり始めていた。


時刻は夕方。

学園闘技場は、昼とは比べ物にならないほどの熱気に包まれている。


『さぁ皆さん、お待たせしましたぁぁぁっ!!!』


実況席のリリナが、興奮した声を張り上げた。


『ミッドライト学園魔剣大会1年部門――ついに決勝戦ですっ!!』


観客席が揺れる。


『結界魔法を自在に操る新星! ソック・ブライド! 対するはーーーダバナ王国第二王子にして、剣術、風魔法、その全てが超一流!! グリムベル・ダバナァっ!!』


さらに大歓声が響き渡った。


観客席上段では、エレーナが両手を胸元で握りしめながら、舞台を見つめていた。


「……ソックさん」


緊張したように息を呑む。


ラースの隣に座るルカは無表情のまま闘技場を見つめていた。

だが、その瞳だけは僅かに集中している。


その頃――寮の一室。

窓際に腰掛けたアンナが、遠視を続けながら小さく鼻を鳴らした。


「まあ、ソック様なら勝つでしょう」


どこか誇らしげに呟きながら、映像越しに主人を見つめ続けていた。

理事長席のラースは楽しそうに笑っていた。


「ふふ……この2人は見どころあるわね」


そして――闘技場中央。

俺とグリムベルは静かに向かい合っていた。

夕焼けが石舞台を赤く染める。


グリムベルが剣を構えながら口を開いた。


「僕は他の奴らとは違うぞ」


その瞬間、グリムベルの周囲へ風が渦巻いた。


「行くぞ、ソック」


「来い」


開始の鐘が鳴り、さっそくグリムベルが仕掛ける。


「《ウィンド・スラッシュ》」


2つの風刃が左右から放たれる。

さらにグリムベル本人が、正面から凄まじい速度で突撃してきた。

3方向同時攻撃、狙いは――結界の核。


「流石にブラフには騙されないか」


俺は小さく呟く。

グリムベルが踏み込んだ瞬間、3つの核が同時に砕け散る。

観客席がどよめいた。


『結界が破壊された!?』


だが次の瞬間、砕けたはずの結界が別方向から再構築される。

新たな3つの核から猛烈な早さで結界が展開されていく。

即座の『切り替え運用』だ。


「……やはりそう来るか」


グリムベルが低く呟く。


驚きはしているが、完全に予想外という顔ではなかった。

その視線は既に次の核配置を追っている。


無意識に核の位置を探る視線。

魔力の流れを読む観察眼。


「勉強熱心すぎるだろ……」


思わず苦笑が漏れた。

そして、グリムベルは即座に後方へ跳んだ。


「拘束結界を警戒してるな」


「当然だ。あれをまともに受けるつもりはない」


風を纏いながら距離を取る。

だが――その瞬間。


自動展開された半透明の結界がグリムベルを囲うように出現した。


「自動防護……!」


エレーナが思わず呟く。


「お返しだ」


周囲の結界から《ウィンド・スラッシュ》がグリムベルへ放たれる。

開幕初撃を吸収しており、反射したのだ。


轟ッ――!!

グリムベルは咄嗟に剣で受け流し、石舞台を滑った。


観客席が一気に沸き上がる。


『す、凄まじい攻防です! 1年生同士とは思えませんっ!!』


砂煙の向こうでグリムベルは剣を構えたまま、口元を吊り上げた。


「なるほど……面白い」


俺も静かに剣を構える。

久しぶりに、心が少し躍っていた。


「まだ始まったばかりだぞ」


続けて俺は詠唱する。


「《アース・スパイク》」


次の瞬間、グリムベルの足元から無数の土槍が突き上がる。

だがグリムベルも半透明の結界を展開し、土槍を真正面から受け止めた。


衝撃が石舞台を揺らし、俺は思わず目を見開く。


「……使えるようになったのか」


結界魔法の術式自体は剣術訓練の対価として教えていたが、実戦で使うところを見るのは初めてだった。

グリムベルは苦笑する。


「君みたいに複数核運用はまだ無理だ。僕の結界の核は1つだけだからな」


展開された結界の中心には、たしかに単一の核反応。

偽装もなさそうだ。


「部分結界もまだ難しい。維持するだけで精一杯だよ」


「でもこの短期間で習得したのはほんとすごいよ」


俺が拘束結界を展開しかけた瞬間、グリムベルの姿が掻き消える。


「《エア・ステップ》」


風魔法による高速移動。

拘束結界は対象を囲う性質上、魔力の“起こり”がわずかに発生してしまう。

グリムベルはその僅かな隙を読んで高速移動で回避していた。


そして、グリムベルが一気に踏み込む。


「手数で押し切る!」


風を纏った連撃が襲いかかる。


だが俺も多重に結界を展開する。

自動防護術式が連撃を次々と弾き返した。


そして――

グリムベルの剣が届くことはなく、俺の拘束結界に捕らえられた。


「……参ったな。ここまで強いとは」


グリムベルは冷や汗をかく。


「そっちこそだ」


俺がそう言うと、グリムベルは苦笑した。


『決勝戦、とんでもないレベルですーーっ!!』


俺は静かに息を吐いた。

らしくないが、もっと上級の結界魔法を試したいと思うほどには高揚していた。


「……なら」


俺は魔力を練り上げる。

次の瞬間、空間が僅かに軋んだ。


「っ……!?」


グリムベルの表情が変わる。


その異変に気づいたのは、対峙しているグリムベルと――ラースの隣に座っているルカだった。


「……へぇ」


ルカの口元が妖しく歪む。


「試してみるか――『次元結界』」


その瞬間だった。


――ヴォォォォン!!!!

突如、ミッドライト学園全域へ重低音の警報が鳴り響いた。


《西側外部からの高出力魔力攻撃を検知。パターンBにしたがって関係者は直ちに避難してください。》

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