第十五話「森の少年(中編)」
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前回、エドガーたちは森でケインとオズワルドに出会いました。
ケインは父を失い、村を追われた少年——
今回は、5年前の事件の真相に迫ります!
ケインの証言、記録の調査、そして浮かび上がる矛盾——
父は本当に窃盗犯だったのか?
誰かが、陥れたのでは——?
第十五話「森の少年(中編)」、どうぞお楽しみください。
翌日、俺とリリアは再び森へ向かった。
今度は、バーナード隊長は同行していない。
ケインを説得するには、少人数の方が良いと判断した。
オズワルドの小屋に到着する。
扉をノックすると、オズワルドが出てきた。
「……また来たのか」
「はい。ケインと話がしたいのです」
オズワルドは、しばらく俺たちを観察する。
そして——
「待て」
彼は小屋の奥へ消えた。
しばらくして、戻ってくる。
そして、ケインを連れていた。
*
ケインは、警戒した目で俺たちを見ている。
痩せた体。ぼろぼろの服。
だが、目には強い意志がある。
「ケイン、こちらはエドガー殿とリリア様だ」
オズワルドが紹介する。
「君を、責めに来たわけではない」
「話を、聞かせてほしい」
ケインは、黙っている。
俺は、しゃがんで彼と目線を合わせる。
「君の父親——アーサーさんについて、教えてくれないか」
ケインの目が、揺れる。
そして——小さく頷いた。
*
小屋の中。
ケインは、床に座って話し始めた。
「父さんは——良い人だった」
小さな声。
「真面目で、優しくて——」
「畑を耕して、僕を育ててくれた」
ケインは、俯く。
「でも、五年前——」
「父さんは、窃盗の罪で捕まった」
「村の倉庫から、貴重品を盗んだって——」
リリアが、優しく尋ねる。
「お父様は、本当に盗んだの?」
ケインは、強く首を振る。
「違う! 父さんは、盗んでない!」
「でも、誰も信じてくれなかった」
「証拠があるって——」
「父さんのナイフが、倉庫にあったって——」
「でも、それはおかしい!」
ケインの声が、震える。
「父さんは、そのナイフを大切にしてた」
「絶対に、なくすはずがない」
「誰かが——」
そこで、ケインは言葉を詰まらせる。
涙が、頬を伝う。
「誰かが、父さんを陥れたんだ……」
*
俺は、ケインの話を記録する。
リリアも、ノートに書き込んでいる。
「ケイン、その後どうなったの?」
「決闘裁判が、あった」
ケインが答える。
「でも、父さんは剣が下手で——」
「負けた」
「そして、牢屋に入れられた」
「僕は、親戚の家に預けられた」
ケインは、拳を握りしめる。
「親戚は、僕を邪魔者扱いした」
「父さんが犯罪者だからって——」
「三年前、父さんが死んだって知らせが来た」
「牢屋の中で、病気になって——」
ケインの声が、途切れる。
オズワルドが、ケインの肩に手を置く。
「それで、僕は逃げ出した」
「村を出て、森に——」
「オズワルドさんが、助けてくれた」
俺は、ケインに尋ねる。
「窃盗は——いつから?」
「……一年前から」
ケインが小さく言う。
「食べ物が、必要だった」
「でも、それだけじゃない」
ケインは、俺を見る。
「父さんから奪われた物と、同じ物を盗んだ」
「工具、食料、ナイフ——」
「父さんが失った物——」
俺は、理解する。
ケインの窃盗は、単なる生存のためではない。
復讐の意味もあった——
*
小屋を出た後、俺はオズワルドと二人で話した。
リリアはケインと少し離れた場所にいる。
「オズワルド殿、あなたは当時、何を目撃したのですか?」
オズワルドは、深い溜息をつく。
「……アーサーの逮捕の日」
「私は、倉庫の近くにいた」
「薬草を採りに、森へ行く途中だった」
「そして——告発者を見た」
「告発者?」
「ああ。村の有力者だ」
オズワルドは、そこで口を閉ざす。
「名前は?」
「……今は、言えない」
「なぜですか?」
「確証がないからだ」
オズワルドは、俺から視線を逸らす。
「だが、不審な点はあった」
「その者は、倉庫から出てきた」
「手に、何かを持っていた」
「それが——アーサーのナイフに見えた」
俺は、息を呑む。
「つまり——」
「証拠を、植え付けた可能性がある」
オズワルドが頷く。
「だが、私には証明できない」
「だから、何もできなかった」
「そして——罪悪感に耐えられず、村を出た」
俺は、オズワルドの肩に手を置く。
「あなたのせいではありません」
「だが——」
「今なら、真実を明らかにできるかもしれません」
*
村に戻った俺たちは、バーナード隊長のもとへ向かった。
「五年前の事件の記録を、全て見せてください」
「分かりました」
バーナード隊長は、古い記録を取り出す。
俺とリリアは、それを詳しく調べ始めた。
事件報告書。
証人の証言。
裁判の記録——
俺は、一つ一つ確認していく。
そして——矛盾を見つける。
「リリア、これを」
俺は、報告書の一部を指す。
「盗まれた物——貴重品、工具、食料——」
「ですが、発見されたのは一部だけ」
「残りは?」
リリアが、別の記録を調べる。
「未発見、と書かれています」
「おかしいですね。本当に盗まれたのでしょうか?」
「その可能性があります」
俺は、別の記録に目を通す。
土地取引の記録——
「リリア、これを」
俺は、土地台帳を見せる。
「事件の一週間後、アーサーの土地が売却されています」
「購入者は——」
リリアが、名前を読み上げる。
「フェリックス・グレイ——」
俺は、その名を記憶する。
フェリックス——
村の商人だ。
信頼され、裕福で——
「バーナード隊長、フェリックスについて教えてください」
「フェリックス殿ですか? 村の有力者です」
「商売で成功し、多くの土地を持っています」
「評判は?」
「良いですよ。慈善活動もしています」
俺は、記録を再び調べる。
フェリックスが購入した土地——
アーサーの土地は、格安だった。
相場の半額以下——
「これは——」
リリアが囁く。
「フェリックスが、アーサーさんを陥れた?」
「可能性はあります」
俺は、さらに記録を調べる。
そして——決定的な記録を見つける。
「これだ」
告発者の名前——
フェリックス・グレイ。
彼が、アーサーを窃盗犯だと告発した——
*
その夜、クロウ家で。
俺は書斎で、全ての情報を整理していた。
リリアも、記録魔法で整理している。
『フェリックス・グレイ』
『告発者であり、土地の購入者』
『事件で最も利益を得た人物』
『動機:アーサーの土地が欲しかった』
『証拠の偽造:アーサーのナイフを現場に』
『オズワルドの目撃:フェリックスが倉庫から出てきた』
『結論:フェリックスがアーサーを陥れた可能性が高い』
俺は、ノートを閉じる。
真犯人は——村の中にいる。
フェリックス。
明日、彼と対峙する。
セバスチャンが、部屋に入ってくる。
「若様、明日の準備は整いましたか?」
「ああ。明日、フェリックスに会いに行く」
「土地取引の記録も、持って行く」
「分かりました。お気をつけて」
セバスチャンが部屋を出る。
俺は、窓の外に視線を向けた。
明日——全ての真実が、明らかになる。
お読みいただき、ありがとうございました!
ケインの証言、オズワルドの目撃、そして記録の調査——
5年前の事件の全容が、明らかになってきました。
アーサーは、土地目当てに陥れられた——
そして、真犯人は——
村で信頼されている商人、フェリックス。
次回、第十六話「森の少年(後編)」では、
フェリックスとの対峙、そして事件の完全解決!
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次回もお楽しみに!




