表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

第十四話「森の少年(前編)」

お読みいただきありがとうございます!


前回、村での窃盗事件を調査中、

エドガーとリリアは森へ逃げる犯人を目撃しました。


森の調査、謎の少年、そして隠された過去——

複雑に絡み合う伏線、予想外の真実が待っています。


第十四話、どうぞお楽しみください。

 翌朝、俺とリリア、そしてバーナード隊長の三人は森へ向かった。

 前夜発見した布の切れ端を手がかりに、犯人の居場所を探す。


「この森、かなり広いですね」


 リリアが周囲に視線を向ける。

 木々が密集し、日光がほとんど届かない。


「古い小屋が、いくつかあるはずです」


 バーナード隊長が説明する。


「昔、狩人たちが使っていました。今は廃墟ですが」


「その小屋に、犯人が隠れている可能性があるわけですね」


 俺は頷く。

 三人で、森の奥へと進んでいく。


 *


 しばらく歩くと、最初の小屋が見えてきた。

 古い木造の建物。屋根は一部崩れている。


「ここですか?」


「ええ。まず、ここを調べましょう」


 俺たちは小屋に近づく。


 扉は半開きになっている。

 中を確認する——


 埃だらけ。床には落ち葉が積もっている。

 だが——


「エドガー様、ここ」


 リリアが床を指差す。


 落ち葉の一部が、不自然に掃かれている。

 誰かが、最近ここを通った——


「使われていますね」


 俺は小屋の中をさらに調べる。


 壁際に、古い毛布。

 隅には、木の実の殻。


「ここで寝泊まりしていた形跡があります」


 バーナード隊長が頷く。


「ですが、今はいないようですね」


「別の小屋にいるのかもしれません」


 俺たちは、次の小屋へ向かった。


 *


 二つ目の小屋。

 ここも廃墟だが、扉がしっかり閉まっている。


「誰かいるかもしれません」


 俺は扉をノックする。

 返事はない。


 ゆっくりと扉を開ける——

 その瞬間、中から人影が飛び出してきた!

 小柄な体。素早い動き——


 少年だ!


「待て!」


 バーナード隊長が叫ぶ。

 だが、少年は走り去る。


 俺たちは追いかける——

 少年は木々の間を巧みにすり抜けていく。


 俺たちは必死に追うが、距離が開いていく。


「速い——!」


 リリアが息を切らす。

 やがて、少年の姿が木々の向こうに消えた。


 俺たちは、立ち止まる。


「逃げられました……」


 バーナード隊長が悔しそうに言う。


「ですが、確認できました」


 俺は言う。


「犯人は、やはり子供です」


「痩せていて、素早い。前夜に目撃した人物と一致します」


 *


 俺たちは、二つ目の小屋に戻った。


 中を調べる。

 ここにも、生活の痕跡。

 毛布、食器、そして——


「これは?」


 リリアが、棚の上の物を手に取る。


 小さな木彫りの人形。

 丁寧に作られている。


「手作りですね」


「ええ。誰かが、あの少年のために作った——」


 その時、扉が開いた。

 俺たちは振り向く——


 そこに、老人が立っていた。

 白髪、深い皺。だが、目には力がある。


「……何の用だ」


 老人が低い声で言う。


「失礼します。私はエドガー・クロウ。こちらはリリア、そしてバーナード隊長です」


「村の窃盗事件を調査しています」


 老人は、俺たちを注視する。


 しばらく沈黙——

 そして、溜息をつく。


「……入れ」


 *


 小屋の中。

 老人は、簡素な椅子に腰を下ろす。


 俺たちも、床に座る。


「私はオズワルド」


 老人が名乗る。


「元は、村の薬師だった」


「薬師——」


 バーナード隊長が驚く。


「オズワルド殿! 五年前に村を出られた——」


「ああ」


 オズワルドは頷く。


「もう、村には戻らない」


「なぜですか?」


 俺は尋ねる。


 オズワルドは、しばらく黙っている。

 そして——


「……理由は、話さない」


「分かりました。では、あの少年について教えてください」


「ケイン——あの子の名前だ」


 オズワルドが答える。


「十二歳。私が、面倒を見ている」


「なぜ、森に?」


「……村にいられなくなった」


「どういう意味ですか?」


 オズワルドは、再び沈黙する。

 そして、ゆっくりと話し始めた。


 *


「ケインの父親は、五年前に投獄された」


 オズワルドの声は、重い。


「窃盗の罪で、決闘裁判にかけられた」


「決闘裁判——」


 リリアが息を呑む。


「父親は、剣が苦手だった。負けた」


「そして、投獄された」


 オズワルドは、俯く。


「ケインは、当時七歳。母親はすでに亡くなっていた」


「父親が投獄された後、親戚に引き取られた」


「だが、親戚は冷たかった。ケインを虐げた」


「そして——三年前、父親が獄中で病死した」


 俺は、黙って聞く。


 リリアも、涙ぐんでいる。


「ケインは、村を飛び出した」


「森に逃げ込んだ」


「私が見つけて、保護した」


「それ以来、ここで暮らしている」


 オズワルドは、俺たちに視線を向ける。


「ケインは——村を恨んでいる」


「父を奪われ、家を奪われ、全てを失った」


「窃盗は——生きるためだ」


「食べ物、道具——生きるために必要な物を、盗んだ」


 俺は、考える。

 ケインの境遇——


 確かに、同情すべき点はある。

 だが——


「オズワルド殿、一つ伺います」


「何だ?」


「ケインの父親——本当に、窃盗をしたのですか?」


 オズワルドの顔が、強ばる。

 そして——


「……分からない」


「分からない?」


「私には——確証がない」


「ですが、疑問はあります」


 オズワルドが、小さく言う。


「あの事件——不自然な点が、多かった」


「不自然な点?」


「証拠の出所。証言の矛盾。そして——」


 オズワルドは、そこで口を閉ざす。


「そして?」


「……これ以上は、話せない」


 俺は、オズワルドの目を見る。


 彼は、何かを隠している。

 恐れている——

 何を?


 *


 小屋を出た後、俺たちは森の入口まで戻った。


「エドガー殿、どう思いますか?」


 バーナード隊長が尋ねる。


「ケインの境遇は、確かに気の毒です」


「ですが——」


 俺は、森の方を振り返る。


「オズワルドは、全てを話していません」


「五年前の事件に、何か秘密がある」


 リリアが、ノートに記録している。


『ケイン:12歳、父を投獄で失う』

『父:窃盗の罪、決闘裁判で敗北、獄中で病死』

『オズワルド:元薬師、五年前に村を出る、何かを隠している』

『疑問:父は本当に窃盗犯だったのか?』


「明日、もう一度ケインに会いに行きます」


 俺は言う。


「彼から、直接話を聞く必要があります」


「分かりました。私も同行します」


 バーナード隊長が頷く。

 俺たちは、村へ戻った。


 *


 その夜、クロウ家で。

 俺は書斎で、今日の出来事を整理していた。


 ケイン。

 十二歳の少年。

 父を失い、全てを失った——


 だが、それだけでは説明がつかない。

 オズワルドの様子。


 何かを恐れている——

 五年前の事件に、何があったのか?

 本当に、ケインの父は窃盗犯だったのか?


 それとも——

 リリアの父のように、冤罪だったのか?


 俺は、ノートに書き込む。


『五年前の事件を調査する必要がある』


『オズワルドが隠している秘密は?』


『ケインの真意は?』


 コンコン。

 扉がノックされる。


 セバスチャンだ。


「若様、夕食の準備ができました」


「ありがとう。すぐに行く」


 俺はノートを閉じ、食堂へ向かった。

お読みいただき、ありがとうございました!


森での調査、ケインとの遭遇、オズワルドとの出会い——

ケインは、父を失い、村を追われた少年。

窃盗は、生きるため——


ですが、オズワルドの様子から、

まだ何か大きな秘密がありそうです。


五年前の事件——

ケインの父は、本当に窃盗犯だったのか?


ご感想、ご評価いただけると励みになります。

次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ