第十六話「森の少年(後編)」
お読みいただきありがとうございます!
前回、エドガーは5年前の事件の真相に迫りました。
黒幕は、村の有力者フェリックス——
今回は、いよいよ対決!
フェリックスを問い詰め、真実を明らかにします。
そして、ケインの父アーサーの名誉回復——
3部作の完結編、どうぞお楽しみください。
第十六話「森の少年(後編)」、どうぞ。
翌日、俺とリリア、そしてバーナード隊長は、フェリックスの屋敷を訪ねた。
立派な石造りの建物。広い庭。
成功した商人の家だ。
使用人が、俺たちを応接室に案内する。
しばらくして、フェリックスが現れた。
五十代の男性。豊かな服装。穏やかな笑顔——
「エドガー殿、バーナード隊長。どうされました?」
「フェリックス殿、少しお話があります」
俺は、椅子に座る。
リリアとバーナード隊長も座る。
「五年前の、アーサー・ケインの窃盗事件について」
フェリックスの表情が、一瞬強ばる。
だが、すぐに笑顔に戻る。
「ああ、あの不幸な事件ですね」
「アーサーは、良い人だったのですが——」
「その事件について、調査しています」
俺は、記録を取り出す。
「こちらは、土地取引の記録です」
フェリックスに見せる。
「事件の一週間後、あなたはアーサーの土地を購入されましたね」
「ええ、そうです」
「相場の半額以下で」
フェリックスは、頷く。
「アーサーの家族が、急いで現金が必要だと言うので」
「では、なぜ急いで現金が必要だったのですか?」
「それは——アーサーが投獄されたので、生活費が——」
「つまり、あなたはアーサーが投獄されることで利益を得た」
フェリックスの顔から、笑みが消える。
「何を、仰りたいのですか?」
「フェリックス殿」
俺は、別の記録を見せる。
「こちらは、告発の記録です」
「アーサーを窃盗犯だと告発したのは、あなたですね」
「……ええ」
「倉庫の管理者として、当然のことをしただけです」
「では、なぜアーサーが犯人だと思ったのですか?」
「証拠がありました。彼のナイフが、倉庫にあったのです」
俺は、リリアを見る。
リリアが、ノートを開く。
「アーサーのナイフ——彼が大切にしていた物ですね」
「絶対になくさないと、息子のケインが証言しています」
フェリックスは、黙っている。
「フェリックス殿、もう一つ」
俺は、オズワルドの証言を話す。
「目撃者がいます」
「事件当日、あなたが倉庫から出てくるのを見た人物が」
「手に、何かを持っていた——アーサーのナイフに見えたと」
フェリックスの顔が、青ざめる。
「それは——」
「あなたが、アーサーのナイフを倉庫に置いた」
「証拠を、偽造したんです」
フェリックスは、立ち上がろうとする。
だが、バーナード隊長が扉の前に立つ。
「フェリックス殿、お話を聞かせてください」
*
フェリックスは、再び座る。
だが、もう笑顔はない。
「なぜ、そんなことを?」
俺は尋ねる。
フェリックスは、しばらく黙っている。
そして——
「……土地だ」
小さく言う。
「アーサーの土地が——欲しかった」
「あの土地は、肥沃で、水源に近い」
「何度も買い取りを申し出たが、アーサーは断った」
「先祖代々の土地だからと——」
フェリックスは、拳を握る。
「だから——」
「陥れたんですね」
俺は静かに言う。
「アーサーのナイフを、どうやって手に入れたのですか?」
「……彼が、市場に置き忘れたのを見つけた」
「そして、それを使って——」
「倉庫に侵入し、ナイフを置いた」
「そして、アーサーを告発した」
フェリックスは、顔を伏せる。
「決闘裁判では——」
「私は剣が得意だった。アーサーは、そうではなかった」
「勝つことは、分かっていた」
リリアが、涙を浮かべて言う。
「アーサーさんは、無実だったのに——」
「牢屋で、病気で亡くなったのに——」
「分かっている!」
フェリックスが叫ぶ。
「毎日、後悔している!」
「だが——もう、取り返しがつかない」
「いえ」
俺は言う。
「今からでも、遅くはありません」
「真実を、公にしてください」
フェリックスは、俺を見る。
そして——
深い溜息をつく。
「……分かった」
「全て、話そう」
*
その日のうちに、フェリックスは衛兵隊に自首した。
正式な取り調べが行われ、全てが記録された。
アーサーの無実が、正式に認められた。
そして——
俺たちは、森のオズワルドの小屋を訪ねた。
ケインに、全てを伝えるために。
*
ケインは、俺たちの話を黙って聞いていた。
そして——
涙を流した。
「父さん——」
ケインの声が、震える。
「父さんは、本当に無実だったんだ——」
オズワルドが、ケインを抱きしめる。
「良かったな、ケイン」
ケインは、しばらく泣いていた。
やがて、顔を上げる。
「エドガー様——ありがとうございます」
「いえ。当然のことをしただけです」
俺は、ケインにしゃがんで目線を合わせる。
「ケイン、これからどうしますか?」
「村に、戻りたいですか?」
ケインは、オズワルドを見る。
オズワルドが頷く。
「私も、村に戻ろうと思う」
「ケインと一緒に」
「本当ですか!?」
ケインの顔が、輝く。
「ああ。もう、隠れる必要はない」
バーナード隊長が言う。
「ケインの窃盗については、不問にします」
「生きるために、やむを得なかったことですから」
「ただし、これからは正直に生きてください」
「はい!」
ケインが、力強く頷く。
*
一週間後。
オズワルドとケインは、村に戻ってきた。
小さな家を借り、二人で暮らし始めた。
オズワルドは、再び薬師として働く。
ケインは、オズワルドの助手として。
村の人々も、二人を温かく迎えた。
フェリックスの罪が明らかになり、アーサーの無実が証明されたことで、
ケインへの同情が集まったのだ。
*
ある日、ケインが俺の家を訪ねてきた。
「エドガー様」
ケインは、俺の前で頭を下げる。
「本当に、ありがとうございました」
「父さんの名誉を、取り戻してくれて」
「僕も、村で暮らせるようになって」
「全部、エドガー様のおかげです」
「いえ、真実を明らかにしただけです」
俺は、ケインの頭に手を置く。
「これから、オズワルドと幸せに暮らしてください」
「はい!」
ケインは、笑顔で頷いた。
その笑顔は——
森で出会った時とは、まるで違っていた。
明るく、希望に満ちている。
*
ケインが帰った後、リリアが言う。
「エドガー様、良かったですね」
「ええ」
「ケインさん、本当に嬉しそうでした」
「これで、お父様も——」
リリアは、少し泣きそうになる。
「安心できますね」
俺は頷く。
アーサー——
彼は、もうこの世にいない。
だが、息子のケインは救われた。
名誉も、回復された。
それで——良かったのだと思う。
セバスチャンが、部屋に入ってくる。
「若様、リリア様、次の依頼の手紙が届いています」
「次の依頼?」
「はい。隣町からです」
セバスチャンが、封筒を差し出す。
俺は、それを受け取った。
開封して、中身を確認する——
また、新しい事件だ。
「リリア、準備はいいですか?」
「はい!」
リリアが、ノートとペンを取り出す。
俺たちは、次の事件へ向かう準備を始めた。
お読みいただき、ありがとうございました!
フェリックスとの対峙、真相の解明、そしてケインの救済——
複雑に絡み合った伏線——
5年前の冤罪事件と、現在の窃盗事件。
そして、予想外の真相——
フェリックスは村で信頼されていた人物でしたが、
実は5年前に冤罪を作り出していました。
ケインは、父を失い、全てを失った少年でしたが、
エドガーの推理で救われました。
次回からは、また新しい展開!
隣町からの依頼とは——?
引き続き、お楽しみください!
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次回もお楽しみに!




