第93話 多様性
勝負はついた。ハオの勝ちだ。
それを見てハオの家来たちもあつまってくる。
「失礼、今、魔王とおっしゃいましたか?」
コウキが魔人の女性に話しかけた。
「はい、魔王です。」
魔人の女性が答えた。
「魔王ってずっと死んだんじゃないの?勇者に倒されたんだよね?」
ハオがイフとコウキに確認する。
「魔王ヴィクトリーは倒された。だが"魔王"は一人じゃない。」
コウキが淡々と言う。
「世界には、いくつもいる。民に余計な心配を与えるからあまり語られないがな。」
「そうなんだ!」
ハオは意外な情報に驚きをかくさなかった。
「南方の魔王――姒鯀」
銀色の角をもった魔人の美女が静かに名を告げた。
その名が落ちた瞬間、空気が張り詰めた。
「姒鯀。いや、伝説や物語ではきいたことがあるが…」
イフもコウキと顔を見合わせる。
「南方は焼かれました。逆らうものは消されました。」
金色の角の魔人の女性が短く言う。
「だから、逃げてきたのです。」
「逃げた連中が、そのまま固まっただけだ。」
周鬼が続けた。
「なるほどね。だからオーガだけじゃなく、いろんな種族がいるわけね。」
ハオは周りの魔物たちをみる。
「失礼、先ほど、この周鬼どのはあなたのことを姫とよばれた。あなたも高貴な方なのでは?」
コウキは女性に確認した。
「それはオレから説明しよう。こちらのお二人は暁喬様に宵喬様だ。とある里の姫様だ。オレと仲間たちはお二人をまもって、なんとかここまで逃げ延びてきたのだ。そして、その途中でお二人はおなじく、魔王に追われた魔物たちをたすけ、ここまでやってきたのだ。」
ハオは周りの魔物たちをみる。
「でも、その魔王はなんでこっちにはこないんだ?」
「人類圏には四凶様や四神様がなぜか複数あつまっているそうですからね。魔王も近づきたくないのですよ。」
暁喬は答えた。
「もう一つ質問だけど、どうみてもあんたたちはオーガには見えないんだけど、どういうこと?」
ハオが素朴な質問をした。
「血が混ざること自体は珍しくない。だが、人間側が嫌うんだ。」
魔物たちのかわりにコウキが答えた。
「だから人類圏を離れて南に流れる者もいる。人間と近いエルフとの混血でさえ差別されるからな。悪魔の子供ともなると、それだけで殺されることすらある。」
「知らなかった。そんなことが。」
ハオは黙った。
——知らなかった世界だ。
「しかし、ハオよ。さっき自分がかったら配下になれといっていたが、本当に魔物を配下にするのか。周鬼殿だけならいい。オーガ族の傭兵はめずらしくない。しかし、これだけの数、民も兵も、納得しないぞ。」
コウキはハオの眼を見つめる。
ハオはしばらく考えたあと、口を開いた。
「簡単だ。」
ハオは即答した。
「暁喬殿、君、僕の女になれ。」
「「はあああああ!?」」
今度は、人間も魔物も一斉に叫んだ。
「お前、本気で言ってるのか!気は確かか!」
周鬼が低く言う。
「初対面だぞ!しかも相手は魔物で、しかも女だ!」
コウキはハオの肩をつかんでとめる。
「なにいってんだ。お前もさっきちらちら、宵喬殿のことをみていたじゃないか。」
「な・・・・!?」
図星を突かれておもわずコウキは表情を変える。
「本気だ、僕は彼女に惚れたぞ!いいか、コウキ。下手したら魔王と戦うことになるんだぞ。種族がどうとか、性別がどうとか、いってる場合じゃないんだ。これからは多様性が大事だぞ!」
ハオはまっすぐにコウキの目をみて言い返す。
「う、それはそうだが。いや、まて、種族はともかく性別は別だろ!」
「じゃあ、きまりだ!」
「なにが、じゃあ、だ!暁喬殿の気持ちもあるだろ!」
コウキはハオを肩をつかんで揺さぶった。
「暁喬殿、君はどうなんだ!」
「……嫌では、ありません。」
「「ええええええ!?」」
まんざらでもない様子にまた、一同驚きを隠せない。
「ほらな。じゃあ決まりだ。」
ハオが再び言った。
「早速、村にもどって僕と暁喬、コウキと宵喬の婚約を発表しよう!」
「まて、オレを巻き込むな!それになにより、宵喬殿の気持ちもあるだろ!」
コウキも再びそういいながら、宵喬をちらりとみると、彼女もまたまんざらではないという表情をしていた。
宵喬は、目をそらさなかった。
(う、マジか…⁉)
コウキは驚きつつも、そのまなざしを受け入れてしまった。
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