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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
幻教操国編~第一部最終章~

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第92話 新しい英雄

南方、コウロ軍、占領地--


「姫将軍様!万歳!」


「ハオ様万歳!」


村の民衆がほめたたえているのはコウロ軍ではなかった。


王族暗殺未遂犯の逆賊の汚名を着せられたレツオウの長女・ハオだった。


ハオは臣下たちと徒歩で村のようすを見て回っていた。


「ハオ様-!」


子供たちや若い母親たちが手を振る。


「みんな元気かあ!」


ハオはトレードマークの長いみつあみを揺らしながら大勢の声に答えていた。


服装は相変わらず、冒険者の武闘家そのままだ。


大きく開いたスリットから見える鍛え上げられた美しい脚、露出の高い上半身の服装が道行く視線が集まるが、ハオは一切気にしない。


しかし彼女はそんなことは気にもしていない様子だった。


「おい、ハオ、お前も立場があるのだから、もう少しましな格好をしたらどうだ。」


となりを歩く美しく若い成年コウキが釘をさす。


ハオがコウキに何か言おうとしたとき、若い女性たちから黄色い声援があがった。


「きゃあ!コウキ様!こっちむいて!」


コウキの美しい容姿も女性たちを虜にしていた。


それをみてハオは唇を尖らせる。


「お前も十分、キャーキャーいわれてるだろう。」


「あれは勝手に言われてるだけだ。」


そんな若い二人のやりとりをレツオウの残した臣下たちが目を細めて見ていた。


(レツオウ様が見たら、なんとおっしゃるだろうか。)


誰かがそう思っていても、口には出さなかった。


ただ、この光景が続いてほしいと、皆が思っていた。


王都から故郷に帰ってくると、レツオウの不在により近隣の村が荒れていた。


周辺には野盗がはびこり、魔獣たちも人々の安全を脅かしていた。


ハオはそれを瞬く間に鎮圧し、片付けた。


一応はこのあたりはコウロの領地となっているが、民衆はこの若いリーダーこそが自分たちの領主だと思っていた。


コウロの名ではなく、ハオの名を呼んで万歳を叫ぶ。


それがすべてを物語っていた。


「ハオ様、すこしご相談が……。」


数名の老人たちがハオたちの前に膝をおる。


ハオはコウキと顔を見合わせる。


「ここではなんです。私どもの集会所にお越しください。」


「わかった。まずは話をきこう。」


そういわれて、ハオとコウキは老人たちに案内されて村の集会所に向かった。


◇


「実は村の近くにオーガが住み着きまして……」


老人が心細そうにいう。


「オーガ?」


ハオは首をかしげる。


「聞いたことはあるがみたことはないな。」


「ハオ様は王都育ちが長いですからね。このあたりは王都の眼も届かず魔物や魔獣が多いのです。」


レツオウの代から仕える家臣イフが答える。


「なるほどね。オーガなんか王都ではみたことがなかった。」


ハオは目を輝かせる。


(わるい癖がはじまったか。)


コウキは内心そう思ったが口には出さなかった。


「で、そのオーガが何か悪さをするのですか?」


コウキが老人たちに聞く。


「いえ、今のところそういうことはないのですが、不安ではありまして。」


「なるほどわかった!とにかくそこに見に行ってみるか!」


ハオは老人たちの不安を拭い去るようにこたえた。


「かしこまりました。では早速、誰かに調べさせます。」


イフがハオに頭をさげる。


「なにいってんだ。ボクが行くんだよ!」


「だめです。」


ハオの返事にイフがノーを突きつける。


「なんでだよ!」


「危険です。姫に万一のことがあれば……」


「大丈夫だって!そのオーガってのと戦ってみたいし。」


「なおさらダメです!なぜ戦うことが前提なんですか!」


イフは必死に止めようとする。


老人たちは顔を見合わせた。こんな若い姫君が本当に頼りになるのだろうかと、一瞬不安そうな顔をした者もいた。


しかしレツオウの臣下たちは皆、穏やかな顔をしていた。


これがいつものことだと知っているからだ。


「イフ殿、こうなってはハオは聞かない。十分に護衛をつけていくことにしよう。」


コウキはなんとかイフをなだめた。


「じゃあ!早速出発だ!すぐその場所に案内してくれ!」


ハオは立ち上がり、先頭に立って歩き始めた。


イフや家臣たちはため息をつきながらあとを追った。


その背中を見送りながら、老人の一人がぽつりとつぶやいた。


「……レツオウ様の娘御だな。」


誰も否定しなかった。


◇


村人の案内でハオは30人の家臣を引き連れて、森の中のオーガの集落にむかう。


「なにもこんなについてこなくてもよかったのに。」


ハオはイフに向かって文句をいった。


「なにをおっしゃいます!強力なオーガであれば1体でもこの人数でなんとかなるかというところです!」


イフは声を強めてハオを諫める。


「お、あれか!」


ひらけた場所がみえる。


簡素な住居が見えた。


こちらに気がついたようだ。


数人の魔人たちがこちらにやってくる。


「オーガときいていたけど、いろんなやつがいるな。」


ハオはつぶやいた。


オーガの集落というわけではなさそうだ。


「皆の者、音をたてずに警戒しろ。」


その声に兵たちは緊張感をあげる。


しかし‥‥


「ヤッホオオオ!」


警戒の声が飛ぶ前に、ハオは大きく手をふりながら魔人にむかって駆けだしていた。


「姫えええ!」


イフは泣きそうになり、コウキはやれやれと天を仰いだ。


「とまれ!何をしにきた人間よ!」


1人のオーガ男がハオを止めた。


2メートル以上ある巨躯。


鋼のような筋肉。


そして、黒髪に黒い角が力の象徴のように生えていた。


しかし、その容姿は人間の基準でみても整っていた。


「君がここのリーダーなのか?」


ハオはゆっくりと近づきながら聞く。


「人間よ、何をしに来たかと聞いている?」


オーガは相手が人間の小娘と見て、静かに問いかけた。


30人が武器に手をかけても、オーガは視線すら動かさなかった。


数として認識していない。


30人いても、一人分にも見ていない。


「決まってる!あんたたちと戦いに来たんだよ!」


「お前が、オレと?フフフフ、おもしろいことをいう。」


オーガはなんの冗談かと笑った。


「ちがう。話をしに来ただけだ!」


あわてて追いついたコウキがハオの発言を訂正する。


「フン、どこで何をしようが、俺たちの勝手だろう?」


コウキの後ろから30人の兵がやってくる。


しかし、オーガはそれを無視してなんの警戒も示さない。


(コイツかなり強いな。)


コウキはそう思いながら背後の魔物の集落をちらりと見る。


オーガだけではない。


ゴブリン、リザードマン、ハーピー、オーク——種族がばらばらだ。


(群れじゃない。寄せ集めだ。)


その中に、明らかに異質な二人がいた。


赤い髪に金の角。


黒髪に銀の角。


周囲とは格が違う。心配そうにこちらを見ているが、その存在感だけで空気が変わる。


(いかん)


コウキは思わず眼を反らす。


「確かにお前たちの勝手かもしらん。しかし、村の者がおびえている。すまないが少し移動してもらえないか。食料など必要なものがあれば援助する」


コウキはオーガの男に交渉を持ち掛けた。


「話にならん。いきなりやってきて食料をやるからでていけだと?なぜそんなものに従わねばならん。今回は見逃してやる。どうしても追い出したければ兵をそろえて出直してこい。」


オーガはそういうとうっとうしそうに手をパタパタとふる。


兵たちが武器に手をかけかけた。


「まて!お前たち!今のは僕たちが悪い!」


そういってハオは兵たちを制止する。


「ほう?娘?お前のほうが話が分かるじゃないか?」


オーガは興味深そうにいう。


「お前、なかなかすごいな!これだけの兵を前にして、ビビりもしないとは!それに堂々とした態度も気に入った!」


「で、どうするんだ?今ここでやるのか?オレはかまわんぞ?」


オーガは後ろの兵たちを見て言う。


「ああ、今ここでやる!ただし、戦うのは僕一人だ!そして僕がかったら、お前も後ろにいる奴も全員、僕の配下になれ!そうすれば、村の連中も安心だろう!」


「「はあああああ!?」」


声を上げたのはオーガではなくハオの家臣たちだった。


「姫、一体なにを!?」


「ハハハハ、何を馬鹿なことを、子供に付き合ってられん。さあ、やるのかやらないのかどっちだ!」


オーガが兵たちに向かって声を上げた瞬間、ハオはもうオーガの足元に潜り込んでいた。


膝裏を蹴り抜く。


「オオ!」


不意をつかれてオーガは前のめりに倒れて、手をついた。


「だからいってるだろ!お前の相手は僕だと!」


それが合図になった。


見ていた魔物たちが一斉に動き出す。


コウキが見とれていた二人の魔人もやってくる。


(どういう群れだ、これは。)


コウキはその構成にとまどいつつも手に魔力をこめた。


「まて!」


止めたのはオーガだった。


「今のはオレが悪い。どうやらなめていたのはオレだった。おれの名は周鬼だ。小娘、お前の名はなんという。」


周鬼と名乗ったオーガは改めてハオを見据えた。


「レツオウの娘ハオだ。」


「……いいな。」


周鬼は笑った。


「これは、戦いになる。」


「よし、いいだろう。レツオウの娘、ハオよ。仲間全員は約束できんが、お前がオレに勝ったらすくなくともオレはお前の配下になってやる。しかし、オレがお前に勝てばどうなるかはわからんぞ。」


そういって周鬼は改めて大剣を構える。


「じゃあ、とりあえずそれでいいよ!お前たちも手を出すなよ。」


そういって、ハオは配下のほうを見る。


「おい、おまえたち、ハオ様が危なくなったら一斉に矢をはなて。おしかりを受けてもかまわん。」


コウキは小声で配下に伝達する。


「うしろの連中もいつでも攻撃して構わんぞ。」


周鬼はあくまで余裕の表情は崩さなかった。


「行くぞ!【朱雀・炎着(イグニション!)】」


ハオが叫ぶとハオの全身が魔力の炎に包まれる。


炎がまとわりつくのではない。


体そのものが燃えている。


『猛虎炎衣(フレア・ローブ)!』


「なに!?」


周鬼は思わず声がでる。


ゴウ!


火力をえたハオの拳が周鬼の腹に突き刺さり、2メートルを超える周鬼が後ろに吹きとぶ。


それでも周鬼は大剣から手を放さなかった。


受けただけで皮膚がただれた。


それでも受け身をとる。


そして、思わず目を疑う。


ハオはまとった炎をあやつり宙に浮いていた。


「小娘お前、本当に人間か!?」


周鬼はおもわず笑みとともに声が出た。


「ああ、これ?父上の戦い方を真似してるだけなんだけどね。父上はもっとすごかったよ。」


魔力の炎に包まれたハオは笑みをたたえて言う。


ハオの父、レツオウは猛虎炎流という魔術と武術の融合の流派を極めていたが、ハオはそれを独自のスキルとして身に着けていた。


戦闘の天才ゆえの能力だったが、彼女はそれに気がついていなかった。


「ならば手加減はいらないな!『身体強化(ドーピング)』」


周鬼は魔法で強靭な肉体をさらに強化した。


「ばかな!オーガが魔法をつかうだと!」


イフはそんなことは聞いたことがないと声が出る。


魔物というのは自分の肉体、元の力に誇りを持っている。


だからこそ、魔術を使う魔物など聞いたことがなかった。


「おもしろい!『猛虎炎情拳!』」


ハオは周鬼に向かって突撃し、魔力の炎が込められた拳を放った。


周鬼は剣を持っていない左手でそれを受け止める。


ザン!


そして右手の剣でハオを袈裟斬りにした。


斬られた瞬間、ハオは止まらなかった。


血を撒き散らしながら、そのまま踏み込む。


なんと血を吹き出しながら、両手から魔力の炎をはなった。


ゴウ!


火だるまになりながら、周鬼は吹き飛ばされる。


一方、血まみれになりながらもハオは立っていた。


そして……


【朱雀・炎着(イグニション)】


再び魔力の炎が全身をつつむと、傷がみるみると回復していった。


焼きながら、再生している。


「なんだ、それ、おれの再生能力よりはるかに速いじゃねえか。ほんとなにものだ。お前?」


全身を焼かれながらも周鬼はさらに立ち上がった。


周鬼は理解した。


——これは、勝てない。


「昔、世話になった魔術師のお姉さんがいてね。コツをおしえてもらったんだよ。父上の術の応用だってさ。」


「なんだよ、それ。」


周鬼はボロボロになりながらも笑っていた。


それが戦闘種族のオーガだった。


「そこまでです。」


赤い髪の魔人の女が一歩前に出た。


それだけで、空気が変わった。


「姫様!」


周鬼は声をあげた。


「姫?」


ハオもその姿に見とれる。


ハオのように美しい赤い髪、すきとおるような白い肌。


露出の多い衣装。


そして象徴的なのは魔人であることを示す金色の角だ。


「このハオ様というかたなら私たちの話を聞いてくれる気がします。南東の魔王の脅威について。」


「魔王だって?」


ハオは耳を疑い、魔王、その一言で、場の空気が凍りついた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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