第85話 集結する仲間たち
アマンは父の支援のもと、ロハク一家を虐殺した霊教の一派、ならびにチュウエイに対抗するために兵を集めた。
「アマン様、ジユン様、エイサイ様がお見えになりました。」
カギが書斎のアマンに声をかける。
「そうか、あの二人も来てくれたか!」
アマンは幼馴染の兄弟の訪問に目を輝かせ、自ら迎えに向かった。
ジユンとエイサイはアマンの親戚でもあり、幼い頃からの親友でもあった。二人とも黒髪で長身の武人だ。アマンよりもさらに一回り背が高く、体格が立派だった。
「おう、兄弟!宰相を殺そうとしたそうだな!」
長髪を束ねた男、ジユンがアマンをからかう。
「ジユン、人を殺人犯よばわりはやめてくれ。」
「まあ、お前なら何も心配はしていないがな。」
そういって、アマンとジユンは再会を喜び合った。
「こんなことを言ってるが、兄貴は知らせをすぐにでも都に兵を出そうとしたのをキョコウ様に止められたんだぜ。」
短髪にあごひげを生やした弟、エイサイが兄をからかう。
「心配はしていないが、万一のことはあるからな。」
ジユンはそっぽを向いた。
「二人とも、来てくれてありがたい。」
「ロハク様のご一家が惨殺されたと聞いたが。」
ジユンの声が低くなる。
「ああ、霊教の仕業だ。遺体を確認したわけではないが、屋敷も全焼していた。おそらく誰も生きてはいないだろう。」
「許せねえな。」
エイサイが拳を握りしめる。
「敵は霊教とチュウエイか。」
ジユンがアマンの目を見ていう。
「ああ。しかし、霊教全体が相手ではない。おそらくあの周辺の支部だろう。ロハク殿の屋敷跡を改めて調べ、首謀者を捕らえれば当面はそれでいい。」
「では、チュウエイについては?」
「そちらについても手は打っている。しかし、あの不死身の秘密だけはなんとかしないといけない。」
「秘密とはどういうことだ?」
ジユンが腕を組んで聞く。
「実はな……」
アマンは暗殺を失敗した経緯を話した。首を切っても死ななかったこと、神剣・北斗の力で頭と胴を吹き飛ばしても血や肉が動いて復活したことを。
「聞いているだけで気持ち悪くなってきたぜ。」
エイサイは思わず口を抑えた。
「しかし、この世界、不死身のやつがいないわけではない。アンデッドや上位吸血鬼なども対策がなければその場で復活するからな。」
ジユンが答える。
「あ、そういうのに詳しそうなやつがいるじゃねえか!」
エイサイが声を上げる。
「まあ、そうなのだが……」
アマンはちらりと横を向く。目線の先からカギが歩いてきた。
農家の服装から貴族風の衣装に着替えたカギは美しかった。カギはアマンを追って、はるばる故郷から都に行き、アマンを頼らず、夜の世界で歌姫として生計を立てていたのだ。
「アマン様、リユウ姉が来ました。追い返していいですね。」
カギはいかにも嫌そうな目でいう。
「そういうな、カギ。当然通してくれ。」
アマンは少し笑みを浮かべながら答えた。
リユウ。幼い頃から自分たちを見てくれたエルフの女性。アマンが頭が上がらない数少ない一人である。
◇
「アマン坊や!心配してたんだよ!ケガはなかったか!?」
エルフの女性が会うなり、手をとって喜ぶ。
「リユウ殿。もう私もそんな年ではないので、坊やはやめてくれ。」
アマンは苦笑しながらも、エルフの身でありながら駆けつけてくれた彼女に感謝した。
「なんだ。あんたこそ、リユウ姉、とか姉ちゃんと呼んでくれてもいいんだよ。」
リユウはそういいながらジユンとエイサイに気がついた。
「おお、あんたたちも来たのか!」
「おう、姉ちゃん!久しぶりだな!」
エイサイとジユンが挨拶をする。
「久しぶりといってもたった5年くらいじゃないか。」
「人間にとっては5年は十分長いさ。」
ジユンが笑って返す。
「それでは、用は済んだみたいなので、リユウ姉さんはおかえりいただいてよろしいですか。」
カギがアマンに近づきながらいう。
「カギ嬢ちゃんも相変わらず、坊やにべったりだね。」
リユウは笑って返す。
そんなやりとりを見て、アマンは昔を思い出した。
(こいつらと昔は冒険者ごっこをして、魔獣に追いかけられて、リユウ姉に助けられたものだ。)
そして、ここにはいないもう一人、ショウのことを思い出した。
◇
「ちょうどいいじゃねえか。さっきの不死身のことをリユウ姉に聞いてみようじゃねえか。」
エイサイが提案する。
「なんのことだい?」
リユウが興味深そうにする。
「実は……。」
アマンがチュウエイの不死身の件について説明した。
◇
「なるほどな。たしかに不死身といっても倒せるやつは多い。」
リユウは小枝で地面に図を描きながら話す。
「不死身にも種類がある。肉体が戻るやつ、精神体が残るやつ、魂を別に置いてるやつ。まとめて不死身と呼ばれるが、倒し方は全部違う」
「私は目の前で、悪魔が四神の青竜に倒されたのを見たぞ。復活もできないといっていたが。」
アマンはアオが華姫を滅ぼした様子を説明した。
「あんた、四神と四凶と同時に出くわしたのか。私も会ったことはないぞ。」
リユウは驚きを隠さない。
「四神や四凶なんかは例外だな。霊教の神がそのまま地上で活動しているみたいなものだ。悪魔族なんかは通常、完全には倒せない。しかし、魔人や吸血鬼やアンデッドなんかは弱点をついたり精神体を砕けば死ぬ。」
「それにはどうすれば?」
ジユンが確認する。
「高レベルの魔術は肉体だけじゃなく、精神体も砕く。伝説の武器などは精神体も切り裂くらしいよ。たとえば、あの勇者が霊神から授かり、魔王を倒したという剣なんかは精神体をも切り裂いたらしい。」
「あの四神や四凶にも届くのか?」
アマンが興味深そうに聞く。
「さあね。実際に見たわけではないからね。少なくとも魔王を倒したのは確かだ。それより坊や、あんたは四霊の法術を使えたじゃないか。あんたのほうが詳しいんじゃないか?」
「たしかに、悪魔族に対して効果がある霊法術はあるが、それを人間のチュウエイに試そうという発想はなかったな。」
(あのとき、チュウエイに霊法術でとどめをささなかったのは失敗だったか。)
アマンは思わず後悔した。
「もっとも、そのチュウエイの不死身が精神体から即座に復活するなら、それでも倒せないけどね。」
アマンの後悔を読むように、リユウはフォローを入れた。
「一番確実なのは封印することだね。」
「封印?」
「そうだ。私たちエルフの得意技だ。」
そういってにやりと笑う。
「封印してしまえば、不死身だろうが関係ない。もっとも上位の魔人や悪魔には効かないが、人間のチュウエイなら問題ないだろう。」
「それだ。リユウ殿!ぜひ私に、いや、可能であれば我々に教えてもらえないだろうか。」
アマンはリユウに頭を下げた。
「ただ、ひとつだけ条件がある。」
「ああ、私にできることならなんでもいってくれ。すぐに準備しよう。」
「私のことを昔みたいに、リユウ姉、とか姉ちゃんとか呼んでくれないかなあ?」
「え?」
リユウがいたずらっぽく微笑む。
(クッ、そうなのだ、この人は。だから頼みたくなかったのだ!!)
「アマン様、諦めましょう。別の手を考えましょう。」
カギが冷たくいう。
「いいじゃねえか、アマン様。姉ちゃんは姉ちゃんだろ。」
エイサイはずっと呼び方を変えていない。ジユンも幼い頃からリユウ姉と呼んでいた。
アマンは自分もいい大人なのにそれはどうかと思い、ある時からリユウ殿と呼ぶようになったのだが、それがリユウには気に入らないのだ。
「ク、わかった。リユウ姉、頼む。」
アマンは照れながら答えた。
「わかった、わかった。あんたたちに教えてあげるよ。習得できるかはわからないけどね!」
リユウは笑って答えた。
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