第82話 仲間割れ
チュウエイとの舌戦の後、肩を落とすキョウに話しかけようと、クローゼットから出ていこうとしたとき、事件は起こった。
ロフはイーゲン討伐の報告をチュウエイに届けるため、王女の私室を訪れていた。二人の話が終わるまで待つつもりだった。
しかし王女の私室に近づいたとき、チュウエイがちょうど部屋から出てきて、ロフとは反対の方向に歩いていった。
部屋のドアは開いたままだった。
不審に思ったロフがふと中をのぞいた。
そこには、妲姫に抱きついて泣いているキョウの姿があった。
ロフは瞬時に誤解した。
チュウエイが王女に乱暴をしたと。
「チュウエイ貴様あ!」
ロフはチュウエイの後を追い、振り向いた瞬間、その頬に鉄拳を叩き込んだ。
その怒声に驚いたキョウと妲姫が部屋の外に出ると、チュウエイが吹き飛ばされ、口から血を流していた。
「チュウエイ!貴様!王女に何をしたあ!」
ロフは起き上がろうとするチュウエイの眉間を、そのまま踵で打ち抜く。
「貴様、何を……」
◇
(何?何が起こってんの?)
ワタシはクローゼットの中から様子を伺う。
(出ていきたいが……)
キョウに危険が及んでいるわけでもない。もう少し様子を見るか。
◇
「殿下、大丈夫か。」
ロフがキョウの様子を伺う。
「ああ……」
キョウは事態を飲み込めず、思わずうなずく。
「ロフよ、なんだ、お前。王女が気に入ったのか?いいんだぜ、オレの後だが、お前が好きにしても。」
チュウエイは本来の荒々しさをむき出しにして、やってもいないことを言い、ロフを挑発する。
「貴様ああ!」
ロフが激昂する。
「貴様!何を言い出す!何もされておらんわ!」
キョウが思わず声を上げた。
「そ、そうなのか……」
ロフはキョウの声に少し冷静さを取り戻す。
「ああ。チュウエイと少し口論になっただけだ。お前が思っているようなことは何もない。」
キョウの言葉にロフは拳を下げた。
「おい、兵ども、ロフを独房に入れておけ!」
チュウエイの声に兵たちが集まってくる。ロフは後ろ手に縄で縛られた。
「あとで、自分の立場をわかるまで教えてやる。 。」
チュウエイはそういうとふらつきながらその場を去った。ロフも兵たちに連れられていった。
◇
辺りが静かになって、ワタシはようやくクローゼットから這い出した。
「何があったの?」
「実は……」
見えなかった部分をキョウから聞いた。
「ロフとチュウエイが……」
あのロフというやつはいまいちわからない。
ワタシがチュウエイに刺されたときも、やつはチュウエイに文句を言っているように見えた。ビゼンとコウロの屋敷にダークエルフたちを助けに行ったときも、やつはワタシたちを見逃そうとした。
「ロフとチュウエイは実は複雑なのかもね。」
思ったことが口から漏れた。
「よし、ロフと話してみよう!」
キョウは拳を握りしめて言う。
「いや、それは危険な気もするけど。」
ワタシは諌めるが——
「私にはとにかく味方がいないのだ。トウマのやつも護衛の任を離れてしまったし、アビ、お前もいつまでここにいられるかわからんしな。」
一応、ワタシの部隊は傭兵団として官軍に雇われている。
そしてワタシも引き続きキョウの護衛任務ということになっているが、皮肉なことにそれを認めているのはチュウエイだ。
やつがその気ならワタシの部隊もいつでも仕事がなくなってしまう。
「でも、王女が独房なんかにいけないでしょう。」
「そこは妲姫がなんとかしてくれるさ。」
キョウは妲姫の方を見る。
「わかったよ。独房までの道中はなんとかしよう。」
妲姫は頷いた。
◇
ワタシたちは妲姫の幻影でかわしながら、独房に進んだ。
ちなみに妲姫の本体はワタシの右目なので、ワタシもやれるはずだが、経験値の問題なのか、妲姫ほど精度も回数も速度も出せない。
独房の中のロフは体を自由にされ、囚人服にもされていなかった。ただ壁に向かって寝転がっている。
「何者だ!?」
ロフは振り向き、隠形の術で姿を消しているワタシたちに気づく。
「さすがだな。」
妲姫はそういうと術を解いた。
「殿下、それにアビまで。」
ロフは少々驚く。
「何をしに来た。笑いに来たか。」
ロフは立ち上がり、自嘲するように笑った。
「お前は私のためにチュウエイに怒ってくれたのだろう?なぜだ。」
キョウがロフに問うた。
「フン!チュウエイのやつが気に食わなかっただけだ。アンタのためじゃない。」
「アンタとチュウエイは兄弟分だと思ってたけど、違うようね。」
ワタシもロフに聞く。
「オレはやつが死なぬ限り不死身だし、やつはオレが死なぬ限り不死身だ。そういう意味では一蓮托生だがな。」
(たしか【再生の炎】とかいうスキルを持っていたけど、相手はやっぱりチュウエイだったのか。)
「ということは、アンタたちを倒そうと思えば、同時にしないとだめってこと?」
「そうだな。」
(重要なことをやけにペラペラ話すわね。)
「しゃべりすぎてしまったな。殿下、ここはあなたの来るようなところではない。こんなオレに気をかけてくれたことに礼を言う。」
ロフは一度だけ頭を下げると、再び壁に向かって寝転がった。
「しょうがない。帰るか。」
キョウがそういい、ワタシたちもうなずく。
出口に向かって歩いていくと、独房の一つから声をかけられた。
「もしや、殿下でいらっしゃいますか。」
ワタシたちは顔を見合わせ、声がした独房の方に向かった。
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