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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
幻教操国編

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第80話 暗殺

宰相チュウエイ邸宅の応接室――


部屋に通されたアマンは、思わず足を止めた。


天井は高く、壁には金糸で刺繍された緞帳が下がっている。

床には異国の絨毯が敷き詰められ、足音が消えた。卓の上には磨き上げられた銀の燭台が並び、炎が室内を柔らかく照らしていた。王宮の謁見の間にも引けを取らない。


いや、それ以上かもしれない。


(成り上がりとはよくいったものだ。)


しかし、アマンの目が止まったのは豪奢な調度品ではなかった。


壁に、霊教の紋章が飾られていた。


十字に四つの星。


(これを隠すつもりもないということか。)


「アマン殿、この度の反乱軍の鎮圧ご苦労だったな。」


チュウエイはアマンに労いの言葉をかける。


「恐れ入ります。陛下と殿下のご威光のたまものです。」


「今日は、貴殿に相談したいことがある。」


チュウエイの意外な発言にアマンは思わず警戒する。


「どういったことでしょう。」


「国庫に封印されていた禁書の扱いよ。」


そういって、チュウエイは横に積んであった書物をアマンに手渡す。


「禁書、ですか。」


(禁断の魔術でも書かれているのか。)


「そう警戒するな。ここにあるものは私が前にいた世界では子供でも知っていたものだ。」


「異世界の知識、ですか。」


アマンは思わず身を乗り出した。


「そうだ。これを学者たちに研究させようと思う。」


「中身を確認してもよろしいでしょうか。」


アマンはぜひページを捲りたいという衝動を抑えつつチュウエイに確認をする。


「構わんよ。なにも危険なことが書いてあるわけではない。先ほどもいったが、私がいた世界では子供でも知っていたことだ。」


アマンはページをめくり、目次を確認する。


「『民主主義について』……これは、政治制度についての本ですか。」


「そうだ。ここにあるものは皆そうだ。民主主義、憲法、代議制民主主義、選挙制度について。私たち異世界出身の者から見ればごく当たり前のものだ。」


アマンは吸い込まれるように本を読む。


(本で読んだことはあったが、ここまで検証されているのは初めてだ。)


「それで閣下は、この民主制度をこの国にも導入されたいとお考えですか。」


アマンは一旦本を閉じ、チュウエイに確認する。


「そうだ。君はこういうものに興味がありそうだったからな。研究会の一人に推薦しようと思っていたのだが。」


アマンも密かに政治の禁書を所持していた。チュウエイの見立ては間違っていなかった。


「学問としては興味はありますが、私ごときが考えることではありません。」


アマンはとっさに回答を避けた。


(どのみちこの男にはここで死んでもらうわけだが。)


「ところで、最近珍しい剣が手に入りましたので、閣下に献上したく、持ってまいりました。」


アマンは横にかけてあった袋に包まれた神剣・北斗を手に持つ。


「ほう?面白い。抜いて見せてくれるか。」


「かしこまりました。」


(しめた。)


そう思いながらアマンは神剣をゆっくりと鞘から抜き出した。


そしてその瞬間、アマンはスキルを発動させる。


【絶影】――自身の攻撃の瞬間を、何者も認知できない。


音もなかった。


チュウエイが何かを言おうとした、その口が動いた瞬間には、すでに終わっていた。


首が宙を舞い、胴体がゆっくりと椅子から崩れ落ちる。


霊教の紋章が並ぶ壁に、赤い線が走った。


(やった。)


アマンは勝利を確信した。


しかし次の瞬間、違和感を覚えた。


(確実に、殺したはずだ)


(出血の量が少ない。)


「見事だ。攻撃の瞬間がわからなかった。しかし、馬鹿なことをしたものだな。」


切り落としたはずのチュウエイの首が、声を発した。


胴体が立ち上がり、頭を拾おうとのそりと動く。


アマンは一歩下がり、神剣に魔力を込めた。


静かに、深く。


次の瞬間、チュウエイの頭と上半身が内側から膨張した。


皮膚が裂け、骨が砕け、肉が弾ける。


轟音と共に頭部と上半身が爆散し、豪奢な応接室の天井に赤黒い染みが広がった。


磨き上げられた銀の燭台が吹き飛び、霊教の紋章が血に濡れた。


(地獄絵図だなこれは。)


しかしアマンはさらに驚愕した。


床に飛び散ったチュウエイの血と肉が、ゆっくりと集まり始めた。


まるで意思を持つように。再生を始めた。


血が、床を這うように戻っていく。


(ロフは不死身だと聞いていたが、こいつもなのか!)


そのあとのアマンの判断は素早かった。


爆発魔法で壁を破壊する。


禁書を奪い、チュウエイの部屋から飛び出した。


「誰かいないか!閣下が襲われた!」


衛兵が集まってくる。


「アマン殿、どうされました!」


「閣下が刺客に襲われた。壁が破壊され、賊は逃げた。追え!」


「閣下は無事ですか?」


「閣下も賊を追われた。お前たちも全員で追いかけろとの仰せだ!」


「は、かしこまりました!」


そういうとアマンは反対方向からチュウエイの屋敷を素早く脱出した。


成功したとしても、脱出経路は確保していた。


(まさかこんな結果になるとはな。)


「アマン様、もうお帰りですか?」


門番がアマンの愛馬「絶影」を連れて待っていた。


「ああ、閣下より緊急の命令を受けた。」


アマンはそういうと、一旦北門に向かって駆け出し、門番の姿が見えなくなると、いったん東に向かい、そのあとすぐ南門に向かって馬を駆けた。


(もう、屋敷にも戻れんな。)


南門に向かう途中、一人の農民風の汚れた女が荷馬車で待っていた。


「カギ。なんだその格好は。」


アマンはカギの姿を見て笑った。


「アマン様こそ。そのお顔を見る限り、失敗したんですね。」


カギと呼ばれた女は笑い返した。


「ああ、失敗した。それで君はここで何をしている。」


「そんな目立つ格好で逃亡する人がいますか。早く衣服を着替えて、荷台に隠れてください。」


そう言われて、アマンは自分の衣服を見る。返り血のついた上着こそ途中で脱ぎ捨てたが、仮にも宰相のチュウエイに会うために正装をしていた。


「お前を巻き込むわけには……」


アマンがそういおうとするのをカギは制止する。


「こうなってしまっては私の店にも兵たちが押しかけるのは時間の問題です。さあ、早く。」


「すまん。」


それだけいうとアマンは農民の衣服に着替え、麦わら帽子を被った。


「絶影よ。また会おう。」


アマンは愛馬の尻を叩くと、馬はアマンが来た方向に向かって駆け出した。



アマンが逃げ出した数十秒後、チュウエイは応接室に復活した。


「誰かいないか!アマンが反乱した!」


チュウエイが声を上げたが、兵はすぐに来なかった。


(どういうことだ。)


チュウエイが部屋を出ると、メイドたちが不安そうに集まっていた。


「兵たちはどこにいった!」


「閣下が襲われ、アマン様が兵たち全員で賊を追うように命じられましたので、屋敷に兵は残っていません。」


メイドが恐怖におののきながら答える。


「チッ、やってくれたなあの赤毛の小僧め!」


チュウエイはそういうと、一人門番のところに走った。


「アマンはここに来たか!」


「アマン様なら北に向かって行かれましたが。」


「間違いないか!」


「はい、まっすぐ北です。」


「馬を出せ!アマンが反乱をした。やつの屋敷ややつの行きそうなところを家捜ししろ!」


チュウエイは兵たちにそういうと、自身もアマンの捜索に向かった。



南門――


アマンとカギは検問を受けた。


「荷物を改めさせてもらうぞ。」


荷台に隠れるアマンは息を潜める。


カギは当然の仕草のように兵に袋を渡した。中身を確認する兵。中には銀貨が詰まっていた。


「通れ。」


それだけだった。


「ありがとうございます。」


カギはそういうとすんなりと門をくぐり抜けた。


「なんだ、もっと厳しい追及があると思ったが、拍子抜けだな。」


アマンは荷台からカギに声をかける。


「こんなこと庶民は日常的にやってますよ。今更です。」


カギは笑っていう。


「ではどちらへ。」


「まずは東に向かってくれ。寄りたいところがある。」


「わかりました。」


アマンとカギが都を出た頃、チュウエイとその配下はアマンの館に乗り込んでいた。



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