第76話 邪神との交渉
「ウルファーJr.っていうやつがいてね。」
究姫が知らない名を出す。
「私とオアシスでやり合ったやつだ。」
ビゼンがフォローしてくれる。
「あー、なんかそんな話を聞いたような。」
「実は私があいつに力をやったんだ。そしたらなかなか面白いスキルを習得しやがった。」
(もうその時点で、嫌な予感しかしない。)
「なんと、誰でもデュエル・ウィザーズの幻想を作り出せる魔法陣のスキルを習得しやがったんだ。その名も【立体決闘】!」
「誰でも?」
「そうだ。その魔法陣でデュエル・ウィザーズをやったら、誰でも実際のモンスターの幻想が現れる。もちろん本物じゃないが、ほとんどの人間はベヒーモスやフェンリルなど見たことがないからな、幻想で見れるだけで大盛り上がりだ!」
究姫は子供のように目を輝かせる。
しょうもない。しょうもないが、なんだか憎めない。
「それで、そのウルファーJr.は大儲けしたってこと。」
「ああ、オアシスでやつは再び大儲け。カードショップは大盛況よ。」
「なるほど。で、それがこのヒュドラとモスとどういう関係が?」
「よく考えたら、幻想であんなに迫力があるなら、現実でやったらもっと面白いんじゃないかと思ってね。ヒュドラを集めて、やってみたってわけだ。」
「それで、私がそのモス君に声をかけて、彼もトレーニングになるならと快く付き合ってくれたってわけだよ。」
そういって凍子はモスのほうを見る。
「ほう、あんたはそれでホイホイついていったわけか。」
ワタシはモスをにらむ。
「い、いや、アビ様、これは違うんです。我も強くなってアビ様やリョーカ殿の力になりたいと思い、つい……」
モスが凍子の顔をちらちら見ながら言い訳をする。
「あー、わかったわかった。」
ワタシはため息をついた。
「でも悪いんだけど、もうやめてくれない?あんたが集めたヒュドラたちが官軍を襲って、みんな困ってるんだよ。」
ワタシは究姫に言う。
究姫はワタシが困っているのを見て、妖艶に口角を上げた。
「そんなこと言われても、私には関係ないねえ。」
(やっぱりそうくるか。)
「たしかに関係ない。でも、だから頼んでるんだけど。キョウにも迷惑がかかる。」
「悪魔に頼みごとをタダでするつもりかい?まあそこまで言うなら聞いてやらなくもないけど、それ相応の対価はもらうよ?」
究姫は指を一本立てて、ワタシを見る。
「はいはい、わかってる。」
ワタシは懐から一枚のカードを取り出した。
「これでどう?」
「……っ。」
究姫の目が、止まった。
「これは……キングヒュドラのカードじゃないか!あんたどこでこれを!」
「あんたが喜ぶんじゃないかと思って、用意しておいたんだよ。」
(こんなこともあろうかと、ジークにレアカードを譲ってもらっていたのだ。)
「これを獲得するには相当苦労したのよ。」
究姫はカードをしげしげと眺め、それからワタシを見た。
「アビ、あんたいいやつだね。」
そういうと究姫はレアカードを大事そうに懐にしまった。
「困ったことがあったらなんでも私に相談しな。」
(ちょろいな、コイツ。)
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