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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
幻教操国編

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第68話 手のひらクルックル

「みんなはヒュドラが分裂したやつを相手して!本体はワタシとビゼンでやる!」


返事を待たずに駆け出した。


【魔勇者・限界突破】


体の内側から、力が沸き上がる。 骨が伸びる。


文字通り、伸びる。


身長が、上がっていく。


筋肉が、肉が、皮膚が、限界の一枚向こう側へと押し広げられていく。


鎧の締め付けが、一瞬きつくなって、それからゆるんだ。


視界が、高くなった。


「す、すげー!リーダー!なんか、でかくなってる!?」


「いろんなところが!」


「なんかエロい・・・」


仲間たちの声が、後ろから聞こえた。


(そう。でかくなってる。色んなところが・・・)


「いつもは小さいみたいにいうな!」


自分でもわかる。 さっきまでと、目線が違う。体が違う。足が地面を蹴るたびに、大地がいつもより遠ざかる。


ヒュドラの五本の首のうち、最も近い一本がこちらを向いた。大きな口が開く。


炎が来る前に、ワタシは踏み込んでいた。


剣を首に叩き込む。一撃。二撃。三撃。斬撃を畳み掛け、鱗をこじ開け、肉を断ち切る。


「はああああッ!」


しかし、致命傷には至らない。それでも攻撃は止まった。隙ができた。


その隙間に、風が鳴った。


「おおおおお!」


ビゼンが薙刀を一閃した。


空気が裂ける音がした。ヒュドラの首が、根元から飛んだ。


しかし次の瞬間、切り口から血が噴き出すと同時に、飛び散った鱗が地面に落ちた。


鱗が、蠢いた。


みるみる膨らみ、脚が生え、口が裂ける。蜘蛛に似た分裂体が、五体、十体と生まれていった。


「……きりがないな、これは」


ビゼンがうんざりしたように呟く。珍しい。あのビゼンが、うんざりしている。


(切れば増える。魔法は再生で消される。)


(だったら――内側から、一度で終わらせる。)


【限界突破・最大出力フル・オーバードライブ


体の限界が、さらに外れた。


ワタシはヒュドラの首の一本に剣を突き立て、すぐに距離を取った。剣は、そのまま首に残した。


後方に跳びながら、右手の指を天に向ける。


「集え、魔神の雷光――」


周囲から色が消えた。


空気がオゾンの匂いに変わる。空の雲が渦を巻き、電位が収束し始める。肌がぴりぴりとした。全身の毛が逆立つ。


天と地の間に、眩い光の球体が生まれた。


狙いは一つ。ヒュドラの首に突き立てた、鋼の避雷針。


(いや、ちょっと待って。これ、やりすぎじゃないか……?)


魔神雷撃ライトニング・ブレイク!!!』


轟音。


白い光が、空間を焼き切った。


雷が剣に直撃する。電流がヒュドラの体内を駆け巡り、再生が追いつかない。分裂するより早く、焼かれる。増えるより早く、滅ぶ。


その瞬間、地面が弾けた。


草原が一直線に抉れ、遠くの兵士たちが思わず伏せるのが見えた。


空気そのものが震え、遅れて衝撃が押し寄せる。


内側から、爆散した。


ヒュドラの断末魔が草原を揺らした。煙が晴れると、ヒュドラは動かなかった。


分裂体たちも、本体が消えたことで動きを止め、そのまま崩れ落ちていった。


「……今の、なんだ……」


「……草原が、抉れてる……」


後方から、官軍の声が漏れた。


「……あれ、本当に人間か!?」


「さすがリーダー!」


仲間の声も聞こえる。


(……いや、ワタシもそう思う)


(今の、ちょっとおかしいだろ)


(耳がキーンとする。この術、多用はできないな。)


「すごいじゃないか、アビ!いつの間にこんな術を」


ビゼンが駆け寄ってきた。


その顔に、珍しく驚きの色がある。


「電撃系のスキルは一応あったんだけどね。今まではビリっとさせるくらいしかできなかったんだけど……」


まさかヒュドラを一撃で仕留めるとは、我ながら驚いた。


(レベル20からいきなりレベル200になった気分だ。)


「これが元勇者パーティーの力ってやつでしょうね」


改めて、リョウコさんから継承したスキルの重さを感じた。


ワタシたちは、この勇者率いる軍と戦うわけか。





「ご協力感謝する!あなたがこの傭兵団のリーダーか!」


兵の一人が敬礼をしてきた。


「シャター隊長がご挨拶されたいとのことです!」


(シャター、聞かない名前ね。)


そう思いながら、ワタシは兵のあとについていった。



「わたしはシャター大佐というものです!さぞかし、名のある冒険者の方々でしょう!」


シャター大佐はワタシの手をにぎる。笑顔だ。満面の笑顔だ。


「冒険者?いや、冒険者ランクでいうとCだったかな……」


「C……ランク?」


シャターの笑顔が、みるみる曇った。


「なんだ、てっきりSランクかと思ったが……こんなしょうもないことに私を呼び立てて!」


さっきまでの満面の笑みはどこへやら。シャターは露骨に顔をしかめ、踵を返す。


「おい誰か、褒美でも少しやっておけ。はした金でいい」


(なんなんだこのおっさん……。)


怒りより呆れが先に来た。


「大佐、この方はあのアビ殿では?」


一人の兵がシャターに耳打ちする。


「アビ?……どこかで聞いたような」


「ほら、殿下をお救いしたという。殿下の恋人ともいわれているあのアビ殿ですよ」


「前半はそうだけど、後半はちがうわよ」


おもわずツッコまざるをえない。


「……あ!」


シャターが声をあげた。ゆっくりと振り返る。その顔が、みるみる晴れていく。


「あのアビ殿でいらっしゃいますか!!」


「そうよ、あのアビ殿よ。さっき褒美を少しやっておけって言ってたアビ殿よ」


「いやこれは大変失礼いたしましたあ! まさか殿下のご盟友のアビ殿とは! いやはや、ご尊顔を拝しこの上なく光栄であります!」


さっきまでの仏頂面はどこへ消えた。シャターは満面の笑みで、今度はワタシの両手を握りしめる。


(手のひらくるっくるのドリルだなこのおっさん。地面でも掘る気か。)


「まさか、あなたも反乱軍討伐にご協力を!?」


「正確にはキョウ殿下に助っ人に行くんだけど、結果的にはそうなるかもね」


「我々はこれから反乱軍のアジトを討伐に向かうところだったのですが、途中魔獣に襲撃されまして!いや本当に助かりました!よろしければぜひ、お力をお貸し願えませんでしょうか!?」


笑顔が眩しい。さっきの仏頂面が嘘のようだ。


「その前にキョウ殿下に会いに行きたいんだけど……」


「おお!我々も反乱軍討伐のあと、殿下の軍に合流する予定ですから!ぜひ!ぜひともご一緒に!」


(正直、革命軍には別に恨みもない。討伐に参加したいかといえば、微妙だ。でも綺麗事もいっていられない。革命軍出身の人たちだって、覚悟を持ってここにいる。)


「わかりました。ではワタシたちも参加するので、ついていきます」


「おお!英雄アビ殿がご同行くださるとあれば、兵の士気もあがるというものです!」


シャターはまた満面の笑みで、ぶんぶんとワタシの手を振った。


(C冒険者のときは"はした金でいい"だったのに。)


複雑な気持ちを胸の奥に押し込んで、ワタシたちは軍に同行することにした。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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