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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
幻教操国編

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第62話 群衆と演説

ク……⁉


目が覚める。


天井が見えた。


知らない天井だ。


「目覚めたね。」


声がした。


首を動かす。


アオがいた。


「あなたが助けに来てくれたの。」


「傷を治したのは私だけど、助けたのは彼だよ。」


アオが視線をやった。


部屋の入口に、男が立っていた。


(チュウエイ……!?)


「やっとお目覚めか。」


奴は部屋の入口から動かないまま、ワタシを見た。


「寝起きで悪いが、シャワーを浴びて着替えろ。オレは外で待っている。大勢待たせている。急げ。」


それだけ言って、出ていった。


(大勢って、どういうこと。)


周囲を確認する。


医務室のベッドの上のようだ。傷は完全に回復している。


右目は、まだ見えない。


刻印も、まだある。


(生きてる。)


それだけは、わかった。


「聞きたいことがいろいろあるんだけど。」


「とりあえず、大勢待たせているというのは本当だから、先に着替えよう。体、洗ってあげようか。」


「いらんわ。」


いつものやりとりをして、シャワーを浴びる。


浴びながら、記憶を辿る。


リョウコさんが死んだ。


ハクエイが裏切っていた。


チュウエイがハクエイを殺した。


そこから先が、ない。


(あの後、何が起きたんだ。)


シャワーから出ると、そこに待ち受けていたのは複数人のメイドだった。


「え?これは……」


戸惑う間もなく、手際よく着替えさせられる。


白い服だった。騎士が式典で着るような、格式のある服だ。


「あの…これはどういうことでしょう。」


メイドに聞いたが、誰も答えない。


言われていることをやっているだけだと。


そこへノックがあった。


チュウエイが入ってきた。


今度は気がついた。


こいつも、豪華な式典用の衣装を着ている。


「用意ができたな。ついてこい。」


「ちょっと待って。説明しなさいよ。キョウ殿下は。カイ殿下は。」


「二人ともお前の目覚めを待っていた。」


「だから、どういうことよ。」


答えず、歩き出す。


(こいつ、いったい何をするつもりだ。)


やむなくアオとともについていく。


廊下を進むにつれ、ざわざわと人の気配が膨らんでいく。


(なんだ?)


一人や二人じゃない。


(大勢だ。どこにこれだけ人が。)


「こっちだ。」


チュウエイが促した方向を見て、ワタシは足が止まった。


(そっちって、王宮の広場じゃ……)


「なに、これ。」


思わず声が出た。


広場に何千もの人間が集まっていた。


波のように揺れる人の群れ。


その全員が、こちらを見ていた。


チュウエイがワタシの背を軽く押した。


気づいた時には、壇上に立っていた。



「諸君、お待たせした!」


チュウエイの声が広場に響いた。


よく通る声だった。何千人もの群衆を、一声で静かにさせる声だった。


「逆賊から国王陛下とキョウ殿下をお救いし、この国を守った英雄が、ようやく目を覚ました。そのものこそ――こちらの戦士、アビ=キョウカ殿だ!」


「「わあああああ!!」」


群衆が沸いた。


ワタシは壇上に立ったまま、動けなかった。


「私が現場に駆けつけた時、彼女はたった一人で、逆賊から殿下と国王陛下をお守りしていた!剣も折れ、体も限界の中で、一歩も退かなかった!」


「「おおおおお!」」


観衆がわく。


「しかし、諸君。この英雄がなぜ、刻印を受けた身でここに立っているのか、皆は疑問に思わないか!」


チュウエイは一拍置いた。


「私は調べた。この刻印は冤罪だ!」


広場がざわめく。


「彼女が刻印を受けたのは、何の罪もないダークエルフの里への武力行使を行っていたコウロが、その事実を隠蔽するためだ!真実を突き詰めた彼女に、呪いの刻印を刻み込んだのだ!」


群衆がざわめく。


「そして、あの宦官どもはどうか!国王陛下の遺言書を捏造し、コウロと結託してキョウ殿下を亡き者にしようとした!さらに、刻印を受けた人々を悪魔召喚の生贄にまで使った!」


「「なんということだ!」」


「「宦官め!」」


「悪魔と戦い、命を落とされたシン将軍の御霊には、哀悼を申し上げる。将軍は確かに勇敢だった。」


チュウエイは一瞬、頭を垂れた。


しかしすぐに顔を上げた。


「だが、それだけだった!最終的にキョウ殿下と国王陛下をお守りしたのは誰か。この私と、この英雄アビだ!」


「「チュウエイ!チュウエイ!」」


「「アビ!アビ!」」


名前が波のように押し寄せてくる。


「そして、諸君に忘れてはならない名を伝えなければならない。」


チュウエイの声が、静かになった。


「英雄リョウコ殿だ。」


広場が静まり返った。


「かつて魔王を倒し、この世界を救った伝説の勇者。そのリョウコ殿が、老いた体に鞭打ち、最後の力を振り絞って、王女殿下をお守りくださった。」


チュウエイは深く頭を垂れた。


「リョウコ殿は今、この国のために散られた。その死は無駄にはしない。私が、この命に代えても。」


「「リョウコ!リョウコ!」」


群衆から名前が呼ばれる。


「そして、そのリョウコ殿の志を継いだのが、こちらのアビ殿だ。リョウコ殿が命を懸けて守ったものを、アビはその後を引き継ぎ、最後まで戦い抜いた。リョウコ殿の志は、この英雄の中に生きている。そういっても過言ではない!」


「「アビ!アビ!アビ!」」


(わたしは何を見せられている?)


頭が追いつかない。


「そして私はここに、国王陛下の勅命を奉じる。今この時より、刻印の呪いを全て解除せよ、と!」


広場が静まり返った。


「その証として、英雄アビの刻印を、今ここで解除する!」


チュウエイが手を上げた。


一人の女がワタシの前に進み出た。


金髪。金色の瞳。


「おまえ、究姫!」


「はい、シャランラ~。」


究姫がどこかで聞いた魔法を唱えた瞬間、両腕の刻印が消えた。


(どうせ意味ないだろ、その呪文。)


痛みは、なかった。


右目に、光を感じた。


眼帯を外す。


見えた。


視界が、戻っていた。


「こっちもちゃんと戻ってるよ。」


究姫がワタシの下腹部に手を伸ばす。


ワタシは即座に払いのけた。


「「おおおおおお!!」」


群衆が爆発した。


「当然、刻印を受けた全ての方々も、無償で順次解除することを約束する!」


「あとで副賞もあげるからな。」


究姫がワタシの耳元で囁いた。


チュウエイの声が、さらに高まった。


「闇の時代は終わる!長く続いた宦官の専横も、コウロの横暴も、今日この日に終わりを告げる!私とともに、皆で新しい時代を迎えようではないか!」


「「チュウエイ!チュウエイ!チュウエイ!」」


怒号のような歓声が広場を揺らした。


(こいつ……ぬけぬけと)


しかし、今のワタシには、何もできない。


クソ。


ワタシは拳を握りしめた。


キョウが群衆に向けて笑顔を向けていた。


しかしその目は、笑っていなかった。


歓声にかき消されたが、後ろではアオが究姫に何か文句を言っていて、究姫がそれをなだめていた。


(何をやっているんだあの人たちは……。)

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