第61話 決着
キョウの首が地面にころがり、ハクエイが現れる。
「ハクエイ、お前か。」
ワタシは静かに彼をみる。
「なんだ?王女が殺されたのにやけに冷静だな。」
ハクエイはワタシの反応に意外そうな声をあげる。
(気づいていないのか。我ながら初めてにしては完璧だったな。)
「いや、これは…!?」
ハクエイの前からキョウの身体が、おびえるカイ王子が光の粒になって消える。
「幻影だと!?アビ、まさかこれはお前の仕業か!いつのまにこんな術を!?」
(幻影は妲姫、あなたの得意な術だったわね。借りたわよ。)
ワタシは妲姫のスキルを継承した。
もっとも悪魔なので正確にはスキルとはちがうんだろうけど。
「ちょっとこういうのが得意な親友ができてね。」
ワタシはレツオウに切り裂かれた体をおしてハクエイに向き合う。
(くそ、回復できない。からだが熱い。)
思わず、膝をつく、そして、幻影が消え、がれきの一つが本物のキョウとカイ王子になる。
「お前、こうなることを予想していたな。いつ気がついた。」
ハクエイはワタシをにらんで答える。
その目はもはやワタシを敵と認識しているようだった。
「最初におかしいと思ったのはワタシたちがコウロの屋敷を襲撃したときよ。」
忌々しい刻印の記憶がよみがえる。
「アオは屋敷に華姫はいないといっていた。しかし、やつはいた。偶然でなければ、だれかが向こうに通じて、華姫をもどしたしかありえない。」
「なるほどな」
ハクエイは剣を構える。
「ほぼ確信したのは、リョウコさんが襲撃されたときよ。リョウコさんがスキルを使った直後、そしてそれを見ていた奴となれば、あの魔獣を紹介したやつは限定できる。ハクエイ、あんたは容疑者の筆頭だったよ。」
「そうか。アビ、お前はたいしたやつだよ。」
ハクエイが魔力を込めたのがわかる。
「ひとつ提案がある、俺たちのもとにこい。オレはお前を殺したくない。」
ハクエイの誘いを無視して私は聞く。
「なぜ、裏切った?」
「その華姫だよ。やつにうちのアジトがバレたんだ。だが、コウロ公は約束してくれたのさ。自分につけば、ユウのやつもオレのガキどもも将来を保証してやると。」
(ユウさん、ハクエイの奥さん、家族を人質にとられたったわけか。)
「アビ、お前には借りがある。その王女を殺せば、その刻印も消すように俺からもたのんでやる。コウロ公は話のわからないやつじゃない。」
「ふざ、けるな…!!」
ワタシは声をしぼりだす。
「そうか、なら仕方ねえ!」
ハクエイの姿が消える。
しかし、私はその速さに反応し、キョウに迫ったハクエイをとめた。
ギン!
剣と剣がぶつかり合う。
「ばかな!オレの【白狼】に追いつく速さだと!」
そして、ハクエイは私のカラダをみて異変に気がつく。
「お、おまえなんだそれは!?」
◇
アビの身体が魔力に満ち溢れ、肉体と精神の限界を変えた。
身長が10センチほどのび、四肢がつよく、美しく成長していた。
(これは、リョウコさんの【限界突破】!?)
「お前!」
ハクエイが警戒し、高速移動で大きく後ろに下がる。
アビもピタリとついていく。
(見える!ハクエイの動きが)
(オレの【白狼】のスピードについてくるのか!?)
アビが剣をふるい、ハクエイがそれを剣で防ぐが…
アビのビゼンからの継承スキル【魔勇者・闘神】が発動する。
相手の物理防御を無効とするビゼンのスキルはハクエイの巨体を弾き飛ばす。
巨大な物体にぶつかったように吹き飛ばされるハクエイ。
「おおおおお!」
(化け物か!)
ハクエイは受け身をとり、ころがる。
(やばい追撃がくる!)
ハクエイはとどめを警戒するが…⁉
(‥‥‥!?こない)
アビは切れそうになる意識をかろうじてつなぎとめていた。
(くそ!)
(これが【限界突破】か、体の痛みも消えてる。傷すらも徐々に再生していってる。しかし、意識が飛びそうだ。)
ハクエイが肩で息をしながらいう。
「なあ、アビ、ユウとガキどもは今、コウロとところにいる。この意味がわかるな。」
……!?
「だったら、あんたこそ、ワタシたちの側につきなさい。ともにコウロを討つのよ。」
アビはハクエイに手を差し出す。
「少しばかりおせえな!」
そういうと、ハクエイは手を掲げる。
『白魔祇十』
ハクエイを中心に足元に魔法陣が現れた。
(走りながらこの魔法陣を描いていたのか!)
「陣!」
(回避不能、シールド不能か、なら!)
「突風波!」
【限界突破】で強化された突風はもはや爆風となってハクエイを吹き飛ばす。
後方の柱に激突するハクエイ!
それと同時にアビの下半身に魔力の嵐が襲う。
「ああああああ!」
(足が…、もう動かないか。動けええ!)
その時、ハクエイの後ろに人影が現れた。
(くそ、援軍か……!?)
(いや、あれは……チュウエイ!?)
チュウエイは剣をさげ、五体満足な状態で不敵に構えた。
「おせえよ。馬鹿」
ハクエイが起き上がりながらチュウエイに声をかける。
(最悪だ…)
アビは再び剣を構えた。
強敵二人を倒すために。
◇
「王女殿下、暗殺未遂犯、ハクエイ、貴様をうつ。」
チュウエイはハクエイの背後で静かに呟いた。
そして、後ろからハクエイの心臓を貫いた。
「カハッ!」
ハクエイは自分に何がおこったかも理解できず絶命した。
即死だ。
「おまえ、何を!」
「アビ、勘違いするな。オレはお前の敵じゃない。」
ワタシは一瞬なにが起こったかわからなかった。
チュウエイは戦闘の意思がないことを示すように剣を治め、キョウに跪く。
「王女殿下、王子殿下、いえ、国王陛下。逆賊は私が討ち果たしました。もう大丈夫です。ご安心を。」
キョウは何が起こったか理解できず、カイ殿下をかばい黙っている。
「逆賊ジヨウを討ち、真の遺言状を手に入れました。こちらでございます。」
チュウエイはそういって、キョウに紙をわたす。
あれが遺言状なのか。
「た、たしかにこれは父上の字だ。カイを王に、私を補佐に、そして、『この遺言状を持ち、私、キョウを助けたものをカイの後継人にせよ。』と書いてある!」
「おそらくは前王陛下はそちらにねむっておられるリョウコどのがあなたを助けるとおもっておられたのでしょう。ご安心を、私がカイ王子をささえますので。」
チュウエイが笑う。
「ふざけるなあああ!」
ワタシはチュウエイに襲いかかる。
しかし、【限界突破】がとけていた私の頭をチュウエイはいとも簡単につかみ抑え込んだ。
「なんどもいわすな。安心しろ。オレはお前の敵じゃない。それにやってもらうこともある。」
チュウエイのその言葉を最後に私の意識は消えた。
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