第56話 嵐の前
前回までのあらすじ。
アマンの依頼に応じる形でアビはキョウ王女の護衛として後宮に入る。(38話)
レイ国王が死んだあと、キョウ王女に王位につかせたくない者たちがキョウ王女の命を狙うのは明らかだったからだ。
配属初日でアビはルオという女と知り合う。しかし、ルオは後宮の悪魔妲姫により殺されてしまう。
アビはその後、すぐにキョウ王女に呼び出されて私室に行くと、そこにいたのは死んだはずのルオだった。ルオ殺害はキョウ王女と妲姫による狂言だった。キョウ王女を真に自分の盟友となれるものを探していた。
アビは仲間のために隻眼となったこと刻印持ちとなり、人権を奪われたコウロ公爵との因縁。、四神・青龍アオや、四凶・究姫との関係をキョウ王女に伝える。
アビとキョウ王女は互いの境遇に共感し、盟友となる。(41話)
キョウ王女はたびたび王宮を抜き出して、貧民街で慈善活動を行っており、貧民街の聖女ルオと呼ばれていたことが判明する。(45話)
その後、アビはかつての勇者パーティーの一人英雄リョウコに出会い指導を受けるが、その時、魔獣に襲撃される。魔獣の狙いはリョウコだった。(48話)スタミナ切れを狙われたリョウコだったが、アビは魔獣アラクネを退ける。一方、妲姫は護衛のひとりトウマがずっとキョウ王女を監視していたことを告げる。(49話)
キョウ王女はトウマを詰問するために自室に呼び出す。
◇
「トウマ、なぜ呼び出されたかわかってる?」
ワタシは殿下の横に立ち、と跪くトウマに詰問する。
うすい青の髪、切れ長の一重まぶたの眼をした女兵士。
とはいってもこの殿下は妲姫が幻影に化けているだけだ。
本物の殿下は衝立の後ろの秘密の空間に隠れて、この様子をうかがっている。
万が一ということもある。
「私が殿下を監視していたことですね。」
観念しているのか、トウマはあっさり答える。
「誰かの差し金?」
「コウロ公爵です。」
(またあいつか。)
ワタシは表情を変えないように努める。
「何が目的?コウロはあなたに何を命じた?」
「ご存じのとおり、国王陛下は危篤にあらせられます。もし、亡くなられた場合、まさにその時、王女殿下、王子殿下がどちらにいらっしゃるかが非常に重要になります。まさか、城外に出かけられるとは思いもしませんでしたが。」
「隙あれば殿下を亡き者にしろといわれたか?」
私はトウマをみつめる。
「はい。」
素直に白状するトウマ。
(もはや観念したのか。)
「えらく正直にいうのね。」
「もうこうなってはどうしようもないからね。お前は王女ではないんでしょ。」
トウマは偽王女に向かって話す。
「よくわかったな。」
妲姫はそういって本来の姿に戻る。
白い肌、銀髪に角を生やした女悪魔。
「正直まったくわからない。でも、私はお前が殿下の身がわりをしていたのを見ていたからな。それだけだ。」
「なるほどな。」
そういうと殿下がついたての後ろから出てきた。
「殿下。」
ワタシはおもわず諫めようをしたが出てきてしまったのだからどうしようもない。
「私も直接、話が聞きたい。どうやってみていたのだ?この妲姫も妙な気配は感知したが、はっきりとはわからなかったと言っていたが。」
トウマは窓に目をやる。
「殿下、窓をあけていただいても?」
「かまわぬ。アビ、あけてやってくれ」
ワタシは殿下に言われて窓をあける。
そのとき私のスキルが反応する。
【 翼の依代 】 鳥類と感覚を共有する。
(なるほどわかってきた。)
ワタシはスキル解析の件はだまって成り行きをみていた。
しばらくすると窓に一羽の鳥をとまる。
「ハヤブサか。」
ワタシはすべてに気がつく。
「私はこのハヤブサの眼を通して、見ることができます。ハヤブサは上空かなたからでも地上の様子がうかがえます。」
「なるほど。私もその距離から見られていたら気がつかない。まして鳥に見られていたんならなおさらだな。お前なかなかやるな。」
妲姫が素直に称賛する。
「見ての通り、戦闘向けのスキルではありません。」
「なるほどな。」
キョウ殿下も腕を組んで感心する。
「しかし、お前はなぜそうも口が軽いのだ。コウロに忠誠心はないのか?」
「殿下、私の話をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「許す。」
トウマは息をととのえ話をしだす。
「私は西方の豪族の生まれです。ちょうど魔王領との国境のあたりです。魔王が滅びた後、魔王領から難民がなだれこみ、故郷はあれ、私の祖父母は私財をなげうって領民をすくおうとしました。」
トウマはキョウ王女のほうを見る。
「正直いうと、私はあなたがた王家を憎んでいます。」
(本人を前にしていうね。)
「王は魔王を倒したのはいいですが、そのあと何もしなかった。むしろ私たちのような魔王領にちかい土地のものにとっては魔王がいた時のほうがよかったという話も聞きます。」
「だからコウロに協力したと?」
私は彼女の横顔を見ながら聞く。
「そうです。コウロは今の王家は滅びたほうがいいと思っているようですからね、もちろん、表向けはそんなことはいいませんが。でも。」
「でも?」
キョウ殿下はトウマの告白をだまって受け止める。
「殿下、あなたは私の思っていた方とはちがった。」
「なに?」
殿下は目を細める。
「正直なところ、殿下は城に中に退屈してて、城下にでて、遊びにいくのだと思っていました。それがまさか、貧民街の民のところに行ってらっしゃるとは夢にもおもいませんでした。私はあなたをひどく誤解しておりました。」
そういって、トウマは跪いたままキョウ王女を見つめる。
「許されるなら、改めてあなたに忠誠を誓わせていただけませんか。」
その瞬間だった。
音もなく、妲姫がトウマの背後に回り込んでいた。
白い指が、トウマの首筋に触れる。
爪の先が、皮膚に食い込む一歩手前で止まった。
「……本当にそう思っているのか。」
低い声だった。
問いかけというより、確かめるような声だった。
トウマは動かなかった。
首筋に爪を当てられたまま、真っ直ぐキョウ王女を見つめている。
「はい。」
一言だけ答えた。
声が震えることもなかった。
妲姫はしばらく、トウマの横顔を見ていた。
そして静かに爪を離した。
「……よかろう。」
それだけ言って、妲姫はキョウ王女の隣に戻った。
「ふむ、よかろう、許す。」
(即答か!)
「いや、殿下、大丈夫ですか。そんな簡単に決めて。」
ワタシは思わず諌めるが。
「私の仲間は現状、お前と妲姫くらいしかおらんのだぞ。」
「まあ、それはそうですが。」
「しかし、トウマ、裏切りは許さぬぞ。」
「もちろんです。殿下。」
「殿下がそういうなら…」
ワタシがそう呟いたとき、扉を叩く音が。
「アビ、あとにしろと伝えてくれ。」
「わかりました。」
ワタシは扉に向かい、殿下の伝言をつたえる。
「殿下は今でが離せない。後からにしてくれない?」
「いえ、そういうわけには参りません。陛下がご危篤です。」
「父上が…‥!?」
殿下が立ち上がる。
(とうとうこの時がきたか…!?)
国王が死ねば、キョウ王女はおそらく一気に政争に巻き込まれる。
ワタシも覚悟するときがきたかもしれない。
そして、コウロとの因縁もそれで終わる。
そんな予感があった。
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