第255話 天災
ドドドドド
何かすごい音とともに、ワタシは目を覚ました。
どこかのベッドに寝かされていた。
全身が痛い。
回復魔法は効いてないのか。
「あー、目をさましたね」
クロが窓際に立っていた。
窓の外に目をやると、外はもう吹雪になっている。
まったく状況がつかめない。
「えっと、ワタシはハクのやつに掴まれて、アオめがけて振り下ろされた気がするんだけど……」
そういえば、アオもハクもいない。
「うん、それだよ」
クロは、困ったような顔をした。
「アオは君をまもって、負傷した」
「え?」
あのアオが?
「攻撃を防ごうとすると、君の体がバラバラになるかもしれない。よけたら、君の体が地面に叩きつけられる。だから、アオは自分の身体をクッションにして、君を守った。それでも、君の後頭部がアオの頭にぶち当たって、両者頭蓋骨陥没の大怪我。さらに全身打撲に骨折」
「それで、アオは!?」
「まあ、自分のケガは一瞬で復元した」
「復元したんかい!」
「キレた彼女は、そのままハクの上半身にむかって魔力をはなった。ハクは君との戦いを想定していたので防御できず、上半身は消し飛んで、さらには背後の城と、地平線まで消し飛んだ」
「アオがハクを殺したの?」
「なわけない。すぐさま復元して、城と国土を消されたハクも怒って、そのまま二人は喧嘩してる。その余波がこれ」
クロが窓の外を指さす。
猛吹雪だ。
これが余波?
「私も結界を張ってるんだけど、君を治療しながら、あの二人を抑えるのもつらいからね」
クロが、ワタシの頭にそっと手をのせた。
「なんとか治ったみたいだね。脳みそまでチラリと見えてたから、ヤバかったんだよ。アオも石頭だよな」
まじか。
ワタシは思わず、自分の頭をさわった。
傷もない。
「傷が脳にいってたら、死んでたかもね。全身の骨もかなりいってたけど、大丈夫みたいだね」
「あ、ありがと。あなたが助けてくれたのね」
とりあえず、素直に礼をいう。
「まあ、君が気がついたから、もうもどってくるだろ」
そう言っていると、眼の前にアオが転移してきた。
「よかった。気がついたみたいで」
彼女はニコリと笑うが、外の吹雪はおさまっていない。
「いや、それより、これ大丈夫なの?」
ワタシは窓の外を指さした。
「まあ、気候は変わるかもしれないけど、あいつが私に先に手を出したんだから、自業自得よね」
アオがそう言っている間に、急に天気がよくなってきた。
吹雪がおさまり、外が見えてきた。
外は、ひどいことになっていた。
城と街は半壊し、大地はえぐられ、さらに地割れまで走っている。まさに大災害だ。
すると今度は、眼の前にハクが現れた。
「いやあ、久しぶりに、少しは本気のお前と戦えて楽しかったよ。武術大会とやらで、ホントは戦いたかったんだけどな」
ハクは豪快に笑った。
いや、笑い事じゃないと思うんだが。
「今度、アビに過剰に怪我させたら、この国ごと消すわよ」
アオは冷ややかに、ハクを睨みつけた。
「いや、この国も、えらいことになってんだけど」
ワタシは窓の外に目をやった。
「この程度のことで死ぬんだったら、うちの国民はやってられないぜ。一応、国民には、多分こうなるから地下に逃げてろと告知してたから、死人はないとおもうぜ。前に神竜族と闘った時は、あいつらはアオと違って、街の損害なんてまったく考えなかったからな」
アオと違って、ということは、考えてこれなのか。
「ちょっとまって、ということは、ワタシを半殺しにしたのは、アオを怒らせるため!?」
「まあ、そうだな。悪く思うな」
ハクが手をかざすと、体から痛みが引いていった。
「お、さすがクロだな。オレの不可逆の効果も、かなり除去されてるじゃねえか」
「まあ、それでも、アビが普通の人間だったら死んでたぞ」
クロも、ハクをジト目で見た。
「まあ、しかしだ。アビ、お前、もう少し強くならねえと、まじに自分の国も守れねえぞ」
ハクは腕を組んだ。
「魔王や勇者の戦いなら、オレたちは一応、手を出さないってことになってるからな。今の実力じゃあ、あのジョカエルってやつにも勝てねえぞ」
「やっぱり、彼女はすごかったの?」
ワタシは、今のジョカの強さが知りたかった。
「まあ、ペラペラしゃべると不公平になるが、今のお前よりは強いな。しかし、お前もお前で、条件を満たせばかなり強いがな」
「条件?」
「それくらい、自分で考えろ」
ハクはニヤリと笑った。
まあ、それはそうだ。
「アビのスキルは、人のスキルを借りることができるのよ。つまり、私達が許可して、あなたが使いこなせれば、私達の権能も一部利用できるのよ」
アオが答えてくれた。
そうか、アオに限らず神の力も使えるのか。
我ながらやばいな。
「お前がそうやって甘やかすから、だめなんだ」
ハクがため息をついた。
「まあまあ、わかっててできるなら苦労しないから、いいじゃない。でも、よかったよ。傷も全部消えたみたいだし。じゃあ、体も治ったことだし、私へのお礼をさっそくしてもらおうか」
そう言いながら、クロは人目も憚らず、後ろから抱きついてきた。
そこへ、ワタシのスマホが鳴った。
キョウからだ。
このあと、ワタシは彼女から、重大な決意を聞くことになった。
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