第254話 一つ戦いの終わり
ショウを捕らえ、処刑した。
その報告を聞いた時、アマンの胸中は複雑だった。
ときには親友であり、そして政敵となった男。
なにより、現実味がなかった。
それでも、書面でショウのすさまじい最期を知った時は、百戦錬磨のアマンも吐き気を催した。
捕らえたのは、ダークエルフを中心とする地域の魔人たち。
交戦の末、ショウを殺害したとあった。
地域の領主が目にした、ショウ以下、エン家の最期はすさまじいものだった。
ショウは、首が誰のものか明らかにするためか、顔こそ綺麗だったが、それでも四肢はバラバラに切り裂かれていた。
エン家の者たちは、どれも拷問され、虐殺されたようだ。
もっとも、どれも推測にすぎない。
遺体の損傷が激しく、死因が特定できないらしい。
生きたまま焼かれた者もいたようだ。
書面には、事実だけが淡々と書かれていた。
アマンは、ショウを捕らえた者に規定通り報酬を払え、とだけ伝えた。
数日後、アマンのもとにショウの遺体が届けられた。
◇
ショウの遺体は、アマンの命令で元通りに縫い合わされ、防腐処理が施されていた。
アマンは、棺の傍らに立った。
「久しぶりだな。『閣下』」
それは幼いころ、仲間たちがショウにつけたあだ名だった。
ショウ自身はひどく嫌がっていたが、仲間たちは面白がって、彼をそう呼んでいた。
アマンの頬を、涙が伝った。
もの言わぬ骸に、アマンはしばらく語りかけていた。
やがて、側近のカギを振り返る。
「生き残ったエン家の者たちは、丁重に保護せよ。首謀者たちの処分は、もう十分だ」
「ハッ」
カギは短く答えた。
そして、アマンは群臣たちの前に立った。
「エン家の反乱に加わったものも、そうでないものも、新しい時代に向かって、ともにすすもう。それを我が友、ショウ・エンの魂に誓おう!」
それは、長きにわたった戦いの終わりを意味していた。
◇
アマンとショウの戦いが終わるころ――
ワタシは四神にして魔王、白虎竜ハクと、練習試合で対峙していた。
「じゃあ、いくわよ。【限界突破・雷神】」
ワタシは肉体の限界を超え、身体能力を引き上げた。
さらに電撃をまとった一撃を乗せて、ハクに襲いかかった。
が、
あたらない。
やつは軽いフットワークで、ワタシの攻撃をかわした。
そして、拳を繰り出し……
寸止めする。
そこで、気がついた。
「ワタシと同じことをしているのね」
ハクはワタシの魔力に合わせて、ワタシと同じことをしていたらしい。
まあ、当然だ。
四神たちは本来、肉体での攻撃なんか必要ない。
魔力の波動を当てたり、視線を媒介にした光だけで、霊力の効果を発揮できるらしい。
こんな肉弾戦など、ほぼ必要ないのだ。
「正解。すごいね。魔法もスキルも、イメージの世界だ。多分君は、実際に電撃を浴び続けて、自分のものにしたんだ」
ハクは構えを解かないまま、続けた。
「でも、そのスキルは、君のその体とはひどく相性が悪い」
そういわれて、ワタシは自分の体を見下ろした。
限界突破なんて言ってるが、ワタシの体は、戦闘向きというには程遠い。
丸みを帯びた、女性的な体をしている。
一方、ハクは全身が鋼のような肉体だ。
「そんな体をしていて、よく魔王になれたもんだ」
「余計なお世話よ。この良さがわからないなんて、ゲイなんじゃないの」
いや、ワタシがいったんじゃない。
いつの間にか、アオがワタシの後ろにはりつき、ワタシの胸を揉みしだいていた。
「おお」
ワタシは驚いて、アオを振り払って離れた。
「何よ。そんなにいやがることないでしょ」
アオが唇をとがらせる。
「急に転移してこないでよ」
「いいか、魔王ってのは強くなくちゃならない。お前たちの選ぶやつは、ろくな奴がいない」
ハクは腕を組んだ。
「前のヴィクトリーも弱かった。こいつもよわ……」
と、言いかけた瞬間、ワタシの右ジャブがハクの顎を捉えた。
「まだ、戦いの途中でしょ!」
体勢をくずしたハクの頭を、蹴り飛ばしにいく。
すると、やつはなんと、ワタシの軸足をつかんで持ち上げた。
「ふたりなかよく、ベッドで寝てな」
それが、最後にきいたハクの声だった。
ワタシの全身は、アオめがけて振り下ろされた。
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