↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
正義愛鬱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
253/265

第253話 滅亡

ショウ・エンは、わずかな手勢と、同行を乞うたエン家の一族を連れ、北を目指して暗い夜道を進んでいた。


「ショウ殿……どこまで向かう気なのじゃ」


疲れきった顔の老貴族が、隣を歩くショウに弱々しく声をかけた。


ショウは黙ったまま、暗雲の垂れこめる北の空を指さした。


「北方に根を張る、エン家の遠縁を頼ります。そこで……再起を図るのです」


「……もう限界じゃ。城を出てから一度も休んでおらん。少しでいい、体を休ませてはくれぬか」


別の老貴族が、すがるような目をショウに向ける。


「いけません。追手がいつ迫るかわからぬ以上、足を止めるわけには――」


ショウがたしなめようとした、その時。


背負った『美静弓・魔姫』が、かすかに震えた。


神器が、闇に潜む何かの魔力を捉えたのだ。


ショウは弓を手に取り、闇をにらんだ。


「何者だッ!? 潜んでいるのはわかっているぞッ!!」


ショウの一喝に、樹々の影から魔人たちが姿を現した。


「流石は名高き将だな。気配は完璧に絶ったつもりだったのだがな」


フードを深くかぶり、仮面をつけた男が一歩前へ出た。


男は仮面を外し、黒い肌をさらす。


「……ダークエルフか?」


ショウは弦を引き絞りながら問うた。


「そうだ。オレの名は驩兜(カブト)。あの姒鯀の兄弟分と言えば……話が早いか?」


「姒鯀……だと!?」


ショウの目に、憎悪の火が灯った。


「ちょっと驩兜、あいつの名前を軽々と出してもいいの?」


隣に降り立ったダークエルフの女が、驩兜の脇腹を小突いた。


「構うものか。どうせ……ここにいる奴らは、全員殺すのだからな!」


驩兜が巨腕を振り上げた。それが合図だった。


四方の暗がりから、ショウの手勢めがけて、矢と魔法が雨のように降り注いだ。


(ここが……私の最後の戦場か……!)


ショウは『美静弓・魔姫』を限界まで引き絞り、驩兜の胸元めがけて矢を放った。


◇


「アビ様……! それにクロ様まで!」


ワタシたちの姿を見て、リユウが声を上げた。


リユウとジョイエル、そしてカイ王捜索隊の面々が、魔王ハクの大殿へ通されてきた。


ワタシとクロも、その場に同席させてもらっている。


「このクロが『彼らと会ってやってくれ』と頼んできてね。本来なら門番を倒して、さらにいくつかの試練を越えてもらわないと、オレのところへは辿り着けないんだが」


ハクは気さくに笑った。


あの門番を倒すだけで終わりではなかったのか。


ということは、その試練をすべて突破したジョカエルは、やはりとんでもない強さだったのだろう。


「まあ、事情はだいたいわかったよ。ジョカエルという女と、君たちの国の王を捜しているんだろう? 残念ながら、彼女がここに来た時に連れていたのは従者らしき者だけで、子供の姿はなかった。そして彼女は……もうこの国を後にしたよ」


「そうですか……」


リユウは肩を落とした。


「それと……もしそのジョカエルが王を連れてこの国を出たのだとすれば、そろそろ霊教国に着く頃だろうね」


ハクはそう言いながら、捜索隊の面々をひとりずつ眺めた。


「ねえ、ワタシからも少しいいかしら」


ワタシはリユウに向き直り、アマンとショウの戦いについて、知っていることを話した。教える義理などないのだが、すでに世間に広まっていることだ。


アマンが十倍の兵力差を跳ね返して完全に勝ったこと。姒鯀が核兵器で介入したこと。そして、今ショウが行方知れずになっていること。


「そうか……やったか」


リユウはぽつりと呟き、口の端をあげて笑った。


「では、こうしてはおられません。私たちもただちに霊教国へ向かいます!」


「ああ、そうするといい……と言いたいところだが、君たちは少々弱すぎる。霊教国の周りには、今の君たちから見れば命取りになるほど強い魔獣がうろうろしている。十分に気をつけることだ」


ハクの忠告に、兵たちの顔がこわばった。


「一応、オレの国から正式な使者を立ててやろう。彼らと同行するといい。ついでに道中、叩き直してもらうといいさ」


ハクは、案外面倒見がいいらしい。


「しかし……その姒鯀という男は興味深いが、異常だな。『死翼』の権能を盗み出した奴か。神の力を奪われるなんて、そんな間抜けな神は聞いたことがないぞ。しかも異世界の兵器を平気で使う。四霊はまず、そいつの存在を許さないだろうな。近いうちに、そいつを倒す勇者が出るはずだ。一度、魔王会議を開いたほうがいいかもしれないな」


ハクはクロの顔を見た。


……魔王会議?


「まあ、その時はアビを連れて行くよ。アビも他の魔王の顔ぶれを知っておいたほうがいい。お前の後押しを取り付けるために、こうしてアビを連れて来たんだからな」


クロはワタシの疑問を無視して答えた。


「ほう……ならば、お前のお気に入りのアビがどれほどの玉なのか、見せてもらわないとな。直に『肌を合わせて』みたいものだ」


肌を合わせる……。


あー、なるほど。そういうことか。


「いいわよ。じゃあ場所を移しましょうか? それとも今、ここでやる?」


ワタシは目を細め、ハクを見返した。


「いいね、話の早い子は好きだ。ついて来な」


ハクが立ち上がり、ワタシはその背中を追った。


◇


案内されたのは、頭上に空が大きく開けた、巨大な闘技場だった。


……てっきり、豪華な寝室に連れ込まれるものとばかり思っていたのだが。


「どうした? なかなかの眺めだろう? 自慢の闘技場だ」


「いえ……てっきり寝室に連れ込まれるかと思っていたから、思いのほか健全な場所で驚いているのよ」


「……お前、一体オレを何だと思っているんだ?」


ハクは呆れ顔になった。


「いや、あなたというか……あんたたちって、互いを理解するには『まず肌を重ねる』とか、普段から言ってるじゃない」


ワタシは、遠くの観覧席にいるクロに目をやった。ふと見れば、リユウとジョイエルの二人が、クロの手に指を絡ませている。


……あいつ、ジョイエルどころか、リユウとまでやってしまったのか。


ワタシの知り合いの中で、あいつにやられていない女を探すほうが難しいのではないだろうか。


まあ……気持ちはわかる。


クロは常に【誘惑(テンプテーション)】を撒き散らしているような存在だ。


あれに抗える女など、この世にいない。


かく言うワタシだって……。


そこまで考えかけて、慌てて雑念を振り払い、目の前のハクに意識を戻した。


「あいつらと一緒にしてくれるな」


ハクはため息をついた。


「オレは『強い者』を認める。そういう意味では、あのジョカエルという女は大したものだった。勇者であれ魔王であれ、望むなら後押ししてやると伝えたよ。……アビ、お前はどうかな?」


ハクが腰を落とし、構えを取った。


ワタシもおふざけを捨て、腰の雌雄一対の双剣を抜いた。


◇


あたり一面に、血の臭いが立ちこめていた。


「手こずらせやがって……」


驩兜が、生首の髪をつかんで持ち上げた。


それは、ショウ・エンの首だった。


「混々(コンコン)、こちらの被害は?」


「かなり削られたよ。手傷を負った何割かには逃げられたけど……目ぼしい貴族の連中は、ほとんど仕留めたかな」


両手を真っ赤に染めた混々が、驩兜に歩み寄る。


「では……あとは計画通りだな」


「ええ、そうね」


「このショウ以下、エン家の中枢の首をアマンのもとへ送り届け、『核兵器の惨劇を引き起こした張本人を、我らが誅殺した』と名乗り出る。オレたちは内側から、姒鯀は外側から、この国を解体して乗っ取る機会を窺うのだ」


「捕らえた生き残りはどうするの?」


「決まっている。オレたちの同胞がかつて味わわされた苦痛と、まったく同じ屈辱を、身をもって教えてやれ」


「ふふ、分かったよ」


混々は残忍な笑みを浮かべた。


「……ところで、そいつはどうするんだい?」


混々は、泥にまみれて転がる『美静弓・魔姫』に目をやった。


「……こいつを持っていると、四霊に居場所を突き止められるおそれがある。ただちに壊せと姒鯀から言われているんだが……どうやっても壊せん。仕方ない、ここに深く埋めていくとしよう」


驩兜は吐き捨てるように言うと、ショウの首を高く掲げて歩きだした。


首筋からは、まだ赤黒い血が、ポタリ、ポタリと地面に滴り落ちていた。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


続きが気になった方は、

ぜひ応援クリック、ブックマークをお願いします!

SNSで拡散お願いします

やる気がでます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。