第250話 看破
アマンのもとに、諜報部から情報が集まってきた。
「ショウの部隊は、各地に散らばって撤退していきます」
「閣下、これはおそらく、兵糧がないので城を捨てて逃げているのでしょう。
この機にショウの本拠を攻めましょう」
武官の一人が身を乗り出した。
アマンは一考し、諜報部の男に確認した。
「ショウの本拠は空か、それとも兵は残っているのか」
「未だ数万単位で兵はいるようです」
それを聞いて、アマンはニヤリと笑った。
「読めたぞ。もし本当に逃げる気なら、全軍で逃げているはずだ。つまり、我々が城に攻め寄せたら、そのとき各軍が反転し、こちらを一挙に包囲するつもりなのだ」
「では、各個撃破しますか」
武官のエイサイが確認する。
「いや、それはこちらの被害も大きくなる」
アマンは、降伏してきたシエンと、卓上の地図に目をやった。
「シエンよ。各地に散った部隊の中で、もっとも他の将軍が一目置いていて、こちらに降りそうなものはいないか」
それだけで、シエンはアマンの意図を察した。
「コウ・シュンガイというものがいます。私がそのもののところへ赴き、アマン様に降伏するように勧めます」
「うむ。十分に手土産ももっていけ。降伏後はさらに大きな恩賞と、家族の安全の保障を伝えろ。そして、そのコウから別の部隊に降伏するよう勧めるのだ。ショウの部隊は、エン家に近いものは厚遇され、財産のあるものも多いが、単に引っ付いているだけのものもいる。もはやエン家の未来はないことを知らしめれば、自然に崩壊するはずだ。そして、わが軍がすぐに再起できたのは地元の住民たちが協力してくれたためで、民衆もエン家から心は離れていると伝えろ」
「ハッ、かしこまりました」
シエンは頭を下げ、すぐに敵陣に向かった。
(ショウよ。こんなことになり、残念だ。できれば降伏してほしいが、お前はしないだろうな)
アマンは、幼いころ二人で天下を語り合った日々に、思いをはせた。
◇
「なるほどねー。どうしようもない連中だな」
湯船の中で、クロが共生党のどうしようもなさに同意してくれた。
その隣では、アオが湯の縁に頭をあずけて目を閉じている。
「まあ、強者たるあなたには、わからないことなんでしょうけどね」
ワタシは湯をすくって、ため息をついた。
「いやいや、そういう葛藤は私にもわかるぞ。結局、なんだかんだで私も、シンっていう子を思い出して、ついショウを助けてしまったからね」
「そのシンっていうのも、あなたの女の一人なの?」
「んー、ちょっと違うかな。ショウの側室の人なんだけど、子供の頃から知っていてね。いっておくと、彼女には何もしていないからな」
「彼女には」というのがすごいが。
「あなたでも手をださない女がいるんだ。意外ね」
「まあ、ショウはショウで、あいつを大事にしてるみたいだからね。ショウが死ぬか、あいつを捨てたら、私が面倒見ようとおもってるけど。まあ、それよりもだ」
ざばりと湯を鳴らして、クロが湯船から立ち上がった。
相変わらず、ご立派さまだ。
「アビ、あんな奴らは邪魔だ。話しても無駄だ。もうわかっただろ。何も虐待しろとか、抑圧しろとかいってない。でも彼奴等は強者の庇護でしか生きられない。そのくせ、平等を与えるなど無理だろ」
ワタシは湯面に映る自分の顔を、しばらく見ていた。
「ワタシもこの世界に来た時は、なにもなかったよ。チャンスはあげたい。あんたたちが、ワタシにくれたように」
「なんてうれしいことをいってくれるの」
アオが湯をかき分けて寄ってきて、ワタシの頭を撫でる。
「じゃあ、アビの愚痴の続きは、ベッドで聞いてあげるよ」
そのまま、アオに抱き寄せられた。
「いや、今日はちょっと疲れたから……」
「まあまあ、嫌なことは忘れさせてあげるから」
今度は、うしろからクロが抱きついてくる。
そして、やばい、これは……。
身体の中に、快楽電波が流れ込んできた。
「クロ、これはちょっと反則でしょう!」
「ちょ、すべる。あばれるな」
ドボン!
ワタシたちは足を滑らせ、三人そろって湯船に沈んだ。
◇
白虎竜ハクの国、大白――
ジョイエルとリユウは、ここに着いたはいいものの、ハクに面会すらできずにいた。
「くそ! 今度こそ! 勝ってみせるわ!」
リユウが空に向かって吠えた。
兵たちも、死者こそいないが、皆ジョイエルの回復魔法を受けている。
「しかし、魔王に会うためには門番に力をみせないといけないというのは、わが国ではありえない文化です」
腕をさすりながら、兵の一人がぼやいた。
リユウの部隊は、ここで三日間門番にいどみ、そのたびに返り討ちに遭っていた。
「やはり、クロ様を待ったほうがいいんじゃないかしら」
ジョイエルが、遠慮がちにリユウの袖を引いた。
「いえ、あの門番もいってたじゃない。あのジョカエルは、あっさり試練をクリアしたと。私たちにもいい機会だわ。ここで力をつけるのよ。すくなくとも、クロ様がもどってくるまでには、あの門番くらいは倒せるようになりましょう。いいわね! みんな!」
「オオ!」
リユウの声に、兵たちも拳を突き上げた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
続きが気になった方は、
ぜひ応援クリック、ブックマークをお願いします!
SNSで拡散お願いします
やる気がでます




