第235 神々の思惑
ガリョウのスキル【魔導衛星】により、ショウの軍が整然と並んでいるのが見える。
さらに虫型の小型の偵察機により、上空から全ての兵がみえた。
なんと表現すべきか。
あちらの世界では巨大な野外ライブを上空からみたら、こんな感じだったか。
「おおよそですが20万人の軍勢ですね。おそらくこの国では現状、最大級の軍勢です。魔獣のランクでいうとSランクは確定ですか。」
ガリョウが映像をつぎつぎに出しながら解説してくれた。
人の軍勢を魔獣のランクで例えるのはどうかとおもうが、国家でも滅ぼせそうだな。
「なお、ショウ・エンのスキルで全ての兵の能力が上がっています。最低でもBランク以上の精鋭たちですね。」
「あいつ、そんなスキルもっているの?」
「はい、特に隠してもいないですね。」
「ちなみに、うちの魔国にこれがきたらどうなる?」
ワタシは思っていることをいった。
「アオ様やクロ様たちの助けがなければ高確率で滅びます。」
さらっととんでもないことをいった。
会議の参加者の空気がかわる。
「一部のものは逃げることはできるでしょうけど、それで、国家の体が保たれてるかというと疑問ですからね。もっとも、その場合は、央国も国家存亡レベルの損害をうけるでしょうが。」
「なるほどね。もっともショウはまず、アマンと戦うつもりのようだから、うちとしては、アマンに援軍を出したほうが良さそうね。」
その言葉に全員が頷いた。
「ちなみに、アマンの兵力は?」
「2万ですね。」
「2万!?10倍じゃない!?」
「もともと、ショウ・エンのエン家は名門の公爵家でしたが、例のコウロがほろんだあとは、エン家の息のかかった人間はショウを頼るようになっていました。一方アマンは、一地方の豪族の出、チュウエイを討った功績で宰相の座につきましたが、彼自身には大きな財力はありません。だから、武術大会などで精力的に人材を集めていました。それに、キョウ王女の後ろ盾があったので、アマンについていた者たちもいましたが、アビがキョウを誘拐してしまったため、アマンから離れ、エン家についた勢力もあったようです。一部はもどったようですが、王女がもどったからといって、またアマンにつくというのも節操がないというものも多いでしょう。」
(ワタシが、キョウを攫ってしまったからか。ワタシにも責任はあるな。)
「ひとつ気になるわね。」
画面をみていたアオが言った。
「四霊が動いてるね。ショウが持ってる武器。あれに彼らの霊気を感じるよ。」
アオが目を細める。
「つまり、ショウは四霊に操られてるってこと?」
ワタシは驚いて聞いた。
「操られてるかどうかはわからないけどね。」
そのとき、会議室扉の外からクロの声が聞こえた。
「そのとおりだ。これは代理戦争だ。」
勝手に会議室のドアをあけて、ワタシたちの3柱の主神(笑)がはいってきた。
クロ、究姫、凍子だ。
かれらが3人来るとは珍しい。
三人はアイドルグループのように無駄にポーズをとった。
何をやってるんだ、この人たちは。
衛兵たちがピシッと彼らに敬礼をする。
「いいか、アビ、これはあいつらの嫌がらせなんだよ。」
究姫がつかつかとワタシのところにやってきた。
「アイツラは自分の思想をこの世界の連中に押し付けたいんだよ。」
「それってどういうこと?」
ワタシは究姫に聞いた。
「あいつらは、神々といえど、人類その他の種族の命を勝手にうばったり、気まぐれに力をあたえてどうなるか観察してはいけない、みたいな勝手なことをいうんだ。」
シーン
会議室に沈黙がはしる。
「いや、ごもっともな話な気がしますが。」
なにをいってるんだ、この人は。
「お前はちょっとだまってろ。」
クロが究姫を押しのける。
「この魔王制度というのはつまるところ力の制度だ。」
「それはそうね。」
それは納得。
「あいつらはな。基本的には魔王制度に反対なんだよ。これはもともと、私達の遊びがはじまりなんだ。」
なんだかまたしても重要な話を軽いノリで話そうとしてる気がする。
「ちょっとまって。なんか重要なことをこんなみんなのまえで話そうとしてない?」
ワタシは釘をさした。
「別に私にとっては重要じゃない。誰が始めたか忘れたけど、私や究姫や凍子が自分の弟子や信徒を競わせるゲームをしてたんだ。」
クロの話をワタシの仲間は黙って聞いている。
「あくまで自分の弟子たちを競わせるのがルール。だから、私達は直接手をださない。それは当たり前だろう。」
それはそうだ。
弟子同士の戦いに師匠がでるなど、わけがわからない。
「しかし、私達の弟子や影響をもったなかでとくに優秀な連中は、ある程度、世界全体に影響を与えるようになったんだ。そしてそこに人があつまった。それが魔王のはじまりだ。」
そして究姫が続けた。
「つまり魔王というのは私たち神が作ったものであると同時に、そこにあつまったこの世界のものたちがつくったシステムともいえるわけだよ。これが魔王システムなのよ。」
突然の二人の暴露に、頭がこんがらがってきた。
「ちょっとまって。魔王というのはあなたたちがつくったのはわかった。でもそれはなんのために?」
ワタシはクロと究姫に聞いた。
「だからいったろう、最初はお互いの弟子みたいなやつを競わせる遊びともいえるし、彼らにとっては強くなるきっかけだよ。でも、その中で強くなったやつの周りに人があつまって国になっていったんだよ。あくまで最初のきっかけだけどね。」
クロがいった。
まわりの仲間たちは固まって聞いている。
「でも今は違う、魔王に意味をつけたのは人間やほかの魔族たちだよ。彼らの中から優れたものが魔王に立候補し、私達がそれを認める形にいつの間にかなった。でもそれが一定の秩序をたもつようにもなった。」
(なるほど。魔王をつくったのはクロや究姫たちだけど、別の意味を与えたのは魔族や人間ということね。)
「しかし、魔王たちの中でも争うようになってね。これを仲裁するために私たちの中からも持ち回りで魔王をすることになったんだよ。」
クロが続ける。
「それで私たちの中では今はハクのやつが魔王をしてるってわけだ。」
「なるほど、それであなたたち三人は遊んでるわけね。」
ワタシはツッコミをいれる。
「四霊はこれに文句をつけた。」
クロはワタシのツッコミを無視する。
「全ての種族は生まれながらに自由で平等だ、なんて、きいた風なことをいいだした。」
(いってることはまっとうに聞こえるが。)
「一体で、国を亡ぼすようなドラゴンやフェンリルのような連中と、弱小種族が同じなはずがない。それに百歩譲って同じにすれば、数の圧倒的にすくない連中が不利になるだろ。」
(まあそれはそうだ。平等というと聞こえはいいが、ただの数の暴力だ。)
「それで、四霊はわたしたちのルールに従うと言い出した。」
「ならいいじゃない。」
「それが勇者だ。自分たちの息がかかったやつを魔王にぶつけるといいだした。」
クロはここに用意された椅子に座った。
無意味に足が美しい。
究姫もその横に座って続けた。
「さっきも言ったが、この話はもともとは私たちは直接手を出さないというルールなんだ。だから、このルールであいつらが戦う限り私たちは手を出さないのよ。」
ワタシはそこで妙なことに気が付く。
「ちょっとまって。じゃあ、ショウは勇者に選ばれたの?」
「そう、そこなのよ。アビ。」
アオが画面の中のショウの軍勢を指さす。
「ショウは、四霊の武器をもっている。」
「四霊の武器?」
そういえば、ロフがなんかそんな武器をもっていたような。
「発言してよろしいでしょうか?」
黙って控えていたガリョウが口をきいた。
「なに?ガリョウ。」
「詳細は不明ですが、最近、ショウはなにやら強力な弓を手に入れたようです。なんでも、その弓でゴブリンキングをも仕留めたとか。」
「ゴブリンキングか。なかなかのモンスターだけどね。今の私たちにとってはたいしたことはないけど。」
「四霊は手をださないとかいいながら、神器をわたすのよ。卑怯だとおもわない?だからそんなルールは無視すればいいとおもうんだけどね。だいたい、あなたたちが始めたことで私はしらないわよ。」
(なるほど、アオは別にそんなルールはしらないという立場か。)
「だめだめ。そうしたら、私たちが負けを認めるようなもんだよ。こればっかりはアビになんとかしてもらわないとこまるよ。」
凍子がアオに文句をいった。
「というか、アオ、お前、前はヨウトなんかに肩入れしたじゃないか。」
究姫がアオに文句を言った。
「あ、そうか。勇者ヨウトっていうのは勇者、つまり四霊側でありながら、アオの弟子だったわけ?」
ワタシはアオに背景をきいた。
「順番からいったら、私の弟子になって、彼が神器を受け取ったんだよ。それで魔王ヴィクトリーが倒された。でも、ヨウトは完全には洗脳されなかったんじゃないかな。それが四霊たちのほんの少し誤算かもしれないし、どうでもよかったのかもしれない。」
「それってどういうこと?勇者ヨウトは洗脳されたってこと?」
「たぶんね、ある時から私と碌に口も聞いてくれなくなったしね。」
「いや、それは、あんたが嫁のリョーコの眼の前で、あいつを襲おうとしたからだろ。」
究姫がつっこんだ。
「あとから考えたら、その時すでにヨウトは四霊に洗脳されていたのかもしれないわ。」
アオが頭を抱え、大事なものをうしなったような悲しそうな顔をしているが、いってることはめちゃくちゃだ。
「一つ質問。四霊は、魔王を倒したあと、なにがしたいの?」
ワタシは挙手して質問した。
「正直よくわからない。そこがふざけた話だ。」
クロが不機嫌そうにいう。
「アイツラは基本的に人に手を貸すことはあっても、人に決めさせるからね。ここでは最悪のケースでいうが、お前の仲間は皆殺し、もちろん、キョウも含めてね。」
「そんなことはさせない。でも、それはおおげさじゃない?きくところによると四霊は、あなたたちよりまともにみえるけど。」
言葉だけきくと、四霊というのはまともに聞こえるが。
「今の霊教国がある場所は、とある魔王がおさめていた。」
クロが話し始めた。
「魔王といっても、弱い魔王だった。アビ、お前みたいなやつだったよ。」
よけいなおせわだ。
「そこへ四霊は勇者をつかわした。そして魔王は倒された。」
そこまでいえば、わかる。
「その勇者が霊教国をつくったと。」
「その伝説は有名だ。子どもでもしっている。エルフですらしっている。」
ビゼンが答えた。
「ちがうんだな。それが。」
クロはニヤリとわらった。
「勇者は処刑された。」
「なんですって。」
ワタシは意外な展開におどろいた。
「処刑したのは、もとの仲間だ。裏切ったんだよ。しかし、別の人間により、勇者は神格化された。そして、もといた魔王側の者たちは皆殺しにされたり、魔族とよばれるようになったのさ。」
「わけがわからない。」
「そう、わけがわからないでしょ。」
アオが、ワタシに賛同する。
「たぶん、どさくさに紛れて神使という自分らの代行者をふやして、その神使が四霊の意思をくんで、霊教国をつくったとおもうんだけどね。」
アオが続ける。
「だから、ひょっとしたら、ショウがやらなくても別の神使がキョウを殺すかもしれない。」
「よし!アオ!ショウを消し飛ばして来て!」
「まかせといて。」
ワタシとアオの意見が合うが・・・
「だから、ダメだって。私たちの負けをみとめることになる。」
究姫がとめる。
「まあまあ、今回はまずはアマンが戦うだろうから、彼に任せればいいじゃないか。」
クロがアオの肩をおさえた。
「そこまでいうならわかったわ。でも、ワタシも援軍に行くからね。」
「いえ、それはできません。アビ。」
ガリョウがストップをかけた。
「なんでよ?」
「各地で、共生党によるデモが起こっています。その対応をアビにはお願いしたいのです。」
共生党、先日のデモの連中か。
「だからいったじゃない。こうなるって。」
アオがこういったが、これは覚悟していたことだ。
「わかった。じゃあ、アマンの救援にはビゼンとヨクトに指揮を任せる。でも、あくまでワタシたちが勝手に助けるという体裁をとりたい。それでいいわね。共生党の対応はこれからガリョウと打ち合わせをする。OK?」
「「了解。」」
ワタシの声に仲間たちがうなずいた。
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