第232話 英雄と魔王
シンは一人、ショウの寝室を訪れた。
「どうしたんだ?お前から来るとはめずらしい。」
ショウは妻の一人、シンを部屋に招き入れた。
今夜は一人、寝室で明日の会議について頭を整理するつもりだった。
「閣下、おそれながら、耳にはいったことがございます。」
シンはショウを見つめていった。
「なんだ?」
ショウは疑問におもった。
側室たちには政治のことなぞ話さないようにしている。
公になったことならともかく、会議の内容など、ショウ自身、正室にも話さない。
「ひょっとしたら、クロ様と戦うことになるかもしれないと聞きました。本当ですか?」
シンはショウの眼を見ていった。
ショウは顔色をかえた。
そんなことをシンが知っているはずがない。
「その話、誰から聞いた?」
ショウは思わず、シンの手を取った。
「いえ、それは、そう。うわさになっていますよ。」
シンはとっさに誤魔化す。
しかし、それが嘘であるのは明らかだった。
先ほど、話したばかりのことが噂になっているはずがない。
先ほど、少し会話した正室ですら、その話はしらなかった。
で、あるならば可能性は二つしかなかった。
会議の内容をこのシンに漏らしたものがいるか、クロ自身が会議を聞いていて、シンに話したのだ。
自分の配下がこのシンと密会をしたなど、配下もシンも疑いたくなかった。
「うそをつけ。だれに聞いたのだ。」
おもわず、少し声がおおきくなる。
シンはいえなかった。
言えばトヨタの首がとぶかもしれない。
「いえ、実は、そんな気がしただけです。だれに聞いたのでもありません。」
シンはそう答えた。
「そうか、ならいい。それについてはなんともいえない。」
ショウはそれだけいった。
自分を裏切ったものがいるのか、クロが動いたのかはわからない。
しかし、こころのなかにもやだけがのこった。
「今日は、もう休むつもりだ。一人で寝るつもりだったが、せっかくお前が心配してくれたのだ。今夜は仕事を忘れお前と過ごすことにしよう。」
ショウはそういうとシンの肩に手をやった。
◇
「ここは?」
ショウは再びいずこかの神殿の中にいた。
「ショウよ。」
ショウの前に光に包まれたものがたった。
「霊神様ですか?」
ショウは光の中の人物に声をかけた。
光はまぶしくまるで太陽のようで、直接みることはできない。
ショウは手で目を覆い、わずかに感じる人影に向かい声をかけた。
「ショウよ。真神は汝が望むなら、汝に勇者の力をあたえよう。それで、魔王やそれに与するものを討つのだ。」
そういって、光は手を差し伸べた。
だが、ショウは思いとどまり、光に向かって叫んだ。
「霊神よ、私の愚かな頭では私は何が真実かわかりません!」
(なにか決定的なものがあれば。四神が、クロ様が人に、この国に害をあたえるものだという確証があれば・・・)
ショウがそう思ったとき、ショウの前に新たな光景が広がった。
(人が大勢見える)
(あれは、アビか、それにあれは青竜アオ様か!?)
亜人や魔人の老人たちがなにやら、アビやアオに向かってわめきたてていた。
何をいっているかは聞こえない。
人間もまじっている。
しかし、次の瞬間、亜人たちが全員塩の柱となって消え去った。
人間の老人もまじっていた。
(あ、あ・・・・・!)
ショウは言葉を失った。
すくなくとも、老人たちは武器も持っていないように見えた。
そして、アビとアオ、その仲間たちは一人生き残った老人になにかを警告し、さっていった。
虐殺だった。
自分の知っているアビはもうそこにはいなかった。
魔王。
その存在がいた。
「さあ、ショウよ。わが手をとるのだ。」
光が手を差し伸べる。
ショウはためらいながらも自分の手を差し出した。
そして、その時声が聞こえた。
◇
「ショウ様!ショウ様!」
ショウが目をさますと、そこにはシンがいた。
「ずいぶんとうなされていたようですが、大丈夫ですか?」
「ああ。」
ショウはそういいながら、枕元に置いてあった水を口にふくんだ。
(あれは、夢か。夢にしては・・・)
「シンよ。ひとつだけいえることがある。」
シンはだまってショウを見つめた。
「この国は、人ならざるものによって蹂躙されそうになっているのだ。それを防ぐためにはいかなるものも利用せねばならんかもしれん。それがお前をも守ることになる。」
「ショウ様・・・」
シンはショウの手を握った。
(私が争いを終わらせてみせる。)
ショウはシンにはいわず自らの意思を決めた。
◇
ふう・・・
ワタシはひとり、露天風呂で湯船につかって、先ほどのヨクトとのことを思い出す。
なんだかんだ、いいながらもやつも結局、男だった。
もう少し楽しみたかったが、今は、ビゼンとお楽しみだ。
これで、私たちはこころだけでなく、身体も姉弟になれたというものだ。
シリュウのやつに生娘と馬鹿にされることもない。
しかし、男というのはそうなんどもできるものではないらしい。
二回でビゼンとバトンタッチせざるを得なかった。
やっぱり、クロは特別なんだろう。
男とするのも悪くないとおもったが、やっぱりクロやアオは特別だ。
しかし、これが魔族になるということなのか。
こういうことに抵抗がうすい。
おそらく、行為に生殖という意義が薄いからだろう。
一方で、なんだかつながりだけを感じることができる。
そういえば、アオとスカーレットもそんなこと言っていたような気がする。
まあ、それはそれとして、ワタシは自信がついた。
ワタシは自分の胸に両手をやった。
アオのせいで、ささやかだったワタシの胸は豊満に成長し、ヨクトも結局はその気になった。
(ワタシがホウスウとの争いを終わらせて見せる。)
ワタシは全裸でたちあがり、露天風呂から夜空をみあげた。
星がやけに多い夜だった。
そのどれかがこちらを見ているような気がしたが、気のせいだろう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
続きが気になった方は、
ぜひ応援クリック、ブックマークをお願いします!
SNSで拡散お願いします
やる気がでます




