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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
正義愛鬱編

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第229話 神罰

「魔王だ、魔王が来たぞ。」


「青竜様もいるぞ。」


獣人たちがざわついた。


ワタシのとなりにはアオとガリョウがならび、その横にはビゼンやヨクトが腕組みをしている。


というか、よく見たらヨクトとビゼンがケガをしていた。


「あんたたち、それどうしたのよ。」


ワタシはヨクトにかけよった。


「いや、ちょっともみ合いになってな。大したことはねえよ。」


ヨクトは苦笑してこたえた。


彼のスキル【豪傑覇気】なら、ここにいる全員を失神させることもできるだろうに、こらえてくれたらしい。


「城に石を投げてきたやつがいてな。私としたことがよけそこなった。」


ビゼンの額に傷ができている。


ワタシは怒りでキレそうになるのをこらえた。


ワタシはデモ隊を一瞥する。


高齢者が多くみえる。


ワタシは魔力感知をおこなった。


ワタシは【魔勇者】の効果で、ガリョウの魔力感知【魔道衛星(サテライト)】の力も一部借りることができる。


アオやガリョウほどの精度ではないが、参加者全体を解析する。


見た通り、若い魔人はいなかった。


弱小種族が多いが、高齢者ばかりだ。


なるほど、高齢な魔人たちは、人間、いや、元人間のワタシが魔王をなのったことに反発したという話は聞いていた。


そんなことをいったら、前の魔王ヴィクトリーも元人間だったそうだが。


一人の男が前に出る。


人間にみえるが。


白髪がまじり、年齢は70をすぎているだろうか。


「で、ワタシに言いたいことがあるの?」


ワタシはヨクトやビゼンにされたことに怒りを感じながら、男にたずねた。


「私は、キハムといいまして、アビ陛下と同じように、異世界から召喚された元冒険者でしてな。若いころはあの勇者ヨウトとともに、魔王軍と、いえ陛下の軍ではなくて、前魔王の軍とも戦ったこともありましてな。現在はホウスウ殿とともにこの地の平和のために活動しております。」


前置きが長い。


「で、そのキハムさんはワタシに何か伝えたいことが?」


ワタシは腕組みしてキハムの言葉をまった。


そして、ちらりとアオの方をみる。


目隠しをとって、目を細めてデモ隊を見ている。


まずいな。


いや、まずくはないか。


彼女はいつでもこいつらを消すつもりだ。


おそらく、全ての解析もおわったろう。


彼女がその気になれば、この人たちはすぐにでも塵になる。


自業自得だが、できれば穏便にすませたい。


ワタシは彼女の手をにぎって、まだ我慢してよと目配せする。


「陛下の時代を恒久なものにするための献策にございます。」


そういって、キハムは一枚の手紙をワタシに両手で差し出した。


ワタシはその中身をみた。


◇


すべての種族は、生まれながらにして等しく尊重され、生存する権利、自由に生きる権利、および平等に扱われる権利を有する。


何人たりとも、種族、性別、身分、出生、財産、魔力、戦闘能力その他いかなる理由によっても、これらの権利を不当に奪われてはならない。


魔王、その他いかなる権力者、神々も、正当な法と手続によることなく、生命、自由、財産その他の権利を奪ってはならない。


国は、すべての種族が等しく安全に生活し、政治に参加し、その能力を発揮する機会を保障しなければならない。


1.魔王は議会を開かなくてはならない、政治に参加するものはみな平等である。


2.魔王が議会の同意なしに法律を立案、作成、停止・変更してはいけない


3.議会の同意なしに課税してはいけない


4.国の予算は議会が決め、承認をし、魔王がその責任をもつ


5.魔王は平時に議会の同意なしで常備軍を維持してはいけない


6.議会選挙は自由で公平であるべきである


7.議会内の発言を外で処罰してはいけない


8.過大な保釈金や罰金、死刑、肉体刑など残虐な刑罰を禁止


9.議会を頻繁に開き、魔王は議会の助言と承認に従い行為を行う


10.どんな種族でも一票は平等である


11.魔王は全種族の安全と平等と自由を保障せよ


12.魔王城はだれのものでもないから明け渡し、共有すべきである


13.魔王軍の統帥権は議会の代表がもつ


などなど。


◇


ワタシとガリョウはそれをみて固まった。


なるほど、どこかで聞いたことのあるような内容が盛り込んである。


しかし、こいつらは何をしてきたんだ。


ワタシはこの世界にわけもわからず呼びつけられ、この世界の理不尽にあらがってきた。


しかし、こいつらは何なのだ。


なにもせず、「権利」とやらを主張するのか。


「どうです。陛下も異世界から来られたなら、これが当然のことだとおわかりでしょう。」


キハムは胸をはっていった。


そもそもこの世界は強い種族ほど数がすくない。


弱い種族ほど数が多い。


一体で国を亡ぼすレベルの魔神と、この爺さんがおなじ一票なのか。


ワタシは怒りが顔にでないように抑えながら彼に聞いた。


「ワタシはあなた方の奴隷になれ、といわれてるようにみえますが?」


「なにをおっしゃいます!考えてください。魔王ヴィクトリーがなぜ滅びたのか、勇者ヨウトがなぜ、魔王を倒しながらも真の英雄になれなかったかを。我々、人間も含めた弱小種族が手を取り合うことができなかったからです。力による現状変更など許されるはずがありません。私達は選挙により、政治を決めるべきなのです。」


「そうだそうだ。議会を開け。」


うしろの獣人たちもそれに賛成する。


その中にはオーク族の老人までいる。


オークは若いころは戦闘種族だが、年をとると、人間の老人と何ら変わらない。


「それでは、アビ殿、議会はいつ開かれますか?」


「いつだ、いつにする!?」


キハムに押されてデモ隊がヒートアップする。


「そうだそうだ。議会を開け!」


「俺たちの権利を守れ!」


ワタシの兵が興奮を止めようとする。


「うわあ、魔王の兵にたおされた!」


デモ隊の一人が転んで叫んだ。


「暴力反対!」


「魔王は暴力をやめろ!」


デモ隊が暴れ出す。


「何もしてないだろ!」


「さがれ!」


ワタシの兵が押される。


クシャ


だれかが卵を投げつけた。


そしてアオにあたった。


額から黄身と白身が流れ落ちる。


あ、おわった。


そう思った。


「もういい。寝言はたくさんだ。権利?自由?だったら、お前たちは私とアビとガリョウの貴重な蜜月の時間をどう返してくれるんだ?」


アオが無表情にいった。


そのつぶやきはデモ隊の喧騒に掻き消えた。


「お言葉ですが、アオ様、それは・・・」


キハムが何か言おうとしたとき、アオがつぶやいた。


「神罰」


急に周りが静寂につつまれた。


デモ隊が沈黙した。


そして、冷気がはしる。


キハムがまわりをみると、全てがおわっていた。


ああ、やってしまったか。


まわりのデモ隊は全て塩の柱になっていた。


そして次の瞬間、塩の柱は風とともに掻き消えた。


文字通り、塵ひとつ残らず風の中に消えた。


「ひいいいいい!」


キハムは腰をぬかし、失禁する。


それをみてアオはため息をついた。


ワタシは髪の毛を掻くしかなかった。


「じゃあ、アビ、ガリョウ、これで文句をいう人はいなくなったわね。そこの何とかって人、あなたは帰って、このことをあなたの上の人につたえなさいな。アビ、ガリョウ、私たちは部屋にかえって、お風呂に入りなおしましょう。」


アオはそういうと、背を向けて部屋に向かって歩いていった。


ワタシは放心しているキハムを見下ろした。


アオは彼らにとっては天災みたいなものだ。


台風や地震のような災害にデモをしてなんになるというんだ。


ワタシは彼の前にかがんで伝えた。


「キハムとかいったな。アオがいったように帰ってホウスウにつたえなよ。たまには自分の手で権利とやらは勝ち取ってみなよと、それとあんたがどんな理由であれ、ワタシの仲間にこれ以上、毛ほどでも傷をつけたら、今度は敵だと。」


キハムは黙って涙と鼻水を流しながら何度もうなずいた。


やはりホウスウも絡んでいたのか。


「ビゼン、ヨクト、あなたたちもちゃんと回復魔法とかで手当てしときなよ。」


ワタシは二人に声をかけ、アオの後を追って、ガリョウの手を引いて部屋にもどった。


誰かに見られているような視線も感じて、ふりかえったが、何もいなかった。


消えていった人たちの亡霊かもしれない。



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