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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
正義愛鬱編

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第226話 勇者ショウ・エン

ショウは美静弓・魔姫のさらなる強さを確かめるためにゴブリン退治の部隊に加わり、自ら先頭にたった。


魔獣退治の部隊の指揮をショウが自らとるなど異例なことだった。


街道をショウの軍勢1000名が整然と進んでいる。


しかし、その行進はスキルにより隠密化され、物音すらたたない。


千のひづめが土を打っているというのに、聞こえるのは風が草をなでる音だけである。


「なにも閣下が指揮をとらずとも。貴様もそうは思わんか。」


武官のカイチが同僚のフェイスフルに声をかけた。


カイチは2メートルを超える大男、フェイスフルもそれに並ぶ、筋肉の塊のような男である。


カイチはまるでオーガのようだと恐れられ、フェイスフルは、その体に似合わぬ整った容姿をときに揶揄され、ときに婦人たちから黄色い声援を受けていた。


「俺はまだ閣下の雄姿を拝見していないからな。高ぶりを抑えられん。」


フェイスフルは槍に力をいれる。


「む、前方に魔物の気配があるぞ。」


ショウは前方に目を凝らした。


「恐れながら、何も感じませんが。」


魔力感知に優れた魔導士の感知師が答えた。


「いや、連中も気配をけしているのだ。くるぞ。」


そのとき、地面が揺れるような地響きがした。


音のない行軍に、それだけが伝わってくる。


馬の耳が一斉に前を向いた。


前方からゴブリンの群れが唸り声をあげて襲ってきた。


隠密の静寂を破って、怒号と足音が一度に押し寄せる。


突然の怒声に、数頭の馬が前足をあげて暴れ出した。


「いかん!このままでは!」


フェイスフルも手綱を引き、自分の馬を抑えようとする。


「静まれ!」


ショウが一喝し、自身のスキル【英傑】を発動した。


自身が命を懸けて戦うとき、仲間たちの力が大幅に上がるスキル。


ショウが、先頭にたってはじめて真価を発揮する。


その効果は馬にもおよび、恐慌をきたしていた騎馬たちは落ち着いた。


「おお、これが閣下のスキルか!力がみなぎる!」


フェイスフルは自分の身体に力があふれてくるのをかんじた。


握った槍が、急に軽い。


「者ども!オレに続け!」


カイチが槍をもって馬で突撃した。


それに応じるように兵たちもあとにつづいた。


土煙が街道を覆い、無音だった戦場が一息に戦士たちの雄たけびで埋まった。


そして、ゴブリンの群れが眼前に迫る。


「オオオオオ!ニンゲンダ!殺セエ!」


カイチの槍が先頭のゴブリンの胸板を貫いた。


穂先が肉を割り、背に抜ける手ごたえ。


「一番槍をとった!」


カイチは思わず、戦功をとったことににやりとわらった。


だが、次の瞬間、顔色をかえた。


槍が、引き抜けない。


ゴブリンは胸をつらぬかれたまま、なんと槍を突き返してきた。


「なんだと!」


カイチはおもわず、身を翻す。


槍が抜けた傷口から、湯気のような血の匂いが立ちのぼった。


(まて、このゴブリン、一回り大きいような。)


カイチは異変にきづく。


ゴブリンは通常、自分よりも小柄である。


しかし、このゴブリンは自分と同等で2メートルはある。


馬上のカイチと、目の高さが変わらない。


しかもそれだけではなかった。


まわりのゴブリンたちも大きかった。


「気をつけろ!こいつらはゴブリンじゃない!ホブゴブリンだ!」


ホブゴブリン、ゴブリンの上位種。


その力は、ゴブリンよりもはるかにつよかった。


「それにしても、この生命力はいったい!?」


フェイスフルも槍でホブゴブリンの頭を殴り飛ばした。


骨の砕ける音が、たしかに手に返ってきた。


ゴブリンの生命力は人間とさほどかわらない。


通常、フェイスフルが剛腕で殴り飛ばせば、頭蓋骨は砕け、首はへし折れた。


しかし、ホブゴブリンはニヤリとわらい剣を切り返したのである。


首が、あらぬ方向に傾いだまま。


フェイスフルは【英傑】で増した力をもって、はじめて互角に打ち合った。


ショウの力で、兵たちの力があがっても互角であった。


(なんだ、まだいるな?)


ショウはさらに魔力感知でゴブリンの群れの奥にいるものの正体を探った。


姿は見えない。


ショウはさらに感覚を研ぎ澄ませていく。


「ゴブリンキングか!?」


ショウはおもわずつぶやく。


「あのAランク、いや、群れではSランククラスの災害ですか!?」


魔導士のシエンが耳をうたがった。


ショウは美静弓・魔姫を構える。


対象のゴブリンはみえない。


しかし・・・


(なんだこれは!?)


弦に指をかけた瞬間だった。


周囲数百メートルの情報が一気にショウの脳内に流れ込んできた。


見えないはずの敵の位置、奮戦する味方の動きまでが流れ込んでくる。


土煙の向こうでカイチが槍を握りなおしたことも、右翼で兵が一人倒れたことも、その兵の心臓がまだ動いていることも。


「うおおおお!?」


ショウは思わず、声をあげた。


「閣下!」


シエンはおもわず、ショウに駆け寄った。


「いや大丈夫だ。見える!私にも敵が!魔力の流れが見えるぞ!」


ショウも魔力感知は身に着けていた。


しかし、それは周囲数メートルの魔力の気配が物音程度にわかる程度のものだった。


しかし、今のショウは周囲数百メートルの敵味方の動きが、手足の動きまでもが感じられていた。


そして、魔物の奥に一体の巨大なゴブリンがいた。


(あれがゴブリンキングか!?)


ショウは弓に一本の矢をつがえた。


さらに、感覚を研ぎ澄ませていく。


戦場の音が遠のいていく。


カイチの怒号も、兵の悲鳴も、遠い水の底から聞こえるようだった。


まるで、ゴブリンキングの心臓の鼓動までもが聞こえてくるよう。


とく、とく、と。


矢の先が、その一点をとらえている。


【霊矢】


ショウは矢をはなった。


矢は敵味方の間を滑空しゴブリンキングめがけて飛翔していく。


槍と剣の間を縫い、味方の肩をかすめ、土煙を裂いて。


ゴブリンキングはなにかが自分に迫ってきているのはわかった。


(なんだ?)


(なにがきた!?)


視覚にはいる。


(矢か!?)


(どこからだ!?)


それが彼の最期の思考になった。


矢はゴブリンキングの心臓を打ち抜いた。


巨体はゆっくりと膝をつき、後ろに大きく倒れこんだ。


地面が、二度目の揺れをおこす。


主の急な絶命にゴブリンたちは浮足立った。


そして、ショウは自ら放った矢がゴブリンキングを絶命せしめたことを確信した。


「ゴブリンキングはこの私、ショウ・エンが討ち取ったぞ!」


ショウの配下たちも主の声を疑った。


しかし、それを証明したのはゴブリンたちのほうだった。


ゴブリンキングの加護を失ったゴブリンたちは、急激に力を弱めていった。


「なんだ!?急に敵が弱くなったぞ!?」


カイチの槍を受けてもひるまなかったゴブリンが、急に武器を落とした。


さきほどまで槍を突き返してきた腕が、力なく垂れている。


フェイスフルの一撃でゴブリンが絶命する。


今度は、たしかに頭蓋が砕けた。


「閣下だ!ショウ閣下がゴブリンキングを討たれたのだ!」


兵士たちは歓声をあげた。


それに対して、ゴブリンたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出しはじめた。


「極力討ち漏らすな!民に害をあたえるかもしれん!」


ショウは追撃を命じた。


そして、自身も一度に五本の矢を放つと、その矢は滑空し、次々とゴブリンたちをとらえていった。


五つの背が、ほとんど同時に地に伏した。


ショウはゴブリンキングの死体を確かめにむかった。


近づくにつれ、その巨大さがわかる。


倒れてなお、ショウの背丈の倍はあった。


ゴブリンキングの左胸には一本の矢がつきささり、ゴブリンキングは仰向けになり絶命していた。


(これを私が仕留めたのか。)


ショウは美静弓・魔姫と自分の手をみつめた。


弦を引いた指には、まめ一つできていない。


「すばらしい!ショウ様こそ!勇者にちがいない!ショウ様万歳!勇者万歳!」


シエンがショウをたたえた。


そして、その声はひろがり、ショウの部隊は勝どきとショウをたたえる声をあげ、ショウがゴブリンキングをうったという噂は瞬く間にひろまった。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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