第225話 王の旅
「おお、リユウ様がもどられたぞ!」
護衛のものたちが整列してリユウを迎えた。
「なんだ、連れがいたのか。いってくれればよかったのに。」
クロが大して申し訳なさそうでもなくいった。
「こ、これは玄武竜クロ様!まさかあなた様までいらっしゃったとは!」
武術大会でクロのすがたをみた兵たちは、いっせいに敬礼をした。
「いえ、クロ様。素敵な夜でした。また。」
そういうリユウの手の甲に、クロはキスをした。
「じゃあ、ジョイエルも元気で。なにかあったら、すぐ連絡するように。道中はかなり大変だとおもうから、魔獣などに襲われたらすぐ連絡するんだよ。」
クロはそういって、ジョイエルを送り出した。
「はい、行ってきます。この町の子たちをお願いします。」
ジョイエルはそういって、お辞儀をした。
「では、行ってまいります。」
リユウはそういうと、背中をむけて歩き出した。
クロはその二人をしばらく見送っていた。
「ごめん、バイトの時間なんだ。どいて。」
後ろから声がかかった。
何やら大量の段ボールをもって、スカーレットが立っていた。
「今は何のバイトをしてるんだよ。」
クロが興味深そうに聞く。
「これよこれよ。例のスマホの使い捨て版だって。」
そういうと、スカーレットは段ボールからスマホをとりだす。
「アビがこれを配ってほしいんだって。」
「使い捨て版。なるほど、これで試しに使わせる気か。いろいろ考えるなアイツは。」
クロは使い捨て版スマホをまじまじと見る。
「なかなかよくできてるよ。これ自体の魔法力は使用者に依存している。しかも、情報を文字で送るだけならほとんど魔法力を使わないわ。画像を送るならそれなりの魔力がいるけど、魔力がないものはお金で買う。さらに魔法の術式も組み込まれていて、だれでも基本魔法が使えるようになる。さらに、こっそり情報が収集されていく。実によくできてるわね。」
スカーレットが感心したようにいった。
「解析もなかなか難しいな。まあ私たちにかかればどうということはないが。」
クロも改めて自分のスマホを手に取る。
「あんたも配るの手伝ってよ。」
スカーレットはそういうと、箱の一つをクロに渡した。
「いや、なんで私が。」
「出来高制だから、ちゃんと報酬は山分けするから。ほら行くわよ。」
スカーレットに蹴飛ばされて、クロも渋々、バイトにつきあわされることになった。
◇
はるか西方、カイ王とジョカエルとリジュエルは、砂漠ソリを砂漠狼に引かせて、ようやく砂漠地帯を出ようとしていた。
「おお、ようやく大地に緑が見えましたね。たしか、この先には・・・。」
後ろにカイ王とともに座るリジュエルは、うんざりした顔をして周りを見回す。
「その前に、歓迎されるみたいだけどね。」
うしろをみずにジョカエルが答えた。
「それはどういう?」
リジュエルが質問しようとすると、岩陰から男たちが現れた。
「おっと、ガキ二人におっさんか。おい、おっさん、そのガキ二人と、水と金目のものと食い物をおいていけ。」
一人の男が前にたつ。
「まて、貴様らなにものだ!」
カイ王は立ち上がり、男たちを叱りつけた。
「ガキは死にたくなければ黙ってろ!」
男はどなりつけた。
「陛下。ここでは、陛下の威光もなんの役にも立ちません。ですが、こんな連中でも、水と食糧くらいは運んでくれます。【銃魔】(ガン・ファミリア)」
筒状の、羽の生えた砲台が複数、ジョカエルの周りに現れた。
「これは武術大会でジョカエル様が戦われたホウコウとかいうやつの!?」
リジュエルはおどろいた。
「ジョカエル様のスキル【写し身】は、周囲にいるものの能力しか使用できなかったはずでは?」
「英雄、三日会わざれば刮目すべし、よ。そんな弱点はすでに克服しているわ。私のあらたなスキル【明鏡止水】、私が実際に体験し、再現したスキルを、私のスキルとすることができる。」
「なんだ、これは!?」
野盗たちが慌てふためいた。
しかし、遅かった。
「舞え、【銃魔】(ガン・ファミリア)」
ジョカエルの指令で、野盗たちは阿鼻叫喚の中、死んでいった。
手足が吹き飛ばされ、頭を打ち抜かれた。
「た、助けてくれえ!」
生き残った野盗は腰をぬかし、命乞いをした。
「安心しなさい。何人かは殺さないでおくわ。水や食料をわけてもらわないと。ついでに大白まで案内してもらわないとね。」
ジョカエルは無表情にいった。
「ジョカエル、なにもここまでしなくても・・・」
カイ王はソリの縁を握りしめたまま、惨劇から目を離せずにいた。
「陛下、今から寄るところは、四神、白虎竜にして魔王ハクが治める修羅の国、大白です。首都はその名も白虎。一応、観光客には手をださないというルールにはなっていますが、そこは強さこそが全ての国です。ここで私達は強さを求めます。」
「私達って・・・?」
カイ王がようやく顔を上げた。
「陛下、恐れながら、もうここは陛下の意向など無意味な場所です。そして、大白は個の強さこそが最上の価値観の国です。だからこそ、私たちはここで強くなるのです。」
「そ、そんな!聞いていません!私もですか!?」
声を上げたのはカイ王ではなく、リジュエルだった。
「言ってなかったからね。いいのよ。観光客でいれば、あまり襲われはしないわよ。」
ジョカエルはリジュエルを一瞥する。
「いや、それでもさらわれたり、何をされるかわからないじゃないですか!?」
リジュエルは頬に手をやり、真っ青になる。
「そんなに危ないところなのか!?」
「公の警察がおりません。私設のものはいますが、ボディーガードや警備は有料です。そして、四神が直接国を治めています。」
「四神様が。」
「百聞は一見に如かずですよ、陛下。あなたは王になるお方、まずは自分の身は自分で守るくらいの強さを身に着けるのです。ほら、生きてる連中、死にたくなければ、案内しなさい。早く仲間の死体をかたづけなさい。」
「わ、わかりました!」
野盗たちは仲間の遺体を埋葬しはじめた。
ジョカエルに隙あればと敵意の眼を向けたものもいたが、そういうものは次の瞬間には物言わぬ屍になっていた。
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