第222話 国家非常事態宣言
ショウ・エンは国家非常事態宣言を国中にだした。
魔王アビなるあらたなる魔王が誕生したこと。
そして、王が行方不明であること、さらに、王女も魔王アビに誘拐されたことも暴露した。
一方、自分自身が霊神より啓示をうけたこと。
および、魔国ならびに真教はこれを認めないことを宣言。
更にハクアという王族の一人を仮の王にたて、王の行方不明も魔王アビの仕業にちがいないとした。
そして、違うというなら今すぐキョウ王女を返し、謝罪と賠償をおこない、魔王の座から退位し、魔国を解散すべしという使いを魔国に出し、諸侯には自分とともに魔王を討つべしと呼びかけた。
◇
この使いは当然、アマンのもとにもやってきた。
「少なくとも殿下の存命は間違いない。そして、陛下の行方を捜す前に、ハクア様を王に立てるとは何たる不敬か。」
「しかし、魔王を倒すというのには賛同すべきでは。」
群臣たちからは、ショウの動きは急進的すぎるが、魔王討伐については賛同すべきだという声があがった。
「閣下、いかがされますか。」
魔導士のカギが決断を促す。
重臣たちもアマンの言葉をまっていた。
「魔王討伐というのはわかる。しかし、問題はやりかただ。ショウは霊神から啓示を受けたといっている。もし魔王討伐がなったとしても、この国は霊教に乗っ取られる可能性がある。」
アマンは重臣たちを見ながら答えた。
その発言にうなずくもの、顔色を変えるもの、反応はそれぞれである。
アマンはもう一度、居並ぶ顔を端から端まで見渡した。
そして続けた。
「それに、私の独自の調査網によると、陛下をさらった者たちこそ霊教会の手のものであるという情報もある。」
その暴露に重臣たちが動揺する。
「ショウ殿は陛下の誘拐にも魔王が関わっているといっていますが。それに、霊教会こそが陛下をさらったというのであれば、ショウ殿に霊神が啓示をあたえたというのはいったいどういうことでしょう。」
重臣の一人が疑問を口にする。
「たしかに魔王アビの討伐は理解できる。しかし、おそらく陛下の行方不明に魔王は関わってはいまい。もし、仮に我々がショウとともに魔王を討伐し、その後、霊教の手のものが陛下をみつけたなどと名乗りでたら、得をするのはだれかな。」
重臣たちは言葉を失う。
「それでは、わが国は霊教の影響を強く受けることに。」
カギがアマンの顔色をうかがう。
「そうだ。だから、まずはなによりも我々は陛下を探さねばならん。そして、我々は魔王アビと不可侵条約をむすぶのだ。」
その案に重臣たちがざわついた。
「王女をさらった魔王と不可侵条約を!?」
「一時的なものだ。まずは我々が最優先にすべきことは陛下だ。陛下にお戻りいただいてから、アビとの問題はかんがえてもいい。今後は陛下の捜索にさらなる予算と人員をつぎ込む。ショウとは敵対もしないが、陛下の捜索に協力は惜しまないと伝えろ。」
アマンの言葉に納得したもの、声には出さないものの不満の表情を見せたものもいた。
その一人一人の反応を、アマンは黙って観察していた。
◇
グァアアアア!
ショウに対し、体長10メートルはある熊の魔獣がほえた。
「閣下!お下がりください!」
兵たちがショウの前に立とうとする。
しかし、ショウは冷静に、手にした美静弓・魔姫を引き絞り放った。
弦を引くだけで魔力が充実していくのを、ショウは感じ取っていた。
【霊矢】
放たれた矢は光となって魔獣の胸に突き刺さった。
グアアアア!
そのまま、魔獣は雄たけびをあげ絶命した。
「おおお!」
兵たちが声をあげる。
「こいつはAランク越えの魔獣ですぞ。本来は一部隊でもたおせるかどうか。それをたった一本の矢で。」
この数日、ショウは啓示で授かった美静弓・魔姫を幾度も放ってみていた。
それはすさまじい威力だった。
どんなに離れていても、魔力をこめて放てば命中した。
実際に見えてなくても、魔力感知で感知さえできていれば軌道を変え命中した。
途中に障害物を置いても障害物は貫通した。
さらに何本でも同時に放つこともでき、五つの的を一度に破壊することもできた。
さらに強力な魔獣ですら一本の矢で絶命した。
(これが神の武器か。)
ショウは美静弓・魔姫をつかうほどに震えた。
そして、弓よりも先に、ショウは自分の身体に驚いていた。
あの倦怠がない。
核兵器の爆心地跡で浴びた毒が身の内に残り、朝、起き上がるだけで息が上がる日が続いていた。
医師には原因がわからず、神官も呪いの一種ではないかと言っていた。
それが、啓示の夜を境に嘘のように消えている。
弦を引く腕が、若いころのように動く。
(神は、私を見ておられた。)
ショウはそう思った。
(この力があれば、あの玄武竜クロ様ですら討てるのではないか。)
そうおもったが、霊神からはクロを討てとはいわれていない。
また、真教にあがめられているらしいが、敵ではないと、その考えを振り払った。
「閣下。閣下の号令に参加しないと宣言した、不埒なものたちの名です。」
臣下のシエンが、魔獣をしとめたショウの前に数枚の知らせを手渡した。
ショウはその知らせに目を通し、目を見張った。
思っていたより自分の考えに賛同するものが少なく、勝手に王をたてた逆賊などとそしるものさえいたのである。
「これは!?なぜだ。」
「閣下、恐れながら簡単なことです。」
配下のシエンが頭を垂れる。
若い同郷の男であり、ショウに仕えているが、アマンと同じく幼いころからの友であった。
「なぜだ?なぜ、魔王討伐に耳を貸さんのだ。」
「それは諸侯が、閣下と、閣下が霊神からえた力を知らないからです。おそれながら、その閣下を逆賊などとそしった神敵に、天誅を与えるべきでしょう。」
「いや、しかし、魔王と戦う前に、人間同士で殺し合うなど・・・」
ショウは躊躇した。
「なにをおっしゃいます。霊神から啓示をえた閣下に逆らうものなど神敵。今の閣下ならば、あの玄武竜とて討てましょう。」
シエンは伏したまま答えた。
「さがれ。クロ様をうつなどと、めったなことをいうな。しかし、今後のことは考えるとしよう。」
ショウは美静弓・魔姫を見つめながら答えた。
そして、天空にとぶ鷲を見て、鷲に向かって矢を放った。
矢は空を舞い、鷲に命中した。
「おお!」
群臣たちはその姿に、ショウこそ神に選ばれたものだとあらためて思った。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
続きが気になった方は、
ぜひ応援クリック、ブックマークをお願いします!
SNSで拡散お願いします
やる気がでます




