第216話 痛み
「なぜだ! なぜオレに痛みが!」
レジェンドがのたうち回る。
「解析が終わったからよ。」
ワタシの電撃がふたたびレジェンドを貫いた。
「ぐわああああ!」
「うるさいな。もうわかったよ。」
苦痛を与えることはできても命を奪うところまでいかないらしい。
「解析だと!? 解析などできるはずがない。」
レジェンドはしりもちをつきながらさがる。
「ワタシが解析したのはレジェンド、あんたじゃない。あんたはすでに死んでる。あんたの精神体は姒鯀の魔力だ。それを解析した。」
「な、なんだと!?」
「さっき、クロが呂鋼鬼にやってたことを参考にした。クロは呂鋼鬼の中にあった姒鯀の魔力をつかって彼女を再構成したといってた。つまり、呂鋼鬼の本体は姒鯀の一部だった。あんたをなぐっていたのはそっちを解析するためだ。姒鯀本体はともかく、あんたの中にあるだけなら何とか解析して、魔力がとおるようになった。もっともこうして、苦痛をあたえることしかできないけど。」
「くわああああ!」
レジェンドは再び、悲鳴をあげた。
これはヨクトのスキル【蛇矛牙】の効果だ。
このスキルは精神体にも通る。
「まだやる? レジェンド?」
ワタシは再び手に魔力をやどした。
「まて、アビ! 全部本気じゃなかった! 前もいったが、オレは初めてあったときからお前が好きだった! お前にみとめられたいだけぐわあああああ!」
「あんたに許されてるのは降伏だけよ。残念ながら、ワタシの魔力ではアンタの核になってる姒鯀の精神体をくだけない。こうして苦痛を与えることしかできないらしい。」
ワタシは初めから奴の言い分を聞くつもりはなかった。
本来なら殺してやりたいが、ワタシの魔力ではそこまでできないらしい。
「レジェンド、おまえ、楽に死ねないよ。」
ワタシは声を低くしていった。
◇
(なぜだ、なぜこんなことに!)
須玉は追い詰められていた。
ちらりと姒鯀のほうを見る。
降伏すればおそらく姒鯀に殺される。
降伏しなければ、いずれ苦痛でショック死してしまう。
アビの攻撃は苦痛をあたえるだけという属性上、気絶することもできなかった。
もっとも気絶した瞬間に、姒鯀に殺されかねない。
(そうだ、あれがあった!)
(オレにはアレがあった!)
◇
「まて、アビ! 玄武竜! 取引だ!」
レジェンドはここにきて何かを言い出した。
「取引? 何を寝ぼけたことを。」
「オレは貴様らに罠を仕掛けている。その解除方法を教える。だから助けてくれ!」
レジェンドはワタシとクロを交互にみながらいった。
「罠って、あのゴブオとかいうゴブリンのこと?」
ワタシは油断なくレジェンドを睨みながら言った。
「そうだ! あいつは死んだら、その瞬間、あいつの死体から毒薬が撒き散らされるんだ。もし、お前らがあいつを殺していたら、もう終わっていたが、殺しはしないとおもった。今、オレが魔力を送ればあいつははじけ飛んで死ぬ。つまりその周りのお前の仲間も死ぬ。」
「こいつ!」
ワタシはレジェンドに近寄ろうとするが・・・
「おっと、オレを殺すなよ。実はもう呪いは発動させているんだ。あの首輪、外れていただろ。アレがあの呪いを防ぐ条件の一つだったんだ。オレを殺してもやつははじけ飛ぶ。さあ、どうする?」
ワタシは慌てて観客席をみた。
いた、ゴブオがこっちをみてる。
「さあどうする!?」
レジェンドが詰め寄る。
(くそ! どうする!)
(なにか方法はないか!?)
「えっと、ごめん。」
クロがいった。
「今、偶然、何者かがその術式を解除したようだ。」
クロはにこりと笑った。
「なに!?」
レジェンドの顔色が変わる。
「私じゃないし、あそこにいる、アオや究姫、凍子でもないよ。最初にいったとおり私たちは中立をつらぬくと。」
「ばかな!?」
レジェンドがゴブオの方をみた。
「ばかな!?たしかに、呪いが解除されている!? あれはあの方に仕込んでもらい、だれにもわからないはず!?」
(あの方? 姒鯀のことか?)
「ああ、よくできてたよ。いろんな条件があって、私たちでも直ぐにはわからなかった。無害だけど、空気に触れると有害になるものとか、あの首輪の方に術式の本体があったとか。でも、君がペラペラと話してくれたおかげで、誰かが偶然、術式を解除したらしい。」
「う、ああ・・・あ」
レジェンドは声にならない声を上げてうめいた。
◇
「朱雀竜、あなたの仕業か。」
姒鯀は横に座るスカーレットを見ていった。
「さあ。でも私はこの試合の立会人じゃないからね。それにあれはないと思わない?」
スカーレットは姒鯀に聞いた。
「とんだ、茶番だった。だが、やつもやつで、アレでは魔王になる資格などない。今回はあなたたちの勝ちだ。」
姒鯀はそういうと席をたった。
仮面の下の表情は伺いしれない。
◇
「うあああ・・・」
・・・バタン。
うめいていたレジェンドが糸が切れたように突然たおれた。
それだけじゃない。
ざわざわ。
会場でレジェンドを応援していた、災王の部下たちも次つぎと倒れていく。
「な、なんだ。」
「急に死んだぞ!」
ワタシは仲間たちをみた。
ワタシの仲間たちはなんともない。
その光景に驚き、それぞれ、周りを警戒していた。
「うわあああああ!」
災王側の席が大混乱に陥った。
見ると、災王も座ったまま立ち上がらない。
「災王様も亡くなっている!」
「きっと、アイツラの仕業だ!」
「許せねえ!」
「殺せ!」
災王の部下たちが襲いかかってきた。
「アビ、魔王としての最初の仕事だ。お前に力をみせてやれ。」
クロがワタシにいった。
「みんな! 力を貸して!」
ワタシは仲間にむかって叫んだ。
「おう!」
ビゼンが観客席からとびだした。
「いくぜ!」
ヨクトもその後に続いた。
シリュウやその他の仲間たちも後に続いた。
「戦闘の意志の無いものは手を出さないで! 逆らうやつは容赦なく討て!」
ワタシは再び剣をもち、稲妻をまとって、雄叫びを上げて敵の中に飛び込んだ。
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